家庭教師ヒットマンREBORN!
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※スクアーロ先生(英語教師)×生徒
「好きです、先生!」
鈴を転がしたような可愛らしい声とともに、保健室のベッドの上で名無しは激しく自分のタイミングの悪さに後悔した。
1時間目の授業が終わったタイミングで名無しは体調不良を理由に保健室で休んでいた。
原因は分かっている、月に一度女に生まれたら免れることなくやってくる…所謂生理である。
名無しは基本的に生理は軽い方なのだが、この日だけはどうも重く下腹部の痛みが耐えるに耐えれなかった。
自分自身で常備している薬も無ければ、また学校の常備されている痛み止めなんてものはなく、もし薬自体が合ったとしても渡す事は認められていない。
だがありがたい事に並盛中の校医であるシャマルが居る。
彼は養護教諭ではなく、れっきとした医者だ。
医者であるのだから薬位出す事は養護教諭ではないので可能である。
藁にも縋る思いで訪れたものの、生憎シャマルは所用で席を外している為薬を貰う事は出来なかった。
代わりに保健室に在中していた教師には保健室で休むか帰宅するかの2択を挙げられたが、名無しは迷わず前者を選びこうして保健室で休んでいたのだ。
だが起きたタイミングが非常に悪かった。
ベッドの上で目を瞑って休んでいればいつの間にか寝てしまい、起きたタイミングで声が聞こえれば怪我をした生徒でも来たのだろうかと思っていればまさかの告白現場に居合わせてしまった状況だった。
好きで居合わせたわけでも盗み聞きしたかったわけでもない。
それでもこの状況に居た堪れない気持ちになってしまっては心の中でひっそりと溜息を付く。
(なんでこんなタイミングで起きちゃったんだろ…)
幸いにも一番壁際のベッドでカーテンを仕切っているため、名無しの存在は気づかれていない。
だが名無しから言わせてもらえばこんな所で告白するなと言いたくなってしまう。
一応校医であるシャマルが居り、今日に限っては居なかったがそれでも代わりに他の先生が保健室に居るのだ。
幾ら頻繁に生徒や教師が出入りしないにしろ…もう少し場所を考えてくれと思ってしまうのは至極当然。
(告白するなら屋上とか校舎裏とか…ベタな場所ですればいいのに)
ふと、最近読んだ学園物の少女漫画の告白スポットの王道場所をあげるものの、(否、王道過ぎてつまらないか…?)と1人自分自身にツッコミを入れる。
だが此処は保健室であり、体調が悪い生徒が休んだり簡単な手当てをしてもらう場だ。
告白をするような場では決してなく、何より名無しの様に休んでいる生徒だっているのだからきちんと確認したうえで告白してくれと文句の一つも言いたくなる。
盗み聞きなんてはしたない真似を名無しが望んでしたわけじゃない事だけを…今告白している輩には知っていて欲しいと、心底思ってしまう。
(それはそれとして…誰が告白してるのかな?)
こっちは聞きたくもない告白を聞かされているんのだから誰が告白してるかくらい見ても問題ないだろう…と。
好奇心に負け恐る恐る音を立てずにカーテンの隙間から覗き込んでみれば、丁度告白をした女子生徒の姿が名無しの目に映る。
女子生徒は名無しの1つ上の学年である先輩だった。
同じクラスである笹川京子に相次いで人気のある先輩で、無論容姿は同じ女である名無しからしても可愛らしく守ってあげたくなるほどだ。
ほんのり赤く染まる頬を見れば、意中の相手に告白をしているのだと一目見ただけで分かる。
うるんだ瞳で可愛らしく告白しているのだから、これは彼女の完全勝利だろうと名無しは思う程だ。
相手は誰だろうとつい名無しは思ってしまうが、名無しが居る場所からでは相手の姿までは見えなかった。
きっと同じ3年生の先輩だろうと思うと、3年生に関しては部活をしているわけでもない名無しからしてみれば誰一人として3年生の先輩を知る事はない。
カーテンの隙間から覗くのを止め、名無しは先程と同じように音を立てずにベッドの中で横になる。
体調不良を理由に休んでいたのだ。
下腹部の痛みは良くなったものの、寝ようと思えば名無しは眠れる。
昨夜夜遅くまで英語の勉強をしていたのだ。
それも相まって睡眠時間が短かったせいかベッドで横になればうつらうつらと自分の体温で温められた布団の中の温もりに夢の中へと誘われようとしている。
「好きです、スクアーロ先生。私と…付き合ってくれませんか…?」
が、再び夢の世界へと戻ろうとした名無しの耳にそんな言葉が届けば名無しは眠る所ではなくなった。
同級生にでも告白をしているのだろうと思っていたが、どうやら女子生徒が愛の告白をしているのはどうやら同じ生徒…ではなく、教師だった。
そして教師と言ってもただの教師ではない。
英語教師であり、名無しと恋人関係にある人の名前だ。
何故保健医でもない英語教師であるスクアーロの名が呼ばれ、何故保健室に英語教師であるスクアーロが居るのか名無しにとって謎でしかない。
横になったまま聞き耳を立てていれば「あのな…」と、聞き慣れた声に名無しの心臓は飛び跳ねる。
その聞き慣れた声は、まさしく恋人であるスクアーロの声なのだから―――…
「悪いが俺は教師だ。生徒 と付き合う気もなけりゃ…餓鬼に興味はねぇー」
「…そんないい方しなくても…」
「俺は事実をいったまでだぁ。変に期待をさせる優しさはねえって事だ」
「……っつ」
息を飲むような声と共に、バンっと、スクアーロに告白した女子生徒は保健室から逃げるように飛び出して行った。
スクアーロの事だ。
追いかける事はしないだろうが、それでも後味が悪い状況であることに違いはない。
その証拠に重い溜息を吐いてはスクアーロが保健室の扉の方へと歩き、扉を閉める音が名無しの耳に届いた。
静まり返った保健室内でただ一人、名無しは気が抜けたように枕に深く顔を沈める。
(あーあ…聞くんじゃなかった…)
興味本位で告白した生徒の姿を見た後だと、名無し自身も居た堪れない気持ちになってしまう。
そして告白した相手がスクアーロとくれば、尚更気分が良い物ではないのだから。
(寝て忘れよう…)
先程あった事は悪い夢だと思いながら、名無しは瞳をそっと閉じる。
だが…
「ゔお゙ぉい!!!俺の授業をサボって何で名無しはこんな所に居るんだ?」
シャッっと、音をたてては勢い良く名無しの居るベッドを囲んでいたカーテンが開かれた。
オーバル型の眼鏡から覗く鋭い目つきの青い瞳が、じっと名無しの姿を捕らえたまま逸らす事はない。
どうやら保健室の外に出たと思っていたスクアーロは、実際には保健室の外に出る事はなく扉を閉めては足音を殺して名無しの居るベッドまで近づいてきたのだろう。
英語教師でもある前に、スクアーロはイタリアの最大手マフィアボンゴレファミリーの独立暗殺部隊ヴァリアーの一員だ。
一般人である名無しとは違い足音を消す事も気配を消す事も容易い事なのだろう。
ベッドに近づいたスクアーロの表情はこれまた不機嫌そうな表情をしているが、何故そんな表情をしているのか名無しは皆目見当もつかない。
『……気付いてたの?』
思わず思った事を口にすれば勿論だと言わんばかりに「あぁ」とスクアーロは普段のけたたましい声とは違い落ち着いた低い声で名無しに頷いた。
「気付いていたも何も…名無しが此処に居るのは気配で分かったからな」
そう言ってスクアーロは名無しの座るベッドの近くに合ったパイプの丸椅子を引き寄せては腰掛けた。
開けたはずのカーテンを再度締めては、ギシリと音を立てては膝に頬杖をついてじっと名無しを見つめる。
“気配で分かった”と言うならば、何故恋人である名無しが居る保健室で告白されたのだと文句の1つも言いたくなったのは言うまでもない。
『私がいる のにスクアーロ“先生”は保健室で告白されたんですか?』
ほんの少し嫌味を含んだ言葉を名無しはスクアーロに投げかけた。
勿論、誰がどう見ても分かる程名無し自身の頬はぷくっと空気を含んで膨れている。
名無し自身だって分かっている。
告白されたのはスクアーロ自身のせいでもなければ、スクアーロは告白をされた側だ。
場を選べと言うなら告白をした相手の女子生徒に言うべきである事位。
そしてその事に対してスクアーロに焼きもちを妬いてしまった事を、名無しは隠すことが出来なかった。
「ゔお゙ぉい…言っとくが不可抗力だ。俺だってまさかこんな場所で告白されるとはなから思ってねえぞ」
頭をガシガシと掻いては「そう言うのは跳ね馬の役目だろぉ…」と、スクアーロそう言って大きなため息を零す。
スクアーロの言うように、どちらかと言うと同じ英語教師であり本来の立場はキャバッローネ・ファミリーのボスであるディーノの方が告白されているのを名無しですら良く目にしている。
スクアーロと違い目付きが悪いわけでもなく、誰しもが認める美貌の持ち主だ。
それに比べたらスクアーロの外見…否、第一印象は怖いものではあるが中身を知れば“怖い”と言う印象は外見だけでしかない。
粗暴な話し方でがあるものの面倒見が良く、気配りだって出来るのだ。
そんな彼に惹かれる人間だって少なからずいる。
彼に惹かれ告白をし恋人になった名無し自身が思うのだからそれは間違いないだろう。
「後な、誰に告白されようが俺が好きなのは名無しお前だけだ」
機嫌を直せと言わんばかりに名無しの頭を不器用な手つきでガシガシと撫でれば名無しは頬を膨らますのを止め、自然と緩む。
『でもスクアーロ“先生”は生徒 と付き合わないんでしょ?』
「うるせぇえぞ名無し…分かってて言ってんだろそれ…」
不器用なスクアーロの慰めに、案外チョロいな自分…と思っては名無しは再度自覚する。
スクアーロの言う生徒 の中に名無しは含まれていたいのだ。
その意味を理解すれば嬉しそうに目を細め『…と言うか授業サボるってどう言う事…?』っと、先ほどスクアーロの言った言葉を思い出し首を傾げた。
こてんと首を傾げる動作を可愛いと思いながらも、スクアーロは名無しの頭を撫でるのを止めれば言葉を紡ぐ。
「あ゙ぁ゙、そのまんまの意味だろ。5時間目もう終わってんぞ」
『え、今って…』
「6時間目の授業の真っただ中に決まってんだろ、名無し」
『嘘っ?!』
スクアーロのその言葉を聞けば名無しは思わず目を見開く。
名無し自身眠ったとしても精々3時間目の授業までだろうと思っていた。
だが保健室にある時計を見れば、時計の針は14時40分を指している。
(う、嘘…私めちゃくちゃ寝ちゃってるじゃん…)
何度瞬きをしてもその事実は変わらず名無しの目に映り込む。
名無し自身ほんの少し休むだけだったのだ。
それがまさか6時間目まで休むことになるとは思いもしなかった。
どうしても出たかった5時間目の授業ですら出れていないのだ。
5時間目は英語の授業…つまり今目の前にいる英語教師であるスクアーロが請け負う英語の授業なのだ。
それ目的に昨日は英語の勉強を夜遅くまでしていたし、帰宅せず保健室で休んでいた理由も5時間目の英語の授業…とどのつまり恋人であるスクアーロの授業に出る為だった。
だがスクアーロの言うように5時間目の授業は終わっており、6時間目の授業の真っただ中だ。
スクアーロの言葉に名無しは開いた口が塞がらないのか、間の抜けた表情をスクアーロに晒した。
「今朝保健室に居た教師に聞いたが…体調悪いならさっさと帰って寝とけ、阿保」
間の抜けたの表情を見ながらスクアーロは言葉を紡ぐ。
ぶっきらぼうではあるるものの、その言葉は名無しを心配するものだった。
だが阿呆とまで言われたら名無しだって黙っていられない。
7ヶ国語話せるスクアーロからすれば名無しはどう頑張っても阿呆の部類に入るかもしれないが、これでも英語の教科はテストの時は毎回学年1位なのだ。
阿呆とは心外であると言わんばかりに『阿呆じゃないもん』っと、布団に隠れながら名無しは呟く。
『…それにスクアーロの授業楽しみだったし…授業受けるために予習だって…して来たんだよ…?』
「体調管理出来てねぇ時点で俺からしたら阿呆認定なんだよ」
『あ、阿呆じゃないもん!』
思わず隠れていたはずの布団から勢い良く布団をのけては、じっとスクアーロを見上げる。
布団をのければ「ようやく出てきたか」と名無しの身体を抱きしめては耳元でそっと囁く。
「ゔお゙ぉ゙い!んなもん決まってんだろ…勉強も大事だが…名無しの身体の方が大事だろ。勉強はいくらでも取り返しがつくが、身体は無理しても悪化するだけなんだからよ」
ほんの少しだけ名無しを抱き締める腕に力を込めては、スクアーロは愛おしそうに言葉を紡いだ。
「俺は名無しが大事だ、それだけは忘れんな」
じっと青い瞳で射抜かれるように言われてしまえば、名無しは何も言えずただただ口を噤む。
思いもしれぬスクアーロの言葉。
その言葉に名無しの心臓の音はドクンと大きく鼓動する。
8つほど離れているスクアーロからすれば、名無しは子供でしかないだろう。
だがそんな事も気にせずに、スクアーロは名無しを受け入れてくれたのだ。
付き合うことも、先程のように焼き餅を焼いてもスクアーロはその都度名無しが安心するように言葉をかけてくれる。
「俺がどれだけ名無しの事大事にしてるか…ちゃんと思い知れ」
そう言ってスクアーロは名無しの唇にそっと自身の唇を重ねる。
触れるだけの優しい口付け。
外見とは裏腹に、この男は壊れ物を扱うかのように名無しに触れる。
そっと離れた唇に、優しい口付けに名無しの頬は次第に赤く染まっていく。
『す、スクアーロ…っつ』
「“今”は、これで我慢しろ名無し。ちゃんと卒業したらお前を攫ってやるからよ」
名無しを抱き寄せる腕に力を込めては、再び名無しの唇に触れるだけの口付けを落としたーーー…
カーテン越しの軽いキス
(っつ…ほ、他の人に見られたらどうするのよ!?)
(あ゙ぁ゙?んなヘマはしねえし暗殺部隊ヴァリアーのNo.2を舐めんな。誰か居りゃあ分かるし、今は俺が保健室在中予定だから他の教師は来ねーよ)
(そ、そうかもしれないけど…近くない…?)
(別に様子見がてら看病しててもいいだろ)
(……私以外の人にしないで…ね…?)
(安心しろ名無し。お前以外にんな事する優しさは生憎持ち合わせてねぇーからな)
2025/02/01
お題提供:子猫恋様
「好きです、先生!」
鈴を転がしたような可愛らしい声とともに、保健室のベッドの上で名無しは激しく自分のタイミングの悪さに後悔した。
1時間目の授業が終わったタイミングで名無しは体調不良を理由に保健室で休んでいた。
原因は分かっている、月に一度女に生まれたら免れることなくやってくる…所謂生理である。
名無しは基本的に生理は軽い方なのだが、この日だけはどうも重く下腹部の痛みが耐えるに耐えれなかった。
自分自身で常備している薬も無ければ、また学校の常備されている痛み止めなんてものはなく、もし薬自体が合ったとしても渡す事は認められていない。
だがありがたい事に並盛中の校医であるシャマルが居る。
彼は養護教諭ではなく、れっきとした医者だ。
医者であるのだから薬位出す事は養護教諭ではないので可能である。
藁にも縋る思いで訪れたものの、生憎シャマルは所用で席を外している為薬を貰う事は出来なかった。
代わりに保健室に在中していた教師には保健室で休むか帰宅するかの2択を挙げられたが、名無しは迷わず前者を選びこうして保健室で休んでいたのだ。
だが起きたタイミングが非常に悪かった。
ベッドの上で目を瞑って休んでいればいつの間にか寝てしまい、起きたタイミングで声が聞こえれば怪我をした生徒でも来たのだろうかと思っていればまさかの告白現場に居合わせてしまった状況だった。
好きで居合わせたわけでも盗み聞きしたかったわけでもない。
それでもこの状況に居た堪れない気持ちになってしまっては心の中でひっそりと溜息を付く。
(なんでこんなタイミングで起きちゃったんだろ…)
幸いにも一番壁際のベッドでカーテンを仕切っているため、名無しの存在は気づかれていない。
だが名無しから言わせてもらえばこんな所で告白するなと言いたくなってしまう。
一応校医であるシャマルが居り、今日に限っては居なかったがそれでも代わりに他の先生が保健室に居るのだ。
幾ら頻繁に生徒や教師が出入りしないにしろ…もう少し場所を考えてくれと思ってしまうのは至極当然。
(告白するなら屋上とか校舎裏とか…ベタな場所ですればいいのに)
ふと、最近読んだ学園物の少女漫画の告白スポットの王道場所をあげるものの、(否、王道過ぎてつまらないか…?)と1人自分自身にツッコミを入れる。
だが此処は保健室であり、体調が悪い生徒が休んだり簡単な手当てをしてもらう場だ。
告白をするような場では決してなく、何より名無しの様に休んでいる生徒だっているのだからきちんと確認したうえで告白してくれと文句の一つも言いたくなる。
盗み聞きなんてはしたない真似を名無しが望んでしたわけじゃない事だけを…今告白している輩には知っていて欲しいと、心底思ってしまう。
(それはそれとして…誰が告白してるのかな?)
こっちは聞きたくもない告白を聞かされているんのだから誰が告白してるかくらい見ても問題ないだろう…と。
好奇心に負け恐る恐る音を立てずにカーテンの隙間から覗き込んでみれば、丁度告白をした女子生徒の姿が名無しの目に映る。
女子生徒は名無しの1つ上の学年である先輩だった。
同じクラスである笹川京子に相次いで人気のある先輩で、無論容姿は同じ女である名無しからしても可愛らしく守ってあげたくなるほどだ。
ほんのり赤く染まる頬を見れば、意中の相手に告白をしているのだと一目見ただけで分かる。
うるんだ瞳で可愛らしく告白しているのだから、これは彼女の完全勝利だろうと名無しは思う程だ。
相手は誰だろうとつい名無しは思ってしまうが、名無しが居る場所からでは相手の姿までは見えなかった。
きっと同じ3年生の先輩だろうと思うと、3年生に関しては部活をしているわけでもない名無しからしてみれば誰一人として3年生の先輩を知る事はない。
カーテンの隙間から覗くのを止め、名無しは先程と同じように音を立てずにベッドの中で横になる。
体調不良を理由に休んでいたのだ。
下腹部の痛みは良くなったものの、寝ようと思えば名無しは眠れる。
昨夜夜遅くまで英語の勉強をしていたのだ。
それも相まって睡眠時間が短かったせいかベッドで横になればうつらうつらと自分の体温で温められた布団の中の温もりに夢の中へと誘われようとしている。
「好きです、スクアーロ先生。私と…付き合ってくれませんか…?」
が、再び夢の世界へと戻ろうとした名無しの耳にそんな言葉が届けば名無しは眠る所ではなくなった。
同級生にでも告白をしているのだろうと思っていたが、どうやら女子生徒が愛の告白をしているのはどうやら同じ生徒…ではなく、教師だった。
そして教師と言ってもただの教師ではない。
英語教師であり、名無しと恋人関係にある人の名前だ。
何故保健医でもない英語教師であるスクアーロの名が呼ばれ、何故保健室に英語教師であるスクアーロが居るのか名無しにとって謎でしかない。
横になったまま聞き耳を立てていれば「あのな…」と、聞き慣れた声に名無しの心臓は飛び跳ねる。
その聞き慣れた声は、まさしく恋人であるスクアーロの声なのだから―――…
「悪いが俺は教師だ。
「…そんないい方しなくても…」
「俺は事実をいったまでだぁ。変に期待をさせる優しさはねえって事だ」
「……っつ」
息を飲むような声と共に、バンっと、スクアーロに告白した女子生徒は保健室から逃げるように飛び出して行った。
スクアーロの事だ。
追いかける事はしないだろうが、それでも後味が悪い状況であることに違いはない。
その証拠に重い溜息を吐いてはスクアーロが保健室の扉の方へと歩き、扉を閉める音が名無しの耳に届いた。
静まり返った保健室内でただ一人、名無しは気が抜けたように枕に深く顔を沈める。
(あーあ…聞くんじゃなかった…)
興味本位で告白した生徒の姿を見た後だと、名無し自身も居た堪れない気持ちになってしまう。
そして告白した相手がスクアーロとくれば、尚更気分が良い物ではないのだから。
(寝て忘れよう…)
先程あった事は悪い夢だと思いながら、名無しは瞳をそっと閉じる。
だが…
「ゔお゙ぉい!!!俺の授業をサボって何で名無しはこんな所に居るんだ?」
シャッっと、音をたてては勢い良く名無しの居るベッドを囲んでいたカーテンが開かれた。
オーバル型の眼鏡から覗く鋭い目つきの青い瞳が、じっと名無しの姿を捕らえたまま逸らす事はない。
どうやら保健室の外に出たと思っていたスクアーロは、実際には保健室の外に出る事はなく扉を閉めては足音を殺して名無しの居るベッドまで近づいてきたのだろう。
英語教師でもある前に、スクアーロはイタリアの最大手マフィアボンゴレファミリーの独立暗殺部隊ヴァリアーの一員だ。
一般人である名無しとは違い足音を消す事も気配を消す事も容易い事なのだろう。
ベッドに近づいたスクアーロの表情はこれまた不機嫌そうな表情をしているが、何故そんな表情をしているのか名無しは皆目見当もつかない。
『……気付いてたの?』
思わず思った事を口にすれば勿論だと言わんばかりに「あぁ」とスクアーロは普段のけたたましい声とは違い落ち着いた低い声で名無しに頷いた。
「気付いていたも何も…名無しが此処に居るのは気配で分かったからな」
そう言ってスクアーロは名無しの座るベッドの近くに合ったパイプの丸椅子を引き寄せては腰掛けた。
開けたはずのカーテンを再度締めては、ギシリと音を立てては膝に頬杖をついてじっと名無しを見つめる。
“気配で分かった”と言うならば、何故恋人である名無しが居る保健室で告白されたのだと文句の1つも言いたくなったのは言うまでもない。
『私が
ほんの少し嫌味を含んだ言葉を名無しはスクアーロに投げかけた。
勿論、誰がどう見ても分かる程名無し自身の頬はぷくっと空気を含んで膨れている。
名無し自身だって分かっている。
告白されたのはスクアーロ自身のせいでもなければ、スクアーロは告白をされた側だ。
場を選べと言うなら告白をした相手の女子生徒に言うべきである事位。
そしてその事に対してスクアーロに焼きもちを妬いてしまった事を、名無しは隠すことが出来なかった。
「ゔお゙ぉい…言っとくが不可抗力だ。俺だってまさかこんな場所で告白されるとはなから思ってねえぞ」
頭をガシガシと掻いては「そう言うのは跳ね馬の役目だろぉ…」と、スクアーロそう言って大きなため息を零す。
スクアーロの言うように、どちらかと言うと同じ英語教師であり本来の立場はキャバッローネ・ファミリーのボスであるディーノの方が告白されているのを名無しですら良く目にしている。
スクアーロと違い目付きが悪いわけでもなく、誰しもが認める美貌の持ち主だ。
それに比べたらスクアーロの外見…否、第一印象は怖いものではあるが中身を知れば“怖い”と言う印象は外見だけでしかない。
粗暴な話し方でがあるものの面倒見が良く、気配りだって出来るのだ。
そんな彼に惹かれる人間だって少なからずいる。
彼に惹かれ告白をし恋人になった名無し自身が思うのだからそれは間違いないだろう。
「後な、誰に告白されようが俺が好きなのは名無しお前だけだ」
機嫌を直せと言わんばかりに名無しの頭を不器用な手つきでガシガシと撫でれば名無しは頬を膨らますのを止め、自然と緩む。
『でもスクアーロ“先生”は
「うるせぇえぞ名無し…分かってて言ってんだろそれ…」
不器用なスクアーロの慰めに、案外チョロいな自分…と思っては名無しは再度自覚する。
スクアーロの言う
その意味を理解すれば嬉しそうに目を細め『…と言うか授業サボるってどう言う事…?』っと、先ほどスクアーロの言った言葉を思い出し首を傾げた。
こてんと首を傾げる動作を可愛いと思いながらも、スクアーロは名無しの頭を撫でるのを止めれば言葉を紡ぐ。
「あ゙ぁ゙、そのまんまの意味だろ。5時間目もう終わってんぞ」
『え、今って…』
「6時間目の授業の真っただ中に決まってんだろ、名無し」
『嘘っ?!』
スクアーロのその言葉を聞けば名無しは思わず目を見開く。
名無し自身眠ったとしても精々3時間目の授業までだろうと思っていた。
だが保健室にある時計を見れば、時計の針は14時40分を指している。
(う、嘘…私めちゃくちゃ寝ちゃってるじゃん…)
何度瞬きをしてもその事実は変わらず名無しの目に映り込む。
名無し自身ほんの少し休むだけだったのだ。
それがまさか6時間目まで休むことになるとは思いもしなかった。
どうしても出たかった5時間目の授業ですら出れていないのだ。
5時間目は英語の授業…つまり今目の前にいる英語教師であるスクアーロが請け負う英語の授業なのだ。
それ目的に昨日は英語の勉強を夜遅くまでしていたし、帰宅せず保健室で休んでいた理由も5時間目の英語の授業…とどのつまり恋人であるスクアーロの授業に出る為だった。
だがスクアーロの言うように5時間目の授業は終わっており、6時間目の授業の真っただ中だ。
スクアーロの言葉に名無しは開いた口が塞がらないのか、間の抜けた表情をスクアーロに晒した。
「今朝保健室に居た教師に聞いたが…体調悪いならさっさと帰って寝とけ、阿保」
間の抜けたの表情を見ながらスクアーロは言葉を紡ぐ。
ぶっきらぼうではあるるものの、その言葉は名無しを心配するものだった。
だが阿呆とまで言われたら名無しだって黙っていられない。
7ヶ国語話せるスクアーロからすれば名無しはどう頑張っても阿呆の部類に入るかもしれないが、これでも英語の教科はテストの時は毎回学年1位なのだ。
阿呆とは心外であると言わんばかりに『阿呆じゃないもん』っと、布団に隠れながら名無しは呟く。
『…それにスクアーロの授業楽しみだったし…授業受けるために予習だって…して来たんだよ…?』
「体調管理出来てねぇ時点で俺からしたら阿呆認定なんだよ」
『あ、阿呆じゃないもん!』
思わず隠れていたはずの布団から勢い良く布団をのけては、じっとスクアーロを見上げる。
布団をのければ「ようやく出てきたか」と名無しの身体を抱きしめては耳元でそっと囁く。
「ゔお゙ぉ゙い!んなもん決まってんだろ…勉強も大事だが…名無しの身体の方が大事だろ。勉強はいくらでも取り返しがつくが、身体は無理しても悪化するだけなんだからよ」
ほんの少しだけ名無しを抱き締める腕に力を込めては、スクアーロは愛おしそうに言葉を紡いだ。
「俺は名無しが大事だ、それだけは忘れんな」
じっと青い瞳で射抜かれるように言われてしまえば、名無しは何も言えずただただ口を噤む。
思いもしれぬスクアーロの言葉。
その言葉に名無しの心臓の音はドクンと大きく鼓動する。
8つほど離れているスクアーロからすれば、名無しは子供でしかないだろう。
だがそんな事も気にせずに、スクアーロは名無しを受け入れてくれたのだ。
付き合うことも、先程のように焼き餅を焼いてもスクアーロはその都度名無しが安心するように言葉をかけてくれる。
「俺がどれだけ名無しの事大事にしてるか…ちゃんと思い知れ」
そう言ってスクアーロは名無しの唇にそっと自身の唇を重ねる。
触れるだけの優しい口付け。
外見とは裏腹に、この男は壊れ物を扱うかのように名無しに触れる。
そっと離れた唇に、優しい口付けに名無しの頬は次第に赤く染まっていく。
『す、スクアーロ…っつ』
「“今”は、これで我慢しろ名無し。ちゃんと卒業したらお前を攫ってやるからよ」
名無しを抱き寄せる腕に力を込めては、再び名無しの唇に触れるだけの口付けを落としたーーー…
カーテン越しの軽いキス
(っつ…ほ、他の人に見られたらどうするのよ!?)
(あ゙ぁ゙?んなヘマはしねえし暗殺部隊ヴァリアーのNo.2を舐めんな。誰か居りゃあ分かるし、今は俺が保健室在中予定だから他の教師は来ねーよ)
(そ、そうかもしれないけど…近くない…?)
(別に様子見がてら看病しててもいいだろ)
(……私以外の人にしないで…ね…?)
(安心しろ名無し。お前以外にんな事する優しさは生憎持ち合わせてねぇーからな)
2025/02/01
お題提供:子猫恋様
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