家庭教師ヒットマンREBORN!
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『ごめん、ディーノお待たせ…ってあれ…?』
穏やかな午後の昼下がり。
一年で一番寒さの厳しい時期だと言うのに、部屋の仲は暖房により暖かく過ごしやすい室温になっていた。
先程職場から連絡があり席を外していたが、ようやく電話が終わり戻って来た名無しの目に映るのは規則正しい寝息を立ててはこたつテーブルに突っ伏しているディーノの姿だ。
『ディーノ寝ちゃってる…?』
音を立てないように部屋の扉を静かに閉めては、そっとディーノの方へと歩み寄る。
突っ伏している横顔は、相変わらず無駄に綺麗で見慣れているはずのそんな横顔にほんの少し胸が高鳴る。
此処最近多忙だったせいか、ディーノの目の下には薄っすらと隈が浮かび上がっていた。
(…やっぱり無理してるじゃん、ディーノ)
静かに溜息をついては名無しは目を伏せる。
ディーノが主に住んでいるのはイタリアだ。
それだけでなく、ディーノはキャバッローネ・ファミリーのボスでもあり、名無し以上に多忙な生活を送っている。
特にここ一週間程ディーノは仕事に追われ、普段は毎日のように取り合っていた連絡も片手で数えられる程。
そんなディーノの貴重な休日を、イタリアではなくディーノは名無しの部屋で過ごしていた。
『無理に遊びに来なくてもいいよ?』なんて電話越しに伝えたけれど、「俺が名無しに会いてえんだよ」と言われてしまえば名無しは何も言い出せなかった。
『無理しないでよね、ほんと…』
ぽつりと言葉にしては、名無しは無意識に言葉にする。
名無しとディーノは彼氏彼女の関係でも恋人でもない。
ただ普通の人よりもお互い仲が良い…そんな関係だ。
―――親友以上、恋人未満。
今の名無しとディーノを表すのなら、その言葉がしっくりくるだろう。
その言葉を思い浮かべる度に、名無しの胸はズキンと痛んだ。
(取り合えず、このままだと風邪ひいちゃうかもしれないし…ブランケットでもかけてあげなきゃ)
ズキンと痛む胸の痛みから目を背けては、名無しは寝室に置いてあるブランケットを取りに行こうと足を向ける。
眠っているディーノを起こすのはどうしても忍びなく、それならせめて風邪をひかないようにブランケットをかけてあげる事しか名無しには思いつかない。
音を立てないようにそっと歩こうとした瞬間、「んんっ…」と声を発してはディーノは身じろぎをする。
『ディーノ?』
声をかけてもディーノは起きる気配がない。
ただ寝息を立てていたその口がゆっくりと開いては、
「…Ti amo…名無し」
と、言葉を紡いだ。
『てぃ…あーも?』
こたつテーブルの上に突っ伏し寝息を立てるディーノの呟いた寝言に、名無しは思わず首を傾げる。
“てぃあーも”何て言う日本語は存在しないし、生まれてこの方名無しは聞いたことがない。
かと言って英語だろうか?とも考えたが、いくらディーノが並盛中の英語教師を臨時で勤めていたと言えど名無しの前で英語を話す理由もまったく思い浮かばなかった。
義務教育中に習った英語にすら“てぃあーも”なんて言葉は存在しないのだから。
(そう言えばディーノってイタリア人だっけ…すっかり忘れてた…)
あまりにも流暢に日本語を話すせいか、名無しはディーノが生粋のイタリア人であるという事をついつい忘れていた。
出会った当初は確かにイタリア人…否、外国から来た人と言う認識だったため、名無しだってディーノがイタリア人と認識していたのだ。
だが時が経つにつれ、ディーノがイタリア人だという事をうっかり忘れてしまっていたのは言うまでもない。
時折文化の違いがある時だけ、ディーノの事をイタリア人だと再認識していたのだから。
ディーノの寝言で呟かれた“てぃあーも”と言う言葉。
一体それが何を意味するのか、名無しは気になって仕方がない。
「えーっと…てぃあーもの意味は…?っと」
手に持っているスマホの検索画面で“てぃあーも 意味”で検索を掛ければ、“もしかして:ティアーモ 意味”と言う言葉が目に付いた。
名無しはディーノの寝言をそのままひらがなで入力して検索してしまったのだ。
日本語ではなくカタカナ表記で“ティアーモ”と指摘されても仕方がない。
だが、次にAIによる概要の文章に目を通しては、名無しは目を丸くした。
――――“「ティ・アーモ(Ti amo)」はイタリア語で「あなたを愛しています」”
『…っつ』
画面に映るその言葉を脳が理解した瞬間、音もなく名無しの顔が音もなく真っ赤になっていく。
熟れた苺のように赤く、赤く色付いては唇をわなわなと震わせた。
『なん…うぇ…あ…ふへ…っつ』
言葉を紡ごうと必死に唇を動かそうとするのに、喉から発せられるのは言葉にならない音のみ。
そんな自分に呆気を取られ思わずスマホを落としそうになるが、ぎゅっとスマホを持つ指先に力を込める。
いくらカーペットを敷いているとはいえど、スマホを落としてしまえばそれなりに大きな音がたち、眠っているディーノが起きるかもしれないと思えば指先に力がより一層こもってしまう。
(落ち着け、落ち着け私…)
ゆっくりと深呼吸をしては、ディーノの方へと視線を改めて向ける。
名無しの事などつゆ知らず、規則正しい寝息を立てたまま、眠り続けるディーノ。
そんなディーノを凝視するしか名無しには出来ない。
『嬉しい…けど、それってただの寝言…?』
大きく見開いた瞳を揺らしては、名無しは眠っているディーノに問いかける。
だがその問いかけに、答える声はなかった。
聞こえてくるのは規則正しい寝息をたてる音だけ。
それでも名無しは問わずには言われなかった。
『それとも…』
震える唇から、絞り出すように問いかける。
ディーノの言葉に、期待…していいのだろうか…?と。
そう考える度にドクン、ドクンと名無しの心臓を脈打つ音が早くなる。
『それとも…その言葉は、ディーノの…本音…?』
自分で言葉にした刹那、先ほどと比べ物にならない程心臓の音がドクンと脈打つ。
煩い位に高鳴る心臓。
淡い期待に、心が、胸が熱くなる。
『~~~~~っつ』
顔を真っ赤にしたまま、名無しは何も言えずに唇を噤む。
そんな名無しの気持ちなど眠っているディーノが知るはずもなく。
名無しはディーノを見つめてはただ一人。
顔を真っ赤にしたまま、腰を下ろすこともなくその場でスマホをぎゅっと握りしめた。
穏やかな息遣いを立てているディーノだけが、名無しの求める答えを知っているのだから―――…
君の知らない愛の言葉
2026/02/05
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