家庭教師ヒットマンREBORN!
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「何食ってんだ名無し?」
『あれ?おかえりなさいボス』
温かな日差しが降り注ぐ午後。
キャバッローネ・ファミリーの本拠地である屋敷の談話室にて一人。
名無しはソファーに腰かけてはポッキーを食べている最中にキャバッローネ・ファミリーのボスであり、名無しの上司でもあるディーノが一人談話室へと入って来た。
整った容貌にキラキラと輝く金色の髪。
鳶色の瞳には優しく名無しの姿を映していた。
相変わらずスーツ姿ではなく、フードにファーの付いたモッズコートに、中に着ているものはラフなもの。
一見して誰がキャバッローネ・ファミリー十代目ボスなんて分かるだろうか?と思う程にディーノの格好はマフィアとはゆかりのないものだ。
正式な会合やパーティー等、正装を必要としていない時は勿論今ディーノが着ている格好で充分だろう。
代わりに部下全員が常日頃からスーツ姿で付き従っているので、一般人には見えがたいが…。
『ボスお戻りですか?』
「あぁ、ちょっと忘れもん回収がてら寄ったんだが…談話室電気ついてたから消し忘れかと思って覗いたんだよ」
そう言って名無しの傍にディーノは近づいては、名無しが座るソファーに腰を下ろす。
忘れ物を取りに来ただけならすぐ出なくていいのだろうか?と名無しは不思議に思う上に、何故ディーノ一人だけなのかと違和感を覚えてしまう。
ポッキーを齧りながら「因みになんですけど、ボスお一人ですか?」と問えば、「おう、まぁな。」と眩しいくらいの笑顔で返された。
(おう、まぁなって…)
ポキッと音を立てては齧っていたポッキーが口内で折れる。
普段であればディーノの右腕であるロマーリオが付き従っているはずだが、彼の姿は何処にもない。
部下が居なければ運動音痴になってしまうディーノには必ず誰かしら部下がディーノの傍に居る。
それがキャバッロー・ネファミリー内の暗黙の了解のはずなのに、だ。
いくら本拠地である屋敷内と言えど、誰かしら付き従っていない事に名無しは首を傾げてしまう。
『ロマーリオさんは…?』
もぐもぐと、折れたポッキー咀嚼すれば甘いチョコレートの味が名無しの口内に広がる。
食べながら喋るのは行儀が悪いと十分承知の上だが、名無しは聞かずにはいられなかった。
いくら本拠地であるキャバッローネ・ファミリーの屋敷内と言えど、何時何があるのか分からない。
ディーノの部下が屋敷内に何人も居るのは承知の上だが一体ロマーリオは何処に言ったのだろうかと不思議に思ってしまう。
そんな名無しに、「ロマーリオなら俺が忘れもん取りに行ってる間一服してると思うぜ」と言ってはディーノは深くソファーに腰かけた。
「朝から動き回ってたんだし、ちょっと位休憩休ませてやらねえとな」と言えば、名無しはあぁ、なるほどと心の中で納得してしまう。
ディーノもロマーリオ、それから何人かの部下はディーノと共に朝から街に繰り出していた。
他マフィアによる違法麻薬の取引と人身売買が行われていると情報が出回っているためその対応に追われているのを部下である名無しも勿論知っている。
書類仕事が主な非戦闘員故にディーノに着いて回る事はほとんどないが、一応上司のその日のスケジュールは頭の中に叩き込んであるのだ。
「ついでに俺もそんな部下にあやかって今休憩って事にしてるしな」
ニカッと、眩しい位の笑顔で言われてしまえば名無しの心臓はドクンっと跳ねる。
整った容貌のディーノにそんな笑顔で言われてしまえば、誰だってドキドキしてしまう。
勿論整った容貌…つまりかっこいいからだけではなく、名無しは少なからずディーノに淡い恋心をい抱いているのだ。
好きな人の笑顔を見てしまえば、誰だって心臓が早くなってしまうのだから。
(何だかんだボスって気遣い上手だよねぇ)
平静を装いつつ、そう思いながらも名無しは手に持っている食べかけのポッキーを再び口に含む。
そんな名無しをディーノは鳶色の瞳でじっと見つめては「名無し」と声をかけた。
「…なぁ、俺もそれ貰っていいか?」
「いいですよ、沢山あるからボスも食べてください」
そう言って名無しは左手に持っていたポッキーの入った箱をディーノの方へと差し出す。
差し出された箱の中には未開封な袋と、現在名無しが食べている途中の口が開いた袋が入っていた。
差し出された開いている袋に手を伸ばしかけて、ディーノの手がピタリと止まる。
『遠慮なくどれでも好きなの取って大丈夫ですよ?』
「あー…どれでも…いいんだな?」
『?はい、どれでもどうぞ?』
ディーノの言葉に一瞬意味が分からず名無しは首を傾げる。
どれでもいいと名無しが言っているのだから気にする必要ないのに…そう思った瞬間。
「んじゃあこっち、もらうな」
と、名無しの持つポッキーの箱には目もくれずディーノはゆっくりと名無しに顔を近づけては名無しが咥えているポッキーへと齧りつく。
咄嗟の出来事に、名無しは何もできずにただただ目を大きく見開く。
気が付けば唇と唇が触れそうな距離なのだ。
後数センチで唇と唇が触れてしまう程ディーノの顔は名無しの瞳いっぱいに映り込む。
けれど唇は触れない。
合えて触れないような距離を見計らってはポキッと音を立てて、ポッキーを折った。
『なっ…なっ…』
一瞬何が起こったのか名無しは理解できずに、鳩が豆鉄砲を食ったような表情をしては頬が真っ赤に染まる。
当然だ。
異性…しかも行為を抱いている相手にそんな事をされてしまえば名無しの頭は理解しようにも理解できずに思考停止してしまう。
そんな名無しを見ては「ご馳走様、名無し」と何食わぬ顔でディーノは笑う。
愉快そうな表情をしては「じゃ俺そろそろ戻るな」と立ち上がり、何事もなかったかのようにディーノは談話室から出ていた。
静寂だけが残る談話室。
そんな場所に一人残された名無しはただただ顔を真っ赤にし開いた口が塞がらないまま、ディーノが出て行った扉の方をただ見つめる事しか出来なかった―――…
あと数センチの距離
2025/11/15
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