家庭教師ヒットマンREBORN!
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※仔ディーノ
※学パロ(高校生設定)
終鈴の鈴が教室中に響き渡る午後。
4時間目の授業が終わり学生にとっては待ちに待った昼休みの時間になった。
昼休みと言えど50分と言う時間は学生にとっては学校で過ごすうちの貴重な長い休憩時間。
長いようであっという間に過ぎていくこの時間は、学生にとって唯一の貴重な休憩時間だ。
生徒は各々席を移動しては友達と持ってきた弁当を食べたり、購買へと買いに行く生徒もチラホラと居る。
そんな少し騒々しい教室の中で、名無しは椅子に座ったままぼんやりとノートに視線を落としていた。
机の上には先ほどの授業で使ったノートや教科書が開きっぱなしのまま。
昼休みになったというのに、ノートや教科書をしまう事もせずただじっと視線はノートに落とされたままだ。
「おい、大丈夫かよ名無し…」
『ん…あれ…?』
不意に声をかけられ、名無しはようやくノートから視線をゆっくりと外しては顔を上げる。
見慣れたディーノの姿をぼんやりと名無し自身の瞳に映しては『…ディーノ…?』とか細い声を上げた。
くせっけ交じりの金色の髪に、手にはビニール袋を提げてきている辺りどうやら購買で昼食を購入してきたのだろう。
『何してるの?…まだ授業中だよ…?』
「?何言ってんだよ?名無し。もう授業終わって昼休みだぜ」
ぼんやりとしている名無しにディーノはそう答えた。
何時もなら早々に教科書やノートをしまい弁当箱を広げているのに、いまだに机の上は片付けられていない。
(今日の名無しなんか変だな…)
何時もと違う名無しにディーノは首を捻った。
普段であれば『遅いよ、ディーノ!』とお腹がすいていると一足先に弁当を食べている名無し。
だが今日は先ほども見た通り机の上には教科書とノート、筆記用具すらしまわれていない状態だ。
一方で名無しは怪訝そうな表情を浮かべているディーノの表情の変化に気づけず、先ほどと同じようにぼんやりとディーノを見つめていた。
名無しの瞳には学校指定のニットのカーディガンの首元には赤色のネクタイが結ばれているのが目に映る。
どこか不格好に締められている所を見ては、(相変わらずディーノは不器用だなぁ)と思っていた。
毎日登校時に名無しがよくディーノのネクタイの結び直しているが、今日は別々に登校してきたため直す暇などなかった。
名無しとディーノはクラスは違うけれど所謂幼馴染だ。
隣同士の家に住み、両親共に仲が良いから幼いころから一緒に居る時間は長かった。
幼稚園から小中学校、ましてや高校も同じ所に通っているのだ。
あまりにも近すぎる距離のはずなのに、それでもディーノも名無しもお互い自分の気持ちを自覚するのは早かった。
お互い気持ちを伝え付き合っている事を隠していても、周りが見ても分かるほどに付き合っている事がバレる程だ。
学校ではクラスが違うけれど、昼休みの時間だけはお互いに一緒に過ごす時間とどちらが口に出したわけではないがそう決まっている。
登下校だけは一緒に帰っているが、2人にとってはそれだけでは一緒に居る時間が短いと感じるほどだ。
故にどちらが言い出したわけでもなく昼休みの時間もこうして一緒に過ごしていた。
名無しがディーノの教室に行ったり、今のようにディーノが訪れてくれる事もある。
「なぁ、名無し」
何時ものように名無しの机の上に購買で買ったビニール袋を置いては、前の席の人の椅子を借り椅子に腰を下ろす。
机に置いたビニール袋には手を付けず、ディーノはじっと鳶色の瞳で名無しを見つめた。
名無しの頬はほんのり赤く染まっていて、瞳もどこか潤んでいた。
呼吸も浅く、瞼も重そうにしていて見るからにしんどそうな表情を浮かべている。
本来であればそんな名無しを朝から見ていればディーノだってすぐ気づくのだが、生憎今日に限ってディーノは委員会の仕事があったため名無しと一緒に登校する事が出来なかった。
だからこそ今日初めて顔を合わせた名無しにディーノの鳶色の瞳が揺らぎ、眉を潜める。
「なんか顔赤くねぇか?」
『え…そう、かな…』
ディーノの言葉に力なく名無しは首を傾げた。
紡がれた言葉通り顔が赤いかどうかは、今の名無し自身分からない。
どう答えればいいのかと、困ったような表情を浮かべてはただディーノを見つめる事しかできなかった。
何も言わない名無しにそっとディーノは自分の手を名無しの額に当て、もう片方の手で自分の額へと触れる。
(…ディーノの手、冷たくて気持ちいい…)
ディーノのひんやりとした手が額に触れれば名無しは気持ちよさそうに目を細めては目を閉じてしまう。
だがディーノの手のひらに伝う名無しの体温は明らかに高かった。
ぽつりと、「熱…あるな」とディーノが呟いては名無しの額に触れていた手をのける。
名無しの額からひんやりとした手の感触が無くなれば、名残惜しそうに目を開け『そんなことないもん…』と言葉にするが説得力のかけらもない。
名無し自身の体温が、ぼんやりと気だるそうにしている表情がそう物語っているのだから。
「そんなことないもんじゃねえよ。熱ぜってえある!しんどそうだし顔も赤いし…無理して学校来たんじゃねえのか?」
『…それは…』
ディーノのその一言に名無しは思わず口を噤んだ。
身体が怠いなと朝の時点で思っていたが、それは疲れがたまっているからだろうと思っていた。
夏休みが明けてまだ数週間。
夏休みの生活習慣が抜けておらず、身体がまだ慣れていないのだと名無し自身自分にそう言い聞かせていた。
“これくらい大丈夫”
そう言い聞かせて気だるい身体で無理に登校したが、時間が進むにつれ頭がぼーっとして疲れが酷くなったことだけは名無し自身感じていた。
言葉を紡がない名無しに、ディーノは溜息をついては「じゃあ俺名無しの担任の先生に行ってくるから、ちょっと待ってろ」と座って椅子から立ち上がる。
『待ってディーノ…私なら大丈夫、だよ?』
「ばーか、大丈夫じゃねえだろ。大人しくしてろよ」
『馬鹿って…あ、ちょっと…!』
名無しの声も聞かぬまま、ディーノは席を立ち教室から飛び出していった。
1人教室に残された名無しは、どうしたらいいか分からずディーノの出て行った教室の入り口をただただ見つめる事しかできなかった。
「…い…おい…起きろー、名無し」
『…あれ…?』
不意に名前を呼ばれれば名無しはゆっくりを重たい瞼を開けた。
ディーノを待っている間に名無しは机に突っ伏していたが、どうやらいつの間にか眠ってしまったようだ。
どれほどの時間が経ったか分からないけれど、教室内には名無しとディーノ2人の姿しかなかった。
教室内にかかっている時計は既に昼休みの時間を終え、今は5時間目の授業に入っている事を告げていた。
名無しのクラスの5時間目は音楽の授業だ。
音楽室への移動を伴うため、教室内に名無しとディーノ以外の生徒の姿が見えないのはある意味当然の事だろう。
(さっきより顔色マシになったみてえだけど…それでもしんどそうだな…)
突っ伏していた机からゆっくりと顔を上げた名無しの顔を見てディーノはほんの少しだけほっとしてしまうが、それでも名無しがしんどい事は変わらない。
心配そうに名無しの顔を覗き込みながら「大丈夫か?」とディーノは言葉を紡ぐ。
「名無しの担任の先生にも言って来たから、名無し早退して帰るぜ」
『…ありがとディーノ。…所で、何でディーノも鞄持ってるの…?』
瞳を瞬かせてはきょとんとした表情で、名無しや思わず首を傾げてしまう。
瞳に映るディーノの肩には、見慣れたディーノ自身のスクールバックが肩にかけられていた。
スクールバックについている亀のストラップが、カチャリと音を立てては揺れる。
次の時間は移動教室だろうか?と名無しは思ったがディーノの次の授業は確か移動教室もなく、自身の教室での数学の授業だったはずだ。
ならどうしてスクールバックなんて持ってきているのだろうと不思議そうに思っている名無しに、ディーノは不思議そうに言葉を紡ぐ。
「何でって…俺も名無しと一緒に帰るからな」
『?…ディーノもどこか体調、悪いの…?』
「いや全然全く」
名無しの言葉に今度はディーノがきょとんとしながら首を傾げてしまう。
一緒に帰るという事はとどのつまり早退をするという事だ。
(何でディーノも早退するんだろ…)
どう見てもディーノは名無しのように体調が悪いようには見えなかった。
そしてディーノ本人もそれを否定している。
具合が悪いのではないなら元から早退する予定だったのだろうかとも考えたが、その場合名無しにだって事前に言っているはずだ。
単に名無しがディーノが言ったけれど覚えていないだけなのかと思い出そうとするけれど、熱のせいで頭はうまく回らない。
(急な用事でも…出来たのかな…?)
深く考えるのを止めぼんやりと名無しはディーノを見上げる。
そんな名無しに「名無し一人で家に帰らせるなんて俺が心配なんだよ」と当たり前のように言葉にした。
『…ディーノじゃないんだから、迷子にならずちゃんと一人で帰れるよ…?』
「おまっ…?!俺が迷子になるのは…たまにやっちまうけど…そうじゃなくて、名無し一人で帰らせて何かあったら俺が心配だから一緒に帰るって言ってんだよ!」
『でも、ディーノが早退しなくても…』
ディーノの気遣いは名無しにとって正直嬉しかった。
そんな風に心配してくれることは名無し自身心の底からありがたいと思ってがその反面、名無しの事でわざわざディーノが早退をするのは違うだろうと思ってしまうのだ。
(心配してくれるのはありがたいけど…けど、そんなことしたらディーノ自身に迷惑がかかっちゃう…)
ディーノの早退に納得がいかず思わず俯いては歩く足が止まってしまった。
小中学校と違い、高校は義務教育ではないのだ。
学びたいから進学し、学生の本分は学業である。
それを名無しが心配だからと早退するのは申し訳ない気持ちになってしまうのだ。
思わずディーノから顔を逸らすように俯いてしまえば、ぐっと拳を握り締める。
そんな名無しに気づいてか、ディーノは「気にすんなよ、名無し」と言っては手を伸ばし名無しの髪をくしゃりと撫でた。
「いいんだよ、俺が早退したくて早退したんだし。…俺は名無しを一人で帰らせる方が心配で勉強だって手がつかねえよ」
『…でも』
「それに、今日は金曜だし名無しの親帰ってくるの遅いだろ?俺が傍で看病しねえと誰が名無しの事看病するんだよ」
何でもないことかのようにディーノは笑う。
何時もと変わらない太陽のような、眩しいくらいの笑みに名無しの胸はドクンと跳ねた。
普段は何処か頼りないくせに、こういう時のディーノの行動力に名無しは毎回驚かされてしまう。
(ずるいな…ずっと一緒に居るのに、またディーノにドキドキさせられちゃったや…)
熱のせいではない胸の高鳴りに、名無しの心にディーノの言葉が染み渡る。
何も言わない名無しに、ディーノは気にせず名無しの机の上を片付け始める。
出しっぱなしだった教科書やノート、筆記用具を名無しのスクールバックに詰め込んでは「持って帰るもんはこんなもんか?」と言って帰り支度を進めてくれている。
『……ありがと、ディーノ』
ディーノに聞こえるか、聞こえないかくらいの小さな声でそう言葉にしてはどうやら聞こえていたのか「当たり前だろ、名無しは俺の彼女なんだしな」と当たり前のように言葉を紡いだ。
名無しのスクールバックもディーノ自身のスクールバックをかけている肩にかけてはそっと名無しに手を伸ばす。
「ほら、帰るぞ名無し」
『っつ…うん…っ!』
ディーノの言葉に慌てて席を立ち上がれば、ディーノが名無しの手を取ってはぎゅっと握りしめる。
繋がれた手は先ほど名無しの額に触れた冷たさはなく、温かくなっていた。
歩調を合わせ、歩く度にディーノが名無しを気遣ってくれているのが言葉はないのに伝わってくる。
振れている手から伝わる温もりに、名無しもぎゅっと手を握り締めてはふにゃりと頬を緩めた。
体調が悪いはずなのに、それすら忘れてしまいそうなほど名無しはディーノを見つめながら学校を後にした―――…
手を繋いで、君と
2025/09/17
※学パロ(高校生設定)
終鈴の鈴が教室中に響き渡る午後。
4時間目の授業が終わり学生にとっては待ちに待った昼休みの時間になった。
昼休みと言えど50分と言う時間は学生にとっては学校で過ごすうちの貴重な長い休憩時間。
長いようであっという間に過ぎていくこの時間は、学生にとって唯一の貴重な休憩時間だ。
生徒は各々席を移動しては友達と持ってきた弁当を食べたり、購買へと買いに行く生徒もチラホラと居る。
そんな少し騒々しい教室の中で、名無しは椅子に座ったままぼんやりとノートに視線を落としていた。
机の上には先ほどの授業で使ったノートや教科書が開きっぱなしのまま。
昼休みになったというのに、ノートや教科書をしまう事もせずただじっと視線はノートに落とされたままだ。
「おい、大丈夫かよ名無し…」
『ん…あれ…?』
不意に声をかけられ、名無しはようやくノートから視線をゆっくりと外しては顔を上げる。
見慣れたディーノの姿をぼんやりと名無し自身の瞳に映しては『…ディーノ…?』とか細い声を上げた。
くせっけ交じりの金色の髪に、手にはビニール袋を提げてきている辺りどうやら購買で昼食を購入してきたのだろう。
『何してるの?…まだ授業中だよ…?』
「?何言ってんだよ?名無し。もう授業終わって昼休みだぜ」
ぼんやりとしている名無しにディーノはそう答えた。
何時もなら早々に教科書やノートをしまい弁当箱を広げているのに、いまだに机の上は片付けられていない。
(今日の名無しなんか変だな…)
何時もと違う名無しにディーノは首を捻った。
普段であれば『遅いよ、ディーノ!』とお腹がすいていると一足先に弁当を食べている名無し。
だが今日は先ほども見た通り机の上には教科書とノート、筆記用具すらしまわれていない状態だ。
一方で名無しは怪訝そうな表情を浮かべているディーノの表情の変化に気づけず、先ほどと同じようにぼんやりとディーノを見つめていた。
名無しの瞳には学校指定のニットのカーディガンの首元には赤色のネクタイが結ばれているのが目に映る。
どこか不格好に締められている所を見ては、(相変わらずディーノは不器用だなぁ)と思っていた。
毎日登校時に名無しがよくディーノのネクタイの結び直しているが、今日は別々に登校してきたため直す暇などなかった。
名無しとディーノはクラスは違うけれど所謂幼馴染だ。
隣同士の家に住み、両親共に仲が良いから幼いころから一緒に居る時間は長かった。
幼稚園から小中学校、ましてや高校も同じ所に通っているのだ。
あまりにも近すぎる距離のはずなのに、それでもディーノも名無しもお互い自分の気持ちを自覚するのは早かった。
お互い気持ちを伝え付き合っている事を隠していても、周りが見ても分かるほどに付き合っている事がバレる程だ。
学校ではクラスが違うけれど、昼休みの時間だけはお互いに一緒に過ごす時間とどちらが口に出したわけではないがそう決まっている。
登下校だけは一緒に帰っているが、2人にとってはそれだけでは一緒に居る時間が短いと感じるほどだ。
故にどちらが言い出したわけでもなく昼休みの時間もこうして一緒に過ごしていた。
名無しがディーノの教室に行ったり、今のようにディーノが訪れてくれる事もある。
「なぁ、名無し」
何時ものように名無しの机の上に購買で買ったビニール袋を置いては、前の席の人の椅子を借り椅子に腰を下ろす。
机に置いたビニール袋には手を付けず、ディーノはじっと鳶色の瞳で名無しを見つめた。
名無しの頬はほんのり赤く染まっていて、瞳もどこか潤んでいた。
呼吸も浅く、瞼も重そうにしていて見るからにしんどそうな表情を浮かべている。
本来であればそんな名無しを朝から見ていればディーノだってすぐ気づくのだが、生憎今日に限ってディーノは委員会の仕事があったため名無しと一緒に登校する事が出来なかった。
だからこそ今日初めて顔を合わせた名無しにディーノの鳶色の瞳が揺らぎ、眉を潜める。
「なんか顔赤くねぇか?」
『え…そう、かな…』
ディーノの言葉に力なく名無しは首を傾げた。
紡がれた言葉通り顔が赤いかどうかは、今の名無し自身分からない。
どう答えればいいのかと、困ったような表情を浮かべてはただディーノを見つめる事しかできなかった。
何も言わない名無しにそっとディーノは自分の手を名無しの額に当て、もう片方の手で自分の額へと触れる。
(…ディーノの手、冷たくて気持ちいい…)
ディーノのひんやりとした手が額に触れれば名無しは気持ちよさそうに目を細めては目を閉じてしまう。
だがディーノの手のひらに伝う名無しの体温は明らかに高かった。
ぽつりと、「熱…あるな」とディーノが呟いては名無しの額に触れていた手をのける。
名無しの額からひんやりとした手の感触が無くなれば、名残惜しそうに目を開け『そんなことないもん…』と言葉にするが説得力のかけらもない。
名無し自身の体温が、ぼんやりと気だるそうにしている表情がそう物語っているのだから。
「そんなことないもんじゃねえよ。熱ぜってえある!しんどそうだし顔も赤いし…無理して学校来たんじゃねえのか?」
『…それは…』
ディーノのその一言に名無しは思わず口を噤んだ。
身体が怠いなと朝の時点で思っていたが、それは疲れがたまっているからだろうと思っていた。
夏休みが明けてまだ数週間。
夏休みの生活習慣が抜けておらず、身体がまだ慣れていないのだと名無し自身自分にそう言い聞かせていた。
“これくらい大丈夫”
そう言い聞かせて気だるい身体で無理に登校したが、時間が進むにつれ頭がぼーっとして疲れが酷くなったことだけは名無し自身感じていた。
言葉を紡がない名無しに、ディーノは溜息をついては「じゃあ俺名無しの担任の先生に行ってくるから、ちょっと待ってろ」と座って椅子から立ち上がる。
『待ってディーノ…私なら大丈夫、だよ?』
「ばーか、大丈夫じゃねえだろ。大人しくしてろよ」
『馬鹿って…あ、ちょっと…!』
名無しの声も聞かぬまま、ディーノは席を立ち教室から飛び出していった。
1人教室に残された名無しは、どうしたらいいか分からずディーノの出て行った教室の入り口をただただ見つめる事しかできなかった。
「…い…おい…起きろー、名無し」
『…あれ…?』
不意に名前を呼ばれれば名無しはゆっくりを重たい瞼を開けた。
ディーノを待っている間に名無しは机に突っ伏していたが、どうやらいつの間にか眠ってしまったようだ。
どれほどの時間が経ったか分からないけれど、教室内には名無しとディーノ2人の姿しかなかった。
教室内にかかっている時計は既に昼休みの時間を終え、今は5時間目の授業に入っている事を告げていた。
名無しのクラスの5時間目は音楽の授業だ。
音楽室への移動を伴うため、教室内に名無しとディーノ以外の生徒の姿が見えないのはある意味当然の事だろう。
(さっきより顔色マシになったみてえだけど…それでもしんどそうだな…)
突っ伏していた机からゆっくりと顔を上げた名無しの顔を見てディーノはほんの少しだけほっとしてしまうが、それでも名無しがしんどい事は変わらない。
心配そうに名無しの顔を覗き込みながら「大丈夫か?」とディーノは言葉を紡ぐ。
「名無しの担任の先生にも言って来たから、名無し早退して帰るぜ」
『…ありがとディーノ。…所で、何でディーノも鞄持ってるの…?』
瞳を瞬かせてはきょとんとした表情で、名無しや思わず首を傾げてしまう。
瞳に映るディーノの肩には、見慣れたディーノ自身のスクールバックが肩にかけられていた。
スクールバックについている亀のストラップが、カチャリと音を立てては揺れる。
次の時間は移動教室だろうか?と名無しは思ったがディーノの次の授業は確か移動教室もなく、自身の教室での数学の授業だったはずだ。
ならどうしてスクールバックなんて持ってきているのだろうと不思議そうに思っている名無しに、ディーノは不思議そうに言葉を紡ぐ。
「何でって…俺も名無しと一緒に帰るからな」
『?…ディーノもどこか体調、悪いの…?』
「いや全然全く」
名無しの言葉に今度はディーノがきょとんとしながら首を傾げてしまう。
一緒に帰るという事はとどのつまり早退をするという事だ。
(何でディーノも早退するんだろ…)
どう見てもディーノは名無しのように体調が悪いようには見えなかった。
そしてディーノ本人もそれを否定している。
具合が悪いのではないなら元から早退する予定だったのだろうかとも考えたが、その場合名無しにだって事前に言っているはずだ。
単に名無しがディーノが言ったけれど覚えていないだけなのかと思い出そうとするけれど、熱のせいで頭はうまく回らない。
(急な用事でも…出来たのかな…?)
深く考えるのを止めぼんやりと名無しはディーノを見上げる。
そんな名無しに「名無し一人で家に帰らせるなんて俺が心配なんだよ」と当たり前のように言葉にした。
『…ディーノじゃないんだから、迷子にならずちゃんと一人で帰れるよ…?』
「おまっ…?!俺が迷子になるのは…たまにやっちまうけど…そうじゃなくて、名無し一人で帰らせて何かあったら俺が心配だから一緒に帰るって言ってんだよ!」
『でも、ディーノが早退しなくても…』
ディーノの気遣いは名無しにとって正直嬉しかった。
そんな風に心配してくれることは名無し自身心の底からありがたいと思ってがその反面、名無しの事でわざわざディーノが早退をするのは違うだろうと思ってしまうのだ。
(心配してくれるのはありがたいけど…けど、そんなことしたらディーノ自身に迷惑がかかっちゃう…)
ディーノの早退に納得がいかず思わず俯いては歩く足が止まってしまった。
小中学校と違い、高校は義務教育ではないのだ。
学びたいから進学し、学生の本分は学業である。
それを名無しが心配だからと早退するのは申し訳ない気持ちになってしまうのだ。
思わずディーノから顔を逸らすように俯いてしまえば、ぐっと拳を握り締める。
そんな名無しに気づいてか、ディーノは「気にすんなよ、名無し」と言っては手を伸ばし名無しの髪をくしゃりと撫でた。
「いいんだよ、俺が早退したくて早退したんだし。…俺は名無しを一人で帰らせる方が心配で勉強だって手がつかねえよ」
『…でも』
「それに、今日は金曜だし名無しの親帰ってくるの遅いだろ?俺が傍で看病しねえと誰が名無しの事看病するんだよ」
何でもないことかのようにディーノは笑う。
何時もと変わらない太陽のような、眩しいくらいの笑みに名無しの胸はドクンと跳ねた。
普段は何処か頼りないくせに、こういう時のディーノの行動力に名無しは毎回驚かされてしまう。
(ずるいな…ずっと一緒に居るのに、またディーノにドキドキさせられちゃったや…)
熱のせいではない胸の高鳴りに、名無しの心にディーノの言葉が染み渡る。
何も言わない名無しに、ディーノは気にせず名無しの机の上を片付け始める。
出しっぱなしだった教科書やノート、筆記用具を名無しのスクールバックに詰め込んでは「持って帰るもんはこんなもんか?」と言って帰り支度を進めてくれている。
『……ありがと、ディーノ』
ディーノに聞こえるか、聞こえないかくらいの小さな声でそう言葉にしてはどうやら聞こえていたのか「当たり前だろ、名無しは俺の彼女なんだしな」と当たり前のように言葉を紡いだ。
名無しのスクールバックもディーノ自身のスクールバックをかけている肩にかけてはそっと名無しに手を伸ばす。
「ほら、帰るぞ名無し」
『っつ…うん…っ!』
ディーノの言葉に慌てて席を立ち上がれば、ディーノが名無しの手を取ってはぎゅっと握りしめる。
繋がれた手は先ほど名無しの額に触れた冷たさはなく、温かくなっていた。
歩調を合わせ、歩く度にディーノが名無しを気遣ってくれているのが言葉はないのに伝わってくる。
振れている手から伝わる温もりに、名無しもぎゅっと手を握り締めてはふにゃりと頬を緩めた。
体調が悪いはずなのに、それすら忘れてしまいそうなほど名無しはディーノを見つめながら学校を後にした―――…
手を繋いで、君と
2025/09/17
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