短編
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※微裏…?
『あ゙~~~~~~、生き返る~~~~~』
ちゃぽん…と、天井から水滴が浴槽の湯舟に滴り落ちる。
うら若き花の乙女に似つかわない声ではあるが、そんな事気にせずに名無しは気持ち良さそうに目を閉じて後ろに居るディーノにもたれかかる。
湯気が上へ上へと上る浴室で、名無しとディーノは2人湯船に浸かっていた。
「悪いな名無し…」
仕事終わりにディーノと出会い、2人仲良く帰っていたのだが突然の夕立に合ってしまいこうして2人でお風呂に入っている。
これが夏場ならまだ良かったのだが、今は11月だ。
冬の訪れが今年は例年よりも早いせいか雨に濡れた2人は家に着く頃には『「へぷしっ」』っと揃ってくしゃみをしていた。
確実に2人して風邪をひいてしまうだろうと思った名無しは、タオルを渡し髪を拭くディーノに対し『二人でお風呂入ろう?』と提案し今に至る。
湯船には名無しのお気に入りの入浴剤を入れているせいか、浴槽に張っているお湯は透き通ったリーフグリーン色。
レモンライムのさっぱりとした香りが、2人の心をリフレッシュさせてくれている。
一緒にお風呂に入ろうと誘ったのは名無しの方なのだ。
名無しからすれば大好きな人と一緒にお風呂に入り、一緒の時間を過ごすのだから寧ろ我儘を聞いてくれてありがとうとすら思ってしまう。
だからこそ名無しからすればディーノが申し訳なさそうに謝る事等何一つないのだ。
『いいよいいよ、それより狭くてごめんね?』
「そこは気にしねぇーけど…寧ろ一緒に風呂入ってる方が、気にならないのか?」
ほんの少し聞きづらそうに、ディーノは名無しに訊ねる。
名無しの身長が低いため自分1人で入る際は足を簡単に伸ばせるのだが、男性で高身長であるディーノからすればそれは流石に難しい。
1人用の浴槽に2人の大人が入っているせいか、2人の身体はかなり密着している。
そして2人で一緒に入るとなればどうしても自分の股の部分しか名無しが入るスペースはない。
普段後ろから抱きしめる事は多々あれど、生まれたままの姿で後ろから見る名無しのうなじが妙に色っぽいのだ。
ほんのり赤く色づく名無しの肌を見てはディーノは恥ずかしそうに視線を逸らす。
(…くそっ、名無しの事襲いたくなっちまうな…)
これ以上見ていたら手を出しそうになる自分に耐えろ俺と内心思うものの、そんなディーノの気持ちなど露知らず名無しは『今更じゃない?』と笑い飛ばす。
お互いの身体を見る事は別に初めてではない。
身体を重ねる事だってあるのだ、それ相応の事をしていて何を今更気にするのだろう?と名無しは不思議そうに首を傾げる。
それとこれとは別の話だと思うのだがと思いながら、ディーノは名無しが気にしていないのならいいかと一人結論を出す。
「…名無しって変な所でズレてるよな」
『え~、そうかな?』
ディーノの言葉に不思議そうに首を傾げるが、自分がズレている感覚の持ち主だとは思わず首を傾げる。
人の感覚なんて人それぞれであるためか、名無しは特に気にする様子もなく思い出したかのように『あ、お風呂あがったらディーノ何食べたい?』とディーノに聞く。
日本での用事が終わったディーノは、明日にはイタリアに帰国してしまう。
帰国する前に名無しとの時間を作りにディーノは今日名無しの家に泊って行く予定だ。
事前に連絡を貰っていたお陰で、買い出しは昨日のうちに済ませてあるのだ。
今ならディーノの食べたいリクエストに何でも答えられるとでも言わんばかりに、名無しは問う。
「別に何でもいいぜ?カップ麺とかインスタントでも…」
だがそんな名無しとは裏腹に、ディーノが紡いだ言葉に思わず名無しは目を丸くした。
仕事で疲れている名無しを気遣ってくれたのだろう。
ディーノは簡単に作れ食べれそうな物をあげる。
どれも然程時間がかかるわけでもなく、お湯を注いだり電子レンジで温めれば出来上がる物だ。
ちょっとでも名無しがゆっくり出来るようにと手のかからない物を言葉にしたが、名無しはその言葉が気に入らなかった。
ディーノの左腕の刺青をなぞっていた名無しの指がピタッと止まり、首だけ後ろを向きディーノを見ながら『え、やだ』と言葉にする。
『折角ディーノが会いに来てくれてるんだもん、ディーノには美味しい物食べてもらいたいしディーノのために私ちゃんと作りたいもん!』
まるで子供が拗ねたように頬を膨らませ、名無しはぶーぶーとぶー垂れる。
ひょんな事で出会い、ひょんな事をきっかけに名無しとディーノは付き合い始めたのだ。
ディーノがイタリアンマフィアでマフィアのボスだと言う事位ディーノと付き合い始める前に名無しは教えてもらった。
マフィアのボスともなれば忙しいはずなのに、それでも時間を見つけては名無しに会いに来てくれるのだ。
弟弟子に会うついででも、師からの頼み事や他のマフィアからの頼まれ事でも…日本に来る際は必ず名無しとの時間を作ってくれる。
勿論ついででも無く名無しに会いにだってディーノは来てくれるのだ。
タイミングが合わない時だってあるがそれでも会えた時はとても嬉しく、だからこそディーノが喜ぶ事をついつい名無しはしたくて仕方がない。
『だから、ね?ディーノ何か食べたい物ないかな~?って』
子供の様な我儘だと名無しは思うが、それでもディーノは甘えて良い相手なのだ。
少し位の我儘なら許されるだろうと名無しはじっとディーノを見やる。
仕事終わりで疲れているはずなのに、それでも名無しはディーノに問う。
ディーノの喜ぶ顔が見たくて、ディーノの事が大好きだから―――…
だからこそ美味しい物を作って食べさせたいと、名無しは思うのだ。
(あ~もう、なんでこんなに名無しは可愛いんだ…)
頬を膨らませいかにも“ちゃんと答えてください”とでも言わんばかりの名無しを見ながら、ディーノは思う。
名無しの言葉に男心を擽るのが美味いと言うか、単純にディーノがチョロいだけなのか分からないがディーノは嬉しそうに頬を緩めながらぎゅっと名無しを後ろから抱きしめた。
突然抱きしめられればビクリと名無しの身体は驚き思わず前を向いてしまうが、それでもディーノから抱きしめられるのは嬉しいのだ。
嫌がる事等せず、ただ回された腕に名無し自身の手を添えては『ディーノは何食べたい?』と再度問いかける。
「…じゃあ……がいい…」
『え、何て?』
ぎゅっと抱きしめられて近距離に居るはずなのに、ディーノの言葉が聞こえず名無しは聞き返す。
「…トマトパスタ。名無しが前作ってくれたやつめちゃくちゃ美味かったから…それ食いてぇ」
『いいよ?ついでに昨日作ったオニオンスープもあるけど飲む?』
「当たり前だろ!それも飲むに決まってるじゃねぇーか!」
残り物で申し訳ない気持ちになってしまうが、それでもディーノは嬉々として笑顔になる。
名無しは前を向いているためディーノの表情は見えないが…それでも花が咲いたように、ぱっとディーノが笑顔で居るのが声色からして窺える。
好きな人といるだけで幸せな気持ちになれるのに、ディーノが笑顔で楽しみにしていると思えば料理をする事はなんの苦でもない。
寧ろ作りたい衝動に駆られてしまうのだ。
「名無しの飯楽しみだな」
『あはは、ご飯は逃げないから…ちゃんと肩まで浸かって温まらないと風邪ひくよ?』
「はは、確かにな」
お互いがお互いその言葉に笑い合い、再びしっかりと湯船に肩まで浸かる。
その間もディーノは名無しの事を離さず後ろからぎゅっと抱きしめ続けた―――…
moment of bliss
(ごちそうさまでした、美味かったぜ名無し!)
(お粗末様でした。ディーノってホントいい食べっぷりしてるよね?)
(そうか?普通だと思うけど…なぁ、デザートも食べていいか?)
(デザートアイスしかないけど…それでもいいなら?)
(否、アイスじゃなくて…目の前にあるだろ)
(目の前…?)
(名無しの事)
(っつ)
(ダメか…?)
(……駄目…じゃないですっ…)
2024/11/10
『あ゙~~~~~~、生き返る~~~~~』
ちゃぽん…と、天井から水滴が浴槽の湯舟に滴り落ちる。
うら若き花の乙女に似つかわない声ではあるが、そんな事気にせずに名無しは気持ち良さそうに目を閉じて後ろに居るディーノにもたれかかる。
湯気が上へ上へと上る浴室で、名無しとディーノは2人湯船に浸かっていた。
「悪いな名無し…」
仕事終わりにディーノと出会い、2人仲良く帰っていたのだが突然の夕立に合ってしまいこうして2人でお風呂に入っている。
これが夏場ならまだ良かったのだが、今は11月だ。
冬の訪れが今年は例年よりも早いせいか雨に濡れた2人は家に着く頃には『「へぷしっ」』っと揃ってくしゃみをしていた。
確実に2人して風邪をひいてしまうだろうと思った名無しは、タオルを渡し髪を拭くディーノに対し『二人でお風呂入ろう?』と提案し今に至る。
湯船には名無しのお気に入りの入浴剤を入れているせいか、浴槽に張っているお湯は透き通ったリーフグリーン色。
レモンライムのさっぱりとした香りが、2人の心をリフレッシュさせてくれている。
一緒にお風呂に入ろうと誘ったのは名無しの方なのだ。
名無しからすれば大好きな人と一緒にお風呂に入り、一緒の時間を過ごすのだから寧ろ我儘を聞いてくれてありがとうとすら思ってしまう。
だからこそ名無しからすればディーノが申し訳なさそうに謝る事等何一つないのだ。
『いいよいいよ、それより狭くてごめんね?』
「そこは気にしねぇーけど…寧ろ一緒に風呂入ってる方が、気にならないのか?」
ほんの少し聞きづらそうに、ディーノは名無しに訊ねる。
名無しの身長が低いため自分1人で入る際は足を簡単に伸ばせるのだが、男性で高身長であるディーノからすればそれは流石に難しい。
1人用の浴槽に2人の大人が入っているせいか、2人の身体はかなり密着している。
そして2人で一緒に入るとなればどうしても自分の股の部分しか名無しが入るスペースはない。
普段後ろから抱きしめる事は多々あれど、生まれたままの姿で後ろから見る名無しのうなじが妙に色っぽいのだ。
ほんのり赤く色づく名無しの肌を見てはディーノは恥ずかしそうに視線を逸らす。
(…くそっ、名無しの事襲いたくなっちまうな…)
これ以上見ていたら手を出しそうになる自分に耐えろ俺と内心思うものの、そんなディーノの気持ちなど露知らず名無しは『今更じゃない?』と笑い飛ばす。
お互いの身体を見る事は別に初めてではない。
身体を重ねる事だってあるのだ、それ相応の事をしていて何を今更気にするのだろう?と名無しは不思議そうに首を傾げる。
それとこれとは別の話だと思うのだがと思いながら、ディーノは名無しが気にしていないのならいいかと一人結論を出す。
「…名無しって変な所でズレてるよな」
『え~、そうかな?』
ディーノの言葉に不思議そうに首を傾げるが、自分がズレている感覚の持ち主だとは思わず首を傾げる。
人の感覚なんて人それぞれであるためか、名無しは特に気にする様子もなく思い出したかのように『あ、お風呂あがったらディーノ何食べたい?』とディーノに聞く。
日本での用事が終わったディーノは、明日にはイタリアに帰国してしまう。
帰国する前に名無しとの時間を作りにディーノは今日名無しの家に泊って行く予定だ。
事前に連絡を貰っていたお陰で、買い出しは昨日のうちに済ませてあるのだ。
今ならディーノの食べたいリクエストに何でも答えられるとでも言わんばかりに、名無しは問う。
「別に何でもいいぜ?カップ麺とかインスタントでも…」
だがそんな名無しとは裏腹に、ディーノが紡いだ言葉に思わず名無しは目を丸くした。
仕事で疲れている名無しを気遣ってくれたのだろう。
ディーノは簡単に作れ食べれそうな物をあげる。
どれも然程時間がかかるわけでもなく、お湯を注いだり電子レンジで温めれば出来上がる物だ。
ちょっとでも名無しがゆっくり出来るようにと手のかからない物を言葉にしたが、名無しはその言葉が気に入らなかった。
ディーノの左腕の刺青をなぞっていた名無しの指がピタッと止まり、首だけ後ろを向きディーノを見ながら『え、やだ』と言葉にする。
『折角ディーノが会いに来てくれてるんだもん、ディーノには美味しい物食べてもらいたいしディーノのために私ちゃんと作りたいもん!』
まるで子供が拗ねたように頬を膨らませ、名無しはぶーぶーとぶー垂れる。
ひょんな事で出会い、ひょんな事をきっかけに名無しとディーノは付き合い始めたのだ。
ディーノがイタリアンマフィアでマフィアのボスだと言う事位ディーノと付き合い始める前に名無しは教えてもらった。
マフィアのボスともなれば忙しいはずなのに、それでも時間を見つけては名無しに会いに来てくれるのだ。
弟弟子に会うついででも、師からの頼み事や他のマフィアからの頼まれ事でも…日本に来る際は必ず名無しとの時間を作ってくれる。
勿論ついででも無く名無しに会いにだってディーノは来てくれるのだ。
タイミングが合わない時だってあるがそれでも会えた時はとても嬉しく、だからこそディーノが喜ぶ事をついつい名無しはしたくて仕方がない。
『だから、ね?ディーノ何か食べたい物ないかな~?って』
子供の様な我儘だと名無しは思うが、それでもディーノは甘えて良い相手なのだ。
少し位の我儘なら許されるだろうと名無しはじっとディーノを見やる。
仕事終わりで疲れているはずなのに、それでも名無しはディーノに問う。
ディーノの喜ぶ顔が見たくて、ディーノの事が大好きだから―――…
だからこそ美味しい物を作って食べさせたいと、名無しは思うのだ。
(あ~もう、なんでこんなに名無しは可愛いんだ…)
頬を膨らませいかにも“ちゃんと答えてください”とでも言わんばかりの名無しを見ながら、ディーノは思う。
名無しの言葉に男心を擽るのが美味いと言うか、単純にディーノがチョロいだけなのか分からないがディーノは嬉しそうに頬を緩めながらぎゅっと名無しを後ろから抱きしめた。
突然抱きしめられればビクリと名無しの身体は驚き思わず前を向いてしまうが、それでもディーノから抱きしめられるのは嬉しいのだ。
嫌がる事等せず、ただ回された腕に名無し自身の手を添えては『ディーノは何食べたい?』と再度問いかける。
「…じゃあ……がいい…」
『え、何て?』
ぎゅっと抱きしめられて近距離に居るはずなのに、ディーノの言葉が聞こえず名無しは聞き返す。
「…トマトパスタ。名無しが前作ってくれたやつめちゃくちゃ美味かったから…それ食いてぇ」
『いいよ?ついでに昨日作ったオニオンスープもあるけど飲む?』
「当たり前だろ!それも飲むに決まってるじゃねぇーか!」
残り物で申し訳ない気持ちになってしまうが、それでもディーノは嬉々として笑顔になる。
名無しは前を向いているためディーノの表情は見えないが…それでも花が咲いたように、ぱっとディーノが笑顔で居るのが声色からして窺える。
好きな人といるだけで幸せな気持ちになれるのに、ディーノが笑顔で楽しみにしていると思えば料理をする事はなんの苦でもない。
寧ろ作りたい衝動に駆られてしまうのだ。
「名無しの飯楽しみだな」
『あはは、ご飯は逃げないから…ちゃんと肩まで浸かって温まらないと風邪ひくよ?』
「はは、確かにな」
お互いがお互いその言葉に笑い合い、再びしっかりと湯船に肩まで浸かる。
その間もディーノは名無しの事を離さず後ろからぎゅっと抱きしめ続けた―――…
moment of bliss
(ごちそうさまでした、美味かったぜ名無し!)
(お粗末様でした。ディーノってホントいい食べっぷりしてるよね?)
(そうか?普通だと思うけど…なぁ、デザートも食べていいか?)
(デザートアイスしかないけど…それでもいいなら?)
(否、アイスじゃなくて…目の前にあるだろ)
(目の前…?)
(名無しの事)
(っつ)
(ダメか…?)
(……駄目…じゃないですっ…)
2024/11/10
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