短編
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※ディーノ先生(英語教師)×生徒(部下)
※微裏
「悪いな名無し、昼休みなのに手伝ってもらって」
『大丈夫ですよ、ディーノ先生』
昼休み、英語教師であるディーノの隣を名無しは大量のノートを持って歩いていた。
4時間目の授業が終わり宿題を集めたはいいがディーノ一人では持ちきれず、たまたま目が合った名無しにノートを運ぶのを手伝ってもらっている最中だ。
名無しはちらりと隣を歩くディーノへと目を向ける。
普段見慣れないディーノの姿を見れば、名無しの意識とは関係なく胸が高鳴って仕方がない。
黒縁眼鏡から覗く鳶色の瞳。
水色のカーディガンに首元でかっちりと絞められているネクタイに、首元からは教員名札が提げられていた。
腕まくりをしているせいか左腕に巻かれている包帯が生徒の目に付く。
階段で踏み外したり何もない所でこけたりとよく目撃されているため、その時の傷を包帯で巻いているのだろうと一般の生徒は思うだろう。
だが隣を歩いている名無しはそう思わない、何故ならそれは怪我をしたから巻いている包帯ではなく刺青を隠すために巻かれている包帯だからだ。
何故一生徒である名無しがそんな事を知っているかと言えば、それは二人が教師でも生徒でもないからだ。
英語教師と赴任しているディーノは、本来はキャバッローネ・ファミリー十代目ボスである。
そして名無しもまた中学生…ではなくキャバッローネ・ファミリーの一員でありディーノの部下兼恋人だ。
ディーノの師であるリボーンの頼みで、こうしてディーノは教師として潜入している。
(ロマーリオさんに言われて生徒として並中に潜入してるけど…解せぬ)
ノートの山を持ちながら、名無しはディーノにバレないようにひっそりと溜息を付く。
本来であればディーノだけが潜入する予定だったし、リボーンもそのつもりだった。
だが、ボスだけでは心配だと言うロマーリオの言葉により、勿論キャバッローネ・ファミリーに属する者は皆頭を悩ませた。
ディーノはキャバッローネ・ファミリーのボスとしてはそれこそ優秀なのだが…如何せんそれは部下が居るのが前提だ。
究極のボス体質故に、部下が居なければ本来の力を発揮する事も…ましてや運動音痴になってしまうのだ。
英語教師としてディーノは並盛中学校に潜入するのだ、絶対ドジるだろうと安易に予想出来てしまいロマーリオをはじめ他の者は皆どうするべきかと話し合った。
過保護だなと名無しは思ったが、名無しだってディーノの部下であり恋人なのだ。
少なからずその点に関しては心配だったためどうするかと悩むロマーリオ達の輪に参加したのがいけなかった。
「名無しに生徒として潜入してもらったらいいんじゃないか?」と、同僚が口走ったため、とんとん拍子に話が進んでしまったのだ。
イタリア人と日本人のハーフであるためか、否、日本人の血が濃いためか成人していても名無しは幼く見える。
結果的に名無しは期限付き留学生と言う設定でディーノと同じく並中に潜入するはめになったのだ。
(絶対皆あの時面白がってたし…特に同僚覚えてろよ…)
思い出しただけで名無しは殺意が湧く。
何故教師ではなく生徒側を推したのかと文句の一つも言いたくなる。
確かに名無しの容姿は成人していると言えど幼い、すっぴんで学生服をきれば中学生に見えない事は否定しない。
だがこれでも一応名無しは成人しているのだ。
せめて教師側でディーノの護衛をさせてくれと直談判したが「生徒の方が何かと教師に近づけるだろ?」と言われてしまえば一理あるのだ。
観念し大人しく並盛中学校の制服を着ているが、それとこれとは別なのである。
(帰国したら一発殴る)
そう胸の内に秘めながら目的地である英語準備室に着けば、ディーノはノートを持っていても器用に扉を開け中へと入っていく。
もし部下である名無しが居なければ、そんな器用な事は出来なかっただろう。
そもそも英語準備室に辿り着く間にノートを辺りにぶちまけ尚且つディーノ自身もコケていたに違いないのだ。
たまたま目が合ったなんて真っ赤な嘘で、ディーノの部下である名無しに最初から手伝ってもらう予定で名無しを指名した。
「ありがとな、名無し」
『いえ、大したことはしてませんので』
そう言って英語準備室の中に有る机の上に先ほどまで持っていた大量のノートをディーノが先に置く。
机のど真ん中ではなく端の方に置いているのを見れば、名無しもそれに合わせて端の方へと置いた。
1クラス分だけと言えど、やはりノートとなればそれなりの量になるし重い。
(英語準備室ってこんな風になってるんだ)
膨大な量の辞書、洋書に参考書、教科書にCDやDVDと言った教材が置いてある。
初めて入る英語準備室をきょろきょろと見渡していると、不意に扉の方からカチャリと小さい音が聞こえる。
振り返るとディーノが扉に鍵をかけ真剣な目で名無しの方へと視線を向けた。
(仕事の話かな?)
中学生の恰好をしていても名無しは中学生ではない。
ディーノの部下であるため鍵を閉めたと言う事は自ずと、今回の任務に関して何か言う事が有るのだろうと名無しは気を引き締める。
ここ数日平和な中学生生活を送っていたのだ。
任務で潜入していると言う事を忘れてしまいそうなほど、日本はのどかで穏やかだ。
「なぁ名無し」
『はい?』
真剣な目で名無しの事を見つめるディーノ。
その眼差しは教師ではなく、キャバッローネ・ファミリーのボスの物だと名無しは感じる。
ここ数日で気が抜けていた事に対する事を指摘されるのだろうか…?と思った。
名無しだって自覚している。
ここ数日は本当にのどかで穏やか…そして平和なのだ。
自分がマフィアである事を忘れてしまいそうになるほど、何も起こらないから余計に気が緩んでいる。
いくら恋人であると言えど名無しはディーノの部下だ。
英語準備室の扉からゆっくりと名無しの元へと歩み寄る。
カツン、カツンと靴が鳴る音だけが英語準備室内に響き渡る。
黒縁眼鏡からのぞくディーノの鳶色の瞳が、じっと名無しをその瞳に映す。
思わず後ずさりしてしまうが、名無しの後ろには机があるせいかほんの少し乗り上げる形になってしまうが逃げる事は出来ない。
じっとディーノが詰めよれば、ゆっくりと口を開く。
「………スカート短くないか?」
『……へ?』
が、ディーノが放った言葉は仕事の話でも任務に関しての話でもなくスカート丈の話だった。
思わずぽかんと呆けてしまったが、気を取り直して名無しは『そうですか?』と言いながら首を傾げる。
今名無しが着用している並盛中学校の制服は上はだぼついたカーディガンに、カーディガンの下にはきちんと指定のスカートをはいている。
だぼついているカーディガンのせいかスカートはほんの少ししか見えていない。
潜入する前に並盛中学校に通う女子生徒を観察したのだが、スカートの長さは確かに名無し自身短いと感じた。
だが木を隠すなら森の中。
スカート丈が長い生徒も居るには居るのだが、少人数な為目立って仕方ない。
それならばと名無しは思い、スカート丈を他の女子生徒に合わせるように短く折っている。
名無しは自分の順応能力が恐ろしく、ここ数日通っては慣れてしまったので特に気にしていなかったが…ディーノからしたらやはり短いと感じるらしい。
『でもディーノ、此処に通ってる女子生徒皆これくらいの長さだよ?』
「それはまぁ…俺も思ったけど…」
名無しがそう言えば、ディーノは言葉に詰まる。
普通膝下での長さではないのかと疑問に思う程、並盛中学校に通う女子のスカート丈はあまりにも短かった。
ディーノが見た生徒の過半数はスカート丈が短く、スカート丈が長い生徒などほんの一握りしかいない。
『郷に入っては郷に従えって言葉があるし…短くても問題ないんじゃないかな?』
「っつ…それでも…名無しは駄目だ、スカートもう少し下ろせ」
『でも短くても他の先生達は何も言わないよ?』
「うぐっ…」
名無しの言っている事も一理あるのはディーノだって理解している。
それでも下ろして欲しいと言うディーノの言葉に、名無しは『それに短い方が可愛いよ?』と追い打ちをかける。
「可愛いと言えば可愛いが…」
『でしょ?それに潜入してるんだし目立ちたくないからこのままで大丈夫でしょ?』
そう言って名無しはディーノを見上げる。
何の問題もないよとでも言いたげな目でディーノを見つめる名無し。
そんな名無しに、ディーノは心の中で溜息を付く。
(人の気も知らないで…)
名無しに見つめられればディーノだって「そうだな」と頷いてしまいそうになるがこればかりは譲れないのだ。
頑なに「駄目だ」と言葉にするディーノを不思議に思いながら名無しは問う。
『どうして?』
「どうしても!」
『理由くらいあるでしょ!』
「理由は…あるけど、兎に角駄目なものは駄目だ」
『なんでよっ?!』
名無しだって理由さえ言ってくれればここまで問う事はないのだが、ディーノははっきりとした理由を言わない。
だから名無しも引かずに『どうして?』と問うのだ。
ディーノも理由を言葉にすればいいだけのはずなのにそれを頑なにしようとしない。
お互い一歩も引かず言葉でのやり取りが、数分続く。
だが、先に痺れを切らしたのはディーノの方だ。
「あー、ったく、あーだこーだ言うなよ名無しっ!」
『え…きゃっ…!?』
じっと見つめ合っていた瞳が急に鋭くなり、ディーノは机に乗り上げている名無しの左足を持ち上げる。
突然の行動に名無しは吃驚するも、机に手を付いていたので後ろに倒れる事はなくノートの山も端に寄せていたおかげで崩れる事はなかった。
『ちょっ、ディーノ…?!』
「言う事聞かない名無しが悪いんだぜ?」
そう言ってディーノはスカートで隠れるか隠れないかと言う場所にそっと口付けてはペロリと舐める。
生暖かいディーノの舌が、名無しの左内太腿を這うように触れていく。
『ん…っ、ぁ…っ…』
擽ったく反射的に足を閉じようとするものの、ディーノが名無しの太腿を抑えているせいか閉じる事が出来ない。
ゆっくりと名無しの太腿をディーノの舌が這い、スカートからのぞく部分にチュッと音を立てて吸い付く。
『ぁ…っ、ディー…ノっ…ん』
ほんの少し痛みが走り、名無しの身体はビクリと跳ねる。
名無しの反応など目もくれず、ディーノは変わらず名無しの太腿から唇を離さない。
舌を這わせては再び吸い付く行為を数回繰り返す。
普段は優しい鳶色の瞳が、獲物を狩るように目を細めながら名無しを見ては舌を這わす。
大きな声を出さないようにと名無しは自分の指を噛むものの、それでも声は漏れてしまう。
「これで、スカート短くできないな名無し」
ゆっくりと太腿から唇が離れれば、先ほどまで触れていた部分には赤い痕が付けられている。
数回同じ場所に舌を這わせ吸い付かれたのだ。
ほんのり赤く染まっている…わけではなく、くっきりと赤い痕が名無しの目に映る。
『デ、デデデデ、ディーノ…?!』
普段痕を付けてもディーノが付ける痕は薄い物が多い。
珍しくくっきりとした赤い痕に戸惑いながらもディーノを見下ろせば、ディーノはそんな名無しを気にせずにチュッっとわざと音を立てた。
満足そうな表情で下からディーノが名無しを見上げれば、悪戯が成功した子供の様ににかっと笑う。
「俺以外のやつに見せちゃダメだろ?」
そう言って舌なめずりをしながら再び左内太腿にディーノは吸い付くように口付ける。
先程付けたくっきりとした赤い痕とは違い、普段ディーノが付ける薄い痕。
いくら幼く見えると言っても名無しは成人している大人なのだ。
だぼついているカーディガンを上から着て体のラインが隠れていても、スカートからのぞく程よく肉付いた白く柔らかな太ももに目を向ける思春期の男子生徒は少なくない。
見えそうで見えないスカートの中にも興味津々なのが傍から見ていれば嫌でも目に付く。
中学生相手に嫉妬しているディーノの気持ち等名無しは知らないだろう。
いくら部下兼恋人同士と言えど、表向きは教師と生徒と言う立場なのだ。
ディーノから名無しに対して声をかける事は容易いが、それでも生徒同士に比べたら制限が付いてしまう。
普段の様に四六時中一緒に居るわけにもいかず、潜入しているのだから教師としての仕事もこなさねばならない。
名無しの事を信頼していないのかと言われればノーだ、名無しの事をディーノは信頼している。
だが、自分の見ていない所で名無しがそう言う目で見られるのに、ディーノは気が気ではない。
こればかりは言わばディーノの我儘だ。
(俺以外の奴がそんな邪な目で名無しの事見るとか、俺が許さねぇーんだよ)
自分以外がそんな目で名無しを見るなと言う牽制。
名無しは自分のだと言う印を見れば、誰も手を出そうと等思わないだろう。
そしてスカート丈を長くしない名無しに対しての…ある種のお仕置きだ。
名無しは自分が何故こんなことをされたかなんて思いもしないだろう。
ただただ顔を真っ赤にし、口を金魚の様にパクパクとさせているのだ。
そんな名無しを見上げ、ディーノはもう一度笑いかけた。
「次はこれ以上の事するからな」と言いながら妖艶な笑みを浮かべては何事もなかった様に名無しから離れ、英語準備室の鍵を開けた―――…
膝上5センチの領域
(あれ、名無しちゃんスカート丈長くしたの?)
(えっと…う、うん。ディーノ先生にスカート短いぞって怒られちゃって…)
(短くなんてないのにねー?ディーノ先生イタリアから来たばっかだからそう思うだけじゃないかな?英語の授業もうないし、今短くしても大丈夫じゃない?)
(あ…えっと…怒られたばっかりだし今日はいいかな?あは、あはは…)
(えー、残念)
((がっつりキスマーク付けられてるから下ろせないよ…流石に…))
2024/10/29
お題提供:子猫恋様
※微裏
「悪いな名無し、昼休みなのに手伝ってもらって」
『大丈夫ですよ、ディーノ先生』
昼休み、英語教師であるディーノの隣を名無しは大量のノートを持って歩いていた。
4時間目の授業が終わり宿題を集めたはいいがディーノ一人では持ちきれず、たまたま目が合った名無しにノートを運ぶのを手伝ってもらっている最中だ。
名無しはちらりと隣を歩くディーノへと目を向ける。
普段見慣れないディーノの姿を見れば、名無しの意識とは関係なく胸が高鳴って仕方がない。
黒縁眼鏡から覗く鳶色の瞳。
水色のカーディガンに首元でかっちりと絞められているネクタイに、首元からは教員名札が提げられていた。
腕まくりをしているせいか左腕に巻かれている包帯が生徒の目に付く。
階段で踏み外したり何もない所でこけたりとよく目撃されているため、その時の傷を包帯で巻いているのだろうと一般の生徒は思うだろう。
だが隣を歩いている名無しはそう思わない、何故ならそれは怪我をしたから巻いている包帯ではなく刺青を隠すために巻かれている包帯だからだ。
何故一生徒である名無しがそんな事を知っているかと言えば、それは二人が教師でも生徒でもないからだ。
英語教師と赴任しているディーノは、本来はキャバッローネ・ファミリー十代目ボスである。
そして名無しもまた中学生…ではなくキャバッローネ・ファミリーの一員でありディーノの部下兼恋人だ。
ディーノの師であるリボーンの頼みで、こうしてディーノは教師として潜入している。
(ロマーリオさんに言われて生徒として並中に潜入してるけど…解せぬ)
ノートの山を持ちながら、名無しはディーノにバレないようにひっそりと溜息を付く。
本来であればディーノだけが潜入する予定だったし、リボーンもそのつもりだった。
だが、ボスだけでは心配だと言うロマーリオの言葉により、勿論キャバッローネ・ファミリーに属する者は皆頭を悩ませた。
ディーノはキャバッローネ・ファミリーのボスとしてはそれこそ優秀なのだが…如何せんそれは部下が居るのが前提だ。
究極のボス体質故に、部下が居なければ本来の力を発揮する事も…ましてや運動音痴になってしまうのだ。
英語教師としてディーノは並盛中学校に潜入するのだ、絶対ドジるだろうと安易に予想出来てしまいロマーリオをはじめ他の者は皆どうするべきかと話し合った。
過保護だなと名無しは思ったが、名無しだってディーノの部下であり恋人なのだ。
少なからずその点に関しては心配だったためどうするかと悩むロマーリオ達の輪に参加したのがいけなかった。
「名無しに生徒として潜入してもらったらいいんじゃないか?」と、同僚が口走ったため、とんとん拍子に話が進んでしまったのだ。
イタリア人と日本人のハーフであるためか、否、日本人の血が濃いためか成人していても名無しは幼く見える。
結果的に名無しは期限付き留学生と言う設定でディーノと同じく並中に潜入するはめになったのだ。
(絶対皆あの時面白がってたし…特に同僚覚えてろよ…)
思い出しただけで名無しは殺意が湧く。
何故教師ではなく生徒側を推したのかと文句の一つも言いたくなる。
確かに名無しの容姿は成人していると言えど幼い、すっぴんで学生服をきれば中学生に見えない事は否定しない。
だがこれでも一応名無しは成人しているのだ。
せめて教師側でディーノの護衛をさせてくれと直談判したが「生徒の方が何かと教師に近づけるだろ?」と言われてしまえば一理あるのだ。
観念し大人しく並盛中学校の制服を着ているが、それとこれとは別なのである。
(帰国したら一発殴る)
そう胸の内に秘めながら目的地である英語準備室に着けば、ディーノはノートを持っていても器用に扉を開け中へと入っていく。
もし部下である名無しが居なければ、そんな器用な事は出来なかっただろう。
そもそも英語準備室に辿り着く間にノートを辺りにぶちまけ尚且つディーノ自身もコケていたに違いないのだ。
たまたま目が合ったなんて真っ赤な嘘で、ディーノの部下である名無しに最初から手伝ってもらう予定で名無しを指名した。
「ありがとな、名無し」
『いえ、大したことはしてませんので』
そう言って英語準備室の中に有る机の上に先ほどまで持っていた大量のノートをディーノが先に置く。
机のど真ん中ではなく端の方に置いているのを見れば、名無しもそれに合わせて端の方へと置いた。
1クラス分だけと言えど、やはりノートとなればそれなりの量になるし重い。
(英語準備室ってこんな風になってるんだ)
膨大な量の辞書、洋書に参考書、教科書にCDやDVDと言った教材が置いてある。
初めて入る英語準備室をきょろきょろと見渡していると、不意に扉の方からカチャリと小さい音が聞こえる。
振り返るとディーノが扉に鍵をかけ真剣な目で名無しの方へと視線を向けた。
(仕事の話かな?)
中学生の恰好をしていても名無しは中学生ではない。
ディーノの部下であるため鍵を閉めたと言う事は自ずと、今回の任務に関して何か言う事が有るのだろうと名無しは気を引き締める。
ここ数日平和な中学生生活を送っていたのだ。
任務で潜入していると言う事を忘れてしまいそうなほど、日本はのどかで穏やかだ。
「なぁ名無し」
『はい?』
真剣な目で名無しの事を見つめるディーノ。
その眼差しは教師ではなく、キャバッローネ・ファミリーのボスの物だと名無しは感じる。
ここ数日で気が抜けていた事に対する事を指摘されるのだろうか…?と思った。
名無しだって自覚している。
ここ数日は本当にのどかで穏やか…そして平和なのだ。
自分がマフィアである事を忘れてしまいそうになるほど、何も起こらないから余計に気が緩んでいる。
いくら恋人であると言えど名無しはディーノの部下だ。
英語準備室の扉からゆっくりと名無しの元へと歩み寄る。
カツン、カツンと靴が鳴る音だけが英語準備室内に響き渡る。
黒縁眼鏡からのぞくディーノの鳶色の瞳が、じっと名無しをその瞳に映す。
思わず後ずさりしてしまうが、名無しの後ろには机があるせいかほんの少し乗り上げる形になってしまうが逃げる事は出来ない。
じっとディーノが詰めよれば、ゆっくりと口を開く。
「………スカート短くないか?」
『……へ?』
が、ディーノが放った言葉は仕事の話でも任務に関しての話でもなくスカート丈の話だった。
思わずぽかんと呆けてしまったが、気を取り直して名無しは『そうですか?』と言いながら首を傾げる。
今名無しが着用している並盛中学校の制服は上はだぼついたカーディガンに、カーディガンの下にはきちんと指定のスカートをはいている。
だぼついているカーディガンのせいかスカートはほんの少ししか見えていない。
潜入する前に並盛中学校に通う女子生徒を観察したのだが、スカートの長さは確かに名無し自身短いと感じた。
だが木を隠すなら森の中。
スカート丈が長い生徒も居るには居るのだが、少人数な為目立って仕方ない。
それならばと名無しは思い、スカート丈を他の女子生徒に合わせるように短く折っている。
名無しは自分の順応能力が恐ろしく、ここ数日通っては慣れてしまったので特に気にしていなかったが…ディーノからしたらやはり短いと感じるらしい。
『でもディーノ、此処に通ってる女子生徒皆これくらいの長さだよ?』
「それはまぁ…俺も思ったけど…」
名無しがそう言えば、ディーノは言葉に詰まる。
普通膝下での長さではないのかと疑問に思う程、並盛中学校に通う女子のスカート丈はあまりにも短かった。
ディーノが見た生徒の過半数はスカート丈が短く、スカート丈が長い生徒などほんの一握りしかいない。
『郷に入っては郷に従えって言葉があるし…短くても問題ないんじゃないかな?』
「っつ…それでも…名無しは駄目だ、スカートもう少し下ろせ」
『でも短くても他の先生達は何も言わないよ?』
「うぐっ…」
名無しの言っている事も一理あるのはディーノだって理解している。
それでも下ろして欲しいと言うディーノの言葉に、名無しは『それに短い方が可愛いよ?』と追い打ちをかける。
「可愛いと言えば可愛いが…」
『でしょ?それに潜入してるんだし目立ちたくないからこのままで大丈夫でしょ?』
そう言って名無しはディーノを見上げる。
何の問題もないよとでも言いたげな目でディーノを見つめる名無し。
そんな名無しに、ディーノは心の中で溜息を付く。
(人の気も知らないで…)
名無しに見つめられればディーノだって「そうだな」と頷いてしまいそうになるがこればかりは譲れないのだ。
頑なに「駄目だ」と言葉にするディーノを不思議に思いながら名無しは問う。
『どうして?』
「どうしても!」
『理由くらいあるでしょ!』
「理由は…あるけど、兎に角駄目なものは駄目だ」
『なんでよっ?!』
名無しだって理由さえ言ってくれればここまで問う事はないのだが、ディーノははっきりとした理由を言わない。
だから名無しも引かずに『どうして?』と問うのだ。
ディーノも理由を言葉にすればいいだけのはずなのにそれを頑なにしようとしない。
お互い一歩も引かず言葉でのやり取りが、数分続く。
だが、先に痺れを切らしたのはディーノの方だ。
「あー、ったく、あーだこーだ言うなよ名無しっ!」
『え…きゃっ…!?』
じっと見つめ合っていた瞳が急に鋭くなり、ディーノは机に乗り上げている名無しの左足を持ち上げる。
突然の行動に名無しは吃驚するも、机に手を付いていたので後ろに倒れる事はなくノートの山も端に寄せていたおかげで崩れる事はなかった。
『ちょっ、ディーノ…?!』
「言う事聞かない名無しが悪いんだぜ?」
そう言ってディーノはスカートで隠れるか隠れないかと言う場所にそっと口付けてはペロリと舐める。
生暖かいディーノの舌が、名無しの左内太腿を這うように触れていく。
『ん…っ、ぁ…っ…』
擽ったく反射的に足を閉じようとするものの、ディーノが名無しの太腿を抑えているせいか閉じる事が出来ない。
ゆっくりと名無しの太腿をディーノの舌が這い、スカートからのぞく部分にチュッと音を立てて吸い付く。
『ぁ…っ、ディー…ノっ…ん』
ほんの少し痛みが走り、名無しの身体はビクリと跳ねる。
名無しの反応など目もくれず、ディーノは変わらず名無しの太腿から唇を離さない。
舌を這わせては再び吸い付く行為を数回繰り返す。
普段は優しい鳶色の瞳が、獲物を狩るように目を細めながら名無しを見ては舌を這わす。
大きな声を出さないようにと名無しは自分の指を噛むものの、それでも声は漏れてしまう。
「これで、スカート短くできないな名無し」
ゆっくりと太腿から唇が離れれば、先ほどまで触れていた部分には赤い痕が付けられている。
数回同じ場所に舌を這わせ吸い付かれたのだ。
ほんのり赤く染まっている…わけではなく、くっきりと赤い痕が名無しの目に映る。
『デ、デデデデ、ディーノ…?!』
普段痕を付けてもディーノが付ける痕は薄い物が多い。
珍しくくっきりとした赤い痕に戸惑いながらもディーノを見下ろせば、ディーノはそんな名無しを気にせずにチュッっとわざと音を立てた。
満足そうな表情で下からディーノが名無しを見上げれば、悪戯が成功した子供の様ににかっと笑う。
「俺以外のやつに見せちゃダメだろ?」
そう言って舌なめずりをしながら再び左内太腿にディーノは吸い付くように口付ける。
先程付けたくっきりとした赤い痕とは違い、普段ディーノが付ける薄い痕。
いくら幼く見えると言っても名無しは成人している大人なのだ。
だぼついているカーディガンを上から着て体のラインが隠れていても、スカートからのぞく程よく肉付いた白く柔らかな太ももに目を向ける思春期の男子生徒は少なくない。
見えそうで見えないスカートの中にも興味津々なのが傍から見ていれば嫌でも目に付く。
中学生相手に嫉妬しているディーノの気持ち等名無しは知らないだろう。
いくら部下兼恋人同士と言えど、表向きは教師と生徒と言う立場なのだ。
ディーノから名無しに対して声をかける事は容易いが、それでも生徒同士に比べたら制限が付いてしまう。
普段の様に四六時中一緒に居るわけにもいかず、潜入しているのだから教師としての仕事もこなさねばならない。
名無しの事を信頼していないのかと言われればノーだ、名無しの事をディーノは信頼している。
だが、自分の見ていない所で名無しがそう言う目で見られるのに、ディーノは気が気ではない。
こればかりは言わばディーノの我儘だ。
(俺以外の奴がそんな邪な目で名無しの事見るとか、俺が許さねぇーんだよ)
自分以外がそんな目で名無しを見るなと言う牽制。
名無しは自分のだと言う印を見れば、誰も手を出そうと等思わないだろう。
そしてスカート丈を長くしない名無しに対しての…ある種のお仕置きだ。
名無しは自分が何故こんなことをされたかなんて思いもしないだろう。
ただただ顔を真っ赤にし、口を金魚の様にパクパクとさせているのだ。
そんな名無しを見上げ、ディーノはもう一度笑いかけた。
「次はこれ以上の事するからな」と言いながら妖艶な笑みを浮かべては何事もなかった様に名無しから離れ、英語準備室の鍵を開けた―――…
膝上5センチの領域
(あれ、名無しちゃんスカート丈長くしたの?)
(えっと…う、うん。ディーノ先生にスカート短いぞって怒られちゃって…)
(短くなんてないのにねー?ディーノ先生イタリアから来たばっかだからそう思うだけじゃないかな?英語の授業もうないし、今短くしても大丈夫じゃない?)
(あ…えっと…怒られたばっかりだし今日はいいかな?あは、あはは…)
(えー、残念)
((がっつりキスマーク付けられてるから下ろせないよ…流石に…))
2024/10/29
お題提供:子猫恋様
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