家庭教師ヒットマンREBORN!
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
※学パロ(高校生設定)
『あー…嫌すぎる…』
涼しいクーラーの効いた教室内で、名無しはポツリと呟いては机の上に項垂れていた。
教室内は名無し以外の姿はなく、人っ子一人居ない状態だ。
窓から見える空は青く、まるで夏真っ盛りだと見ればわかる程に青い。
雲一つない青空が何処までも続き、閉め切っている教室内にも関わらず外からは蝉の鳴く声が聞こえる。
だが教室内には名無し以外の姿はなく、人っ子一人居ない状態だ。
普段なら聞こえるはずの生徒の声や走る音は何一つなく、あるのは蝉の鳴く声だけ。
時折生徒の声が聞こえるが、その声も直ぐに消えてしまう。
当然だ。
何せ今は普段のように授業が行われるわけではなく、長期休暇…所謂夏休みが始まっているのだ。
夏休み期間なのだから学校に来ている生徒は部活動に参加する者か、委員会に属している者が大半を占めている。
名無しも部活動や委員会の都合で登校していると思われがちだが、そうではない。
何故なら部活動に属しているわけでもなく、名無しが属する緑化委員の水やり当番でもないのだ。
なら何故名無しが夏休みも始まり学校に来ているかと言えば、それは補習を受ける為だった。
勉強に関して名無しの成績が悪いかと問われれば、そう言うわけでもなかった。
勉強だって人並みに出来るし、日頃の提出物だってきちんと提出している…所謂普通と呼ばれる位置にいる。
なら何故名無しは補習を受ける羽目になったかと言えばそれはテスト最終日に風邪を引き、最終日に行われたテスト教科を全て受けられなかったからだ。
『はぁ…テスト最終日何で風邪ひいちゃったんだろう…』
思い出しても溜息しかでない。
しかも教室内を見渡しても先程と同様、名無し以外の人間は居ない。
補習はクラスが違えど同じ教室で受ける事になっているのだ。
つまり名無し以外補習を受ける人間が居ないと言う事になるため、余計に憂鬱である。
補習担当の先生の事は好きでも嫌いでもないのだが、生徒と教師、ワンツーマンのような状況には流石に心が折れそうになる。
風邪を引かずに普段通りテストを受けて提出物を提出していればこんな事にはならなかったのに…と、名無しは心底思ってしまった。
朝と言えど夏の暑さは尋常じゃない。
クーラーが使えるとしても登校するまで暑くて暑くてたまらなかったのだ。
もしテスト最終日きちんと受けることが出来れば…その熱さを味わわなくて良かったのにと風邪を引いた自分を恨んでしまう。
何より後数分もすれば補習が始まる。
この状態では補習は名無し一人だけと言う事が確定するだろう。
後数分で滑り込む人なんて居ないよな~と思いながらぼーっとしていると、バタバタバタッと、廊下を走る音が聞こえる。
部活動や委員会に遅刻寸前なのだろうか?と思いながら耳を立てるものの、どうやら足音はこの教室を目がけて走ってきているのか次第に走る音が近くなる。
「っつ…なんとか間に合った…!」
勢いよく扉を開け、肩で息をしながら入って来た人物に、名無しは見覚えが合った。
まだ多少幼さが残るものの、それでも女子生徒であれば黄色い声を上げてしまう程整った容貌。
相変わらず綺麗な鳶色の瞳に金色の髪がよく映える。
学校指定の半袖のワイシャツの前のボタンは開けられており、中には愛用している黒色のTシャツを着用している。
首から左腕にかけては絆創膏や包帯が巻かれており、怪我をした物ではなく“ある物”を隠すために巻かれていた。
ドジっ子故によく怪我をするため、彼を知っている者からすればただただ怪我の手当をしているだけだと思われがちである。
額に汗を浮かべ、余程急いで来たのが目に見えて分かってしまうほどだ。
『あれ……ディーノじゃん』
その人物は名無しと去年同じクラスだったディーノだ。
隣の席だった事もあり、去年は何をするにしてもよく話していた。
今年はクラス替えもあり、クラスがバラバラになったせいかあまり関わる事がなかったのでついディーノの姿を凝視してしまう。
クラスは変わっても時折SNSやLineで絡む位には仲が良かった。
「お、珍しいな…名無しも補習か?」
名無しに名前を呼ばれたディーノは一瞬鳶色の瞳を見開くものの、すぐに言葉を紡いでは嬉しそうに名無しの座る隣の席に腰を下ろした。
まるでそこが自分のせいだと言わんばかりに当然の様に。
荷物を机の横に付いているフックに付けては、手慣れたように名無しと机をくっつけてはディーノは名無しの顔を覗き込んだ。
(相変わらずディーノの距離感近いなぁ)
イタリアから来たせいか、そこら辺の日本人よりもディーノは距離感が近い。
日常的にハグや頬と頬を合わせて挨拶するバーチがイタリアの挨拶文化にあるらしい。
日本では仲がよくても同性同士のハグ位だと思っているのもあり、ディーノとの挨拶は名無しは毎回勘違いしそうになってしまう。
ハグやバーチは恋人同士だけでなく、家族や友人、親しい間柄であれば誰にでも使うのだ。
1年生の
柔らかいキラキラとした表情で話しかけられれば、名無しは薄っすらと頬を染めては唇を噛み締める。
勘違いしそうになるけれど、実際名無しはディーノに好意を寄せていた。
告白なんて出来るわけもなく、ただただ名無しの片思いでしかないけれど…。
『…補習…だよ。テスト受けられなかったから…ディーノは?』
「俺も補習だぜ!って言うか現国は俺補習常連者だからな」
ニカッと太陽の様に眩しい笑みを浮かべて言われてしまえば、名無しは思わず見惚れてしまう。
現国補習常連者はどうなんだと思うものの、ディーノは基本的には頭がいい。
外国人からしたら日本語…つまり現代文や古文に関しては摩訶不思議でしかないのだろう。
『胸張って威張れるもんじゃないよ…?』
「そうかもしれねえけど…ほら、皆勤賞っていい事だろ?」
『…それとこれとは別の話だよ』
ディーノの言葉に呆れつつも名無しはクスクスと笑ってしまった。
一年の時もそう言えば現代文に関してディーノは赤点を取っていたなと思い出せば納得がいってしまうのだ。
一緒にテスト勉強をした事もあるが、基本的にディーノが聞いてくるのは現代文のみ。
逆に名無しの方が英語が数学など苦手な教科を聞くほどなのだから。
「へへ、でもそのおかげでこうして夏休みでも名無しと会えたんだぜ?いい事だろ。クラスも別々になっちまってあんま話す機会もねえしさ…」
『まぁ、うちの学校って在籍人数多いからね…』
私立であるが故に、生徒数はそれこそ1学年につき500人近くいるマンモス校だ。
3年時はクラス替えがないものの、2年時のクラス替え以降はクラス替えなんてないのだから仕方がない。
1年時はお互い普通科だが、2年時になるとそれぞれ普通科の中でも特に興味のある学科に振り分けられるのだ。
進学クラスや情報系のクラスならまだクラスは少ないが、普通科のみのクラスはそれこそ多いためクラス替えをしても一緒になる確率はあまりにも低すぎる。
SNSは基本名無しはロム専で、ディーノに至っては友達へのリプがほとんどで自身の呟きはたまにしかしない。
コミュニケーションアプリでお互いの連絡先は知っているが、なんだかんだ話題がなかったり気を遣い連絡する事もほとんどなかった。
クラス替えをして半年ぶりにこうして会話したのだから名無しもディーノも話したい事は沢山あるのだが…
「おー、揃ってるな」
ガラリと再び教室の扉が開かれれば、怠そうに先生が入ってくる。
補習担当の先生だろう。
手には補習で使われる課題のプリントが用意されており、ディーノを見るなり「お前また補習組か…」なんて軽口を叩いていた。
「仕方ねえだろ先生…日本語難しいんだからよ…」
「そりゃそうだが…そろそろ補習組卒業しろよ?お前来年は受験生なんだから」
軽口を叩いては先生が溜息を付く。
恐らく補習担当の先生は去年からずっと同じなのだろう。
ディーノに対し“また補習組”と言葉にしたのだから。
「まぁ、補習はお前等2人だけだからしっかり課題やれよー」
そう言って先生は名無しとディーノの机の前に課題のプリントを置いては、補習が始まった―――…
「なぁ、名無し」
『んー…なによディーノ?』
補習の先生が来てからはお互い配られた課題プリントを無言で解いていた。
先生もそんな名無しとディーノを見ていたが、先ほど部活動の生徒に呼ばれて今は教室内に居ない。
集中力が途切れたディーノが名無しに声をかけては鳶色の瞳に名無しの姿を映し出す。
艶やかな肩にかかる位の黒髪を耳にかけ、問題が分からないのか眉間に皺を寄せてはディーノの瞳にはっきりと映り込んだ。
名無しの澄んだ水色の瞳がゆっくりとディーノの鳶色の瞳を見つめては、ディーノの心臓がドクンと跳ね上がる。
「…名無しってさ、…彼氏とか出来たか?」
『ばっ…な、何よ藪から棒に…』
思わずディーノの言葉に、名無しは頬を赤く染めては瞳を大きく見開いた。
まさかディーノの方からそんな話題を振られると思っていなかった為、名無しはどう反応していいか返答に困ってしまう。
「だってよ、クラス変わっちまったしそう言うの出来たのか気になるだろ?」
そんな名無しの反応を見ながらも、ディーノは言葉を続ける。
お互い仲は良かった方だが、1年時は全くそんな話をしなかった。
だからだろう。
ディーノの言葉に名無しは詰まってしまうのは。
無言のまま名無しは言葉を紡ごうとするものの、上手く言葉が紡げずにいた。
(っつ…出来るわけ…ないじゃん…ディーノに片思いしてるんだし…)
ちらりとディーノの方を見ては名無し自身顔が赤くなっているのが自分でも分かる。
暑さのせいにしてなんとかこの場を乗り切りたいが、生憎クーラーが効いているせいでその逃げ方は出来ないだろう。
それでもディーノから顔を背けては『い、居るわけないじゃん…!出来てたら一応ディーノにだって報告してるわよ!』と言葉にする。
「おいおい、絶対じゃなくて一応なのかよ?」
名無しの言葉にディーノは苦笑を浮かべる。
けれどその表情は何処かほっとしていて、安心したような表情だったが、顔を逸らしている名無しには分からなかった。
『そ、そう言うディーノの方はどうなのよ?確か好きな子居るって言ってなかったっけ…?』
ふと、思い出したかのように名無しは言葉にしてはディーノへと視線を向けてはディーノの言葉に仕返しをする。
名無し自身が紡いだ言葉なのに、名無しの心がちくりと痛んだ。
これでもディーノに片思いしているのだ。
“彼女が出来た”なんて言われたら、素直に『おめでとう』なんて言えるだろうかと名無しは一瞬思ってしまう。
そんな名無しに、ディーノは頬杖を付いてはじっと見つめる。
その頬はほんの少しだけ赤く染まっていたのは名無しの気のせいだと思いたい。
(その反応は…彼女出来たって…事…?)
ディーノの反応を見ては、そんな不安が名無しの中を過る。
だが一拍おいてから、ディーノはゆっくりと言葉を紡いだ。
「…出来てねえよ、まだ俺の片思い中」
『そう…なの?ディーノかっこいいのに片思い中ってなんか意外なんだけど』
「か、かっこいいかどうかは分かんねえけど…俺だって片思いしたりするんだからな…!」
名無しの言葉に今度はディーノの方が顔を赤く染めては唇を噛み締める。
“かっこいい”と、名無しから言われると思っていなかったのだろう。
はにかんだ表情を浮かべて、はディーノは鳶色の瞳に再び名無しを映し出す。
『告白…しないの?』
「告白…はまだしてねえけど、アプローチなら割としてる…。でも気付いてもらえないんだよなぁ…」
そう言ってディーノは机の上に項垂れた。
自分はちゃんとアプローチしうていると、気づいてほしいのに気づいてもらえないとディーノは名無しに愚痴る。
その言葉に、ズキリと名無しの胸が痛んだ。
片思いしている相手からの恋愛事情を聞いて、嫉妬しない人間なんていないだろう。
腹いせに『ディーノほんとにアプローチしてるの?』なんて言葉が自然と口から漏れてしまった。
完全に八つ当たりなのは名無し自身気付いている。
(あぁ…やっちゃった…)
一度言葉にした言葉は、取り消せない。
紡いだ言葉の後悔をするものの…名無しにはどうしようも出来なかった。
そんな言葉を聞いてはディーノは項垂れていた顔を上げては名無しの方へと顔を向ける。
その表情は怒っているわけではないけれど、それでも名無しから目を逸らそうとはしない。
「前から思ってたけどさ…名無しって鈍感だよな」
『え、急にディーノディスってくるんだけど?喧嘩売ってんの???』
突拍子のない言葉に、思わず名無しの目が大きく見開かれる。
それもそうだろう。
名無しはある意味ストレートにアプローチが足りていないと言っているのだ。
それなのに何故急に名無しが鈍感なんて話になったのか訳が分からず瞬きをする。
そんな名無しを見ては、ディーノは観念したかのように唇を開いた。
「だから……だよ」
『え、何て…?』
ボソボソと言葉を紡ぐディーノに名無しは思わず聞き返してしまう。
机をくっつけて普段よりも隣の人と距離が近いと言うのに、それでもディーノの言葉を聞きとれなかった。
名無しの言葉にディーノは意を決して「だから…」と先ほどよりも声量を上げては言葉を紡いだ。
「だから…お前だよ、名無し。俺が好きな奴は」
恋が動き出す瞬間
(へっ?!…え、な、何で…今…)
(っつ~~~~、今までアプローチしてたのに名無しが全く気付かねえからだろ!!??)
(アプローチされてたの?!)
(っつ、だから鈍感って言ったんだよ!あー…くそっ…本当はもっとスマートに決めようと思ってたのに…)
2025/07/26
『あー…嫌すぎる…』
涼しいクーラーの効いた教室内で、名無しはポツリと呟いては机の上に項垂れていた。
教室内は名無し以外の姿はなく、人っ子一人居ない状態だ。
窓から見える空は青く、まるで夏真っ盛りだと見ればわかる程に青い。
雲一つない青空が何処までも続き、閉め切っている教室内にも関わらず外からは蝉の鳴く声が聞こえる。
だが教室内には名無し以外の姿はなく、人っ子一人居ない状態だ。
普段なら聞こえるはずの生徒の声や走る音は何一つなく、あるのは蝉の鳴く声だけ。
時折生徒の声が聞こえるが、その声も直ぐに消えてしまう。
当然だ。
何せ今は普段のように授業が行われるわけではなく、長期休暇…所謂夏休みが始まっているのだ。
夏休み期間なのだから学校に来ている生徒は部活動に参加する者か、委員会に属している者が大半を占めている。
名無しも部活動や委員会の都合で登校していると思われがちだが、そうではない。
何故なら部活動に属しているわけでもなく、名無しが属する緑化委員の水やり当番でもないのだ。
なら何故名無しが夏休みも始まり学校に来ているかと言えば、それは補習を受ける為だった。
勉強に関して名無しの成績が悪いかと問われれば、そう言うわけでもなかった。
勉強だって人並みに出来るし、日頃の提出物だってきちんと提出している…所謂普通と呼ばれる位置にいる。
なら何故名無しは補習を受ける羽目になったかと言えばそれはテスト最終日に風邪を引き、最終日に行われたテスト教科を全て受けられなかったからだ。
『はぁ…テスト最終日何で風邪ひいちゃったんだろう…』
思い出しても溜息しかでない。
しかも教室内を見渡しても先程と同様、名無し以外の人間は居ない。
補習はクラスが違えど同じ教室で受ける事になっているのだ。
つまり名無し以外補習を受ける人間が居ないと言う事になるため、余計に憂鬱である。
補習担当の先生の事は好きでも嫌いでもないのだが、生徒と教師、ワンツーマンのような状況には流石に心が折れそうになる。
風邪を引かずに普段通りテストを受けて提出物を提出していればこんな事にはならなかったのに…と、名無しは心底思ってしまった。
朝と言えど夏の暑さは尋常じゃない。
クーラーが使えるとしても登校するまで暑くて暑くてたまらなかったのだ。
もしテスト最終日きちんと受けることが出来れば…その熱さを味わわなくて良かったのにと風邪を引いた自分を恨んでしまう。
何より後数分もすれば補習が始まる。
この状態では補習は名無し一人だけと言う事が確定するだろう。
後数分で滑り込む人なんて居ないよな~と思いながらぼーっとしていると、バタバタバタッと、廊下を走る音が聞こえる。
部活動や委員会に遅刻寸前なのだろうか?と思いながら耳を立てるものの、どうやら足音はこの教室を目がけて走ってきているのか次第に走る音が近くなる。
「っつ…なんとか間に合った…!」
勢いよく扉を開け、肩で息をしながら入って来た人物に、名無しは見覚えが合った。
まだ多少幼さが残るものの、それでも女子生徒であれば黄色い声を上げてしまう程整った容貌。
相変わらず綺麗な鳶色の瞳に金色の髪がよく映える。
学校指定の半袖のワイシャツの前のボタンは開けられており、中には愛用している黒色のTシャツを着用している。
首から左腕にかけては絆創膏や包帯が巻かれており、怪我をした物ではなく“ある物”を隠すために巻かれていた。
ドジっ子故によく怪我をするため、彼を知っている者からすればただただ怪我の手当をしているだけだと思われがちである。
額に汗を浮かべ、余程急いで来たのが目に見えて分かってしまうほどだ。
『あれ……ディーノじゃん』
その人物は名無しと去年同じクラスだったディーノだ。
隣の席だった事もあり、去年は何をするにしてもよく話していた。
今年はクラス替えもあり、クラスがバラバラになったせいかあまり関わる事がなかったのでついディーノの姿を凝視してしまう。
クラスは変わっても時折SNSやLineで絡む位には仲が良かった。
「お、珍しいな…名無しも補習か?」
名無しに名前を呼ばれたディーノは一瞬鳶色の瞳を見開くものの、すぐに言葉を紡いでは嬉しそうに名無しの座る隣の席に腰を下ろした。
まるでそこが自分のせいだと言わんばかりに当然の様に。
荷物を机の横に付いているフックに付けては、手慣れたように名無しと机をくっつけてはディーノは名無しの顔を覗き込んだ。
(相変わらずディーノの距離感近いなぁ)
イタリアから来たせいか、そこら辺の日本人よりもディーノは距離感が近い。
日常的にハグや頬と頬を合わせて挨拶するバーチがイタリアの挨拶文化にあるらしい。
日本では仲がよくても同性同士のハグ位だと思っているのもあり、ディーノとの挨拶は名無しは毎回勘違いしそうになってしまう。
ハグやバーチは恋人同士だけでなく、家族や友人、親しい間柄であれば誰にでも使うのだ。
1年生の
柔らかいキラキラとした表情で話しかけられれば、名無しは薄っすらと頬を染めては唇を噛み締める。
勘違いしそうになるけれど、実際名無しはディーノに好意を寄せていた。
告白なんて出来るわけもなく、ただただ名無しの片思いでしかないけれど…。
『…補習…だよ。テスト受けられなかったから…ディーノは?』
「俺も補習だぜ!って言うか現国は俺補習常連者だからな」
ニカッと太陽の様に眩しい笑みを浮かべて言われてしまえば、名無しは思わず見惚れてしまう。
現国補習常連者はどうなんだと思うものの、ディーノは基本的には頭がいい。
外国人からしたら日本語…つまり現代文や古文に関しては摩訶不思議でしかないのだろう。
『胸張って威張れるもんじゃないよ…?』
「そうかもしれねえけど…ほら、皆勤賞っていい事だろ?」
『…それとこれとは別の話だよ』
ディーノの言葉に呆れつつも名無しはクスクスと笑ってしまった。
一年の時もそう言えば現代文に関してディーノは赤点を取っていたなと思い出せば納得がいってしまうのだ。
一緒にテスト勉強をした事もあるが、基本的にディーノが聞いてくるのは現代文のみ。
逆に名無しの方が英語が数学など苦手な教科を聞くほどなのだから。
「へへ、でもそのおかげでこうして夏休みでも名無しと会えたんだぜ?いい事だろ。クラスも別々になっちまってあんま話す機会もねえしさ…」
『まぁ、うちの学校って在籍人数多いからね…』
私立であるが故に、生徒数はそれこそ1学年につき500人近くいるマンモス校だ。
3年時はクラス替えがないものの、2年時のクラス替え以降はクラス替えなんてないのだから仕方がない。
1年時はお互い普通科だが、2年時になるとそれぞれ普通科の中でも特に興味のある学科に振り分けられるのだ。
進学クラスや情報系のクラスならまだクラスは少ないが、普通科のみのクラスはそれこそ多いためクラス替えをしても一緒になる確率はあまりにも低すぎる。
SNSは基本名無しはロム専で、ディーノに至っては友達へのリプがほとんどで自身の呟きはたまにしかしない。
コミュニケーションアプリでお互いの連絡先は知っているが、なんだかんだ話題がなかったり気を遣い連絡する事もほとんどなかった。
クラス替えをして半年ぶりにこうして会話したのだから名無しもディーノも話したい事は沢山あるのだが…
「おー、揃ってるな」
ガラリと再び教室の扉が開かれれば、怠そうに先生が入ってくる。
補習担当の先生だろう。
手には補習で使われる課題のプリントが用意されており、ディーノを見るなり「お前また補習組か…」なんて軽口を叩いていた。
「仕方ねえだろ先生…日本語難しいんだからよ…」
「そりゃそうだが…そろそろ補習組卒業しろよ?お前来年は受験生なんだから」
軽口を叩いては先生が溜息を付く。
恐らく補習担当の先生は去年からずっと同じなのだろう。
ディーノに対し“また補習組”と言葉にしたのだから。
「まぁ、補習はお前等2人だけだからしっかり課題やれよー」
そう言って先生は名無しとディーノの机の前に課題のプリントを置いては、補習が始まった―――…
「なぁ、名無し」
『んー…なによディーノ?』
補習の先生が来てからはお互い配られた課題プリントを無言で解いていた。
先生もそんな名無しとディーノを見ていたが、先ほど部活動の生徒に呼ばれて今は教室内に居ない。
集中力が途切れたディーノが名無しに声をかけては鳶色の瞳に名無しの姿を映し出す。
艶やかな肩にかかる位の黒髪を耳にかけ、問題が分からないのか眉間に皺を寄せてはディーノの瞳にはっきりと映り込んだ。
名無しの澄んだ水色の瞳がゆっくりとディーノの鳶色の瞳を見つめては、ディーノの心臓がドクンと跳ね上がる。
「…名無しってさ、…彼氏とか出来たか?」
『ばっ…な、何よ藪から棒に…』
思わずディーノの言葉に、名無しは頬を赤く染めては瞳を大きく見開いた。
まさかディーノの方からそんな話題を振られると思っていなかった為、名無しはどう反応していいか返答に困ってしまう。
「だってよ、クラス変わっちまったしそう言うの出来たのか気になるだろ?」
そんな名無しの反応を見ながらも、ディーノは言葉を続ける。
お互い仲は良かった方だが、1年時は全くそんな話をしなかった。
だからだろう。
ディーノの言葉に名無しは詰まってしまうのは。
無言のまま名無しは言葉を紡ごうとするものの、上手く言葉が紡げずにいた。
(っつ…出来るわけ…ないじゃん…ディーノに片思いしてるんだし…)
ちらりとディーノの方を見ては名無し自身顔が赤くなっているのが自分でも分かる。
暑さのせいにしてなんとかこの場を乗り切りたいが、生憎クーラーが効いているせいでその逃げ方は出来ないだろう。
それでもディーノから顔を背けては『い、居るわけないじゃん…!出来てたら一応ディーノにだって報告してるわよ!』と言葉にする。
「おいおい、絶対じゃなくて一応なのかよ?」
名無しの言葉にディーノは苦笑を浮かべる。
けれどその表情は何処かほっとしていて、安心したような表情だったが、顔を逸らしている名無しには分からなかった。
『そ、そう言うディーノの方はどうなのよ?確か好きな子居るって言ってなかったっけ…?』
ふと、思い出したかのように名無しは言葉にしてはディーノへと視線を向けてはディーノの言葉に仕返しをする。
名無し自身が紡いだ言葉なのに、名無しの心がちくりと痛んだ。
これでもディーノに片思いしているのだ。
“彼女が出来た”なんて言われたら、素直に『おめでとう』なんて言えるだろうかと名無しは一瞬思ってしまう。
そんな名無しに、ディーノは頬杖を付いてはじっと見つめる。
その頬はほんの少しだけ赤く染まっていたのは名無しの気のせいだと思いたい。
(その反応は…彼女出来たって…事…?)
ディーノの反応を見ては、そんな不安が名無しの中を過る。
だが一拍おいてから、ディーノはゆっくりと言葉を紡いだ。
「…出来てねえよ、まだ俺の片思い中」
『そう…なの?ディーノかっこいいのに片思い中ってなんか意外なんだけど』
「か、かっこいいかどうかは分かんねえけど…俺だって片思いしたりするんだからな…!」
名無しの言葉に今度はディーノの方が顔を赤く染めては唇を噛み締める。
“かっこいい”と、名無しから言われると思っていなかったのだろう。
はにかんだ表情を浮かべて、はディーノは鳶色の瞳に再び名無しを映し出す。
『告白…しないの?』
「告白…はまだしてねえけど、アプローチなら割としてる…。でも気付いてもらえないんだよなぁ…」
そう言ってディーノは机の上に項垂れた。
自分はちゃんとアプローチしうていると、気づいてほしいのに気づいてもらえないとディーノは名無しに愚痴る。
その言葉に、ズキリと名無しの胸が痛んだ。
片思いしている相手からの恋愛事情を聞いて、嫉妬しない人間なんていないだろう。
腹いせに『ディーノほんとにアプローチしてるの?』なんて言葉が自然と口から漏れてしまった。
完全に八つ当たりなのは名無し自身気付いている。
(あぁ…やっちゃった…)
一度言葉にした言葉は、取り消せない。
紡いだ言葉の後悔をするものの…名無しにはどうしようも出来なかった。
そんな言葉を聞いてはディーノは項垂れていた顔を上げては名無しの方へと顔を向ける。
その表情は怒っているわけではないけれど、それでも名無しから目を逸らそうとはしない。
「前から思ってたけどさ…名無しって鈍感だよな」
『え、急にディーノディスってくるんだけど?喧嘩売ってんの???』
突拍子のない言葉に、思わず名無しの目が大きく見開かれる。
それもそうだろう。
名無しはある意味ストレートにアプローチが足りていないと言っているのだ。
それなのに何故急に名無しが鈍感なんて話になったのか訳が分からず瞬きをする。
そんな名無しを見ては、ディーノは観念したかのように唇を開いた。
「だから……だよ」
『え、何て…?』
ボソボソと言葉を紡ぐディーノに名無しは思わず聞き返してしまう。
机をくっつけて普段よりも隣の人と距離が近いと言うのに、それでもディーノの言葉を聞きとれなかった。
名無しの言葉にディーノは意を決して「だから…」と先ほどよりも声量を上げては言葉を紡いだ。
「だから…お前だよ、名無し。俺が好きな奴は」
恋が動き出す瞬間
(へっ?!…え、な、何で…今…)
(っつ~~~~、今までアプローチしてたのに名無しが全く気付かねえからだろ!!??)
(アプローチされてたの?!)
(っつ、だから鈍感って言ったんだよ!あー…くそっ…本当はもっとスマートに決めようと思ってたのに…)
2025/07/26
63/76ページ