短編
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『…ん』
部屋に差し込む朝陽の眩しさに、キャバッローネ・ファミリーが住む屋敷の1室で名無しはゆっくりと瞼を開けた。
ぼんやりと寝起きのせいか視界がまだはっきりとしていない。
(今何時…?)
そう思い、目を凝らしながら時計を見れば時刻は午前5時35分。
起きるにしては少し早い時間帯であったため、名無しはもう少しだけ横になっていようと寝返りをうつ。
寝返りをうてば、名無しの視界には彼氏であるディーノが眠っていた。
昨夜、ディーノが商談に行ってくると見送ったのは陽が落ちた頃合いだ。
何時ものラフな格好ではなく、珍しくカジュアルスーツでの商談だったのが珍しいなと思ったのは記憶に新しい。
名無しが寝る時間帯には帰って来ていなかったことを考えれば恐らく明け方頃に帰って来てベッドに潜り込んだのだろう。
仕事の内容や商談場所にもよるが、早い時は早いが遅い時はとことん帰ってくるのが遅い。
5千のファミリーを抱えるキャバッローネ・ファミリーのボスなのだからこればかりは仕方ないのだと名無しだって分かり切っている。
名無しだってファミリーには属していないもののフリーの殺し屋だ。
急に依頼が入る事もあるし生活時間だってその日その時によって変わってくる。
分かり切ったうえでお互いが了承し、同じ気持ちで付き合っているのだ。
それに対してお互い文句を言う事も無ければ、どちらかと言うと合わせようとスケジュールの調整をする位だ。
そんな事を考えながら、名無しは規則正しい寝息を立て眠っているディーノの顔をじっと覗き込む。
眠っているせいかどこか幼さが残るディーノの寝顔を見ながら名無しの頬は緩んだ。
「お仕事お疲れ様、ディーノ」
ディーノの髪を撫でながらポツリと呟く。
「ありがとな、名無し」
『え、ディーノ…?ごめん、起こしちゃった…?』
「いや…勝手に俺が起きただけだぜ」
閉ざされていた鳶色の瞳が、名無しの姿を映し出すものの、ディーノの目はとろんと微睡んでいる。
流石に昨夜の疲れが抜けきれていないのだろう。
髪を撫でながら『もう少し寝てていいよ?』と声をかければ、ディーノのは子猫のように名無しに擦り寄る。
「なぁ、名無しもう少し寝ようぜ?」
そう言ってディーノは名無しの額に口づけをし、優しく名無しを抱き寄せる。
細いように見えて意外とがっちりとしたディーノの腕。
抱き寄せられた拍子にディーノの左半袖から露になってる腕の刺青が見えた。
(太陽と水と命、キャバッローのボスになる男の紋章って…ディーノが話してたっけ)
そんな事を思い出してる名無しに、ディーノはへにゃりと微笑む。
「ダメか?起きるにはまだ早えし…名無しも休みだろ…?」
『そうね、緊急の依頼もないからゆっくり出来るけど』
自分の今日のスケジュールを思い出しながら名無しは答えた。
そもそも今日は休みにすると決めている日なので、依頼は昨日までにあらかた終わらせている。
緊急の場合があれば別だが、基本的にそこまで緊急の依頼を頼む人もよっぽどの事が無い限り無いに等しい。
「じゃあ決まりだな」
名無しの言葉を聞くと嬉しそうにディーノは名無しを抱きしめる腕にほんの少し力を入れる。
ここ数日どちらかが忙しい状況が続いていたせいか、顔を合わせる事はあれどお互いゆっくり出来る時間を取ることが出来なかったのだ。
嬉しくて仕方がないと言わんばかりに、ディーノは名無しに抱き着く。
勿論名無しもそれが嬉しくてディーノの胸板に顔を埋める。
名無しの耳元でそっと「名無し」と囁く。
甘く優しい声色で名前を呼ばれれば嬉しそうに『なぁにディーノ?』とディーノに問う。
「好きだぜ、名無し」
『私もよ』
「ずっと、ずっと一緒に居てくれよな…」
『言われなくても』
そう答えればディーノはゆっくり瞼を閉じ、再び規則正しい寝息を立て始めた。
そんなディーノの寝顔を見ながら、名無しはまた頬を緩ませる。
聞き慣れた“好きだ”と言う言葉。
何回もディーノの口から聞いてるはずなのに、聞けば聞くほど嬉しくて、名無しの心が温かくなっていく。
『ディーノ、大好きだよ』
返事は返ってこないけれど、名無しはディーノの温もりに包まれて、再び瞼を閉じた。
Sogni belli
(おやすみなさい、ディーノ)
(ゆっくり休んでね)
2024/07/02
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