家庭教師ヒットマンREBORN!
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『あの、ディーノさん』
「どうした名無し?」
先週まで秋らしさが際立っていたと言うのに、もう冬の訪れを感じさせるように冷たい風が吹き出してきた今日この頃。
名無しは向かいに座っている彼氏のディーノを見上げた。
テーブルの上で頬杖をついてはにこやかな表情を浮かべてはただただディーノは名無しを見ている。
誰がどう見てもイケメンすぎる容貌。
鳶色の瞳がじっと名無しを見つめては、金色の髪が時折揺れる。
長袖のTシャツからのぞく左半身の刺青も、名無しにとってはすっかり見慣れたものだった。
平日の午後だ。
まだ一般的な社会人であれば普通に会社で働いている時間だろう。
リモートワークをしているわけでもなく、かと言って働く時間がずれているわけでもない。
名無しの目の前に居る男、ディーノはそんな一般的な人間には当てはまらなかった。
誰が彼を見てイタリアのマフィア、キャバッローネ・ファミリーの10代目ボスだと気づくだろうか。
だがイタリア内では結構有名なマフィアらしく、地元民からも愛されているようだ。
勿論名無しはイタリアに行ったことがないため、全てディーノの部下であるロマーリオからの受け売りだが…。
そんな名無し自身には勿体ないと思うくらいのイケメンの彼氏が、名無しの目の前で何もせずただ名無しを見ている。
『…そんなに見られてたらその…勉強、しづらいんですけど…』
言いづらそうに口を開けば、ディーノは「悪い悪い…つい、な」と穏やかな笑みを向けるものの名無しを見ることを止めなかった。
勿論ディーノが手持無沙汰…もとい暇なのは名無し自身分かっているのだが、どうも見られていると緊張してしまうのだ。
本来であれば、今日名無しとディーノはデートをする予定だった。
今日は学校の都合上、午前だけ学校があり午後からは自由な時間がたっぷりとあるはずなのだ。
だが、名無しの目の前の机の上にはルーズリーフに教科書と単語帳、そしてノートが広げられている。
ノートは綺麗な字で書き綴られ、重要な部分には色ペンで分かりやすいように纏められていた。
名無しが今している勉強は学校から出された宿題…ではなく、渋々英語の勉強を名無しはしていた。
まだテスト期間は始まっていないが中間テスト前という事もあり、教師の思い付きで急遽明日小テストをする事になったのだ。
勿論クラスメイト全員がその言葉を聞いてはブーイングしたのは言うまでもない。
だが「言っとくけど内申点に入れるからな~」と言う何とも無慈悲な発言に、名無しはこうして本来行くはずだったデートは中止し、1人勉強をするはめになった。
勿論急遽決まったテストな上に、名無しは学校に携帯を持ち込むことが出来ずディーノに連絡しようと学校が終われば慌てて帰宅するも既にディーノが名無しの家に来ていたのだ。
「俺の事は気にせずに勉強、続けてくれ」
ニカッと、事情を話した時と同じ眩しいくらいの笑顔を名無しに向けてはディーノは優雅に名無しに淹れてもらったティーカップを手に取る。
まだ温かいのかゆらゆらと湯気が揺れていた。
ティーカップを右手でもてば、ディーノは無駄のない所作でコーヒー一口飲む。
コーヒーの香ばしい香りが部屋に広がる中、ディーノの言葉に名無しは気を取り直して教科書を見つめては、教科書に載っている練習問題を解いていった。
分からない単語や形式を単語帳で見たり授業で書いたノートを見直しては頭に叩き込みながら問題をまた1つ、また1つと解いていく。
(あーあ、折角ディーノさんが日本に来てるのに勉強なんてついてないな…)
問題を解きつつも、名無しはそんな事を思い無意識に眉が八の字に下がる。
名無しの中では今頃ディーノと共に出かけていたのだ。
新しく出来た水族館に、ディーノと二人で。
イルカショーをみたり、ペンギンやカワウソをみたり…噂ではシャチもいるらしいと聞いていた名無しはずっとこの日を楽しみにしていた。
勿論、それだけではない。
5000人の部下を持つマフィアのボスであり、何よりディーノはイタリアからわざわざ日本に来てくれたのだ。
名無しの我儘で『水族館に行きたい!』と言えば、ディーノは快く「なら次のデートは水族館にするか?」と言ってくれた。
イタリアからはるばる日本に来てくれたのにどうしてこんなことになったのだろうと名無しは1つ溜息を零す。
折角来てもらったのに申し訳ない気持ちのまま、教科書の練習問題を見ても気が散って全く頭に入らない。
(…ん…?)
そんな名無しは再び視線を感じ、名無しが顔を上げれば先ほどと同じようにディーノが名無しを見ていた。
変わらず優しい眼差しで、じっと名無しを見ては
『ディーノさん…あの、また…見てるんですけど…』
シャープペンを書く手が先ほどから止まったまま、名無しは再度ディーノに発する。
携帯を触ることも話をするわけでもない…強いて言えばコーヒーを飲むくらいしかやることがないのかもしれないが、それでもディーノは名無しを見ていた。
「否…頑張ってる名無しの真剣な横顔好きだなって思っちまってな」
そう言って無邪気に笑うディーノの言葉に、名無しの頬は思わず赤く染まる。
『な、ななななな、突然何言ってるんですかディーノさんっ?!』
「おいおい名無し…どもりすぎだろ…?」
『だ、だってディーノさんが急にそんなこと言うから…っつ』
「だってよ…何時もは遊んだりしてる時の楽しそうな表情しか俺見た事ねえからさ。名無しの真剣な表情んて見る機会ねえだろ?」
『それは…そう、ですけど…』
ディーノの言葉に、名無しは頷く。
確かにディーノが言うように名無しが真剣な表情を浮かべている姿をディーノは一度たりとも見たことがないのだ。
ディーノと会う前に宿題は終わらせるし、テスト期間中はそもそも会う事がないのだ。
それに加えお互い良くて月に1度、ディーノが長い間に日本に滞在していれば合間を縫って3、4度位の頻度でしか会わない。
怒ったり泣いたり笑ったり…そんな表情を見たことは合っても、ディーノ相手に真剣な表情で話すことはほぼないに等しいのだから。
だからだろう。
ディーノが物珍しくもじっと名無しの勉強する真剣な表情をつい見てしまうのは。
「だからさ、俺のまだ知らねえ名無しの表情を見れて嬉しくなっちまってどうしても見ちまうんだよな」
ディーノの言葉に、名無しは思わず口を噤んでしまう。
そんな風に思われていたなんて、名無しは微塵も思っていなかったのだ。
嬉しくて、くすぐったくて…でも少しだけ恥ずかしいのに胸はドクン、ドクンと高鳴る。
「後…言い忘れてたんだが俺英語得意だし、分からなかったら聞いてくれよな?」
『そうなんですか…?でもディーノさんってイタリア人だから英語よりもイタリア語なんじゃあ…』
「一応これでもマフィアのボスやってるんだぜ?イタリア語意外だって勉強させられたしな」
そう言ってディーノは思わず苦笑を浮かべる。
勿論学校で学んだ…のもあるが、ディーノの家庭教師はあのリボーンだ。
みっちりしごかれたのは言うまでもなく、英語はディーノにとっての得意分野へと変わったのだ。
『え…じゃあ此処なんですけど…教えてもらってもいいですか?』
「勿論いいぜ!何でも聞いてくれ!」
そう言ってディーノは嬉しそうに笑えば、名無しもつられてディーノに笑いかけた―――…
知らない君を見つめて
2025/10/23
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