家庭教師ヒットマンREBORN!
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※【ディーノside】
春の陽気が心地よい4月、桜が咲き誇る公園でディーノは桜の木を背にぼんやりと空を見上げていた。
ポカポカと降り注ぐ陽気に、まだ風は冷たくひんやりとディーノの頬を撫でる。
ディーノは現在、恋人である名無しが待ち合わせ場所であるこの公園に来るのを待っていた。
だが待ち合わせの時間を少し過ぎているにも関わらず、名無しの姿は何処にもなく連絡さえも来ていない。
普段遅れる時は必ずと言っていいほど連絡をくれるのにと思うものの、今のディーノにとって名無しからの連絡が来ていない事にほんの少し…安堵を覚えていた。
(今日こそ…ちゃんと言わねえとな…)
桜がひらひらと舞い散る中、ディーノはそんな事を思いながら目を伏せる。
言わなければいけない言葉…それは決して良いものではないし名無しを傷つける言葉になってしまうだろう。
自分で決めた事なのに気が重い。
そのせいかディーノの心は重く沈んでしまう。
よく小説で主人公の心情を表すように空の描写がされる事があるが、今の空はディーノの心情とは全く違い晴天だった。
(今日こそ…名無しに伝えるって、決めただろ…俺)
ぎゅっと拳を握ってはディーノ名無しが来たら伝えなければいけない言葉を心の中で紡ぐ。
―――「別れよう」
と。
漢字を入れると4文字、ひらがなにすればたった5文字の言葉。
長い文字ではないのに、それでも名無しを傷つけるには十分すぎる言葉だと言う事をディーノは理解している。
別に名無しと仲が悪いわけでも喧嘩をしたわけでもない。
かと言って名無しの事が嫌いかと問われれば、答えはノーだ。
なら何故その言葉を言わなければならないのかと問われれば…それはディーノ自身の問題だった。
名無しとの出会いは本当にたまたまだった。
何時ものように自分の元家庭教師だったリボーンにいいようにこき使われている事も構わず、ディーノはイタリアから日本に来ていた。
頼まれたら断れない性格だから仕方ないとディーノ自身も分かっている。
これまでも何度もイタリアから日本に来ているのだからその点についてはディーノ自身思う所は特に無い。
その日は、たまたま並盛町をディーノはロマーリオと部下数人と共に歩いていた。
弟弟子であるツナが家に帰るまでにはまだ時間が合った為、暇を持て余していたのも理由の1つだ。
時間を潰す目的で並盛町を歩いていると、不意に絡まれている女の子がディーノの鳶色の瞳に映る。
容姿は大変可愛らしく、女の子が嫌がっているのを見てしまえばディーノの身体は自然と動きナンパに合っていた女の子…名無しをディーノが助けたのが始まりだった。
それから何度か顔見知りになり、仲良くなっては名無しからの告白で、ディーノと名無しは付き合い始めた。
付き合って半年。
頻繁に会う事も無ければ時差の兼ね合いもあり、名無しとは連絡を取るものの大体時間のズレが生じる事が多々あった。
それが原因で別れようなんてディーノは思わない。
なら何故と問われれば、それは単純明快だ。
ディーノがキャバッローネ・ファミリーの10代目ボスであるからだ。
もしディーノが一般人で名無しと普通に出会っていたら…そんな夢物語の様な事を考えた事だって合った。
だがいくらそんな事を考えても現実は変わらない。
ディーノがキャバッローネ・ファミリーの10代目ボスである事も、自分には5000人の部下が居る事も変わる事のない事実。
守らなければならない者がたくさんいる事も、背負うべき物がたくさんある事も…名無しは知らない。
過激派ではないにしろ、それでも綺麗な世界に生きているとはいいがたいのだ。
血を流す事も時には人を傷つける事だってマフィアなのだから当然ある。
そんな世界を、そんな自分を知らなくていいとディーノは思ってしまう。
何故なら名無しは一般人だ。
汚れを知らない、綺麗な世界の人間がわざわざ薄汚れた世界に片足を突っ込む必要なんて何処にもないのだから―――…
『ディーノさん!』
「…名無し」
そんな事を考えていると、待ち合わせ場所にようやく今から別れを告げようとする相手…名無しの姿がディーノの鳶色の瞳に映る。
薄い水色の生地にフリルやレースのあしらわれた可愛らしいワンピース。
ロング丈で上品な印象を与えるデザインは、まるでお嬢様な雰囲気を纏っていた。
ワンピースの裾にはふんわりとしたフリルが付いており女性らしい可愛らしさも忘れずに詰まっていた。
少し息を切らせながら頬を赤く染めている名無しの姿に、ディーノの心臓はドクンと跳ねる。
まるで魅入るように名無しの姿から視線が逸らせない。
―――ドクン、ドクン
名無しを見れば心臓が早く脈を打ち、紡ごうとする言葉を思い出しては心臓が締め付けられるように痛んだ。
本当に名無しに別れを告げていいのだろうかと…自分で決めたはずなのにその言葉がディーノを苦しめる。
そんなディーノの心情を知らずに、名無しは俯いて膝に手を付き大きく上下に身体を揺らした。
走って来たのだ。
そのせいで呼吸が乱れ名無しはゼェハァと言いながら肩を揺らしてもしょうがない。
『ご、め…んさいっ…家出る時に宅配便来ちゃって…冷凍商品だったから…片付けるのに、ちょっと…っ…て、手こずっちゃって…』
「別に気にすんなよ名無し…それより大丈夫か?」
心配そうにディーノは名無しの顔を覗き込む。
別に名無しが遅れた所でディーノは怒らない。
それくらいで怒る程小さい人間ではないのだ。
それに…今日こそ別れを告げようとしていたせいか、来るのがもっと遅くても良かったのにと思ってしまった。
「ほら、ゆっくりでいいから呼吸整えような…?」
優しく名無しの背中に手を伸ばしてはゆっくりと擦る。
呼吸がしやすいように一定のリズムで擦れば『…だ、大丈…夫っ!』っと、ディーノの言葉に名無しはパッと花の咲いたような笑みを浮かべては答えた。
ある程度呼吸が整ってきたが、まだ完全に息が整っていないせいか肩で息をし、所々声が掠れている。
「っつ…」
(あー…無理、別れるなんてやっぱ無理…)
純粋無垢な名無しの笑顔を見てしまえば、先ほどまで言おうと思っていた別れの言葉なんて跡形もなく消え去った。
何時もこのパターンなのだ。
別れようと決めたはずなのに、ディーノがずるずる別れの言葉を言えない原因。
名無しの表情を、顔を、声を聞けば“別れよう”と言う言葉はいつも跡形もなく消え去る。
あれだけ決意したはずなのに、どうも名無しの前ではその決意すら直ぐ揺れて消え去りどこかに消えてしまうのだ。
(俺は…名無しが大事だから…別れなきゃいけねえのに…)
喉に出てくることもない言葉を飲み込んでは名無しをじっと見る。
名無しを見ても、ディーノの想いは相変わらず変わらない。
名無しの事が好きで、大好きで仕方ないのだ。
愛していると言っても過言ではない。
けれどそれと同時に大事で大切で…名無しに嫌な思いも嫌な目にも合わせたくなかった。
マフィアのボスである以上、ディーノの弱点の1つに名無しが入るのは当然の事だ。
いくら日本に居るからと言えど、噂を嗅ぎつけた輩が…ディーノを陥れようとする人間が名無しを狙わないわけがない。
だからこそ別れなければと思うのにその言葉が紡げなかった。
信頼しているディーノ自身の部下であるロマーリオにこの事を相談した事だってある。
自分よりも人生経験がある大人に、すがる思いで相談した。
だがロマーリオが言った言葉はなんの捻りもなくシンプルな解答だった。
―――「あのなボス、一般人だとか住む世界が違うとか…んなもん諦めた方が早いぜ?」
まだ別れようと告げる事が出来ずに次こそはと足掻いていたディーノ自身が言われた言葉。
“諦めた方が早い”、そりゃそうだ…と。
必死に足掻くのを止めてしまえばこんなにも悩まずに済む話なのはディーノ自身分かっていた。
それでも、マフィアのボスとただの一般人。
本来であれば関わる事も、出会う事もない関係だ。
まして住む場所も住む世界だって違う事は誰がどう考えても明白だった。
赤の他人から見ても、マフィアのボスと一般人の組み合わせなんてお伽噺の中だけの話でしかない。
マフィアなんて怖い、危ないなんて一般人なら誰もが思うものだ。
一般人ではなかったディーノ自身ですら、へなちょこ時代争いごとが嫌いだった事は自分自身が一番理解している。
だからこそディーノは名無しと別れようとした。
自分に関わってはいけないと、こんなにもいい子が裏の世界を知ってはいけないと。
自分の気持ちを、名無しへの気持ちを押し殺してでも名無しの事は諦めなければいけない…と。
諦めなければ、きっと待っているのは最悪な結末である事は安易に想像できた。
だからこそ何度も自分に言い聞かせてようやく大事なら、大切なら別れようと決意は出来たのに―――…
『ディーノさんどうしたんですか?』
不意に、純粋無垢な名無しの笑顔が向けられる。
首を傾げ、“どうしたの?”と心配そうに問う名無し。
『ディーノさんもしかして来る途中コケちゃった?それともお腹痛い…?』
名無しはディーノの部下が居ないとディーノが運動音痴になる事を知っている。
デートの為の待ち合わせだ。
デートの時はディーノの部下が気を利かせてくれるため、必然的にディーノは運動音痴になる。
だからこそ様子がおかしいディーノに対し、名無しは思いつく限りの
(名無しの顔見てたら…やっぱり俺別れるなんて無理だ)
名無しの腰に手を添えては、自分の胸元に引き寄せる。
空いている手を名無しの頭の後頭部に添えてはぎゅっと抱きしめた。
名無しの温かい体温を服越しに感じては、ぎゅっと名無しを抱きしめる腕に力がこもる。
まるで離さないと、諦めないと誓う様に力を込めては名無しの体温を感じた。
温かい名無しの温もり。
ふんわりと香るシャンプーの香りが鼻孔を擽り、甘く溶けていく。
『…ディーノさん?』
ディーノに急に抱きしめられた名無しは困惑しながらも心配そうにディーノの名を呼ぶ。
そんな名無しに対し、ディーノは変わらぬ笑みを浮かべては言葉を紡いだ。
「否…名無しの事好きだなって思っちまって…」
あぁもう…俺はこの子を手放せない――――…
ディーノは諦めた、考えるのを。
一般人だから、マフィアのボスだからなんて…きっと些細な事に過ぎないと。
そしてディーノは名無しが大好きなのだと。
改めて自覚をしてしまえば、もうディーノの中から名無しと別れると言う選択肢はなくなっていた。
名無しが一般人と言う事も、ディーノの自身がマフィアのボスと言う事も変える事の出来ない事実。
けれどそれ以上に名無しの事が好きだと言う気持ちが、ディーノの諦めようとした事実さえも覆した。
ロマーリオの言う様に諦めた方が早かったのだ。
どれだけうだうだ悩み考えた所で…ディーノの気持ちは変わらない。
ロマーリオもそれに気付いて居たからこそ、昨夜ディーノに言ったのだろう、諦めた方が早いと。
始まりを告げるパルティータ
(き、急にどうしたんですかディーノさん?!わ、私もディーノさんの事は好きですよ…?)
(知ってる…。知ったうえで、俺がぜってえ守ってやるからな)
2025/04/14
春の陽気が心地よい4月、桜が咲き誇る公園でディーノは桜の木を背にぼんやりと空を見上げていた。
ポカポカと降り注ぐ陽気に、まだ風は冷たくひんやりとディーノの頬を撫でる。
ディーノは現在、恋人である名無しが待ち合わせ場所であるこの公園に来るのを待っていた。
だが待ち合わせの時間を少し過ぎているにも関わらず、名無しの姿は何処にもなく連絡さえも来ていない。
普段遅れる時は必ずと言っていいほど連絡をくれるのにと思うものの、今のディーノにとって名無しからの連絡が来ていない事にほんの少し…安堵を覚えていた。
(今日こそ…ちゃんと言わねえとな…)
桜がひらひらと舞い散る中、ディーノはそんな事を思いながら目を伏せる。
言わなければいけない言葉…それは決して良いものではないし名無しを傷つける言葉になってしまうだろう。
自分で決めた事なのに気が重い。
そのせいかディーノの心は重く沈んでしまう。
よく小説で主人公の心情を表すように空の描写がされる事があるが、今の空はディーノの心情とは全く違い晴天だった。
(今日こそ…名無しに伝えるって、決めただろ…俺)
ぎゅっと拳を握ってはディーノ名無しが来たら伝えなければいけない言葉を心の中で紡ぐ。
―――「別れよう」
と。
漢字を入れると4文字、ひらがなにすればたった5文字の言葉。
長い文字ではないのに、それでも名無しを傷つけるには十分すぎる言葉だと言う事をディーノは理解している。
別に名無しと仲が悪いわけでも喧嘩をしたわけでもない。
かと言って名無しの事が嫌いかと問われれば、答えはノーだ。
なら何故その言葉を言わなければならないのかと問われれば…それはディーノ自身の問題だった。
名無しとの出会いは本当にたまたまだった。
何時ものように自分の元家庭教師だったリボーンにいいようにこき使われている事も構わず、ディーノはイタリアから日本に来ていた。
頼まれたら断れない性格だから仕方ないとディーノ自身も分かっている。
これまでも何度もイタリアから日本に来ているのだからその点についてはディーノ自身思う所は特に無い。
その日は、たまたま並盛町をディーノはロマーリオと部下数人と共に歩いていた。
弟弟子であるツナが家に帰るまでにはまだ時間が合った為、暇を持て余していたのも理由の1つだ。
時間を潰す目的で並盛町を歩いていると、不意に絡まれている女の子がディーノの鳶色の瞳に映る。
容姿は大変可愛らしく、女の子が嫌がっているのを見てしまえばディーノの身体は自然と動きナンパに合っていた女の子…名無しをディーノが助けたのが始まりだった。
それから何度か顔見知りになり、仲良くなっては名無しからの告白で、ディーノと名無しは付き合い始めた。
付き合って半年。
頻繁に会う事も無ければ時差の兼ね合いもあり、名無しとは連絡を取るものの大体時間のズレが生じる事が多々あった。
それが原因で別れようなんてディーノは思わない。
なら何故と問われれば、それは単純明快だ。
ディーノがキャバッローネ・ファミリーの10代目ボスであるからだ。
もしディーノが一般人で名無しと普通に出会っていたら…そんな夢物語の様な事を考えた事だって合った。
だがいくらそんな事を考えても現実は変わらない。
ディーノがキャバッローネ・ファミリーの10代目ボスである事も、自分には5000人の部下が居る事も変わる事のない事実。
守らなければならない者がたくさんいる事も、背負うべき物がたくさんある事も…名無しは知らない。
過激派ではないにしろ、それでも綺麗な世界に生きているとはいいがたいのだ。
血を流す事も時には人を傷つける事だってマフィアなのだから当然ある。
そんな世界を、そんな自分を知らなくていいとディーノは思ってしまう。
何故なら名無しは一般人だ。
汚れを知らない、綺麗な世界の人間がわざわざ薄汚れた世界に片足を突っ込む必要なんて何処にもないのだから―――…
『ディーノさん!』
「…名無し」
そんな事を考えていると、待ち合わせ場所にようやく今から別れを告げようとする相手…名無しの姿がディーノの鳶色の瞳に映る。
薄い水色の生地にフリルやレースのあしらわれた可愛らしいワンピース。
ロング丈で上品な印象を与えるデザインは、まるでお嬢様な雰囲気を纏っていた。
ワンピースの裾にはふんわりとしたフリルが付いており女性らしい可愛らしさも忘れずに詰まっていた。
少し息を切らせながら頬を赤く染めている名無しの姿に、ディーノの心臓はドクンと跳ねる。
まるで魅入るように名無しの姿から視線が逸らせない。
―――ドクン、ドクン
名無しを見れば心臓が早く脈を打ち、紡ごうとする言葉を思い出しては心臓が締め付けられるように痛んだ。
本当に名無しに別れを告げていいのだろうかと…自分で決めたはずなのにその言葉がディーノを苦しめる。
そんなディーノの心情を知らずに、名無しは俯いて膝に手を付き大きく上下に身体を揺らした。
走って来たのだ。
そのせいで呼吸が乱れ名無しはゼェハァと言いながら肩を揺らしてもしょうがない。
『ご、め…んさいっ…家出る時に宅配便来ちゃって…冷凍商品だったから…片付けるのに、ちょっと…っ…て、手こずっちゃって…』
「別に気にすんなよ名無し…それより大丈夫か?」
心配そうにディーノは名無しの顔を覗き込む。
別に名無しが遅れた所でディーノは怒らない。
それくらいで怒る程小さい人間ではないのだ。
それに…今日こそ別れを告げようとしていたせいか、来るのがもっと遅くても良かったのにと思ってしまった。
「ほら、ゆっくりでいいから呼吸整えような…?」
優しく名無しの背中に手を伸ばしてはゆっくりと擦る。
呼吸がしやすいように一定のリズムで擦れば『…だ、大丈…夫っ!』っと、ディーノの言葉に名無しはパッと花の咲いたような笑みを浮かべては答えた。
ある程度呼吸が整ってきたが、まだ完全に息が整っていないせいか肩で息をし、所々声が掠れている。
「っつ…」
(あー…無理、別れるなんてやっぱ無理…)
純粋無垢な名無しの笑顔を見てしまえば、先ほどまで言おうと思っていた別れの言葉なんて跡形もなく消え去った。
何時もこのパターンなのだ。
別れようと決めたはずなのに、ディーノがずるずる別れの言葉を言えない原因。
名無しの表情を、顔を、声を聞けば“別れよう”と言う言葉はいつも跡形もなく消え去る。
あれだけ決意したはずなのに、どうも名無しの前ではその決意すら直ぐ揺れて消え去りどこかに消えてしまうのだ。
(俺は…名無しが大事だから…別れなきゃいけねえのに…)
喉に出てくることもない言葉を飲み込んでは名無しをじっと見る。
名無しを見ても、ディーノの想いは相変わらず変わらない。
名無しの事が好きで、大好きで仕方ないのだ。
愛していると言っても過言ではない。
けれどそれと同時に大事で大切で…名無しに嫌な思いも嫌な目にも合わせたくなかった。
マフィアのボスである以上、ディーノの弱点の1つに名無しが入るのは当然の事だ。
いくら日本に居るからと言えど、噂を嗅ぎつけた輩が…ディーノを陥れようとする人間が名無しを狙わないわけがない。
だからこそ別れなければと思うのにその言葉が紡げなかった。
信頼しているディーノ自身の部下であるロマーリオにこの事を相談した事だってある。
自分よりも人生経験がある大人に、すがる思いで相談した。
だがロマーリオが言った言葉はなんの捻りもなくシンプルな解答だった。
―――「あのなボス、一般人だとか住む世界が違うとか…んなもん諦めた方が早いぜ?」
まだ別れようと告げる事が出来ずに次こそはと足掻いていたディーノ自身が言われた言葉。
“諦めた方が早い”、そりゃそうだ…と。
必死に足掻くのを止めてしまえばこんなにも悩まずに済む話なのはディーノ自身分かっていた。
それでも、マフィアのボスとただの一般人。
本来であれば関わる事も、出会う事もない関係だ。
まして住む場所も住む世界だって違う事は誰がどう考えても明白だった。
赤の他人から見ても、マフィアのボスと一般人の組み合わせなんてお伽噺の中だけの話でしかない。
マフィアなんて怖い、危ないなんて一般人なら誰もが思うものだ。
一般人ではなかったディーノ自身ですら、へなちょこ時代争いごとが嫌いだった事は自分自身が一番理解している。
だからこそディーノは名無しと別れようとした。
自分に関わってはいけないと、こんなにもいい子が裏の世界を知ってはいけないと。
自分の気持ちを、名無しへの気持ちを押し殺してでも名無しの事は諦めなければいけない…と。
諦めなければ、きっと待っているのは最悪な結末である事は安易に想像できた。
だからこそ何度も自分に言い聞かせてようやく大事なら、大切なら別れようと決意は出来たのに―――…
『ディーノさんどうしたんですか?』
不意に、純粋無垢な名無しの笑顔が向けられる。
首を傾げ、“どうしたの?”と心配そうに問う名無し。
『ディーノさんもしかして来る途中コケちゃった?それともお腹痛い…?』
名無しはディーノの部下が居ないとディーノが運動音痴になる事を知っている。
デートの為の待ち合わせだ。
デートの時はディーノの部下が気を利かせてくれるため、必然的にディーノは運動音痴になる。
だからこそ様子がおかしいディーノに対し、名無しは思いつく限りの
(名無しの顔見てたら…やっぱり俺別れるなんて無理だ)
名無しの腰に手を添えては、自分の胸元に引き寄せる。
空いている手を名無しの頭の後頭部に添えてはぎゅっと抱きしめた。
名無しの温かい体温を服越しに感じては、ぎゅっと名無しを抱きしめる腕に力がこもる。
まるで離さないと、諦めないと誓う様に力を込めては名無しの体温を感じた。
温かい名無しの温もり。
ふんわりと香るシャンプーの香りが鼻孔を擽り、甘く溶けていく。
『…ディーノさん?』
ディーノに急に抱きしめられた名無しは困惑しながらも心配そうにディーノの名を呼ぶ。
そんな名無しに対し、ディーノは変わらぬ笑みを浮かべては言葉を紡いだ。
「否…名無しの事好きだなって思っちまって…」
あぁもう…俺はこの子を手放せない――――…
ディーノは諦めた、考えるのを。
一般人だから、マフィアのボスだからなんて…きっと些細な事に過ぎないと。
そしてディーノは名無しが大好きなのだと。
改めて自覚をしてしまえば、もうディーノの中から名無しと別れると言う選択肢はなくなっていた。
名無しが一般人と言う事も、ディーノの自身がマフィアのボスと言う事も変える事の出来ない事実。
けれどそれ以上に名無しの事が好きだと言う気持ちが、ディーノの諦めようとした事実さえも覆した。
ロマーリオの言う様に諦めた方が早かったのだ。
どれだけうだうだ悩み考えた所で…ディーノの気持ちは変わらない。
ロマーリオもそれに気付いて居たからこそ、昨夜ディーノに言ったのだろう、諦めた方が早いと。
始まりを告げるパルティータ
(き、急にどうしたんですかディーノさん?!わ、私もディーノさんの事は好きですよ…?)
(知ってる…。知ったうえで、俺がぜってえ守ってやるからな)
2025/04/14
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