短編
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※ディーノ先生(英語教師)×生徒
夏休みも終わり、通常通りの授業が始まった9月。
並盛中2年Aのクラスは2時間目の授業は英語であり、生徒達は英語教師であるディーノの授業を受けていた。
ディーノが赴任してからと言うもの授業時間問わず、女子生徒達の黄色い声がしばしば挙げられる。
それはディーノの外見が相当イケメンであるためだ。
無論女子生徒達からだけでなく、男子生徒からのウケも良い。
首から腕にかけて絆創膏や包帯がされており、最初こそヤバイ人なのでは?と並盛中に通う全生徒は誰もが思った。
だがしかし、蓋を開けてみればヤバい人…だからではなく単にディーノがドジっ子だったからだ。
赴任してすぐ何もない所で転んだり躓いたり、階段からコケたりと…数えればきりがないほど誰がどう見てもディーノはドジっ子だった。
究極のドジっ子、それに尽きる。
その事も相まってか並盛中に通う生徒はディーノを見かければ「またコケたんですか?」等と苦笑しながらもディーノに軽口を叩く。
面倒見が良く人柄も良いのも相まって、並盛中では英語の授業が男女共に楽しみでしかないのだ。
無論それはディーノと付き合って居る名無しにも当てはまる。
当てはまるのだが、今英語の授業を受けている名無しは普段であれば他の生徒同様嬉しそうに授業を受けるものの今日に限ってはそうではなかった。
(お腹痛い…)
表情は普段通りなのだが、左手で下腹部を擦り青白い顔色でディーノの授業を受けていた。
腹痛の原因は勿論名無し自身理解している。
女子特有の物、生理痛だ。
痛みが酷い時もあれば軽い時もあり、その時にならないと分からないのだからある意味厄介でしかない。
(あー…お薬飲んだのに何で効かないんだろ…)
今日に限っては痛みが酷く、1時間目が始まる前に常備していた薬を飲んだものの一向に痛みが治まらない。
普段ならそろそろ効いて痛みも治まってくるはずなのにと期待していたのに、その期待は見事裏切られてしまった。
せめてもの抵抗で下腹部を擦ればまだ痛みが和らぐような気がするせいか、名無しの左手はずっと下腹部を擦っている。
「“~しなければならない”って言う文を作るなら作り方が2つ有ってだな…」
授業を聞かなければならないが、名無しにとってはそれどころではない。
ズキズキと痛む痛みに、背中に冷や汗が流れる。
普段ならディーノの声を嬉々として聞けるはずなのに、今日に限っては全く頭に入らない。
茶々を入れる生徒がいないせいか、教室内にはディーノの声だけが聞こえる。
「“must”か“have to”、この二つのどちらかを使って“~しなければならない”の文を作る事が出来るんだ」
教科書を見ながらディーノはチョークを持ち黒板に板書していき、カツカツと黒板にチョークで字を書く音が心地良く教室内に響く。
黒板に板書されれば生徒は皆シャーペンを持ち、カリカリと自分たちのノートに書いていく。
名無しも黒板に書かれた言葉をノートに書こうとするが、なかなかシャーペンで文字を書く事が出来ず手に持ったままの状態だ。
「こいつらは動詞の前で使って、その時に動詞は動詞の原形するぜ。割と忘れやすいからここちゃんと覚えとけよー」
ディーノがそう言えばノリのいい生徒は「はーい、ディーノ先生!」と彼に言葉を返した。
夏休み明けの授業だと言うのに皆元気だなぁ…と、現実逃避するかのように視線をノートに落としながら名無しは思う。
下腹部の痛みが強くなり、名無しはもう授業所ではなかった。
ノートを取る事も諦め、ただ授業を聞くだけ聞いて居ようと思いながらシャーペンを持ったまま決めた。
「…大丈夫か?」
『え…?』
が、そう決めた途端名無しの頭上から声が聞こえる。
ノートに落としていた視線を声のする方に上げれば、そこには心配そうに名無しを見るディーノの姿が合った。
先程まで手に持っていたはずの教科書もチョークもなく、ただただ心配そうに名無しの顔を覗き込む。
「顔色悪いぞ?保健室行くか?」
『いえ…』
大丈夫です、と声を出そうとするが隣の席の友達が「無理せず保健室行ったほうがいいよ名無しちゃん…顔青白いよ?」と名無しに声をかける。
名無し自身自分の顔色が見えないから何とも言えないが、友達が言う位だ。
よっぽど酷く青白かったのだろう。
ここで大丈夫と答えた所で、きっと周りからすれば大丈夫じゃないから保健室に行って来いと言われるのがオチだ。
名無しは観念したかのように『保健室行ってきます…』と立ち上がり一人で保健室に行こうとする。
足取りはどこかふらついており、傍から見ればそれこそ危険なものだった。
「一人じゃ危ないだろ?俺保健委員だし着いて行こうか?」
後ろの席に座る男子生徒が立ち上がり、名無しに着いて行こうとするが「否…何かあったら大変だし、俺が保健室連れてくな」と、ディーノがそう言って名無しを支える。
「ってことで俺が帰ってくるまでお前等自習してろよ?」
「えー、遊んでちゃ駄目ですか?」
「…自習と小テストどっちがいい?」
そうディーノが生徒を見渡し問えば口を揃えて皆「自習でお願いします!!!」と元気良く答えた。
即答するあまり「素直でよろしい」とついディーノは口元を緩める。
自習と言う言葉にガッカリする生徒も居るが、ディーノは「あんまり煩くしなかったら喋っててもいいぞ」と最後に付け足す。
夏休みが明けまだ数日しか経っていないのだ。
友達と話足りない気持ちを汲み、ディーノがそう言えば生徒達は嬉しそうに「ディーノ先生」と感極まる。
「お前等俺が居なくても大人しく自習してろよ」
「「「はーい!」」」
「保健室まで行けるか?」
『…はい』
そう言って名無しを連れてディーノは保健室に向かう為、教室を後にした―――…
「何だ、シャマルの奴いねーのか?」
保健室に辿り着き保健室内を確認するも校医であるシャマルの姿は何処にもなかった。
“不在”と書かれたボードが書かれているだけで保健室内には他に休んでいる生徒の姿もない。
取りあえず名無しをベッドに座らせディーノは救急箱の中から体温計を取り出し「一応、な?」と言いながら名無しに渡した。
渡された体温計を脇に挟み、数秒すれば音が鳴る。
体温計のディスプレイには平熱よりも低い数字が記されており、名無しはそれをディーノに見せた。
「無理せず休んでも良かったんだぞ名無し」
『やだ…ディーノ先生の…ディーノの授業受けたかったんだもん…』
名前を呼ばれればぎゅっとスカートを掴み、蒼白な表情のまま名無しは呟く。
どんなにお腹が痛くても、名無しはディーノの授業だけは受けたかったのだ。
夏休み中はそれこそ学校もないため滅多に会う事は出来ない。
いくら付き合って居ても恋人同士でも、今の名無しとディーノは生徒と教師なのだ。
あらぬ誤解を招きかねないので学校以外で会う事は出来ない。
代わりに電話やメールをする事は多々あれど、ちゃんとディーノの元気な姿を名無し自身で見たかった。
『ディーノに…会いたかったんだもん…』
ポツリと呟けば、その言葉に「っつ、たく…」っとディーノはぎゅっと名無しを優しく抱きしめた。
ディーノが普段付けている香水の香りが、ふんわりと名無しの鼻腔をくすぐる。
名無しよりも温かいディーノの体温が服越しではあるが名無しに伝わり、名無しも恐る恐るディーノを抱きしめた。
誰も居ない事は確認していても、やはり校内である。
抱きしめて、抱きしめ返していいのだろうかと迷いながらも抱きしめ返せばディーノは名無しの耳元で言葉を紡ぐ。
「俺だって名無しに会いたかったんだぜ?なのにお前教室入った時から顔色悪いし、お腹擦ってるしあからさまに体調悪そうだし…心配したんだからな」
『…ごめんなさい』
「お腹まだ痛むか…?」
『ちょっとだけ…』
そう名無しが言えばディーノはゆっくりと抱きしめていた腕を離し、名無しの顔色を伺う。
名無しの言葉を疑っているわけではないが、先ほどと変わらぬ青白い顔色だ。
本当はもっと痛いのではないか?無理をしているのではないとか心配になってしまう。
「取りあえず英語の時間と、次の授業は念のため保健室で休んでろよ名無し。担当の先生には俺から言っとくからさ」
『え…でも…』
「でもじゃないだろ?」
『…はーい、ディーノ先生』
大人しく名無しの言葉に頷き、名無しは一度立ち上がり上履きを脱ぎ保健室のベッドで横になる。
本当はもっとディーノと一緒に居たいが…それでは授業が進まないのだ。
流石にそれは居た堪れないので、おずおずと名無しはディーノに訊ねる。
『教室…行かなくていいのディーノ…?』
行ってほしくない、もう少しだけ傍に居て欲しい…。
そんな我儘さえも言えない名無しに、ディーノはにっと笑って名無しの頬を撫でる。
「今戻るとあいつら盛り上がってそうだからもう少しだけ、な」
『でもそれじゃあ授業が…』
「夏休み明けだし、最初の授業位は授業ばっかじゃ気が滅入るだろ?」
『それは…そうかもだけど』
ディーノの温かな手が心地よく、思わず名無しは擦り寄る。
ふと、ディーノが保健室内にかけられている時計を見れば、時計は丁度10時20分を指していた。
2時間目が終わるまで残り10分。
ディーノが急いで戻った所でそのまま自習が続行されるだけなのは目に見えて分かる。
(授業も別に遅れてないしなぁ…)
夏休み明けにスタートする箇所は、既に夏休みに入る前の授業でやっていたのだ。
それもあり、今日位は後半はもともと自習にする予定だった。
時計を確認し終えればディーノはもう一度名無しの方へ視線を戻し、言葉を紡いだ。
「後5分…5分だけ名無しの側に居させてくれよ。俺だって名無し不足だからよ…もう少しだけ名無しで充電させてくれないか?」
『…っつ…うん』
ディーノの言葉に、名無しは頬を赤くして頷いた。
I've missed you
(そう言えばどうしてディーノは保健委員長の言葉断ったの?授業続けたかったよね…?)
(だってあいつ名無しの事…)
(私の事…?)
(否、何でもない)
(?変なディーノ)
((…あの男子生徒名無しに好意があるのバレバレなんだよな…油断も隙もありゃしねえ…))
2024/09/12
夏休みも終わり、通常通りの授業が始まった9月。
並盛中2年Aのクラスは2時間目の授業は英語であり、生徒達は英語教師であるディーノの授業を受けていた。
ディーノが赴任してからと言うもの授業時間問わず、女子生徒達の黄色い声がしばしば挙げられる。
それはディーノの外見が相当イケメンであるためだ。
無論女子生徒達からだけでなく、男子生徒からのウケも良い。
首から腕にかけて絆創膏や包帯がされており、最初こそヤバイ人なのでは?と並盛中に通う全生徒は誰もが思った。
だがしかし、蓋を開けてみればヤバい人…だからではなく単にディーノがドジっ子だったからだ。
赴任してすぐ何もない所で転んだり躓いたり、階段からコケたりと…数えればきりがないほど誰がどう見てもディーノはドジっ子だった。
究極のドジっ子、それに尽きる。
その事も相まってか並盛中に通う生徒はディーノを見かければ「またコケたんですか?」等と苦笑しながらもディーノに軽口を叩く。
面倒見が良く人柄も良いのも相まって、並盛中では英語の授業が男女共に楽しみでしかないのだ。
無論それはディーノと付き合って居る名無しにも当てはまる。
当てはまるのだが、今英語の授業を受けている名無しは普段であれば他の生徒同様嬉しそうに授業を受けるものの今日に限ってはそうではなかった。
(お腹痛い…)
表情は普段通りなのだが、左手で下腹部を擦り青白い顔色でディーノの授業を受けていた。
腹痛の原因は勿論名無し自身理解している。
女子特有の物、生理痛だ。
痛みが酷い時もあれば軽い時もあり、その時にならないと分からないのだからある意味厄介でしかない。
(あー…お薬飲んだのに何で効かないんだろ…)
今日に限っては痛みが酷く、1時間目が始まる前に常備していた薬を飲んだものの一向に痛みが治まらない。
普段ならそろそろ効いて痛みも治まってくるはずなのにと期待していたのに、その期待は見事裏切られてしまった。
せめてもの抵抗で下腹部を擦ればまだ痛みが和らぐような気がするせいか、名無しの左手はずっと下腹部を擦っている。
「“~しなければならない”って言う文を作るなら作り方が2つ有ってだな…」
授業を聞かなければならないが、名無しにとってはそれどころではない。
ズキズキと痛む痛みに、背中に冷や汗が流れる。
普段ならディーノの声を嬉々として聞けるはずなのに、今日に限っては全く頭に入らない。
茶々を入れる生徒がいないせいか、教室内にはディーノの声だけが聞こえる。
「“must”か“have to”、この二つのどちらかを使って“~しなければならない”の文を作る事が出来るんだ」
教科書を見ながらディーノはチョークを持ち黒板に板書していき、カツカツと黒板にチョークで字を書く音が心地良く教室内に響く。
黒板に板書されれば生徒は皆シャーペンを持ち、カリカリと自分たちのノートに書いていく。
名無しも黒板に書かれた言葉をノートに書こうとするが、なかなかシャーペンで文字を書く事が出来ず手に持ったままの状態だ。
「こいつらは動詞の前で使って、その時に動詞は動詞の原形するぜ。割と忘れやすいからここちゃんと覚えとけよー」
ディーノがそう言えばノリのいい生徒は「はーい、ディーノ先生!」と彼に言葉を返した。
夏休み明けの授業だと言うのに皆元気だなぁ…と、現実逃避するかのように視線をノートに落としながら名無しは思う。
下腹部の痛みが強くなり、名無しはもう授業所ではなかった。
ノートを取る事も諦め、ただ授業を聞くだけ聞いて居ようと思いながらシャーペンを持ったまま決めた。
「…大丈夫か?」
『え…?』
が、そう決めた途端名無しの頭上から声が聞こえる。
ノートに落としていた視線を声のする方に上げれば、そこには心配そうに名無しを見るディーノの姿が合った。
先程まで手に持っていたはずの教科書もチョークもなく、ただただ心配そうに名無しの顔を覗き込む。
「顔色悪いぞ?保健室行くか?」
『いえ…』
大丈夫です、と声を出そうとするが隣の席の友達が「無理せず保健室行ったほうがいいよ名無しちゃん…顔青白いよ?」と名無しに声をかける。
名無し自身自分の顔色が見えないから何とも言えないが、友達が言う位だ。
よっぽど酷く青白かったのだろう。
ここで大丈夫と答えた所で、きっと周りからすれば大丈夫じゃないから保健室に行って来いと言われるのがオチだ。
名無しは観念したかのように『保健室行ってきます…』と立ち上がり一人で保健室に行こうとする。
足取りはどこかふらついており、傍から見ればそれこそ危険なものだった。
「一人じゃ危ないだろ?俺保健委員だし着いて行こうか?」
後ろの席に座る男子生徒が立ち上がり、名無しに着いて行こうとするが「否…何かあったら大変だし、俺が保健室連れてくな」と、ディーノがそう言って名無しを支える。
「ってことで俺が帰ってくるまでお前等自習してろよ?」
「えー、遊んでちゃ駄目ですか?」
「…自習と小テストどっちがいい?」
そうディーノが生徒を見渡し問えば口を揃えて皆「自習でお願いします!!!」と元気良く答えた。
即答するあまり「素直でよろしい」とついディーノは口元を緩める。
自習と言う言葉にガッカリする生徒も居るが、ディーノは「あんまり煩くしなかったら喋っててもいいぞ」と最後に付け足す。
夏休みが明けまだ数日しか経っていないのだ。
友達と話足りない気持ちを汲み、ディーノがそう言えば生徒達は嬉しそうに「ディーノ先生」と感極まる。
「お前等俺が居なくても大人しく自習してろよ」
「「「はーい!」」」
「保健室まで行けるか?」
『…はい』
そう言って名無しを連れてディーノは保健室に向かう為、教室を後にした―――…
「何だ、シャマルの奴いねーのか?」
保健室に辿り着き保健室内を確認するも校医であるシャマルの姿は何処にもなかった。
“不在”と書かれたボードが書かれているだけで保健室内には他に休んでいる生徒の姿もない。
取りあえず名無しをベッドに座らせディーノは救急箱の中から体温計を取り出し「一応、な?」と言いながら名無しに渡した。
渡された体温計を脇に挟み、数秒すれば音が鳴る。
体温計のディスプレイには平熱よりも低い数字が記されており、名無しはそれをディーノに見せた。
「無理せず休んでも良かったんだぞ名無し」
『やだ…ディーノ先生の…ディーノの授業受けたかったんだもん…』
名前を呼ばれればぎゅっとスカートを掴み、蒼白な表情のまま名無しは呟く。
どんなにお腹が痛くても、名無しはディーノの授業だけは受けたかったのだ。
夏休み中はそれこそ学校もないため滅多に会う事は出来ない。
いくら付き合って居ても恋人同士でも、今の名無しとディーノは生徒と教師なのだ。
あらぬ誤解を招きかねないので学校以外で会う事は出来ない。
代わりに電話やメールをする事は多々あれど、ちゃんとディーノの元気な姿を名無し自身で見たかった。
『ディーノに…会いたかったんだもん…』
ポツリと呟けば、その言葉に「っつ、たく…」っとディーノはぎゅっと名無しを優しく抱きしめた。
ディーノが普段付けている香水の香りが、ふんわりと名無しの鼻腔をくすぐる。
名無しよりも温かいディーノの体温が服越しではあるが名無しに伝わり、名無しも恐る恐るディーノを抱きしめた。
誰も居ない事は確認していても、やはり校内である。
抱きしめて、抱きしめ返していいのだろうかと迷いながらも抱きしめ返せばディーノは名無しの耳元で言葉を紡ぐ。
「俺だって名無しに会いたかったんだぜ?なのにお前教室入った時から顔色悪いし、お腹擦ってるしあからさまに体調悪そうだし…心配したんだからな」
『…ごめんなさい』
「お腹まだ痛むか…?」
『ちょっとだけ…』
そう名無しが言えばディーノはゆっくりと抱きしめていた腕を離し、名無しの顔色を伺う。
名無しの言葉を疑っているわけではないが、先ほどと変わらぬ青白い顔色だ。
本当はもっと痛いのではないか?無理をしているのではないとか心配になってしまう。
「取りあえず英語の時間と、次の授業は念のため保健室で休んでろよ名無し。担当の先生には俺から言っとくからさ」
『え…でも…』
「でもじゃないだろ?」
『…はーい、ディーノ先生』
大人しく名無しの言葉に頷き、名無しは一度立ち上がり上履きを脱ぎ保健室のベッドで横になる。
本当はもっとディーノと一緒に居たいが…それでは授業が進まないのだ。
流石にそれは居た堪れないので、おずおずと名無しはディーノに訊ねる。
『教室…行かなくていいのディーノ…?』
行ってほしくない、もう少しだけ傍に居て欲しい…。
そんな我儘さえも言えない名無しに、ディーノはにっと笑って名無しの頬を撫でる。
「今戻るとあいつら盛り上がってそうだからもう少しだけ、な」
『でもそれじゃあ授業が…』
「夏休み明けだし、最初の授業位は授業ばっかじゃ気が滅入るだろ?」
『それは…そうかもだけど』
ディーノの温かな手が心地よく、思わず名無しは擦り寄る。
ふと、ディーノが保健室内にかけられている時計を見れば、時計は丁度10時20分を指していた。
2時間目が終わるまで残り10分。
ディーノが急いで戻った所でそのまま自習が続行されるだけなのは目に見えて分かる。
(授業も別に遅れてないしなぁ…)
夏休み明けにスタートする箇所は、既に夏休みに入る前の授業でやっていたのだ。
それもあり、今日位は後半はもともと自習にする予定だった。
時計を確認し終えればディーノはもう一度名無しの方へ視線を戻し、言葉を紡いだ。
「後5分…5分だけ名無しの側に居させてくれよ。俺だって名無し不足だからよ…もう少しだけ名無しで充電させてくれないか?」
『…っつ…うん』
ディーノの言葉に、名無しは頬を赤くして頷いた。
I've missed you
(そう言えばどうしてディーノは保健委員長の言葉断ったの?授業続けたかったよね…?)
(だってあいつ名無しの事…)
(私の事…?)
(否、何でもない)
(?変なディーノ)
((…あの男子生徒名無しに好意があるのバレバレなんだよな…油断も隙もありゃしねえ…))
2024/09/12
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