短編
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※仔ディーノ
※話の都合上下駄箱が出てきます、寛容な方のみ読んで頂ければ幸いです(イタリアに下駄箱は無い為)
朝、登校して下駄箱を開けば、ディーノの下駄箱からは大量の封筒が散らばった。
自身の上履きを取ろうとしただけのはずなのに、一体どうやって詰めこんだんだと言わんばかりに封筒がバサバサと落ちていく。
「……はぁ、…またか」
ここ数日続いている状況に、ディーノは溜め息をつけばその場にしゃがみこむ。
1枚…また1枚と封筒を拾いながらディーノは(朝っぱらから何やってんだろ俺…)と思わず2度目の溜め息を心の中で漏らす。
封筒の封の部分にはハートマークのシールが貼られており、一目見ただけでその封筒がラブレターである事を物語っていた。
『今日も大量だね、ラブレター』
「名無し」
その場にしゃがみこんでいるディーノを、登校して来たばかりの名無しが上から覗き込む。
状況が状況なのだ、笑顔を浮かべたはずが苦笑交じりになってしまいながら『おはよう、ディーノ』と、挨拶する名無しに、ディーノも同じ様に「おはよう、名無し」と返す。
ディーノ一人で散らばったラブレターを拾っていると時間がかかるだろうと思い、名無しもその場にしゃがみディーノ宛のラブレターを一緒に拾い上げる。
1枚…また1枚と拾い上げてはラブレターの束ができていく。
『ディーノモテモテだね〜』
拾い積み上げてはラブレターの束を見ながら名無しは苦笑したままディーノに呟く。
正直上履きと外靴しか入らないはずなのに、どうやったらこんなにも大量のラブレターが下駄箱の中に入るのか不思議でならない。
郵便受けのように紙を入れる入り口などないのだ。
皆どうやってディーノの下駄箱にラブレターを突っ込んでは散らばらないようにしてるのか謎である。
「はは、…嬉しくねえモテ具合だけどな」
苦虫を噛み潰したような表情のディーノに、名無しは確かにと心の中で頷く。
学生なのだ、異性からラブレターを貰うと言う行為はやはり嬉しいものだ。
それが1枚や2枚なら微笑ましく胸を躍らせながらラブレターの中を見るだろう。
だが1枚や2枚どころではなく、大量に下駄箱にラブレターを詰め込められれば上履きは取れず…こうして辺りに散らばったラブレターを拾う作業が待っているのだ。
大量のラブレターはそれだけ異性に思われていると受け取れる反面、やはり度が過ぎれば嬉しいよりも別の気持ちが勝ってしまう。
同級生であるスクアーロもある意味ディーノと同じ様な状況に陥ったことがある。
スクアーロの場合は入学当初から下駄箱にラブレターが入れられていたのだ。
最初のうちはそれこそディーノ同様めんどくさそうに拾っていたが1週間も続けば流石に面倒になったのか、彼は下駄箱を使うのを辞めた。
下駄箱に上履きを置かず、その日その日で持ち帰っては持ってくるというスタンスになった。
下駄箱のラブレター地獄を味わなくて良い状況に持っていって平和なのだからある意味それが正解なのだろう。
もっとも、上履きを持ち帰るようになってからはスクアーロは下駄箱を使用していない。
もし仮にスクアーロの下駄箱を開けてしまえば、中のラブレターがとんでもない事になっていたらと思うとある意味ゾッとする。
その状況に比べればディーノはまだマシなのだ、まだ。
『まぁ、一般的にラブレターなんて貰っても1枚や2枚だもんね…スクアーロと言いディーノと言い…貰う枚数が異常なんだよね』
「おいおい、異常とか言うなよ…」
『だってさ、これ学年の女子何人がラブレター書いてんの?って話じゃん。絶対女子の人数よりラブレター多いでしょこれ…』
「…確かにな。もしかしたら果し状みたいなのが入ってたりしたりな」
冗談交じりで言いながらラブレターを拾うと、1枚だけ異質な封筒を見ればそこには“果し状”と書かれていた。
(…なんでタイムリーに果し状が出てくるんだよ…)
書き殴った用な文字にディーノはげんなりする。
冗談で言ったはずがまさか本当に入っているとは思わなかったのだ。
ついついディーノは見なかったふりをし、ラブレターに紛れ込ませては先程見た文字を忘れようとする。
『まぁ、ディーノは果し状は嬉しくないかもだけどスクアーロの場合は果し状なら喜んで受け取ってそうね』
「違いねぇ」
1枚、また1枚と拾い上げていけばようやく半分くらい拾い上げる。
ここ数日ラブレターを拾う作業をしているのだ、回数をこなしてきたせいか手慣れた手つきで輪ゴムで止め束ねていく。
2つめのラブレターの束を作れば、『それに…』と名無しは言葉を続けた。
『ディーノの事あんだけへなちょこへなちょこへなちょこって言ってたのに、皆掌返しが早いね』
「だな…って、おいこら!そこまで俺へなちょこ連呼されてなかったぞ名無し!!」
『あれ、違ったっけ〜?』
すっとぼけながら名無しはラブレターの束を輪ゴムで束ね、ディーノ同様にまたディーノの下駄箱から落ちたラブレターを拾う。
『まぁでも良かったじゃん?』
「何でだよ…」
『え、ディーノ言ってたでしょ?ラブレター欲しいって?』
「…言った…けど、それは…」
名無しの言葉にディーノは口を噤む。
確かにディーノはラブレターが欲しいと名無しと会話する中で言ったことがある。
「ラブレターって俺貰った事ねえからちょっと欲しいんだよな」と。
それを誰かが盗み聞きしたのだろう。
その次の日からこうしてディーノの下駄箱には大量のラブレターが詰め込まれ始めたのだ。
たがそれは誰でも良いと言う訳ではない。
(俺は名無しからのラブレターが欲しいってだけで、他の奴からのラブレターが欲しいわけじゃないんだよな…)
そう思いながらようやく散らばったラブレターを全て拾い上げれば結構な量になったなとディーノは改めて思う。
一体どうやってこの量を下駄箱に押し込めたのかと疑問に思うが、考えても仕方ないのだ。
最後のラブレターの束をゴムで散らばらないように止めれば、ようやく終わったと言わんばかりに一息つく。
まだ学校に着いて授業すら受けてないというのに、ディーノは疲れた表情でラブレターの束へと視線を落とす。
『ディーノ』
「何だよ名無し?」
『もう一枚忘れてる』
「……え」
名無しにそう言われディーノは首をひねる。
(おかしいな…)
念入りに辺りを見渡し回収漏れがないようにディーノは確認したはずだった。
昨日ラブレターの回収漏れがあった時、授業が始まる前にクラスメイトの目の前で「ラブレター落ちてたぞ〜」と教師に言われながら晒されたのはつい昨日の事だ。
流石に恥ずかしくて今日は念入りに落ちてないかと確認したはずなのに…と思いながら名無しを見れば、名無しの手には確かにラブレターが1枚握られていた。
(あぶねぇ…また皆の前で晒されるとこだったぜ…)
宛名にはディーノへと名前が書かれており見慣れた字の書き方のせいか、思わず目を見開く。
ばっと顔を上げ名無しの方を見れば、『何よ?早く受け取りなさいよ』と顔を赤くしている。
さっさと受け取ってと言わんばかりに、恥ずかしそうに目を反らしてはいるが名無しの表情を見れば、その差出人がディーノの思い違いでない事を物語っていた。
ずいっと、ディーノにラブレターを差し出す。
「いいのか…?」
『…何よ?私は拾ったラブレターをディーノに渡してるだけだもん』
顔を赤らめたまま『早く…』と渡してくる名無し。
そんな名無しが可愛くてはにかみながら「サンキューな、名無し」とディーノはラブレターを受け取った。
先程見たラブレターの宛名の文字をもう一度見ては、ディーノは嬉しそうに笑顔を浮かべる。
渡されたラブレターだけはラブレターの束には仕舞われず、嬉しそうにディーノは手に持ったままだった。
下駄箱の中のラブレター
(さっきまでげんなりしてたのになんでそんなニヤニヤしてんのよ、ディーノ?)
(そりゃあ…ずっと欲しかったラブレターが手に入ったからな)
(そ、そうなの?)
(名無し気になるか?)
(べ、別に…欲しかったラブレター手に入ったなら良かったじゃん…!)
2024/10/27
お題提供:子猫恋様
※話の都合上下駄箱が出てきます、寛容な方のみ読んで頂ければ幸いです(イタリアに下駄箱は無い為)
朝、登校して下駄箱を開けば、ディーノの下駄箱からは大量の封筒が散らばった。
自身の上履きを取ろうとしただけのはずなのに、一体どうやって詰めこんだんだと言わんばかりに封筒がバサバサと落ちていく。
「……はぁ、…またか」
ここ数日続いている状況に、ディーノは溜め息をつけばその場にしゃがみこむ。
1枚…また1枚と封筒を拾いながらディーノは(朝っぱらから何やってんだろ俺…)と思わず2度目の溜め息を心の中で漏らす。
封筒の封の部分にはハートマークのシールが貼られており、一目見ただけでその封筒がラブレターである事を物語っていた。
『今日も大量だね、ラブレター』
「名無し」
その場にしゃがみこんでいるディーノを、登校して来たばかりの名無しが上から覗き込む。
状況が状況なのだ、笑顔を浮かべたはずが苦笑交じりになってしまいながら『おはよう、ディーノ』と、挨拶する名無しに、ディーノも同じ様に「おはよう、名無し」と返す。
ディーノ一人で散らばったラブレターを拾っていると時間がかかるだろうと思い、名無しもその場にしゃがみディーノ宛のラブレターを一緒に拾い上げる。
1枚…また1枚と拾い上げてはラブレターの束ができていく。
『ディーノモテモテだね〜』
拾い積み上げてはラブレターの束を見ながら名無しは苦笑したままディーノに呟く。
正直上履きと外靴しか入らないはずなのに、どうやったらこんなにも大量のラブレターが下駄箱の中に入るのか不思議でならない。
郵便受けのように紙を入れる入り口などないのだ。
皆どうやってディーノの下駄箱にラブレターを突っ込んでは散らばらないようにしてるのか謎である。
「はは、…嬉しくねえモテ具合だけどな」
苦虫を噛み潰したような表情のディーノに、名無しは確かにと心の中で頷く。
学生なのだ、異性からラブレターを貰うと言う行為はやはり嬉しいものだ。
それが1枚や2枚なら微笑ましく胸を躍らせながらラブレターの中を見るだろう。
だが1枚や2枚どころではなく、大量に下駄箱にラブレターを詰め込められれば上履きは取れず…こうして辺りに散らばったラブレターを拾う作業が待っているのだ。
大量のラブレターはそれだけ異性に思われていると受け取れる反面、やはり度が過ぎれば嬉しいよりも別の気持ちが勝ってしまう。
同級生であるスクアーロもある意味ディーノと同じ様な状況に陥ったことがある。
スクアーロの場合は入学当初から下駄箱にラブレターが入れられていたのだ。
最初のうちはそれこそディーノ同様めんどくさそうに拾っていたが1週間も続けば流石に面倒になったのか、彼は下駄箱を使うのを辞めた。
下駄箱に上履きを置かず、その日その日で持ち帰っては持ってくるというスタンスになった。
下駄箱のラブレター地獄を味わなくて良い状況に持っていって平和なのだからある意味それが正解なのだろう。
もっとも、上履きを持ち帰るようになってからはスクアーロは下駄箱を使用していない。
もし仮にスクアーロの下駄箱を開けてしまえば、中のラブレターがとんでもない事になっていたらと思うとある意味ゾッとする。
その状況に比べればディーノはまだマシなのだ、まだ。
『まぁ、一般的にラブレターなんて貰っても1枚や2枚だもんね…スクアーロと言いディーノと言い…貰う枚数が異常なんだよね』
「おいおい、異常とか言うなよ…」
『だってさ、これ学年の女子何人がラブレター書いてんの?って話じゃん。絶対女子の人数よりラブレター多いでしょこれ…』
「…確かにな。もしかしたら果し状みたいなのが入ってたりしたりな」
冗談交じりで言いながらラブレターを拾うと、1枚だけ異質な封筒を見ればそこには“果し状”と書かれていた。
(…なんでタイムリーに果し状が出てくるんだよ…)
書き殴った用な文字にディーノはげんなりする。
冗談で言ったはずがまさか本当に入っているとは思わなかったのだ。
ついついディーノは見なかったふりをし、ラブレターに紛れ込ませては先程見た文字を忘れようとする。
『まぁ、ディーノは果し状は嬉しくないかもだけどスクアーロの場合は果し状なら喜んで受け取ってそうね』
「違いねぇ」
1枚、また1枚と拾い上げていけばようやく半分くらい拾い上げる。
ここ数日ラブレターを拾う作業をしているのだ、回数をこなしてきたせいか手慣れた手つきで輪ゴムで止め束ねていく。
2つめのラブレターの束を作れば、『それに…』と名無しは言葉を続けた。
『ディーノの事あんだけへなちょこへなちょこへなちょこって言ってたのに、皆掌返しが早いね』
「だな…って、おいこら!そこまで俺へなちょこ連呼されてなかったぞ名無し!!」
『あれ、違ったっけ〜?』
すっとぼけながら名無しはラブレターの束を輪ゴムで束ね、ディーノ同様にまたディーノの下駄箱から落ちたラブレターを拾う。
『まぁでも良かったじゃん?』
「何でだよ…」
『え、ディーノ言ってたでしょ?ラブレター欲しいって?』
「…言った…けど、それは…」
名無しの言葉にディーノは口を噤む。
確かにディーノはラブレターが欲しいと名無しと会話する中で言ったことがある。
「ラブレターって俺貰った事ねえからちょっと欲しいんだよな」と。
それを誰かが盗み聞きしたのだろう。
その次の日からこうしてディーノの下駄箱には大量のラブレターが詰め込まれ始めたのだ。
たがそれは誰でも良いと言う訳ではない。
(俺は名無しからのラブレターが欲しいってだけで、他の奴からのラブレターが欲しいわけじゃないんだよな…)
そう思いながらようやく散らばったラブレターを全て拾い上げれば結構な量になったなとディーノは改めて思う。
一体どうやってこの量を下駄箱に押し込めたのかと疑問に思うが、考えても仕方ないのだ。
最後のラブレターの束をゴムで散らばらないように止めれば、ようやく終わったと言わんばかりに一息つく。
まだ学校に着いて授業すら受けてないというのに、ディーノは疲れた表情でラブレターの束へと視線を落とす。
『ディーノ』
「何だよ名無し?」
『もう一枚忘れてる』
「……え」
名無しにそう言われディーノは首をひねる。
(おかしいな…)
念入りに辺りを見渡し回収漏れがないようにディーノは確認したはずだった。
昨日ラブレターの回収漏れがあった時、授業が始まる前にクラスメイトの目の前で「ラブレター落ちてたぞ〜」と教師に言われながら晒されたのはつい昨日の事だ。
流石に恥ずかしくて今日は念入りに落ちてないかと確認したはずなのに…と思いながら名無しを見れば、名無しの手には確かにラブレターが1枚握られていた。
(あぶねぇ…また皆の前で晒されるとこだったぜ…)
宛名にはディーノへと名前が書かれており見慣れた字の書き方のせいか、思わず目を見開く。
ばっと顔を上げ名無しの方を見れば、『何よ?早く受け取りなさいよ』と顔を赤くしている。
さっさと受け取ってと言わんばかりに、恥ずかしそうに目を反らしてはいるが名無しの表情を見れば、その差出人がディーノの思い違いでない事を物語っていた。
ずいっと、ディーノにラブレターを差し出す。
「いいのか…?」
『…何よ?私は拾ったラブレターをディーノに渡してるだけだもん』
顔を赤らめたまま『早く…』と渡してくる名無し。
そんな名無しが可愛くてはにかみながら「サンキューな、名無し」とディーノはラブレターを受け取った。
先程見たラブレターの宛名の文字をもう一度見ては、ディーノは嬉しそうに笑顔を浮かべる。
渡されたラブレターだけはラブレターの束には仕舞われず、嬉しそうにディーノは手に持ったままだった。
下駄箱の中のラブレター
(さっきまでげんなりしてたのになんでそんなニヤニヤしてんのよ、ディーノ?)
(そりゃあ…ずっと欲しかったラブレターが手に入ったからな)
(そ、そうなの?)
(名無し気になるか?)
(べ、別に…欲しかったラブレター手に入ったなら良かったじゃん…!)
2024/10/27
お題提供:子猫恋様
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