家庭教師ヒットマンREBORN!
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※スクアーロ先生(英語教師)×生徒
『はぁ…』
名無しは一人校舎裏にある非常階段に腰掛けては大きなため息を零した。
まだ1月下旬のせいか温かい日差しは降り注ぐものの、風は冷たく上着を羽織っていない名無しは時折『くしゅん』とくしゃみをしていた。
このまま外で上着も羽織らずに居れば、風邪をひいてしまう事は目に見えて分かる。
だが今の名無しにとって、そんな事はどうでもいいのだ。
『はぁ…どうしようこれ…』
名無しは今自分が手に持っている物を見ては、眉を八の字に下げて深々と溜息を零す。
名無しが今手に持っている物は家庭科の調理実習で作られたアップルパイだ。
透明なOPP袋にアップルが入っており、袋の口は青色のビニタイで綺麗に止められラッピングされている。
中に入っているアップルパイは4分の1にカットされており、食べやすいサイズとなっていた。
綺麗な編み目にはツヤが良く出ており、焼き加減もそれこそ丁度いい具合に焼き目が付いている。
アップルパイの中に詰められたりんごのフィリングの実は大きく食べ応えのある物になっており、その下に引かれているビスケット部分も相まってザクザクとした食感が楽しめる。
誰がどう見ても、見た目はお店で売られている物に負けず劣らずの代物だ。
…そう、見た目だけ言えば…だ。
見た目は良いにしろ、問題は味だ。
お店で売られている物にも負けず劣らずの代物なのだから味も大丈夫だろうと食べてみれば…シナモンパウダーを入れすぎてしまったせいか、シナモンの強い香りが際立ち甘いはずのアップルパイがやたらと苦く感じてしまう程だ。
出来上がった時に味見をした際にその事に気づいてしまえばもう手遅れでしかない。
それが原因で名無しは一人校舎裏の非常階段に腰掛けては一人反省会をしていたのだ。
(本当はスクアーロに…あげたかったのになぁ…)
恋人である英語教師、スクアーロの事を思い浮かべては名無しは再び溜息を零す。
調理実習で作った物だ。
友達や好意を抱いている者に渡す者も居れば、教師にあげている人もちらほらと居る。
人目を気にせずに作った物を渡す絶好のチャンスだったのにと…名無しは一人項垂れた。
流石にいくら見た目が良くてもこんな味ではスクアーロに渡す事なんて名無しには出来ない。
苦い物が苦手と言うわけではないが、あげるにしたってこんな苦味のある物をあげるほど名無しだって馬鹿ではない。
見た目だけで言えば百点満点なのにと…名無しはそう思いながら余った時間で証拠隠滅と称して頑張って1ホールの4分の3を食した。
だがそこまで頑張っても残りの部分が食べ切れず、こうして持って帰る羽目になっているのだ。
『はぁ…持って帰って残りも食べ切るしかないか…』
せっかく作ったのだ。
味はどう足掻いても苦いがそれでも食べれない事はない。
捨てると言う勿体ない選択肢ははなから頭にはないのだ、大人しく甘い飲み物と一緒に食べ切ろうと腹をくくれば名無しは教室に戻ろうと決意する。
が、次の瞬間「ゔお゙ぉい!!!こんな所で何やってんだ名無し」と言うけたたましい声と共にガシッっと、何かが名無しの頭を掴んだ。
勿論、名無しはこの声の持ち主が誰なのか当然姿を見なくても分かっている。
好きで…大好きな人の声だ。
間違えるはずもなければ、こんなにもけたたましい声を上げる人なんてこの学校には一人しかいない。
『…スクアーロ…?』
学校である事を忘れ、思わず“先生”と言うはずがその言葉すらも付けるのを忘れていた。
声のする方へと視線を上げれば…そこには名無しのクラスの英語担当である英語教師…スクアーロが呆れたような表情で名無しを見下ろしている。
サラサラとした綺麗な銀色の長い髪が、風に揺られ靡く。
青い瞳はじっと名無しを映し、どうやら名無しの頭を掴んでいるのは、言わずもながらスクアーロの黒い手袋をはめた左手だ。
ほんの少し機嫌が悪そうではあるものの、スクアーロは呆れた表情を崩さずに口を開く。
「俺のSHRをサボるとは良い度胸してじゃねぇか名無し」
『…え、何でスクアーロ…がSHRに出てる…の…?』
スクアーロの言葉に、思わず名無しは首を傾げる。
名無しのクラスである2年A組の担任の先生はスクアーロではない。
かと言って英語の教科担当であるスクアーロは副担任と言うわけでもないのだ。
それなのに何故“俺のSHRをサボるとは”と言う言葉を言ったのか、名無しは訳が分からなかった。
「2年Aの担任は所用で席を外してるし副担任は副担任で生徒の保護者の対応に追われてるから俺が仕方なく名無しのクラスのSHRを代理でやったんだよ」
『……なるほど』
「俺のSHRをサボるどっかの馬鹿に説教するためにこうして名無しを探してたんだよ」
『…あれ、もうそんな時間…?』
「お前な…とっくの昔にSHRは終わってんぞ…」
ようやく掴まれていた頭を離されれば校舎裏の時計をスクアーロは指さす。
時刻を見ればとっくに16時を過ぎており、SHRが終わっている事は名無しですら目に見えて分かってしまった。
『あはは…SHRサボる気はなかったんですよ…サボる気は…』
「結果サボってんだからどう言い訳しようが何の意味もねえぞぉ」
『おっしゃる通りです…』
渇いた声でどうにかサボる気がなかった旨を伝えるものの、結果としてサボっているのだからどうしようもない。
スクアーロの言葉に項垂れては『次から気を付けます』と言っては名無しは心の中で溜息を付いた。
一応これでも真面目枠として授業にはちゃんと出ているのだ。
成績はどうであれ、SHRだってこれまでだってサボった事は一度もない。
そんな自分の失念を悔やんでいると「おい名無し」と、スクアーロが声をかける。
『何?』
「さっきから何を手に持ってんだ?」
『あぁ…これは家庭科の実習で作ったアップルパイ…』
そこまで言葉にしてしまったが、名無しは慌てて『これはその…』と言い訳を考えようとするが全く出てこない。
場所も場所だ。
何も知らない人から見ればもしかしたら別の人に家庭科の調理実習で作ったお菓子をあげようとしていると取られてもおかしくない状況だ。
何せスクアーロには今日家庭科の調理実習が合った事も、あげるはずだった事も…名無しは何一つスクアーロに伝えていないのだから。
「あ゙ぁ゙?お前俺以外の奴にやるつもりじゃないだろうな…?」
『そ、そんな事しないよ?!これはもともとスクアーロの為に作ったアップルパイ…って、あ…』
名無しの口走った言葉に、スクアーロは意地悪そうな笑みを浮かべる。
“スクアーロの為に作った”と言ってしまった時点で、それはもうスクアーロの物になってしまうのだから。
だが、いくら見た目が良くても味は苦いのだ。
あげるわけにも取られるわけにもいかず、サッとアップルパイを自分の後ろに隠しながら名無しは後ずさりする。
言葉にしてしまった以上、そのアップルパイは自分のものだと認識するスクアーロは、名無しの予想通り「寄越せ」と言葉にしては後ずさりする名無しに近寄る。
『あ、あげれません…』
「俺の為に作ったんだろ?ならつべこべ言わずに寄越せ」
一歩、また一歩と後ずさりする名無し。
それと同時に近寄るスクアーロ。
『で、でもこれは失敗作で…』
「いいから寄越せ、名無し」
幾ら言い訳しようが、寄越せと言わんばかりにスクアーロは何も持っていない左手を名無しに差し出す。
黒い手袋をはめている左手をじっと見つめれば、名無しは観念したかのように『…苦い、ですよ…?』と、渋々名無しは後ろに隠していたアップルパイをスクアーロに差し出した。
OPP袋の口部分は青色の…スクアーロの瞳の色と同じ青色のビニタイで止まっているのを見れば、スクアーロの口角が自然と上がる。
名無しの手からアップルパイの入ったOPP袋を受け取り、丁寧に青色のビニタイを外しスクアーロはアップルパイを取り出した。
見た目は店で売られていてもおかしくないほどに綺麗な仕上がりだ。
『あのね…シナモンパウダー入れすぎちゃって苦いから…だから食べない方が…』
恐る恐る言葉にしては食べないように促すものの、スクアーロはそんな名無しの言葉を気にせずに持っているアップルパイにかじりつく。
ゆっくりと咀嚼すれば、確かに名無しが言ったようにシナモンの味が…否、苦味が強い。
「まぁ、確かに苦えな…」
『無理しなくていいよ?スクアーロ…』
「あ゙ぁ゙?うるせー…そもそも俺の為に作ったもんだろ?俺に食べさせねえで何名無し1人で食ってんだよ」
ガツガツと大きな口で味わう様にスクアーロは食べ続ける。
苦いと言っていたのにそんな苦味は気にするほどでもないと言わんばかりに食べ進めるスクアーロに、名無しは不安そうに視線を向ける。
そんな視線に気づいては、空いている手を名無しの頭に乗せてはポンポンと、名無しの頭に触れる。
「お前から貰えるもんだったらなんだって食ってやるよ。苦くても不味くても…名無しが俺の為に作ったもんなら味なんて関係ねえよ」
『……っつ』
「言っとくが、他の奴にあげたり名無しが1人で食っちまう方が…俺は許せねえからな」
そう言いながら最後の一口を食べ終えれば「おい、名無し」っとスクアーロが名無しの名を呼ぶ。
『どうしたの…スクアーロ?』
名前を呼ばれれば不思議そうに首を傾げる名無し。
そんな名無しに、スクアーロはそっと自分の顔を近づけては名無しに口付ける。
触れて、離れるだけの優しい口付け。
今までも何度かそんな口付けをした事はあれど、何故かこの時の口付けは普段よりも甘く感じる。
シナモンたっぷりのアップルパイを食べたスクアーロとの口付けなのに、苦味よりも甘みを感じ、じんわりと触れた唇が熱を持つ。
『す、スクアーロっつ…』
「口直しと言いてえとこだが…ふっ、こっちはこっちで甘いな」
と言っては、舌なめずりをしながら名無しへと青い瞳を向けた。
その瞳には熱を帯び、愛おしそうに名無しを見つめている。
スクアーロからすればその瞳は無意識に熱を帯び愛おしそうに視線を名無しに向けているのだろう。
だがそんな視線を向けられた名無しは平常心ではいられなかった。
見る見るうちに頬が赤く染まり、恥ずかしそうに学校指定のカーディガンの裾で名無しは自分の口元を隠そうとする。
『す、スクアーロの…あほっ』っと、恥ずかしそうに呟く名無しを、スクアーロはただただ愉しそうに見ていた―――…
アップルパイほど甘くない
(次作るならマグロのカルパッチョでも作って持ってこい、名無し)
(否マグロのカルパッチョって生ものだし…)
(何だ、問題でもあるのか?)
(普通に食あたり怖いから…せ、せめてスクアーロの家に作りに行くよ…)
(ゔお゙ぉい!!!言ったな名無し?絶対作りに来いよ)
(っつ~~~~、うん!)
2025/01/27
お題提供:子猫恋様
『はぁ…』
名無しは一人校舎裏にある非常階段に腰掛けては大きなため息を零した。
まだ1月下旬のせいか温かい日差しは降り注ぐものの、風は冷たく上着を羽織っていない名無しは時折『くしゅん』とくしゃみをしていた。
このまま外で上着も羽織らずに居れば、風邪をひいてしまう事は目に見えて分かる。
だが今の名無しにとって、そんな事はどうでもいいのだ。
『はぁ…どうしようこれ…』
名無しは今自分が手に持っている物を見ては、眉を八の字に下げて深々と溜息を零す。
名無しが今手に持っている物は家庭科の調理実習で作られたアップルパイだ。
透明なOPP袋にアップルが入っており、袋の口は青色のビニタイで綺麗に止められラッピングされている。
中に入っているアップルパイは4分の1にカットされており、食べやすいサイズとなっていた。
綺麗な編み目にはツヤが良く出ており、焼き加減もそれこそ丁度いい具合に焼き目が付いている。
アップルパイの中に詰められたりんごのフィリングの実は大きく食べ応えのある物になっており、その下に引かれているビスケット部分も相まってザクザクとした食感が楽しめる。
誰がどう見ても、見た目はお店で売られている物に負けず劣らずの代物だ。
…そう、見た目だけ言えば…だ。
見た目は良いにしろ、問題は味だ。
お店で売られている物にも負けず劣らずの代物なのだから味も大丈夫だろうと食べてみれば…シナモンパウダーを入れすぎてしまったせいか、シナモンの強い香りが際立ち甘いはずのアップルパイがやたらと苦く感じてしまう程だ。
出来上がった時に味見をした際にその事に気づいてしまえばもう手遅れでしかない。
それが原因で名無しは一人校舎裏の非常階段に腰掛けては一人反省会をしていたのだ。
(本当はスクアーロに…あげたかったのになぁ…)
恋人である英語教師、スクアーロの事を思い浮かべては名無しは再び溜息を零す。
調理実習で作った物だ。
友達や好意を抱いている者に渡す者も居れば、教師にあげている人もちらほらと居る。
人目を気にせずに作った物を渡す絶好のチャンスだったのにと…名無しは一人項垂れた。
流石にいくら見た目が良くてもこんな味ではスクアーロに渡す事なんて名無しには出来ない。
苦い物が苦手と言うわけではないが、あげるにしたってこんな苦味のある物をあげるほど名無しだって馬鹿ではない。
見た目だけで言えば百点満点なのにと…名無しはそう思いながら余った時間で証拠隠滅と称して頑張って1ホールの4分の3を食した。
だがそこまで頑張っても残りの部分が食べ切れず、こうして持って帰る羽目になっているのだ。
『はぁ…持って帰って残りも食べ切るしかないか…』
せっかく作ったのだ。
味はどう足掻いても苦いがそれでも食べれない事はない。
捨てると言う勿体ない選択肢ははなから頭にはないのだ、大人しく甘い飲み物と一緒に食べ切ろうと腹をくくれば名無しは教室に戻ろうと決意する。
が、次の瞬間「ゔお゙ぉい!!!こんな所で何やってんだ名無し」と言うけたたましい声と共にガシッっと、何かが名無しの頭を掴んだ。
勿論、名無しはこの声の持ち主が誰なのか当然姿を見なくても分かっている。
好きで…大好きな人の声だ。
間違えるはずもなければ、こんなにもけたたましい声を上げる人なんてこの学校には一人しかいない。
『…スクアーロ…?』
学校である事を忘れ、思わず“先生”と言うはずがその言葉すらも付けるのを忘れていた。
声のする方へと視線を上げれば…そこには名無しのクラスの英語担当である英語教師…スクアーロが呆れたような表情で名無しを見下ろしている。
サラサラとした綺麗な銀色の長い髪が、風に揺られ靡く。
青い瞳はじっと名無しを映し、どうやら名無しの頭を掴んでいるのは、言わずもながらスクアーロの黒い手袋をはめた左手だ。
ほんの少し機嫌が悪そうではあるものの、スクアーロは呆れた表情を崩さずに口を開く。
「俺のSHRをサボるとは良い度胸してじゃねぇか名無し」
『…え、何でスクアーロ…がSHRに出てる…の…?』
スクアーロの言葉に、思わず名無しは首を傾げる。
名無しのクラスである2年A組の担任の先生はスクアーロではない。
かと言って英語の教科担当であるスクアーロは副担任と言うわけでもないのだ。
それなのに何故“俺のSHRをサボるとは”と言う言葉を言ったのか、名無しは訳が分からなかった。
「2年Aの担任は所用で席を外してるし副担任は副担任で生徒の保護者の対応に追われてるから俺が仕方なく名無しのクラスのSHRを代理でやったんだよ」
『……なるほど』
「俺のSHRをサボるどっかの馬鹿に説教するためにこうして名無しを探してたんだよ」
『…あれ、もうそんな時間…?』
「お前な…とっくの昔にSHRは終わってんぞ…」
ようやく掴まれていた頭を離されれば校舎裏の時計をスクアーロは指さす。
時刻を見ればとっくに16時を過ぎており、SHRが終わっている事は名無しですら目に見えて分かってしまった。
『あはは…SHRサボる気はなかったんですよ…サボる気は…』
「結果サボってんだからどう言い訳しようが何の意味もねえぞぉ」
『おっしゃる通りです…』
渇いた声でどうにかサボる気がなかった旨を伝えるものの、結果としてサボっているのだからどうしようもない。
スクアーロの言葉に項垂れては『次から気を付けます』と言っては名無しは心の中で溜息を付いた。
一応これでも真面目枠として授業にはちゃんと出ているのだ。
成績はどうであれ、SHRだってこれまでだってサボった事は一度もない。
そんな自分の失念を悔やんでいると「おい名無し」と、スクアーロが声をかける。
『何?』
「さっきから何を手に持ってんだ?」
『あぁ…これは家庭科の実習で作ったアップルパイ…』
そこまで言葉にしてしまったが、名無しは慌てて『これはその…』と言い訳を考えようとするが全く出てこない。
場所も場所だ。
何も知らない人から見ればもしかしたら別の人に家庭科の調理実習で作ったお菓子をあげようとしていると取られてもおかしくない状況だ。
何せスクアーロには今日家庭科の調理実習が合った事も、あげるはずだった事も…名無しは何一つスクアーロに伝えていないのだから。
「あ゙ぁ゙?お前俺以外の奴にやるつもりじゃないだろうな…?」
『そ、そんな事しないよ?!これはもともとスクアーロの為に作ったアップルパイ…って、あ…』
名無しの口走った言葉に、スクアーロは意地悪そうな笑みを浮かべる。
“スクアーロの為に作った”と言ってしまった時点で、それはもうスクアーロの物になってしまうのだから。
だが、いくら見た目が良くても味は苦いのだ。
あげるわけにも取られるわけにもいかず、サッとアップルパイを自分の後ろに隠しながら名無しは後ずさりする。
言葉にしてしまった以上、そのアップルパイは自分のものだと認識するスクアーロは、名無しの予想通り「寄越せ」と言葉にしては後ずさりする名無しに近寄る。
『あ、あげれません…』
「俺の為に作ったんだろ?ならつべこべ言わずに寄越せ」
一歩、また一歩と後ずさりする名無し。
それと同時に近寄るスクアーロ。
『で、でもこれは失敗作で…』
「いいから寄越せ、名無し」
幾ら言い訳しようが、寄越せと言わんばかりにスクアーロは何も持っていない左手を名無しに差し出す。
黒い手袋をはめている左手をじっと見つめれば、名無しは観念したかのように『…苦い、ですよ…?』と、渋々名無しは後ろに隠していたアップルパイをスクアーロに差し出した。
OPP袋の口部分は青色の…スクアーロの瞳の色と同じ青色のビニタイで止まっているのを見れば、スクアーロの口角が自然と上がる。
名無しの手からアップルパイの入ったOPP袋を受け取り、丁寧に青色のビニタイを外しスクアーロはアップルパイを取り出した。
見た目は店で売られていてもおかしくないほどに綺麗な仕上がりだ。
『あのね…シナモンパウダー入れすぎちゃって苦いから…だから食べない方が…』
恐る恐る言葉にしては食べないように促すものの、スクアーロはそんな名無しの言葉を気にせずに持っているアップルパイにかじりつく。
ゆっくりと咀嚼すれば、確かに名無しが言ったようにシナモンの味が…否、苦味が強い。
「まぁ、確かに苦えな…」
『無理しなくていいよ?スクアーロ…』
「あ゙ぁ゙?うるせー…そもそも俺の為に作ったもんだろ?俺に食べさせねえで何名無し1人で食ってんだよ」
ガツガツと大きな口で味わう様にスクアーロは食べ続ける。
苦いと言っていたのにそんな苦味は気にするほどでもないと言わんばかりに食べ進めるスクアーロに、名無しは不安そうに視線を向ける。
そんな視線に気づいては、空いている手を名無しの頭に乗せてはポンポンと、名無しの頭に触れる。
「お前から貰えるもんだったらなんだって食ってやるよ。苦くても不味くても…名無しが俺の為に作ったもんなら味なんて関係ねえよ」
『……っつ』
「言っとくが、他の奴にあげたり名無しが1人で食っちまう方が…俺は許せねえからな」
そう言いながら最後の一口を食べ終えれば「おい、名無し」っとスクアーロが名無しの名を呼ぶ。
『どうしたの…スクアーロ?』
名前を呼ばれれば不思議そうに首を傾げる名無し。
そんな名無しに、スクアーロはそっと自分の顔を近づけては名無しに口付ける。
触れて、離れるだけの優しい口付け。
今までも何度かそんな口付けをした事はあれど、何故かこの時の口付けは普段よりも甘く感じる。
シナモンたっぷりのアップルパイを食べたスクアーロとの口付けなのに、苦味よりも甘みを感じ、じんわりと触れた唇が熱を持つ。
『す、スクアーロっつ…』
「口直しと言いてえとこだが…ふっ、こっちはこっちで甘いな」
と言っては、舌なめずりをしながら名無しへと青い瞳を向けた。
その瞳には熱を帯び、愛おしそうに名無しを見つめている。
スクアーロからすればその瞳は無意識に熱を帯び愛おしそうに視線を名無しに向けているのだろう。
だがそんな視線を向けられた名無しは平常心ではいられなかった。
見る見るうちに頬が赤く染まり、恥ずかしそうに学校指定のカーディガンの裾で名無しは自分の口元を隠そうとする。
『す、スクアーロの…あほっ』っと、恥ずかしそうに呟く名無しを、スクアーロはただただ愉しそうに見ていた―――…
アップルパイほど甘くない
(次作るならマグロのカルパッチョでも作って持ってこい、名無し)
(否マグロのカルパッチョって生ものだし…)
(何だ、問題でもあるのか?)
(普通に食あたり怖いから…せ、せめてスクアーロの家に作りに行くよ…)
(ゔお゙ぉい!!!言ったな名無し?絶対作りに来いよ)
(っつ~~~~、うん!)
2025/01/27
お題提供:子猫恋様
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