家庭教師ヒットマンREBORN!
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※【ハッピー ライラック】のディーノ視点
※一人称
「うわぁぁぁああああん、ディーノ聞いてよぉぉおおおお」
「今月何回目だよ…」
何時も通り書斎で書類仕事をしている俺の元に、名無しは今月何度目か分からない来訪を自身で告げた。
ハッピー ライラック ディーノside
今目の前でうつ伏せになって泣いている名無しは、一言で言えば俺にとって学生時代の同級生だ。
学校を卒業して以来はお互い音信不通状態だったが、イタリア最大手のマフィアボンゴレファミリーと同盟ファミリーになった時に偶然再会した。
正直ボンゴレに所属しているとは思ってもみなかった。
再会して以来名無しは時たま俺の元を訪れては、毎回俺に愚痴をこぼす。
瞳いっぱいに涙を溜め、わんわんと子供の様に泣きじゃくる名無し。
再会して10年、頻繁にではなかったはずなのに…今月の名無しがキャバッローネ・ファミリーに訪れる回数は既に片手で数えられる範囲を超えていた。
普段であれば数ヶ月に1回程…多くても月に2回あるかないかだと言うのに…今月に関しては明らかに俺の元に訪れる数がおかしい。
先月も先月で確かにヤバかったような気もするが…。
「………で、今回はどうしたんだ名無し?」
何時ものように名無しを見ながらひっそりと溜息をついては、俺は名無しに問いかけた。
“今回はどうしたんだ”と聞いてはいるが、名無しが俺の所に来たのだ。
どうしたもこうしたも、名無しが話す内容も泣いている理由も…俺には最初から分かっていた。
だが、分かっていながら俺は名無しに問う。
そう聞かなければ名無しが話を切り出す事はないのだ。
名無しが話を切り出しやすいように声をかけるが、このくだりももうかれこれ10年はしている。
いい加減飽きないのかと思うものの、飽きる飽きないレベルの話は疾うの昔に過ぎている事位俺だって十分理解している。
(ったく、…人の気も知らないで…)
そう思わず言葉にしようとする俺は、喉から出かかった言葉を飲み込んだ。
今はそんな言葉を言っても仕方がないのだ。
名無しがゆっくりと俯いていた顔を上げては、俺の目を見てポツリと言葉を放つ。
『…浮気された…』
案の定と言うか想定通りと言うか…名無しの放った一言により、俺はまたかと思いながら名無しの話を聞く。
此処10年、名無しと再会してからはよくそんな話を俺は名無しの口から聞いていた。
詳細を聞けば聞くほどそれでも何故別れないんだと疑念を抱くほど俺は不思議でならない。
名無しは仕事は出来るのだ。
オンとオフの切り替えがきっちりと出来ているせいか、仕事に関してだけ言えば本当に文句のつけようもないほどだとボンゴレ9代目やこれまた同級生であるスクアーロが言っていたのを俺自身知っている。
だが仕事ではなく私生活…主に恋愛面に関しては名無しはてんで駄目だった。
もうかれこれ10年は名無しの彼氏事情について俺自身聞いているが…先程話していた別れた男の話を聞いても面白い位絵にかいたようなクズ男でしかない。
浮気回数もヤバい上に何で名無しは気づかないんだよと思わずツッコミを入れそうになる。
その上浮気した事に関して怒るよりも自分を責める名無し。
普通に怒っていいだろ…と言うか、何でそんな奴とズルズル付き合ってたんだよと思っちまう。
話し合って改心した、浮気はもうしないと言っておきながら秒で浮気するような男だ。
聞けば聞くほど何で名無しの方から別れないんだよ…と言うか挙句の果てに男の方が名無しを振るっておかしいだろと、俺は沸々と沸き上がる怒りを無理やり抑え込む。
名無しの話を聞いてはいるものの、俺は部外者でしかないのだ。
第三者が名無しの彼氏に怒ったところで、どうする事も出来ない。
だが…
『もう私の人生男と付き合わずに独りで生きてけって事なのかなぁ…』
これまで数え切れないほどの失恋話やら愚痴を聞いてきた。
それでも最後には名無しは笑って『もう大丈夫!』と前向きに言っていたのを覚えている。
1度振られたから何だ、4度浮気されようが何だ!と。
いや流石に4度浮気されたなら怒れと思うが名無しは滅多に怒らない位懐がでかいと言うか気にしないと言うか…。
兎に角そんな事は掠り傷程度としか思いもせず、過ぎた事を引きずることもなく気持ちを切り替えて明るく振る舞う名無し。
それなのに今日の名無しは弱音を吐いた。
今までそんなこと一度もなかったと言うのにだ。
流石の名無しも今回の事は相当堪えたのだろう。
何時もであれば笑顔になっているはずなのに、今日の名無しは笑顔を浮かべる事はなかった。
悲しそうな、寂しそうな表情を浮かべてはもういいかと諦めた表情をしている。
正直、名無しのそんな表情を今まで見た事が無かった俺は耐えきれなかった。
だからこそ「なぁ、名無し」と俺は無意識のうちに声をかけてしまった。
不思議そうに涙を流しながらきょとんとする名無しに、俺はポツリと「……諦めて俺にしねーか?」と呟く。
これまで俺自身紡ぐ事が出来なかった言葉。
何故これまで紡ぐことが出来なかったのだろうと思う程、俺の口からは息を吐く様に言葉が出る。
『…ぐすんっ…ぇ…?』
「だから…んな奴らと付き合うなら俺と付き合わねーか?って」
俺の言葉を聞けば、ゆっくりと名無しの瞳が散大する。
ルビーのような赤色の綺麗な瞳がこれでもかと大きくなっていくのを見れば、吃驚してることくらいは容易に分かった。
常日ごろから表情豊かなのだ。
喜怒哀楽が分かりやすい…否、わかり易過ぎるからこそ手に取るように分かる。
だが、聞き間違いなのかとでも言わんとしている名無しの空気に俺は次の言葉を紡いだ。
思いもしなかった言葉のせいか、俺の言葉に名無しは涙を引っ込める。
先程までま泣きじゃくっていた筈なのに、今では先程まで泣いていたのがまるで嘘のように驚いた表情の名無しが俺の目に映った。
『……誰が?誰と?』
「名無しが俺と」
『……俺?』
「名無しの目の前に居るだろ?」
上手く脳が処理できていないのか、名無しは確認するように俺に問う。
けど、この書斎には俺と名無ししか居ない。
それなのになんで相手がわかりません見たいな空気で俺を見るのか…はたまたわざとなのか?と思わず疑いたくなるほどだ。
『…ディーノ私の事好きなの?』
「なんだよ、悪いかよ…」
ようやく俺が言った言葉の意味を理解した名無し。
きょとんとした表情で俺に再度問いかけては鳩が豆鉄砲を食ったような表情で俺を見ている。
名無しを見ながら俺は自分でも分かるほどぶすっと顰めっ面をしていたに違いない。
“ディーノ私の事好きなの?”
名無しの言葉に好きだから言うんだろ?!とツッコミを入れそうになったが…違う、そんなツッコミを入れたいわけじゃねえから言葉は飲み込んだ。
淡い想いを名無しに寄せていた、目で追っていた…ただそれだけだったのだから名無しは到底俺の気持ちには気付いて居ない事位俺だって理解している。
正直に言うと初恋だった。
学生時代から名無しの事を好きだったのは言うまでもない。
マフィアと繋がりのある子どもが通う学校の同級生であり、あの学校で初めて出来た同い年の友達。
弱気で臆病で「へなちょこディーノ」と呼ばれていた俺に、そんな言葉気にせずに初めて声をかけてくれたのは名無しだけだった。
名無しを好きになるのに、然程時間はかからなかったのを今でも覚えている。
それが“恋”だと気づく事にそう時間はかからなかったし、自分で自覚できるほど、俺は名無しに恋をしていた。
だがそれと同時に、この恋は叶う事等無いのだとずっと思っていた。
“初恋は実らない”
そんなジンクスを信じるほどには俺は子供だった。
否、それは結果論なだけでジンクス云々よりも俺自身が行動しなかった結果でしかない。
自分の気持ちを伝える事すら怖くて、俺は何かと理由をつけては告白を遅らせていた。
その結果名無しは俺の知らない間に別の奴と付き合い始めて居たのだ。
無論笑顔で名無しに『彼氏が出来たんだ!』なんて言われてしまえば、俺だって思ってもいないが「良かったじゃねぇーか、名無し」と言葉にするしかなかった。
本音は何も良くない。
だがそれは俺が名無しに想いを告げる事が出来なかったせいだと言う事位俺自身が理解している。
名無しが幸せならそれでいいかと思う反面、どうして俺じゃないのだろうと俺だって何度も思った。
けどそれは…弱気で臆病だった自分のせいなのだ。
名無しに好きと告白する事すら出来なかった自分が招いた結果なのだと、俺はその時初めて後悔した。
師であるリボーンには名無しを好きな事を気づかれていたせいか、その事でよく弄られていたのは言うまでもない。
今思えば気弱で臆病者だったなと思う反面、それは今の自分自身にも言えることなのだ。
先日用事がありボンゴレ本部に居る弟弟子であるツナに会った際に、リボーンに「いつまで経ってもディーノ…お前はへなちょこだな」とこの間も言われた。
32歳になって…いい大人になった今も尚言われ続けるのは癪だったが…全くその通りだ。
幾らキャバッローネ・ファミリー10代目ボスとして5000人の部下を束ねようが、俺は根本的に何一つ変わっていない。
リボーンが言いたかったことはとどのつまり、名無しに対する現状の俺自身の事なのだ。
(ほんと、リボーンの奴は何でもお見通しだな…)
そりゃあリボーンも大人になった今でも俺に「へなちょこ」なんて言うよなと納得してしまう。
俺の言葉に信じられないものを見るような目で俺を見つめる名無し。
『悪いとかじゃないけど…どうして…』
恐る恐る呟く名無しに今度は俺が目を丸くする。
名無しからしたら『どうして』と問いたくなるかもしれないが…俺からしたら『どうして』ではないのだ。
(『どうして』って野暮な事聞くな、名無しは)
名無しの言葉に俺はただただ言葉を紡ぎ始める。
「んなもん俺が名無しを好きだからに決まってるだろ」
長い長い間言えなかった言葉。
その言葉をようやく吐き出せば、止めどなく名無しに言いたい言葉が次から次へと俺の中から溢れてくる。
「俺なら名無しの事泣かせねぇーし」
今までの彼氏みたいに名無しを泣かせる事も悲しませる事も俺はしたくない。
泣かせるなんて以ての外だ、好きな奴を泣かせる位のちっぽけな好きは俺自身持ち合わせちゃいねぇー。
何より名無しには笑って居て欲しい。
もう十分名無しは泣いてきたんだ、だからこそもう泣く事よりも笑顔で居て欲しいと俺は願う。
「あんな奴らより遥かに名無しの事大事にできる自信だってあるぜ」
かれこれ10年名無しの彼氏の話を俺は聞いてきたんだ。
これまで付き合った彼氏なんかよりも、俺の方が名無しを大事に出来る自信は大いにある。
浮気なんて絶対しねぇー、俺の好きは全部名無しにくれてやるから名無しからの好きは全部俺にくれって思うくらいには名無しが好きで…名無しを大事にすることだって誓える。
マフィアのボスだ。
愛人の1人や2人居てもおかしくないだろうと思うかもしれねえが…俺はそうは思わない。
分け隔てなく愛情を注げるほど器用でもないし、何より1人の人間を愛したいし愛されたい。
「だから、俺と付き合わねぇーか名無し?」
ようやく此処に来て、弱気で臆病な俺は自分の想いを名無しに告げた―――…
2025/01/02
※一人称
「うわぁぁぁああああん、ディーノ聞いてよぉぉおおおお」
「今月何回目だよ…」
何時も通り書斎で書類仕事をしている俺の元に、名無しは今月何度目か分からない来訪を自身で告げた。
ハッピー ライラック ディーノside
今目の前でうつ伏せになって泣いている名無しは、一言で言えば俺にとって学生時代の同級生だ。
学校を卒業して以来はお互い音信不通状態だったが、イタリア最大手のマフィアボンゴレファミリーと同盟ファミリーになった時に偶然再会した。
正直ボンゴレに所属しているとは思ってもみなかった。
再会して以来名無しは時たま俺の元を訪れては、毎回俺に愚痴をこぼす。
瞳いっぱいに涙を溜め、わんわんと子供の様に泣きじゃくる名無し。
再会して10年、頻繁にではなかったはずなのに…今月の名無しがキャバッローネ・ファミリーに訪れる回数は既に片手で数えられる範囲を超えていた。
普段であれば数ヶ月に1回程…多くても月に2回あるかないかだと言うのに…今月に関しては明らかに俺の元に訪れる数がおかしい。
先月も先月で確かにヤバかったような気もするが…。
「………で、今回はどうしたんだ名無し?」
何時ものように名無しを見ながらひっそりと溜息をついては、俺は名無しに問いかけた。
“今回はどうしたんだ”と聞いてはいるが、名無しが俺の所に来たのだ。
どうしたもこうしたも、名無しが話す内容も泣いている理由も…俺には最初から分かっていた。
だが、分かっていながら俺は名無しに問う。
そう聞かなければ名無しが話を切り出す事はないのだ。
名無しが話を切り出しやすいように声をかけるが、このくだりももうかれこれ10年はしている。
いい加減飽きないのかと思うものの、飽きる飽きないレベルの話は疾うの昔に過ぎている事位俺だって十分理解している。
(ったく、…人の気も知らないで…)
そう思わず言葉にしようとする俺は、喉から出かかった言葉を飲み込んだ。
今はそんな言葉を言っても仕方がないのだ。
名無しがゆっくりと俯いていた顔を上げては、俺の目を見てポツリと言葉を放つ。
『…浮気された…』
案の定と言うか想定通りと言うか…名無しの放った一言により、俺はまたかと思いながら名無しの話を聞く。
此処10年、名無しと再会してからはよくそんな話を俺は名無しの口から聞いていた。
詳細を聞けば聞くほどそれでも何故別れないんだと疑念を抱くほど俺は不思議でならない。
名無しは仕事は出来るのだ。
オンとオフの切り替えがきっちりと出来ているせいか、仕事に関してだけ言えば本当に文句のつけようもないほどだとボンゴレ9代目やこれまた同級生であるスクアーロが言っていたのを俺自身知っている。
だが仕事ではなく私生活…主に恋愛面に関しては名無しはてんで駄目だった。
もうかれこれ10年は名無しの彼氏事情について俺自身聞いているが…先程話していた別れた男の話を聞いても面白い位絵にかいたようなクズ男でしかない。
浮気回数もヤバい上に何で名無しは気づかないんだよと思わずツッコミを入れそうになる。
その上浮気した事に関して怒るよりも自分を責める名無し。
普通に怒っていいだろ…と言うか、何でそんな奴とズルズル付き合ってたんだよと思っちまう。
話し合って改心した、浮気はもうしないと言っておきながら秒で浮気するような男だ。
聞けば聞くほど何で名無しの方から別れないんだよ…と言うか挙句の果てに男の方が名無しを振るっておかしいだろと、俺は沸々と沸き上がる怒りを無理やり抑え込む。
名無しの話を聞いてはいるものの、俺は部外者でしかないのだ。
第三者が名無しの彼氏に怒ったところで、どうする事も出来ない。
だが…
『もう私の人生男と付き合わずに独りで生きてけって事なのかなぁ…』
これまで数え切れないほどの失恋話やら愚痴を聞いてきた。
それでも最後には名無しは笑って『もう大丈夫!』と前向きに言っていたのを覚えている。
1度振られたから何だ、4度浮気されようが何だ!と。
いや流石に4度浮気されたなら怒れと思うが名無しは滅多に怒らない位懐がでかいと言うか気にしないと言うか…。
兎に角そんな事は掠り傷程度としか思いもせず、過ぎた事を引きずることもなく気持ちを切り替えて明るく振る舞う名無し。
それなのに今日の名無しは弱音を吐いた。
今までそんなこと一度もなかったと言うのにだ。
流石の名無しも今回の事は相当堪えたのだろう。
何時もであれば笑顔になっているはずなのに、今日の名無しは笑顔を浮かべる事はなかった。
悲しそうな、寂しそうな表情を浮かべてはもういいかと諦めた表情をしている。
正直、名無しのそんな表情を今まで見た事が無かった俺は耐えきれなかった。
だからこそ「なぁ、名無し」と俺は無意識のうちに声をかけてしまった。
不思議そうに涙を流しながらきょとんとする名無しに、俺はポツリと「……諦めて俺にしねーか?」と呟く。
これまで俺自身紡ぐ事が出来なかった言葉。
何故これまで紡ぐことが出来なかったのだろうと思う程、俺の口からは息を吐く様に言葉が出る。
『…ぐすんっ…ぇ…?』
「だから…んな奴らと付き合うなら俺と付き合わねーか?って」
俺の言葉を聞けば、ゆっくりと名無しの瞳が散大する。
ルビーのような赤色の綺麗な瞳がこれでもかと大きくなっていくのを見れば、吃驚してることくらいは容易に分かった。
常日ごろから表情豊かなのだ。
喜怒哀楽が分かりやすい…否、わかり易過ぎるからこそ手に取るように分かる。
だが、聞き間違いなのかとでも言わんとしている名無しの空気に俺は次の言葉を紡いだ。
思いもしなかった言葉のせいか、俺の言葉に名無しは涙を引っ込める。
先程までま泣きじゃくっていた筈なのに、今では先程まで泣いていたのがまるで嘘のように驚いた表情の名無しが俺の目に映った。
『……誰が?誰と?』
「名無しが俺と」
『……俺?』
「名無しの目の前に居るだろ?」
上手く脳が処理できていないのか、名無しは確認するように俺に問う。
けど、この書斎には俺と名無ししか居ない。
それなのになんで相手がわかりません見たいな空気で俺を見るのか…はたまたわざとなのか?と思わず疑いたくなるほどだ。
『…ディーノ私の事好きなの?』
「なんだよ、悪いかよ…」
ようやく俺が言った言葉の意味を理解した名無し。
きょとんとした表情で俺に再度問いかけては鳩が豆鉄砲を食ったような表情で俺を見ている。
名無しを見ながら俺は自分でも分かるほどぶすっと顰めっ面をしていたに違いない。
“ディーノ私の事好きなの?”
名無しの言葉に好きだから言うんだろ?!とツッコミを入れそうになったが…違う、そんなツッコミを入れたいわけじゃねえから言葉は飲み込んだ。
淡い想いを名無しに寄せていた、目で追っていた…ただそれだけだったのだから名無しは到底俺の気持ちには気付いて居ない事位俺だって理解している。
正直に言うと初恋だった。
学生時代から名無しの事を好きだったのは言うまでもない。
マフィアと繋がりのある子どもが通う学校の同級生であり、あの学校で初めて出来た同い年の友達。
弱気で臆病で「へなちょこディーノ」と呼ばれていた俺に、そんな言葉気にせずに初めて声をかけてくれたのは名無しだけだった。
名無しを好きになるのに、然程時間はかからなかったのを今でも覚えている。
それが“恋”だと気づく事にそう時間はかからなかったし、自分で自覚できるほど、俺は名無しに恋をしていた。
だがそれと同時に、この恋は叶う事等無いのだとずっと思っていた。
“初恋は実らない”
そんなジンクスを信じるほどには俺は子供だった。
否、それは結果論なだけでジンクス云々よりも俺自身が行動しなかった結果でしかない。
自分の気持ちを伝える事すら怖くて、俺は何かと理由をつけては告白を遅らせていた。
その結果名無しは俺の知らない間に別の奴と付き合い始めて居たのだ。
無論笑顔で名無しに『彼氏が出来たんだ!』なんて言われてしまえば、俺だって思ってもいないが「良かったじゃねぇーか、名無し」と言葉にするしかなかった。
本音は何も良くない。
だがそれは俺が名無しに想いを告げる事が出来なかったせいだと言う事位俺自身が理解している。
名無しが幸せならそれでいいかと思う反面、どうして俺じゃないのだろうと俺だって何度も思った。
けどそれは…弱気で臆病だった自分のせいなのだ。
名無しに好きと告白する事すら出来なかった自分が招いた結果なのだと、俺はその時初めて後悔した。
師であるリボーンには名無しを好きな事を気づかれていたせいか、その事でよく弄られていたのは言うまでもない。
今思えば気弱で臆病者だったなと思う反面、それは今の自分自身にも言えることなのだ。
先日用事がありボンゴレ本部に居る弟弟子であるツナに会った際に、リボーンに「いつまで経ってもディーノ…お前はへなちょこだな」とこの間も言われた。
32歳になって…いい大人になった今も尚言われ続けるのは癪だったが…全くその通りだ。
幾らキャバッローネ・ファミリー10代目ボスとして5000人の部下を束ねようが、俺は根本的に何一つ変わっていない。
リボーンが言いたかったことはとどのつまり、名無しに対する現状の俺自身の事なのだ。
(ほんと、リボーンの奴は何でもお見通しだな…)
そりゃあリボーンも大人になった今でも俺に「へなちょこ」なんて言うよなと納得してしまう。
俺の言葉に信じられないものを見るような目で俺を見つめる名無し。
『悪いとかじゃないけど…どうして…』
恐る恐る呟く名無しに今度は俺が目を丸くする。
名無しからしたら『どうして』と問いたくなるかもしれないが…俺からしたら『どうして』ではないのだ。
(『どうして』って野暮な事聞くな、名無しは)
名無しの言葉に俺はただただ言葉を紡ぎ始める。
「んなもん俺が名無しを好きだからに決まってるだろ」
長い長い間言えなかった言葉。
その言葉をようやく吐き出せば、止めどなく名無しに言いたい言葉が次から次へと俺の中から溢れてくる。
「俺なら名無しの事泣かせねぇーし」
今までの彼氏みたいに名無しを泣かせる事も悲しませる事も俺はしたくない。
泣かせるなんて以ての外だ、好きな奴を泣かせる位のちっぽけな好きは俺自身持ち合わせちゃいねぇー。
何より名無しには笑って居て欲しい。
もう十分名無しは泣いてきたんだ、だからこそもう泣く事よりも笑顔で居て欲しいと俺は願う。
「あんな奴らより遥かに名無しの事大事にできる自信だってあるぜ」
かれこれ10年名無しの彼氏の話を俺は聞いてきたんだ。
これまで付き合った彼氏なんかよりも、俺の方が名無しを大事に出来る自信は大いにある。
浮気なんて絶対しねぇー、俺の好きは全部名無しにくれてやるから名無しからの好きは全部俺にくれって思うくらいには名無しが好きで…名無しを大事にすることだって誓える。
マフィアのボスだ。
愛人の1人や2人居てもおかしくないだろうと思うかもしれねえが…俺はそうは思わない。
分け隔てなく愛情を注げるほど器用でもないし、何より1人の人間を愛したいし愛されたい。
「だから、俺と付き合わねぇーか名無し?」
ようやく此処に来て、弱気で臆病な俺は自分の想いを名無しに告げた―――…
2025/01/02
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