家庭教師ヒットマンREBORN!
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「大丈夫か、名無し?」
並盛公園にある柱と屋根だけの簡素な建物…東屋にて二人は息を切らせながらへと駆け込んだ。
東屋には誰も居ない、ただただ名無しとディーノの2人の存在だけが公園内にある東屋にぽつりと佇む。
雨の中走って東屋まで来たのだ。
お互い服は濡れており、ディーノに至っては髪まで濡れている。
ポタリ、ポタリと雫を滴らせてはディーノは髪を掻き上げては肌に貼り付く髪の水を落とすように軽く頭を振る。
まるで犬が濡れた身体を乾かすように、水が飛び散った。
そんなディーノの隣で名無しは頭に被っていたフードをパサリと脱ぐ。
『平気…だよ』
そう呟いては、名無しはつい数分前までは晴れていたのにと思いながら空を見上げた。
雲の切れ間に覗いていた太陽の光すら何処にもない。
あるのはただどんよりとした重たい雲から、まるで空が大泣きしているかのようにザァーっと雨が降っている光景だけだった。
雨が降っているせいか、風は冷たくほんの少し肌寒い。
もう5月も終わろうとしているのになと思いながら、名無しは肩にかけていたショルダーバッグへと手を伸ばしては中身を漁る。
バッグの中には携帯に小さめのお財布、これからの季節には欠かせない日焼け止めや化粧が直せるように化粧品を詰め込んだポーチ等が入っている。
小柄なバッグではあるものの、中身はそれなりに量が入るようになっている名無しお気に入りのバッグだ。
普段なら折りたたみ傘を入れているのがだ、生憎今日は入っていない。
天気予報でも雨が降るとは言っていなかったのだ。
だからこそ荷物を増やさないようにと昨夜折りたたみ傘をバッグから取り出したのが仇となってしまった。
(こんな事なら折りたたみ傘入れっぱなしにしとけばよかったなぁ…)
そんな事を思いながらお目当ての物がバッグから見つかれば、名無しは急いでそれを取り出した。
取り出されたのは淡いピンク色のタオルハンカチ。
タオル生地故に吸収性が良く、持ち運びのいいコンパクトさに肌触りのいい生地は名無しのお気に入りだった。
『ほらディーノ、ちょっとこっち向いて』
ザァーっと音を立てて降る雨を見ているディーノにそっと手を伸ばし、名無し取り出したはタオルハンカチをディーノの頬へと当ててはディーノの顔を拭いていく。
肌触りの良い生地に、ディーノは擽ったそうに目を細めては申し訳なさそうに言葉を紡いだ。
「悪いな、名無し」
『これ位全然だよ?寧ろ私がディーノのコート借りちゃったからディーノ濡れちゃったわけだし』
名無しは自分の肩にかかっているディーノのモッズコートにそっと目を向ける。
雨が降り始めた時に、咄嗟にディーノ自身が羽織っていたモッズコートを名無しにかけてくれたのだ。
フードを名無しの頭に被せ、名無しが濡れないようにしてくれた。
名無しの手を引いて公園の東屋まで先導を切ってくれたディーノ。
そのおかげで名無しは濡れることなく、ディーノだけが濡れてしまう事になってしまったが…。
申し訳なさそうにディーノの顔を拭く名無しに、ディーノは「別に気にすんなって」と気さくに声をかける。
「名無しが濡れて風邪ひく方が俺は嫌なんだよ」
くしゃりと笑いながら言うディーノの言葉に、名無しは頬を赤らめては『私だってディーノが風邪ひくの嫌なんだけど…』とポツリと呟いた。
お互いがお互いに大事で、名無しがそんな風に言ってくれるだけでディーノは嬉しくてたまらなかった。
それでも名無しが申し訳ない気持ちでいっぱいな事は名無しの様子を見ればディーノには直ぐに分かる。
「大丈夫だって、俺は体力もあるし…そう簡単に風邪ひくような軟な身体はしてねえからさ」
『そうかもだけど…』
「それにこれでも一応鍛えてるからな」
苦笑交じりに付け足せしながら「だから気にすんな名無し」とディーノはそっと名無しの髪を撫でた。
にかっと笑い再度「名無しが濡れずにすんで良かった」と言葉にするディーノに、名無しは恥ずかしくついディーノから視線をそらす。
そらした先は勿論空だ。
ザァーっと雨が降っており、先ほどまでよりも少し勢いを増している。
今の所止みそうな雰囲気は一切なかった。
『雨、止まないね…』
「もう少し様子見しようぜ、もしかしたら止むかもしれねえしな」
名無しの言葉にディーノ雨が降り注ぐ空を見上げた。
まだ梅雨入りしていないのだ、ただの通り雨だろうと思いたいが、雨がなかなか止まない。
大地を潤し草木を生育つ恵みの雨なんて言う言葉はあるけれど、今の名無しにとって全くもって嬉しくない。
(せっかくのデートなのになぁ…)
はぁっと、無意識のうちに名無しは溜息を零しては雨が降る空をただじっと見つめる。
先程見上げた時と同様、どんよりとした重たい雲からはザァーっと雨が降り注ぐ。
早く止んで欲しい、ただそう願うもののこの調子では雨はまだ当分止みそうにない。
(神様は意地悪だ…)
折角の休日。
運動会があったおかげか珍しく平日休みでもあり、ましてディーノと過ごせる休日なんてそう滅多にあるわけではない。
普段はイタリアに居るディーノ。
それがタイミングよく名無しの休日に合わせて日本に来てくれたのだ。
そんな日に限って突然の雨に見舞われるなんて誰が思っただろう?
天気予報だってしっかりチェックしたのにな…なんて思いながら空を見つめる名無しに、ディーノは「そうしょんぼりすんなよ名無し」と言葉を紡ぐ。
「案外雨も悪くないぜ?」
『それはそうかもしれないけど…それでも濡れちゃったりじめじめしたりするから苦手だなぁ』
ザァーと降りしきる雨を見ては名無しは死んだ魚のような目で空を見上げた。
そう言えば家を出る前に洗濯物を干していた事を思い出せば余計に気分が沈んでしまう。
折角洗って干したのに、まさか雨が降るとは思ってもみなかった。
思わず『洗濯物…』と呟けば、隣に居るディーノは苦笑を浮かべる。
「あー…そういや名無し家出る前に干してたもんな…洗濯物」
『うん…洗い直し確定だわ…』
「お、俺も手伝うから元気出せって…な?」
『…ありがと…ディーノ』
元気づけてくれようとするディーノの言葉が名無しには有難かった。
けれど現実から目を逸らすように降りしきる雨を見ては名無しはぼーっとする。
思い出したくない事も思い出してしまったせいか余計に気分が沈んでしまう。
そんな名無しにディーノは「俺さ…」と言葉を紡いだ。
「名無しが雨苦手かもしれねえけど…俺は雨は嫌いじゃないんだよな」
『え、そうなの…?!』
ディーノの発言に名無しは大きく目を見開く。
先程まで沈んでいたのが嘘のように、まるで鳩が豆鉄砲を食ったように目を丸くしてはじっとディーノを名無し自身の瞳に映した。
それも当然だ、名無しからしてみたらディーノは雨が嫌いだと思っていたのだから。
(ディーノって雨苦手なのかと思ってた…)
本人から直接雨が嫌いと聞いたわけではないが、性格的に好きではないだろうなと名無しは思っていた。
「なんだよ、そんなに意外か?」
『そりゃあ…だってお外で遊べないとかディーノなら言いそうだし』
「まぁそれは確かに昔は合ったけど…って、俺は子供か?!」
『う~ん…あながちそうだと思ってる』
ディーノのツッコミに名無しはクスクスと笑ってしまう。
名無しは並盛中の教師を務めている。
職業柄、普段中学生を相手しているせいかどうしてもディーノが大人だと言う事を忘れディーノの性格故に子供に見えてしまうのだ。
勿論本当に子供だなんて思っていない。
名無しが本当にそう思っていたらそもそも彼氏彼女の関係にすらなっていないだろう。
子供相手に仕事しているのだ、付き合うなんて発想にすら至らない。
名無しの嘘偽りない真っ直ぐな言葉に「ったく…」と言いながらディーノは不貞腐れる。
(彼氏に向かってそりゃねえだろ…)
頬を膨らませあからさまにディーノは表情に出してしまう。
名無しが言う様に、名無しからすれば確かにディーノは子供に見えるかもしれない。
歳だって名無しの方が上なのだ。
5つも離れているせいか、名無しからすればディーノは子供…否、弟位の立ち位置なのかもしれない。
それに名無しの言う様にディーノの性格も性格だ。
大人っぽいかと言われたら名無しからすれば子供っぽいだろう…今現在部下が居るわけでもなく、マフィアのボスとして名無しの隣に居るわけでもない。
ただのディーノとして、名無しの彼氏として名無しの隣に居るのだ。
ありのままの自分ではあるものの、子供扱いされるのはディーノ自身癪に障る。
「…俺名無しの彼氏なんだけど?」
『分かってるよ?ディーノは私の彼氏だもんね』
未だクスクスと笑う名無しに内心(くそっ…)と思ってしまうものの、それでも名無しの笑う表情を見てしまえば内心溜息を付きつつも不貞腐れていた自分が居なくなる。
結局名無しの笑顔1つで、ディーノの機嫌なんて直ってしまうのだから。
『で、何でディーノは雨嫌いじゃないの?』
「ん、それはだな…」
言葉を続けようとしたディーノの唇が不意に言葉を飲み込む。
そんなディーノにどうしたのだろうと思いながら、ディーノの方に名無しは顔を向ける。
何時もなら言葉に詰まる事も途切れる事もないのにと思いながらディーノの方を見上げればディーノと目が合った。
ディーノの鳶色の瞳には、不思議そうにしている名無し自身の姿が目に映る。
ディーノに借りたフードにファーの付いたモッズコートを肩にかけている名無しを見れば、ディーノはふっと笑みを浮かべる。
「それは…雨が降ってるとこういう事外でしても許されるからだな」
その言葉の意味を理解しようとしたその瞬間、名無しの唇に柔らかいものが触れる。
柔らかく、温かい唇。
触れたものがディーノの唇だと言う事に、名無しはすぐ理解出来ず反応する事すら出来なかった。
ただ目を見開き固まる名無しを見ては触れて名残惜しそうに離れては「こういう事…な」と、悪戯が成功した子供の様にディーノは無邪気に微笑んだ。
『…っつ』
「はは、名無し顔真っ赤にして可愛いな」
まるでさっきの仕返しだと言わんばかりに今度はディーノがにかっと笑う。
そっと名無しの頬に手を添えては愛おしそうに目を細めながら名無しの体温を感じる。
温かい名無しの温もりが、頬に添えたディーノの手から伝わってくる。
『~~~~っつ、か、揶揄わないでよディーノ!』
「揶揄ってねえよ、俺がちゃんと名無しの彼氏だって…名無しに教えただけだ」
相変わらず無邪気に笑うディーノに、名無しは口を噤んではただただディーノの笑みを見つめる事しか出来なかった―――…
雨の中、君の笑顔の鮮やかさ
2025/05/30
お題提供:子猫恋様
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