家庭教師ヒットマンREBORN!
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※ディーノ先生(英語教師)×生徒
放課後、シンと静まり返った図書室で1人名無しは教科書とノートを開いては勉強していた。
カリカリとシャーペンの音を立てながら、ルーズリーフに綺麗なアルファベット…否、文章を書いていく。
教科書に記載されている英文、文法の使い方、その章で出て来た新しい英単語。
必要な部分に色ペンや蛍光ペンで印をつけて行けば、名無しは『ふぅ…』っと息を吐く。
長かったゴールデンウィークもあっという間に終わり、学生である身分からは決して逃れる事の出来ない…中間テストの時期がやってきた。
期末テストと違いたった5教科の中間テスト。
偏差値もそこまで高くなく、頭がどちらかと言えば悪い生徒が多い学校と言えどそれでも赤点を取ってしまえば補習になりかねない。
普段の放課後ともなれば、グラウンドでは運動部の走り込みむ声や野球部のバッドが球を打つ音が聞こえてくるはずなのに…今日はシンと静まり返っているのも中間テストがあるからだ。
テスト期間中は部活動は休止している。
あくまでも学生の本分は勉学なのだ。
部活動に力を入れすぎて勉学が疎かになってしまうのは学生にとっては本末転倒でしかない。
テスト期間中、部活がない分早く家に帰れるのに名無しは1人図書室に手勉強をしていた。
小学生が受けるテストと違い、中学のテストは5教科一気に来る上にそれなりに広い範囲が出題される。
そんな広い範囲がテストの出題範囲となれば、それなりの集中力が必要となるのだ。
だが長時間家でテスト期間中勉強をするのが名無しにとってはとても難しい。
家で勉強をするとなればあまりにも名無しには…否、名無しだけではない。
ほとんどの学生にとって誘惑が多すぎると言える。
テレビにゲーム、携帯電話や少女漫画…挙句の果てにはテスト前だと言うのに部屋の掃除をしかねない。
あまりにもテスト前特有の現象に名無しはよく陥ってしまうのだ。
中学に入りたての頃はうまく要領も掴めずに赤点ギリギリの点数をとっては親に叱られたのは言うまでも無かった。
それ以降、テスト期間は極力平日は学校の図書室で遅くまで勉強してから帰り、土日は図書館の自習室を利用して平均点より上の点数を今のところはキープしている。
普段からこまめに勉強していればと思うものの…学生であるならば勉強よりも遊びたい気持ちが勝ってしまい普段したとしても宿題位だろう。
『……んー、何で此処違うんだろう?』
そう誰も居ない図書室で1人呟いては名無しは先程ルーズリーフに書き写した内容を見つめる。
中学になり追加された英語と言う名無しにとっては地獄のような教科。
日本人なんだから日本語さえ出来ればいいじゃない!と思う程に名無しは英語が苦手だった。
テスト期間中は英語の教科を多めに勉強してはいるが、他の教科と比べて集中力だって切れやすいし気持ちが折れやすい。
そして今名無しが見つめている章の内容。
風邪で授業を欠席した際に行われた内容だったため、名無しは訳が分からず首を傾げる。
名無しが勉強していた所は丁度未来を表す“will”を使った内容だ。
教科書に書いている事と写させてもらったノートに書いている事をじっと見比べるものの、どうしても分からない箇所が出てきてしまう。
普段なら分からない箇所があれば聞きに行ったりもするが、生憎今はテスト期間中だ。
職員室に入ることが出来ないため名無しは授業終わりにしか分からない所を聞くことが出来ない。
だが風邪をひいて休んでいた事もあり英語だけでなく他の教科のノートを写すのに専念していたため、内容を理解する事を後回しにしてしまっていた。
すっかり忘れていた名無し自身の責任と言えど、流石に手を付けないわけには行かない。
内容だけは教科書と写させてもらったノートをみて理解しようとするがそれでも全部を理解するには名無しにとって相当難しい。
苦手科目故に、思考が時折停止してしまう。
こんな時は友達に聞こう!と思うものの、流石にこの時間に花や京子、友達が残っている事はない。
皆早々と帰宅してはそれぞれのテスト勉強に励んでいるのだから―――…
溜息を付いては名無しはじっと教科書とノート、そしてルーズリーフを見つめては1人理解しようとしていた。
どれくらいルーズリーフに目を落とし教科書とにらめっこしていたか名無しには分からない。
ふいにガラリと図書室の扉が開くと同時に、
「おーい、下校時間とっくに過ぎてるぞ…って、名無しか?」
と、聞き覚えのある声に名無しは教科書に落としていた視線を上げて声のする方へと視線を向けた。
金髪の髪に、鳶色の瞳がじっと名無しの姿を映している。
並盛中の臨時英語教師であり、本来はイタリアマフィアキャバッローネ・ファミリーの10代目ボスだ。
そして名無しの恋人でもある。
その容姿は一言で言えばイケメンだ。
女性100人居れば、100人全員が見惚れてしまう程の美貌。
並盛中に赴任した際には女子生徒のみならず女性教師にすら黄色い声を上げられ注目の的だったのを思い出す。
普段はかけていない黒縁の眼鏡姿は此処最近ようやく見慣れて来た。
着崩す事をせずキッチリと締められたネクタイに首からは教員証をぶら下げている。
教員証以外にも首には絆創膏が貼られており、水色のカーディガンからのぞく左服の裾から出ている腕には白い包帯が巻かれていた。
勿論首や腕を怪我しているわけではない、刺青を隠すために絆創膏や包帯をしているのだから。
『あ…ディーノさ、…ディーノ先生…』
反射的に普段の呼び方である“ディーノさん”と口にしようとするものの、すんでのところで名無しは言い直した。
此処は学校だ、誰が何処で聞いているのかも分からないのだから油断はできない。
ディーノは現在、リボーンの無茶振りにより並盛中の英語教師として潜入しているのだ。
以前もツナ達との連携の必要性のために潜入していたが…今回は長めの潜入らしい。
流石に潜入理由を聞く事は名無し自身しなかった。
理由はどうあれ普段は日本とイタリア。
住む場所も住む世界も違う名無しとディーノだが、今回は長めの潜入と言う事で普段よりもより近くディーノの存在を名無しは感じれるのだ。
勿論学校での立場は生徒と教師だ。
学校では恋人の様に接する事はないのだが、名無しにとっては少しでもディーノといれる時間があると思えば嬉しくて仕方がない。
普段はなかなか会う事が出来ないのだ、その事を踏まえればディーノを英語教師として潜入させたリボーンには感謝の気持ちしかないのだ。
「ん?テスト勉強してたのか、名無し?」
『え…あぁ、そうです』
見慣れて来たと言えど、やはり眼鏡をかけたディーノを名無しはかっこいいと心底思ってしまう。
実際に初めて臨時教師として赴任してきた際は見惚れて声も出なかったのだから。
今も同じように頬を染めてはディーノの姿をじっと見つめる。
そんな名無しを気にせずディーノはゆっくりと革靴の音を立てながら、名無しが座って居る図書室の席へと近づく。
名無しの傍まで近寄れば、名無しの手元には教科書やノートが広げられていた。
下校時間までテスト勉強をしていたのだろうと言う事が目に見えてディーノには分かる。
「ちゃんとテスト勉強してるの偉いな、名無し」
『流石に…テスト期間中ですからね。あ、でもディーノ先生…分からない所が合って…ちょっとだけいいですか…?』
「おう、いいぜ!で、名無しはどこが分からないんだ…?」
そう言いながらディーノは名無しの座る椅子の隣の席に腰を降ろせばゆっくりと教科書とノートへと視線を向ける。
教科書には重要な部分には蛍光ペンで線が引かれており、ノートも色とりどりのペンで綺麗に纏められていた。
見やすく、そして教科書もきちんと書き込みがされており普段から真面目に授業を受けているのが一目で分かるほどだ。
名無しとディーノ以外図書室内には誰も居ないと言えど、距離が近いせいか名無しはドクンと心臓が脈打つ。
バレないように『此処なんですけど…』と言っては名無しは先程から分からな箇所に指先を持って行く。
名無しが指さした箇所には【Emily will visit Canada next year.】と書かれた文章がディーノの瞳に映る。
三人称単数の時、英語文法では主語が三人称で単数の場合動詞に“s”または“es”を付けるという規則があるのだ。
だが書かれていたのはただの“will”のみ。
名無しからしたら不思議でしかないだろうと言う事がディーノはすぐに理解した。
(そういやあこの授業の時名無し風邪ひいてたもんな…)
口頭では説明したがある意味さらっと終わらせた部分でもあるからだ。
「三人称単数の時でも“will”は“will”のままになるんだよ」
『三人称単数なのにですか?』
「あぁ。じゃあ“will”のままの場合後の動詞はどうなる?」
『…動詞の原形の…まま…?』
「そう言う事、正解だ名無し」
くしゃりと笑ってはまるでよく出来ましたと子供を褒める様に、ディーノはわしゃわしゃと名無しの髪を撫でる。
温かく大きくなディーノの手。
久々に撫でられるせいか名無しは口では『ちょ、ディーノ先生子供扱いしないでくださいよ…!』と言ってしまうが、言葉とは裏腹に表情は嬉しそうにふにゃりと笑っていた。
言葉と表情がちぐはぐなのに、そんな名無しがディーノは可愛くて仕方なかった。
弟弟子であるツナとはまた違う…一人の異性としてディーノは名無しを可愛がる。
リボーンの頼みで英語教師として並盛中に潜入しているため、折角日本に来ているのにディーノはプライベートで名無しと会う事は出来ない。
その上テスト期間中であるが故に授業中位しか名無しはディーノの声も姿も見る事が出来ないのだ。
連絡先は勿論知っている。
その気になれば電話やメールを送る事が出来るが、テスト期間中と言う事もあり名無しもディーノもお互いに控えていた。
久しぶりの名無しとディーノ、2人だけの時間にディーノは思わず笑みを零しては愛おしそうに目を細める。
「なら…大人扱いしてやろうか?」
『…ふぇ…?』
ディーノさんの言葉に思わず名無しは目を大きく見開いた。
先程名無し自身が子供扱いしないでと言ったのだ。
ならディーノからしたら子供扱い…ではなく大人の扱いをして欲しいと言う事と受け取るのが当然である。
此処が学校ではあるものの名無しとディーノ以外は誰も居ない。
下校時間をとっくに過ぎているせいか教師ですら残って居てもほんのわずかの人数しかいなかった。
椅子に座ったまま名無しの手を引き抱き寄せてはディーノの顔がゆっくりと名無しに近づいてくる。
恋人同士と言えど、名無しはディーノが言う大人扱いを一度もされた事がない。
勿論何が大人扱いなのかすら名無しには想像もつかない。
その理由に名無しがまだ中学生だから…と言う理由も少なからずある。
名無しのペースに合わせて、名無しを大事に思っているからこそ抱き寄せたり触れるだけの額や頬にする口付け位しかディーノは名無しにしていなかった。
何時もと違う雰囲気に名無しはただ動けずに居た。
ゆっくりと近づいてくるディーノの顔に、名無しの心臓はドクン、ドクンと激しく高鳴ってはぎゅっと目を瞑った。
勿論名無しはディーノの言う大人扱いをされる事に対して嫌な訳がなかった。
何をされるかは名無しには分からない。
ただもしかして今までのように額や頬にではなく、唇への口付けだろうか…?と想像してしまう。
唇には絶対にされる事がなかったのだ。
ならもしかしたら…大人扱い、つまり唇に口付けられると名無しは解釈してしまってもおかしくない。
名無しだって唇にキスされたいと思う事は多々あった。
子供じみた口付けじゃない、ちゃんと唇同士が触れてする口づけをしたい…と。
恋人同士なのだ。
まだ中学生と言えど名無しだってそんな口づけがしたいとずっと思っていた。
けれどもいざその時が来てしまえば、心の準備がまだ出来ていないのか緊張してしまう。
ドクン、ドクンと名無しは自分の心臓の音に耳を傾け、ただただディーノに口付けられるのを待った…が、
「なーんて、な」
とそう言ってはディーノは名無しの額にそっと口付けを一つ落とす。
触れて離れるだけの口付け。
それは何時もイタリアに帰る時にディーノが名無しにする額への口付けだった。
額への口付けは親愛や祝福、愛情等があるが軽い愛情表現としての意味もあるが名無しは唇に口付けられると思っていたのに…だ。
『……え……』
思わず名無しの唇から言葉が無意識のうちに呟かれる。
目をぱちくりとするものの、状況が理解できていない名無しを見ては余裕の笑みを浮かべるだけだった。
「残念そうな顔してるな、名無し」
くくくと喉を鳴らしてはディーノはまるで悪戯が成功した子供の様にくしゃりと笑った。
まさか揶揄われていたなんて思いもせず、揶揄われた事にすら脳がまだ理解していない。
鳩が豆鉄砲を食ったような表情をする名無しをよそに、「…それとも額じゃなくて“こっち”にされると思ったか、名無しは?」と言っては名無しの顎に手を添えてディーノは名無しの顔を自分の方へと向けさせた。
親指の腹でゆっくりと名無しの柔らかい唇を撫でては、意地悪そうな笑みを浮かべる。
ディーノの親指の腹で触られた唇が熱を持ち、名無しの頬はみるみる赤く染まっていく。
名無し自身の体温が1度上がった…そう思ってしまう程に身体は熱く熱を持つ。
『~~~~っつ』
「ぷ…ははっ、そんなに真っ赤にして可愛いな名無しは」
真っ赤になった名無しを見下ろしてはディーノはくくくと、喉を鳴らした。
ディーノ自身名無しが望むならと考えた事だって勿論ある。
けれど名無しの反応を見てしまえばまだ早いなと察してしてしまう。
(名無しとキスできる日が、待ち遠しいな)
そんな事を思いながら、先程と同じようにわしゃわしゃと頭を撫でてはディーノは意地悪そうな笑みを浮かべては名無しに微笑んだ―――…
放課後にkiss
(揶揄わないでくださいよ、ディーノさん!!!)
(はは、悪い悪い。名無しがあまりにも可愛かったからつい…な)
(むうぅ…)
(そうむくれたって俺からしたら可愛いだけだぜ?…まぁそれはさておきちゃんとテストでいい点取ったらご褒美に“こっち”にキスしてやるよ)
(……良い点って何点ですか…?)
(そりゃあ欲を言えば100点だけど名無し英語苦手だしな)
((…絶対100点取ってやる…!!!))
2025/05/21
放課後、シンと静まり返った図書室で1人名無しは教科書とノートを開いては勉強していた。
カリカリとシャーペンの音を立てながら、ルーズリーフに綺麗なアルファベット…否、文章を書いていく。
教科書に記載されている英文、文法の使い方、その章で出て来た新しい英単語。
必要な部分に色ペンや蛍光ペンで印をつけて行けば、名無しは『ふぅ…』っと息を吐く。
長かったゴールデンウィークもあっという間に終わり、学生である身分からは決して逃れる事の出来ない…中間テストの時期がやってきた。
期末テストと違いたった5教科の中間テスト。
偏差値もそこまで高くなく、頭がどちらかと言えば悪い生徒が多い学校と言えどそれでも赤点を取ってしまえば補習になりかねない。
普段の放課後ともなれば、グラウンドでは運動部の走り込みむ声や野球部のバッドが球を打つ音が聞こえてくるはずなのに…今日はシンと静まり返っているのも中間テストがあるからだ。
テスト期間中は部活動は休止している。
あくまでも学生の本分は勉学なのだ。
部活動に力を入れすぎて勉学が疎かになってしまうのは学生にとっては本末転倒でしかない。
テスト期間中、部活がない分早く家に帰れるのに名無しは1人図書室に手勉強をしていた。
小学生が受けるテストと違い、中学のテストは5教科一気に来る上にそれなりに広い範囲が出題される。
そんな広い範囲がテストの出題範囲となれば、それなりの集中力が必要となるのだ。
だが長時間家でテスト期間中勉強をするのが名無しにとってはとても難しい。
家で勉強をするとなればあまりにも名無しには…否、名無しだけではない。
ほとんどの学生にとって誘惑が多すぎると言える。
テレビにゲーム、携帯電話や少女漫画…挙句の果てにはテスト前だと言うのに部屋の掃除をしかねない。
あまりにもテスト前特有の現象に名無しはよく陥ってしまうのだ。
中学に入りたての頃はうまく要領も掴めずに赤点ギリギリの点数をとっては親に叱られたのは言うまでも無かった。
それ以降、テスト期間は極力平日は学校の図書室で遅くまで勉強してから帰り、土日は図書館の自習室を利用して平均点より上の点数を今のところはキープしている。
普段からこまめに勉強していればと思うものの…学生であるならば勉強よりも遊びたい気持ちが勝ってしまい普段したとしても宿題位だろう。
『……んー、何で此処違うんだろう?』
そう誰も居ない図書室で1人呟いては名無しは先程ルーズリーフに書き写した内容を見つめる。
中学になり追加された英語と言う名無しにとっては地獄のような教科。
日本人なんだから日本語さえ出来ればいいじゃない!と思う程に名無しは英語が苦手だった。
テスト期間中は英語の教科を多めに勉強してはいるが、他の教科と比べて集中力だって切れやすいし気持ちが折れやすい。
そして今名無しが見つめている章の内容。
風邪で授業を欠席した際に行われた内容だったため、名無しは訳が分からず首を傾げる。
名無しが勉強していた所は丁度未来を表す“will”を使った内容だ。
教科書に書いている事と写させてもらったノートに書いている事をじっと見比べるものの、どうしても分からない箇所が出てきてしまう。
普段なら分からない箇所があれば聞きに行ったりもするが、生憎今はテスト期間中だ。
職員室に入ることが出来ないため名無しは授業終わりにしか分からない所を聞くことが出来ない。
だが風邪をひいて休んでいた事もあり英語だけでなく他の教科のノートを写すのに専念していたため、内容を理解する事を後回しにしてしまっていた。
すっかり忘れていた名無し自身の責任と言えど、流石に手を付けないわけには行かない。
内容だけは教科書と写させてもらったノートをみて理解しようとするがそれでも全部を理解するには名無しにとって相当難しい。
苦手科目故に、思考が時折停止してしまう。
こんな時は友達に聞こう!と思うものの、流石にこの時間に花や京子、友達が残っている事はない。
皆早々と帰宅してはそれぞれのテスト勉強に励んでいるのだから―――…
溜息を付いては名無しはじっと教科書とノート、そしてルーズリーフを見つめては1人理解しようとしていた。
どれくらいルーズリーフに目を落とし教科書とにらめっこしていたか名無しには分からない。
ふいにガラリと図書室の扉が開くと同時に、
「おーい、下校時間とっくに過ぎてるぞ…って、名無しか?」
と、聞き覚えのある声に名無しは教科書に落としていた視線を上げて声のする方へと視線を向けた。
金髪の髪に、鳶色の瞳がじっと名無しの姿を映している。
並盛中の臨時英語教師であり、本来はイタリアマフィアキャバッローネ・ファミリーの10代目ボスだ。
そして名無しの恋人でもある。
その容姿は一言で言えばイケメンだ。
女性100人居れば、100人全員が見惚れてしまう程の美貌。
並盛中に赴任した際には女子生徒のみならず女性教師にすら黄色い声を上げられ注目の的だったのを思い出す。
普段はかけていない黒縁の眼鏡姿は此処最近ようやく見慣れて来た。
着崩す事をせずキッチリと締められたネクタイに首からは教員証をぶら下げている。
教員証以外にも首には絆創膏が貼られており、水色のカーディガンからのぞく左服の裾から出ている腕には白い包帯が巻かれていた。
勿論首や腕を怪我しているわけではない、刺青を隠すために絆創膏や包帯をしているのだから。
『あ…ディーノさ、…ディーノ先生…』
反射的に普段の呼び方である“ディーノさん”と口にしようとするものの、すんでのところで名無しは言い直した。
此処は学校だ、誰が何処で聞いているのかも分からないのだから油断はできない。
ディーノは現在、リボーンの無茶振りにより並盛中の英語教師として潜入しているのだ。
以前もツナ達との連携の必要性のために潜入していたが…今回は長めの潜入らしい。
流石に潜入理由を聞く事は名無し自身しなかった。
理由はどうあれ普段は日本とイタリア。
住む場所も住む世界も違う名無しとディーノだが、今回は長めの潜入と言う事で普段よりもより近くディーノの存在を名無しは感じれるのだ。
勿論学校での立場は生徒と教師だ。
学校では恋人の様に接する事はないのだが、名無しにとっては少しでもディーノといれる時間があると思えば嬉しくて仕方がない。
普段はなかなか会う事が出来ないのだ、その事を踏まえればディーノを英語教師として潜入させたリボーンには感謝の気持ちしかないのだ。
「ん?テスト勉強してたのか、名無し?」
『え…あぁ、そうです』
見慣れて来たと言えど、やはり眼鏡をかけたディーノを名無しはかっこいいと心底思ってしまう。
実際に初めて臨時教師として赴任してきた際は見惚れて声も出なかったのだから。
今も同じように頬を染めてはディーノの姿をじっと見つめる。
そんな名無しを気にせずディーノはゆっくりと革靴の音を立てながら、名無しが座って居る図書室の席へと近づく。
名無しの傍まで近寄れば、名無しの手元には教科書やノートが広げられていた。
下校時間までテスト勉強をしていたのだろうと言う事が目に見えてディーノには分かる。
「ちゃんとテスト勉強してるの偉いな、名無し」
『流石に…テスト期間中ですからね。あ、でもディーノ先生…分からない所が合って…ちょっとだけいいですか…?』
「おう、いいぜ!で、名無しはどこが分からないんだ…?」
そう言いながらディーノは名無しの座る椅子の隣の席に腰を降ろせばゆっくりと教科書とノートへと視線を向ける。
教科書には重要な部分には蛍光ペンで線が引かれており、ノートも色とりどりのペンで綺麗に纏められていた。
見やすく、そして教科書もきちんと書き込みがされており普段から真面目に授業を受けているのが一目で分かるほどだ。
名無しとディーノ以外図書室内には誰も居ないと言えど、距離が近いせいか名無しはドクンと心臓が脈打つ。
バレないように『此処なんですけど…』と言っては名無しは先程から分からな箇所に指先を持って行く。
名無しが指さした箇所には【Emily will visit Canada next year.】と書かれた文章がディーノの瞳に映る。
三人称単数の時、英語文法では主語が三人称で単数の場合動詞に“s”または“es”を付けるという規則があるのだ。
だが書かれていたのはただの“will”のみ。
名無しからしたら不思議でしかないだろうと言う事がディーノはすぐに理解した。
(そういやあこの授業の時名無し風邪ひいてたもんな…)
口頭では説明したがある意味さらっと終わらせた部分でもあるからだ。
「三人称単数の時でも“will”は“will”のままになるんだよ」
『三人称単数なのにですか?』
「あぁ。じゃあ“will”のままの場合後の動詞はどうなる?」
『…動詞の原形の…まま…?』
「そう言う事、正解だ名無し」
くしゃりと笑ってはまるでよく出来ましたと子供を褒める様に、ディーノはわしゃわしゃと名無しの髪を撫でる。
温かく大きくなディーノの手。
久々に撫でられるせいか名無しは口では『ちょ、ディーノ先生子供扱いしないでくださいよ…!』と言ってしまうが、言葉とは裏腹に表情は嬉しそうにふにゃりと笑っていた。
言葉と表情がちぐはぐなのに、そんな名無しがディーノは可愛くて仕方なかった。
弟弟子であるツナとはまた違う…一人の異性としてディーノは名無しを可愛がる。
リボーンの頼みで英語教師として並盛中に潜入しているため、折角日本に来ているのにディーノはプライベートで名無しと会う事は出来ない。
その上テスト期間中であるが故に授業中位しか名無しはディーノの声も姿も見る事が出来ないのだ。
連絡先は勿論知っている。
その気になれば電話やメールを送る事が出来るが、テスト期間中と言う事もあり名無しもディーノもお互いに控えていた。
久しぶりの名無しとディーノ、2人だけの時間にディーノは思わず笑みを零しては愛おしそうに目を細める。
「なら…大人扱いしてやろうか?」
『…ふぇ…?』
ディーノさんの言葉に思わず名無しは目を大きく見開いた。
先程名無し自身が子供扱いしないでと言ったのだ。
ならディーノからしたら子供扱い…ではなく大人の扱いをして欲しいと言う事と受け取るのが当然である。
此処が学校ではあるものの名無しとディーノ以外は誰も居ない。
下校時間をとっくに過ぎているせいか教師ですら残って居てもほんのわずかの人数しかいなかった。
椅子に座ったまま名無しの手を引き抱き寄せてはディーノの顔がゆっくりと名無しに近づいてくる。
恋人同士と言えど、名無しはディーノが言う大人扱いを一度もされた事がない。
勿論何が大人扱いなのかすら名無しには想像もつかない。
その理由に名無しがまだ中学生だから…と言う理由も少なからずある。
名無しのペースに合わせて、名無しを大事に思っているからこそ抱き寄せたり触れるだけの額や頬にする口付け位しかディーノは名無しにしていなかった。
何時もと違う雰囲気に名無しはただ動けずに居た。
ゆっくりと近づいてくるディーノの顔に、名無しの心臓はドクン、ドクンと激しく高鳴ってはぎゅっと目を瞑った。
勿論名無しはディーノの言う大人扱いをされる事に対して嫌な訳がなかった。
何をされるかは名無しには分からない。
ただもしかして今までのように額や頬にではなく、唇への口付けだろうか…?と想像してしまう。
唇には絶対にされる事がなかったのだ。
ならもしかしたら…大人扱い、つまり唇に口付けられると名無しは解釈してしまってもおかしくない。
名無しだって唇にキスされたいと思う事は多々あった。
子供じみた口付けじゃない、ちゃんと唇同士が触れてする口づけをしたい…と。
恋人同士なのだ。
まだ中学生と言えど名無しだってそんな口づけがしたいとずっと思っていた。
けれどもいざその時が来てしまえば、心の準備がまだ出来ていないのか緊張してしまう。
ドクン、ドクンと名無しは自分の心臓の音に耳を傾け、ただただディーノに口付けられるのを待った…が、
「なーんて、な」
とそう言ってはディーノは名無しの額にそっと口付けを一つ落とす。
触れて離れるだけの口付け。
それは何時もイタリアに帰る時にディーノが名無しにする額への口付けだった。
額への口付けは親愛や祝福、愛情等があるが軽い愛情表現としての意味もあるが名無しは唇に口付けられると思っていたのに…だ。
『……え……』
思わず名無しの唇から言葉が無意識のうちに呟かれる。
目をぱちくりとするものの、状況が理解できていない名無しを見ては余裕の笑みを浮かべるだけだった。
「残念そうな顔してるな、名無し」
くくくと喉を鳴らしてはディーノはまるで悪戯が成功した子供の様にくしゃりと笑った。
まさか揶揄われていたなんて思いもせず、揶揄われた事にすら脳がまだ理解していない。
鳩が豆鉄砲を食ったような表情をする名無しをよそに、「…それとも額じゃなくて“こっち”にされると思ったか、名無しは?」と言っては名無しの顎に手を添えてディーノは名無しの顔を自分の方へと向けさせた。
親指の腹でゆっくりと名無しの柔らかい唇を撫でては、意地悪そうな笑みを浮かべる。
ディーノの親指の腹で触られた唇が熱を持ち、名無しの頬はみるみる赤く染まっていく。
名無し自身の体温が1度上がった…そう思ってしまう程に身体は熱く熱を持つ。
『~~~~っつ』
「ぷ…ははっ、そんなに真っ赤にして可愛いな名無しは」
真っ赤になった名無しを見下ろしてはディーノはくくくと、喉を鳴らした。
ディーノ自身名無しが望むならと考えた事だって勿論ある。
けれど名無しの反応を見てしまえばまだ早いなと察してしてしまう。
(名無しとキスできる日が、待ち遠しいな)
そんな事を思いながら、先程と同じようにわしゃわしゃと頭を撫でてはディーノは意地悪そうな笑みを浮かべては名無しに微笑んだ―――…
放課後にkiss
(揶揄わないでくださいよ、ディーノさん!!!)
(はは、悪い悪い。名無しがあまりにも可愛かったからつい…な)
(むうぅ…)
(そうむくれたって俺からしたら可愛いだけだぜ?…まぁそれはさておきちゃんとテストでいい点取ったらご褒美に“こっち”にキスしてやるよ)
(……良い点って何点ですか…?)
(そりゃあ欲を言えば100点だけど名無し英語苦手だしな)
((…絶対100点取ってやる…!!!))
2025/05/21
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