家庭教師ヒットマンREBORN!
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
※仔ディーノ
※学パロ
※恋人未満
『あ~、喉が潤う~!』
暑い日差しがアスファルトを照らす午後。
ジリジリジリとアブラゼミの鳴き声だけがやけに大きく鳴り響く。
夏休み中と言えど、部活動を終えた名無しは校舎裏の日陰になっている場所で涼んでいた。
アスファルトの階段に腰掛けて、スクールバッグは足元に置かれている。
手には名無しの目の前に設置されている自販機で買ったばかりの500mlのスポーツドリンク。
部活終わりのせいか汗をかき、身体から失った水分を補うように名無しはまた一口スポーツドリンクを飲む。
ひんやりとしたペットボトルを握っているだけでも暑さが軽減される気さえしてしまうほどだ。
唯一の救いは終日の部活動練習がない事だろう。
じめじめとした暑さに名無しの首から汗が滴り落ちる。
夏休みももう残り少なく、気が付けば8月も下旬。
まだ夏休みの宿題が少しだけ残っているな~なんて名無しが思っていると「お、名無し来てたのか」と、聞きなれた声が名無しの背後から聞こえる。
その声に名無しが振り返ればそこには同級生で同じクラスのディーノの姿が名無しの瞳に映りこむ。
太陽の光が当たりキラキラと輝くような金色の髪。
鳶色の瞳は名無しを映しては大きく見開かれていた。
肩にはテニスラケットが入っているラケットバッグとスクールバッグをかけていた。
夏休みと言えど登下校時は学校指定の制服のせいかテニス部のユニフォームではなくきちんと指定の制服を着ている。
半袖のワイシャツのボタンは全て開けられており、中には黒色のTシャツを着ていた。
『あれ、ディーノじゃん。どうしたの?』
頬には絆創膏がついているのを見ては、名無しは部活中に怪我をしたのか…はたまた普通に登下校時に転んで怪我をしたのかとつい考えてしまう。
学年一、否、全校生を対象としてもディーノはよくドジをするのだ。
普通に学校生活を送っていても何もない所で転んだりしているのをよく見かけるし、名無し自身ディーノの為に絆創膏を常に持ち歩いているのは言うまでもない。
そんな名無しとは対象に何時もの事だからかディーノはあまり気にしておらず、ただ名無しにニカっと笑っては「俺も名無しと同じように涼んでから帰ろうと思ってな」と言葉を紡ぐ。
名無しは基本午前中の活動が多いが、ディーノの所属するテニス部は午前からや午後からと不規則であるため夏休み中はたまにしか校内で見かけなかった。
だがディーノの言葉を踏まえれば、どうやらディーノも名無しと同じように部活終わりに涼んで帰ろうと校舎裏に立ち寄ったようだ。
『涼むなら別に此処じゃなくても部室で良かったんじゃないの?わざわざテニス部の部室から遠いし、こんな所に来る方が大変でしょ』
スポーツドリンクを飲みながら名無しは首を傾げる。
名無しが所属する美術部の部室からこの校舎裏に来るまではそこまで遠くないが、ディーノが所属しているテニス部からこの校舎裏に来るまでは結構距離がある。
わざわざ炎天下の中校舎裏に来るよりは素直にテニス部の部室か、体育館で涼んだ方がまだ涼しいのでは?と名無しは心底思う。
校舎裏も確かに日差しが隠れ影になっているせいか涼しいが、ここまで来ることを考えたら割に合わないだろう。
不思議そうにじっとディーノを見る名無しに、ディーノは「俺だって出来るなら部室とかで涼みたかったんだぜ…?」と名無しの方に歩きながら言葉を続ける。
「部室方面の自販機…飲み物全部全滅してたんだよ…」
『あ~…それはきっついね…』
ディーノの言葉に名無しは思わず納得してしまう。
夏休みと言えど部活動で来る生徒は多く、運動部ともなれば暑い日差しの中走ったり身体を動かす故に余計に喉が渇いてしまう。
いくら家から持ってきたと言えど、それだけでは全然足りないのだ。
また家から持ってきていてもやはり冷えたものが飲みたいと思う生徒は少なからずいる。
夏休み中故に自販機の補充は減り、需要ばかりが増えるためほとんどの自販機のボタンは売り切れ表示になっていた。
年々暑くなっていくのも、自販機の飲み物がすぐに売り切れる理由の1つだろう。
運動部の部室がある場所や、体育館、下駄箱付近等に設置されている自販機は言わずもながら売り切れ表示ばかり。
その点この校舎裏の自販機は存在自体をあまり知られていないためかドリンクが売り切れになることはほとんどない穴場である。
誰が使うんだと思われるような校舎裏ではあるが、ちゃんと業者の人が補充しているおかげか、はたまた認知度が低いせいか売り切れの表示を今まで見たことはない。
ディーノもその事を理解しており、こうして校舎裏の自販機があるこの場所に来たようだ。
名無しの傍へと歩み寄れば名無しが腰掛けている階段の足元にラケットバッグとスクールバッグを下ろして自販機の方へと歩きだす。
どうやらディーノも名無しと同じように飲み物を買っては名無しの傍で涼むようだった。
ズボンのポケットから小銭入れを取り出して、自販機にお金を入れていく。
お金が落ちる音と、それに付随してボタンが光るがディーノはほんの少し悩んでからピッとボタンを押した。
ガコンッと、飲み物が落ちる音がしてはディーノは飲み物を取り出して名無しの隣に戻っては同じように腰掛ける。
カシュッとスチール缶のプルタブを引いてはディーノは缶の飲み口に口を付けてごくごくと喉を潤す。
豪快に飲むディーノの姿を見てはよほど喉が渇いていたのだろうと名無しは思った。
「はぁー…うめぇ」
口から缶を離してはまるで潤ったと見て取れるほどディーノは嬉しそうな表情をしている。
だがそんなディーノの手元を見ては『あれ、そんなの売ってたっけ?』っと名無しは問いかけた。
ディーノの手には見慣れないスチール缶のパッケージ。
夏休みの間ほとんどこの校舎裏の自販機に頼りっぱなしだった名無しでも初めて見るパッケージだった。
ディーノが買う前に名無しだって自販機を見ているがそんなパッケージの缶はなかったはずだ。
「ん…あー…俺今回なぞかんで買ったからそのせいだな」
『あーね…なぞかんか』
ディーノの言葉に名無しは納得して前方にある自販機を見た。
確かに校舎裏の自販機にだけなぞかんと言う商品が設置されている。
中身は完全ランダムで、何が入っているのか出てこない限り全く分からない仕組みになっているのだ。
値段も他の商品よりはるかに安いが…何が出てくるか分からないうえに飲めないものが出てきては困ると名無しは一度もなぞかんのボタンを押したことはなかった。
ディーノが手に持っている缶を名無しはじっと見つめる。
この自販機には置かれていない商品な上に、名無しの好きな桃の写真がパッケージに描かれているからだ。
自然と『ねぇ、ディーノそれ一口頂戴』と口にしては名無しは缶から目が離せずにいる。
「ぶっつ…名無しお、お前自分が何言ってんのかちゃんと分かってんのか…?」
飲んでいた液体が気管に入り込み、思わずディーノはむせた。
顔を真っ赤にしては慌てたような表情を浮かべているが、名無しはそんなディーノに気づかずにただただディーノが持っている缶から目が離せない。
『だって美味しそうなんだもん、一口位飲んだっていいじゃん?』
「ほんとにいいのか?」
『何よ、飲んじゃダメなの?』
しつこく確認するディーノに名無しはむっと眉間に皺を寄せる。
そんなに飲ませたくないのだろうかと思うものの、ディーノは「そういうわけじゃなくて…」と名無しの顔を見るものの、髪を掻いては「っ分かった…名無しが良いなら俺は別にいいけどよ…」と持っていた缶ジュースを差し出す。
『わーい、ありがとうディーノ!』
差し出された缶ジュースを名無しは嬉しそうに受け取っては何の躊躇もなく一口飲む。
桃の甘くすっきりした味が口いっぱいに広がり、名無しは嬉しそうに頬を緩める。
よっぽど美味しかったのかジュースの余韻に嬉しそうにしている名無し。
そんな名無しにディーノはそっぽを向いては「…名無しが間接キスしたがるなんて思ってなかった…」とポツリと呟いた。
『……か、間接キス…?』
「間接キスだろ…どう考えても」
名無しの方からはディーノがどんな表情でそう言葉にしたのかは分からない。
けれど手に持っている缶ジュースの飲み口へと視線を向ければ名無しは無言のまま飲み口を見つめる。
手に持っている缶ジュースの飲み口は1つなのだ。
飲み口を拭くわけでもなく、名無しは何も気にせずに口を付けたのだ。
ディーノの言葉と、自分がした行動に名無しはだんだんと顔を赤く染めては『わ、分かってんなら飲むの止めてよ?!』っと、思わず声を上げた。
「はぁ?確認はしたじゃねえか…ほんとにいいのか?って」
『そ、それは…そうかもだけど…』
ディーノの言葉に名無しは何も言えずに言葉を飲み込む。
確かにディーノは名無しに確認をした。
“ほんとにいいのか?”と前置きし名無しが頷いたからこそ缶を差し出したのだ。
思春期でもあるが故にどうしても意識してしまう。
名無しとディーノは付き合ってすらいない。
友達以上、親友以上の関係ではあるけれど決して男女の関係ではないのだ。
お互い恋人が居るわけでもないから誰かがこの間接キスについて咎める事だってない。
けれど…
『それでも…それでもっ…ディーノの方が嫌だって拒否る事出来たでしょ?!』
と、名無しは顔を赤くしては唇を開きディーノを見上げる。
顔を真っ赤にしている名無しを横目に、ディーノは名無しから戻されたスチール缶に口を付けた。
まるで気にしないと言わんばかりに自分から間接キスをしては名無しに見せつける。
ディーノが何を考えているか全くわからない名無しはただただ飲み物を飲むディーノを凝視することしかできない。
ゴクリと喉を鳴らし感から唇を離したディーノの鳶色の視線を名無しの方へと向けた。
わざとらしく頬杖を付きながらディーノは言葉を紡いだ。
「俺は名無しとの間接キス…嫌じゃねえし?」
まるで悪戯が成功した子供のように、ニッと笑ってはディーノは目を細めた。
先ほどの真っ赤になった顔ではなく、ほんのりと赤く染まっているのは頬だけ。
ディーノがどういう思いでそんな言葉を紡いだのかは名無しには分からない。
けれどそんな風に言われてしまえば、意識せざる負えない状況に名無しは唇を震わせた。
今まで友達…否、親友だと思っていた男友達にそんな事を言われてしまえば名無しの頭の中は真っ白だ。
(なん…な、なっ…っつ!!??)
何か言いたい、けれどうまく頭が回らないし言葉だって出てこない。
何も言えない名無しに、ディーノは相変わらず悪戯が成功した子供のような笑みを浮かべては再び缶に口を付ける。
そんなディーノの姿から名無しは目が離せなかった。
ディーノを見つめるとドクン、ドクンと名無し心臓が高鳴る。
今までこんな事なかったのにと思いながらも、これが全ての始まりだったなんて名無しは思いもしなかった。
名無しだけが意識させられた中で、ディーノは缶ジュースを飲む。
名無しもディーノも何も言わないこの場所で、蝉の鳴き声だけがせわしく校舎裏に鳴り響いた―――…
その一口のあとで
2025/08/21
※学パロ
※恋人未満
『あ~、喉が潤う~!』
暑い日差しがアスファルトを照らす午後。
ジリジリジリとアブラゼミの鳴き声だけがやけに大きく鳴り響く。
夏休み中と言えど、部活動を終えた名無しは校舎裏の日陰になっている場所で涼んでいた。
アスファルトの階段に腰掛けて、スクールバッグは足元に置かれている。
手には名無しの目の前に設置されている自販機で買ったばかりの500mlのスポーツドリンク。
部活終わりのせいか汗をかき、身体から失った水分を補うように名無しはまた一口スポーツドリンクを飲む。
ひんやりとしたペットボトルを握っているだけでも暑さが軽減される気さえしてしまうほどだ。
唯一の救いは終日の部活動練習がない事だろう。
じめじめとした暑さに名無しの首から汗が滴り落ちる。
夏休みももう残り少なく、気が付けば8月も下旬。
まだ夏休みの宿題が少しだけ残っているな~なんて名無しが思っていると「お、名無し来てたのか」と、聞きなれた声が名無しの背後から聞こえる。
その声に名無しが振り返ればそこには同級生で同じクラスのディーノの姿が名無しの瞳に映りこむ。
太陽の光が当たりキラキラと輝くような金色の髪。
鳶色の瞳は名無しを映しては大きく見開かれていた。
肩にはテニスラケットが入っているラケットバッグとスクールバッグをかけていた。
夏休みと言えど登下校時は学校指定の制服のせいかテニス部のユニフォームではなくきちんと指定の制服を着ている。
半袖のワイシャツのボタンは全て開けられており、中には黒色のTシャツを着ていた。
『あれ、ディーノじゃん。どうしたの?』
頬には絆創膏がついているのを見ては、名無しは部活中に怪我をしたのか…はたまた普通に登下校時に転んで怪我をしたのかとつい考えてしまう。
学年一、否、全校生を対象としてもディーノはよくドジをするのだ。
普通に学校生活を送っていても何もない所で転んだりしているのをよく見かけるし、名無し自身ディーノの為に絆創膏を常に持ち歩いているのは言うまでもない。
そんな名無しとは対象に何時もの事だからかディーノはあまり気にしておらず、ただ名無しにニカっと笑っては「俺も名無しと同じように涼んでから帰ろうと思ってな」と言葉を紡ぐ。
名無しは基本午前中の活動が多いが、ディーノの所属するテニス部は午前からや午後からと不規則であるため夏休み中はたまにしか校内で見かけなかった。
だがディーノの言葉を踏まえれば、どうやらディーノも名無しと同じように部活終わりに涼んで帰ろうと校舎裏に立ち寄ったようだ。
『涼むなら別に此処じゃなくても部室で良かったんじゃないの?わざわざテニス部の部室から遠いし、こんな所に来る方が大変でしょ』
スポーツドリンクを飲みながら名無しは首を傾げる。
名無しが所属する美術部の部室からこの校舎裏に来るまではそこまで遠くないが、ディーノが所属しているテニス部からこの校舎裏に来るまでは結構距離がある。
わざわざ炎天下の中校舎裏に来るよりは素直にテニス部の部室か、体育館で涼んだ方がまだ涼しいのでは?と名無しは心底思う。
校舎裏も確かに日差しが隠れ影になっているせいか涼しいが、ここまで来ることを考えたら割に合わないだろう。
不思議そうにじっとディーノを見る名無しに、ディーノは「俺だって出来るなら部室とかで涼みたかったんだぜ…?」と名無しの方に歩きながら言葉を続ける。
「部室方面の自販機…飲み物全部全滅してたんだよ…」
『あ~…それはきっついね…』
ディーノの言葉に名無しは思わず納得してしまう。
夏休みと言えど部活動で来る生徒は多く、運動部ともなれば暑い日差しの中走ったり身体を動かす故に余計に喉が渇いてしまう。
いくら家から持ってきたと言えど、それだけでは全然足りないのだ。
また家から持ってきていてもやはり冷えたものが飲みたいと思う生徒は少なからずいる。
夏休み中故に自販機の補充は減り、需要ばかりが増えるためほとんどの自販機のボタンは売り切れ表示になっていた。
年々暑くなっていくのも、自販機の飲み物がすぐに売り切れる理由の1つだろう。
運動部の部室がある場所や、体育館、下駄箱付近等に設置されている自販機は言わずもながら売り切れ表示ばかり。
その点この校舎裏の自販機は存在自体をあまり知られていないためかドリンクが売り切れになることはほとんどない穴場である。
誰が使うんだと思われるような校舎裏ではあるが、ちゃんと業者の人が補充しているおかげか、はたまた認知度が低いせいか売り切れの表示を今まで見たことはない。
ディーノもその事を理解しており、こうして校舎裏の自販機があるこの場所に来たようだ。
名無しの傍へと歩み寄れば名無しが腰掛けている階段の足元にラケットバッグとスクールバッグを下ろして自販機の方へと歩きだす。
どうやらディーノも名無しと同じように飲み物を買っては名無しの傍で涼むようだった。
ズボンのポケットから小銭入れを取り出して、自販機にお金を入れていく。
お金が落ちる音と、それに付随してボタンが光るがディーノはほんの少し悩んでからピッとボタンを押した。
ガコンッと、飲み物が落ちる音がしてはディーノは飲み物を取り出して名無しの隣に戻っては同じように腰掛ける。
カシュッとスチール缶のプルタブを引いてはディーノは缶の飲み口に口を付けてごくごくと喉を潤す。
豪快に飲むディーノの姿を見てはよほど喉が渇いていたのだろうと名無しは思った。
「はぁー…うめぇ」
口から缶を離してはまるで潤ったと見て取れるほどディーノは嬉しそうな表情をしている。
だがそんなディーノの手元を見ては『あれ、そんなの売ってたっけ?』っと名無しは問いかけた。
ディーノの手には見慣れないスチール缶のパッケージ。
夏休みの間ほとんどこの校舎裏の自販機に頼りっぱなしだった名無しでも初めて見るパッケージだった。
ディーノが買う前に名無しだって自販機を見ているがそんなパッケージの缶はなかったはずだ。
「ん…あー…俺今回なぞかんで買ったからそのせいだな」
『あーね…なぞかんか』
ディーノの言葉に名無しは納得して前方にある自販機を見た。
確かに校舎裏の自販機にだけなぞかんと言う商品が設置されている。
中身は完全ランダムで、何が入っているのか出てこない限り全く分からない仕組みになっているのだ。
値段も他の商品よりはるかに安いが…何が出てくるか分からないうえに飲めないものが出てきては困ると名無しは一度もなぞかんのボタンを押したことはなかった。
ディーノが手に持っている缶を名無しはじっと見つめる。
この自販機には置かれていない商品な上に、名無しの好きな桃の写真がパッケージに描かれているからだ。
自然と『ねぇ、ディーノそれ一口頂戴』と口にしては名無しは缶から目が離せずにいる。
「ぶっつ…名無しお、お前自分が何言ってんのかちゃんと分かってんのか…?」
飲んでいた液体が気管に入り込み、思わずディーノはむせた。
顔を真っ赤にしては慌てたような表情を浮かべているが、名無しはそんなディーノに気づかずにただただディーノが持っている缶から目が離せない。
『だって美味しそうなんだもん、一口位飲んだっていいじゃん?』
「ほんとにいいのか?」
『何よ、飲んじゃダメなの?』
しつこく確認するディーノに名無しはむっと眉間に皺を寄せる。
そんなに飲ませたくないのだろうかと思うものの、ディーノは「そういうわけじゃなくて…」と名無しの顔を見るものの、髪を掻いては「っ分かった…名無しが良いなら俺は別にいいけどよ…」と持っていた缶ジュースを差し出す。
『わーい、ありがとうディーノ!』
差し出された缶ジュースを名無しは嬉しそうに受け取っては何の躊躇もなく一口飲む。
桃の甘くすっきりした味が口いっぱいに広がり、名無しは嬉しそうに頬を緩める。
よっぽど美味しかったのかジュースの余韻に嬉しそうにしている名無し。
そんな名無しにディーノはそっぽを向いては「…名無しが間接キスしたがるなんて思ってなかった…」とポツリと呟いた。
『……か、間接キス…?』
「間接キスだろ…どう考えても」
名無しの方からはディーノがどんな表情でそう言葉にしたのかは分からない。
けれど手に持っている缶ジュースの飲み口へと視線を向ければ名無しは無言のまま飲み口を見つめる。
手に持っている缶ジュースの飲み口は1つなのだ。
飲み口を拭くわけでもなく、名無しは何も気にせずに口を付けたのだ。
ディーノの言葉と、自分がした行動に名無しはだんだんと顔を赤く染めては『わ、分かってんなら飲むの止めてよ?!』っと、思わず声を上げた。
「はぁ?確認はしたじゃねえか…ほんとにいいのか?って」
『そ、それは…そうかもだけど…』
ディーノの言葉に名無しは何も言えずに言葉を飲み込む。
確かにディーノは名無しに確認をした。
“ほんとにいいのか?”と前置きし名無しが頷いたからこそ缶を差し出したのだ。
思春期でもあるが故にどうしても意識してしまう。
名無しとディーノは付き合ってすらいない。
友達以上、親友以上の関係ではあるけれど決して男女の関係ではないのだ。
お互い恋人が居るわけでもないから誰かがこの間接キスについて咎める事だってない。
けれど…
『それでも…それでもっ…ディーノの方が嫌だって拒否る事出来たでしょ?!』
と、名無しは顔を赤くしては唇を開きディーノを見上げる。
顔を真っ赤にしている名無しを横目に、ディーノは名無しから戻されたスチール缶に口を付けた。
まるで気にしないと言わんばかりに自分から間接キスをしては名無しに見せつける。
ディーノが何を考えているか全くわからない名無しはただただ飲み物を飲むディーノを凝視することしかできない。
ゴクリと喉を鳴らし感から唇を離したディーノの鳶色の視線を名無しの方へと向けた。
わざとらしく頬杖を付きながらディーノは言葉を紡いだ。
「俺は名無しとの間接キス…嫌じゃねえし?」
まるで悪戯が成功した子供のように、ニッと笑ってはディーノは目を細めた。
先ほどの真っ赤になった顔ではなく、ほんのりと赤く染まっているのは頬だけ。
ディーノがどういう思いでそんな言葉を紡いだのかは名無しには分からない。
けれどそんな風に言われてしまえば、意識せざる負えない状況に名無しは唇を震わせた。
今まで友達…否、親友だと思っていた男友達にそんな事を言われてしまえば名無しの頭の中は真っ白だ。
(なん…な、なっ…っつ!!??)
何か言いたい、けれどうまく頭が回らないし言葉だって出てこない。
何も言えない名無しに、ディーノは相変わらず悪戯が成功した子供のような笑みを浮かべては再び缶に口を付ける。
そんなディーノの姿から名無しは目が離せなかった。
ディーノを見つめるとドクン、ドクンと名無し心臓が高鳴る。
今までこんな事なかったのにと思いながらも、これが全ての始まりだったなんて名無しは思いもしなかった。
名無しだけが意識させられた中で、ディーノは缶ジュースを飲む。
名無しもディーノも何も言わないこの場所で、蝉の鳴き声だけがせわしく校舎裏に鳴り響いた―――…
その一口のあとで
2025/08/21
68/76ページ