短編
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※旧サイトよりリメイク移転
朝、窓の隙間から差し込む陽射しが眩しく名無しはゆっくりと目を覚ました。
身体に違和感を感じつつもそれは寝起きのせいだからと思い名無しは上半身を起こすものの身体がやけに重い。
節々も痛く、また喉も痛いなと思いながら唾を飲み込むものの、それすらも苦痛に感じてしまう。
(…風邪でもひいたかなぁ…?)
回らない頭でそう考えるものの、こういう時どうしたらいいんだっけ?と思いながら名無しは周りを見た。
両親が二人とも海外赴任で仕事をしているためこの家には名無ししか住んでいない。
仮に風邪だとしても、ここ数年風邪にかかったことがなかったのでどう対処していたかすら記憶が曖昧だ。
(取りあえず、体温だけでも計っとこ…)
そう思いながら名無しはベッドから立ち上がりふらついた足取りで体温計が入っている救急箱を出す。
普段ならリビングに救急箱を置いているのだが、いざと言う時の為に自分の部屋に移動させておいてよかったと名無しは心底思う。
節々が痛い中ぎこちない手つきで体温計を取り出し脇に挟む。
予測検温タイプなのでものの十秒でピピピっと、電子音が鳴り名無しはゆっくりと脇に挟んでいた体温計を取り出した。
体温計のディスプレイにははっきりと“37度5分”と表示されており、何時もの平熱よりも高い。
『熱…結構あるなぁ…』
体温計のディスプレイに書かれている数値を見ながら、名無しは流石に学校に行く事を辞めた。
もしこれが微熱程度なら解熱薬を飲んで登校しようと思えたのだが、流石に37度5分だ。
大人しく病院に行って医者に診てもらう以外の選択肢しかない。
(保険証は…確かリビングだったかな?…後お財布…お金…)
椅子の上にひっかけていたカーディガンを羽織り鞄を肩にかけ、必要なものを考えながら名無しは1階に降りようと自室の扉のドアノブを回す。
『うきゃっ』
「おっと…」
部屋の扉を開け廊下に出ようとした瞬間、名無しは何かにぶつかった。
ぶつかったはずなのに痛みはなく、どこか柔らかい感触に『あれ…?』と名無しは上を向く。
そこには久しぶりに見る恋人、ディーノの姿が瞳に映る。
「大丈夫か名無し?」
『…ディーノ?』
思いがけぬ人物の姿に名無しの瞳が思わず見開かれる。
前に会ったのは何時の日だろう?と思うほど、ディーノの姿を見るのは久しぶりだった。
時差もあるのであまり名無しは自分から連絡をしない。
連絡をしてもディーノが起きている時間か、もしくは時差を考えて迷惑にならない時間に数通やり取りをする位だ。
電話も料金の事もあるが基本的に名無しからする事はなく、ディーノがかけてくる方がほとんどだ。
そんな彼が何故急に目の前に居るのだろうと、ぼんやりとディーノを見ながら思う。
だがそんな名無しとは真逆にディーノは眉間に皺を寄せる。
「ん…なんか名無し熱くねぇか?」
『えっと…』
そう言われた瞬間名無しはディーノから離れようとするものの、ディーノがしっかりと名無しの手首を掴んでいるせいか離れられない。
そっと空いている逆の手で名無しの額に名無しは手を当てた。
観念したかのように抗う事もせず、甘んじてディーノの手に触れられる。
大きくてひんやりとした冷たい手が、熱を持った名無しの額にはほどよく心地良い。
「熱は…あるな、病院は?」
『…今から行こうと思って…』
そう言うと確かに名無しが外出をしようと準備していたのが伺える。
幸いにも名無しが住んでいる家の近くには確かに病院がいくつか合った。
徒歩10分圏内ではあるがそれなりに数はある、だが熱でふらふらした状態でそこまで行くのは少し無理をしなければならない。
まさかこの状態で一人で行こうとしていたのかと思うとディーノは溜息を溢す。
「あのな…こういう時位周りとかちゃんと俺に頼れよ名無し」
『だって…自分でどうにか出来るし…子供じゃないもん…』
俯きながら名無しは呟く。
頼れと言われても名無しは誰かに頼ることが苦手だった。
小さい頃からクラスメイトには頼ると言うよりも頼られる事ばかりで、身近に頼れる相手であるはずの両親は二人とも海外赴任で滅多に家に帰る事は無い。
頼りたくても頼れない、頼られる事しか知らない名無しは誰かに頼る事も助けを求めると言う考えがそもそも思いつかないのだ。
パジャマのズボンをぎゅっと握りしめ、唇を噛み締める。
そんな名無しにディーノは名無しの額に当てていた手を一瞬離し、軽く小突く。
『…痛い…』
「バーカ、自分で出来るとか子供じゃないからじゃなくてだな…こういう時位彼氏に甘えとけって言ってんだよ」
『でも…ディーノマフィアのボスさんだし…時差だって距離だってあるから…』
「んなもん気にすんな、名無しは気にしすぎだし気遣いし過ぎだ…」
そう言いながらぎゅっと名無しを抱きしめる。
メールも電話も名無しがディーノの事を気にして、考えて返信している事くらいディーノは知っていた。
だからこそ自分から積極的に送ったり自分から電話だってかけている。
昨日名無しと電話で話し、声を聞いた時におかしいと思い急遽ディーノは日本に、名無しの家に来たのだ。
仕事でもついででもない、たった一人の彼女のために…だ。
不貞腐れながら「…彼氏なのに彼女に頼られない方がすっげえ惨めだからな…」とボソリと呟くが、抱きしめているせいか聞こえなかった名無しは『なんて…?』と問う。
「あー、もうあーだこーだ言うな!名無しが助けてって言えば俺は他の事投げ出してでも名無しを優先するんだよ…だから俺の事ちゃんと頼れ…な?」
ゆっくりと抱きしめるのを止め名無しの瞳を見ながらディーノは言い聞かせるように言葉を放つ。
優しく、諭すように。
だが子供に言い聞かせるわけではなく、一人の人間として、自分の彼女に言っているのだと名無しは感じる。
「取りあえずタクシー呼ぶから…一緒に病院行くぞ」
『うん…!』
そう言って手を繋げば導いてくれるディーノに、名無しはただただ頷いた。
熱が少し上がった気がするはずなのに、どこか吹っ切れたような表情でフラフラと名無しはディーノの後を着いて行った。
繋いだ手の先に
2024/07/29
朝、窓の隙間から差し込む陽射しが眩しく名無しはゆっくりと目を覚ました。
身体に違和感を感じつつもそれは寝起きのせいだからと思い名無しは上半身を起こすものの身体がやけに重い。
節々も痛く、また喉も痛いなと思いながら唾を飲み込むものの、それすらも苦痛に感じてしまう。
(…風邪でもひいたかなぁ…?)
回らない頭でそう考えるものの、こういう時どうしたらいいんだっけ?と思いながら名無しは周りを見た。
両親が二人とも海外赴任で仕事をしているためこの家には名無ししか住んでいない。
仮に風邪だとしても、ここ数年風邪にかかったことがなかったのでどう対処していたかすら記憶が曖昧だ。
(取りあえず、体温だけでも計っとこ…)
そう思いながら名無しはベッドから立ち上がりふらついた足取りで体温計が入っている救急箱を出す。
普段ならリビングに救急箱を置いているのだが、いざと言う時の為に自分の部屋に移動させておいてよかったと名無しは心底思う。
節々が痛い中ぎこちない手つきで体温計を取り出し脇に挟む。
予測検温タイプなのでものの十秒でピピピっと、電子音が鳴り名無しはゆっくりと脇に挟んでいた体温計を取り出した。
体温計のディスプレイにははっきりと“37度5分”と表示されており、何時もの平熱よりも高い。
『熱…結構あるなぁ…』
体温計のディスプレイに書かれている数値を見ながら、名無しは流石に学校に行く事を辞めた。
もしこれが微熱程度なら解熱薬を飲んで登校しようと思えたのだが、流石に37度5分だ。
大人しく病院に行って医者に診てもらう以外の選択肢しかない。
(保険証は…確かリビングだったかな?…後お財布…お金…)
椅子の上にひっかけていたカーディガンを羽織り鞄を肩にかけ、必要なものを考えながら名無しは1階に降りようと自室の扉のドアノブを回す。
『うきゃっ』
「おっと…」
部屋の扉を開け廊下に出ようとした瞬間、名無しは何かにぶつかった。
ぶつかったはずなのに痛みはなく、どこか柔らかい感触に『あれ…?』と名無しは上を向く。
そこには久しぶりに見る恋人、ディーノの姿が瞳に映る。
「大丈夫か名無し?」
『…ディーノ?』
思いがけぬ人物の姿に名無しの瞳が思わず見開かれる。
前に会ったのは何時の日だろう?と思うほど、ディーノの姿を見るのは久しぶりだった。
時差もあるのであまり名無しは自分から連絡をしない。
連絡をしてもディーノが起きている時間か、もしくは時差を考えて迷惑にならない時間に数通やり取りをする位だ。
電話も料金の事もあるが基本的に名無しからする事はなく、ディーノがかけてくる方がほとんどだ。
そんな彼が何故急に目の前に居るのだろうと、ぼんやりとディーノを見ながら思う。
だがそんな名無しとは真逆にディーノは眉間に皺を寄せる。
「ん…なんか名無し熱くねぇか?」
『えっと…』
そう言われた瞬間名無しはディーノから離れようとするものの、ディーノがしっかりと名無しの手首を掴んでいるせいか離れられない。
そっと空いている逆の手で名無しの額に名無しは手を当てた。
観念したかのように抗う事もせず、甘んじてディーノの手に触れられる。
大きくてひんやりとした冷たい手が、熱を持った名無しの額にはほどよく心地良い。
「熱は…あるな、病院は?」
『…今から行こうと思って…』
そう言うと確かに名無しが外出をしようと準備していたのが伺える。
幸いにも名無しが住んでいる家の近くには確かに病院がいくつか合った。
徒歩10分圏内ではあるがそれなりに数はある、だが熱でふらふらした状態でそこまで行くのは少し無理をしなければならない。
まさかこの状態で一人で行こうとしていたのかと思うとディーノは溜息を溢す。
「あのな…こういう時位周りとかちゃんと俺に頼れよ名無し」
『だって…自分でどうにか出来るし…子供じゃないもん…』
俯きながら名無しは呟く。
頼れと言われても名無しは誰かに頼ることが苦手だった。
小さい頃からクラスメイトには頼ると言うよりも頼られる事ばかりで、身近に頼れる相手であるはずの両親は二人とも海外赴任で滅多に家に帰る事は無い。
頼りたくても頼れない、頼られる事しか知らない名無しは誰かに頼る事も助けを求めると言う考えがそもそも思いつかないのだ。
パジャマのズボンをぎゅっと握りしめ、唇を噛み締める。
そんな名無しにディーノは名無しの額に当てていた手を一瞬離し、軽く小突く。
『…痛い…』
「バーカ、自分で出来るとか子供じゃないからじゃなくてだな…こういう時位彼氏に甘えとけって言ってんだよ」
『でも…ディーノマフィアのボスさんだし…時差だって距離だってあるから…』
「んなもん気にすんな、名無しは気にしすぎだし気遣いし過ぎだ…」
そう言いながらぎゅっと名無しを抱きしめる。
メールも電話も名無しがディーノの事を気にして、考えて返信している事くらいディーノは知っていた。
だからこそ自分から積極的に送ったり自分から電話だってかけている。
昨日名無しと電話で話し、声を聞いた時におかしいと思い急遽ディーノは日本に、名無しの家に来たのだ。
仕事でもついででもない、たった一人の彼女のために…だ。
不貞腐れながら「…彼氏なのに彼女に頼られない方がすっげえ惨めだからな…」とボソリと呟くが、抱きしめているせいか聞こえなかった名無しは『なんて…?』と問う。
「あー、もうあーだこーだ言うな!名無しが助けてって言えば俺は他の事投げ出してでも名無しを優先するんだよ…だから俺の事ちゃんと頼れ…な?」
ゆっくりと抱きしめるのを止め名無しの瞳を見ながらディーノは言い聞かせるように言葉を放つ。
優しく、諭すように。
だが子供に言い聞かせるわけではなく、一人の人間として、自分の彼女に言っているのだと名無しは感じる。
「取りあえずタクシー呼ぶから…一緒に病院行くぞ」
『うん…!』
そう言って手を繋げば導いてくれるディーノに、名無しはただただ頷いた。
熱が少し上がった気がするはずなのに、どこか吹っ切れたような表情でフラフラと名無しはディーノの後を着いて行った。
繋いだ手の先に
2024/07/29
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