短編
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※ディーノ先生(英語教師)×家庭科の先生主人公
「名無し好きだ」
『…ディーノく…ディーノ先生、此処学校ですよ』
放課後、家庭科準備室にて家庭科の教師である名無しは壁際まで追い詰められていた。
名無しを壁際に追い詰めているのは、英語教師でありこの間赴任して来たばかりのディーノだ。
サラサラの金色の髪に黒縁眼鏡を付けているせいか知的に見え、その上性格がいい。
名無しから見ても相当のイケメンで、女子生徒からよく黄色い声が上がっているのをよく耳にする。
首から左腕にかけては包帯や絆創膏がされており、恐らく刺青を隠しているのだろうと推測する。
だが何もない所で躓いたり階段からこけたりするのを何度か目撃しているせいかその時の傷もあるのでは?っと、名無しは思ってしまった。
(相変わらずディーノ君の瞳は綺麗だなぁ…)
眼鏡越しに見えるディーノの鳶色の瞳を見ながら、名無しはぼんやりとそう思いながらディーノの顔を瞳に写した。
“相変わらず”と言った言葉通り、名無しはディーノを知っていた。
教師として赴任してきた彼を知っているのではなく…厳密には学生時代同じ学校で過ごした、所謂同級生だ。
まさか自分が勤めている並盛中に、彼が赴任してくるとは名無しにとって想定外だった。
同級生なのだからディーノが一体何者なのかを、名無しは知っている。
イタリアマフィア、キャバッローネ・ファミリーの十代目ボス。
それが彼…ディーノの本業であり決して英語教師が本業で無い事位は名無しにだって分かる。
「名無し…」
七年振りに再会した時はまさかと思った。
変な時期に赴任してくる先生が居るんだな~と思って見てみたら彼だったのだ。
記憶の中にいる幼く学生らしい彼とは違い、すっかり大人びたディーノを見れば名無しも流石に見惚れてしまう。
学生時代はイケメンと言う言葉からは程遠く、どちらかと言うと子犬のように可愛らしい印象だ。
それがまさかこの七年で相当のイケメンになっているとは名無しは思いもしなかった。
一度しまい込んだ気持ちがぶり返してきそうな気配がし、名無しの頭は警鐘を鳴らす。
バレたらまずい、そう思い名無しはディーノと会わないように必須に逃げ回っていたが狭い校内だ。
逃げ回るのにだって限度があり、今こうしてディーノに見つかり捕まっている状況なのだから―――…
「…何で、何で何も言わず消えちまったんだよ…」
『……っつ』
昔の懐かしい思い出に浸っていると、名無しを見下ろしながらディーノは呟く。
その言葉に、名無しはディーノから目を逸らし口を噤んだ。
ディーノの言葉通り名無しは学校から姿を消した、間もなく卒業と言う最後の最後で。
お互い言葉にはしなかったものの、惹かれている事位は分かっていた。
己惚れてもよかった、何故なら卒業式の後に言いたい事が有るからと…約束をしたのだ。
だが、その約束は決して果たされることはなかった。
「そんなに…そんなに俺の事が嫌いか…?」
『…嫌いじゃない…よ』
ディーノの言葉を名無しは震える声で否定する。
(嫌いじゃない、寧ろ逆に好きだった、大好きだった)
へなちょこでも跳ね馬でも、何事にも一生懸命な彼が名無しは好きだった。
弱気で臆病な彼も、それを含めてディーノなのだから。
嫌いな所なんて寧ろない、ずっとずっと、今でも彼が好きな気持ちは変わらない。
「嫌いじゃないなら…何で約束破ったんだよ…」
『ごめんね、約束守れなくて…』
約束を破るつもりなんてさらさら名無しにはなかった。
寧ろ楽しみだった、待ち遠しかった。
ディーノが言いたい事が有ると言ったその言葉が、名無し自身もディーノに言いたい事が有るんだと笑いながら話していたのだから。
「…じゃあ何で、何で消えちまったんだよ!何も言わずに!」
今にも泣きそうな表情でディーノは叫ぶ。
学生時代よくディーノがリボーンとの修行で見た事のある表情だった。
目を逸らしていたはずなのに、いつの間にか名無しはそんなディーノの表情を見ながら言葉を紡ぐ。
『…ディーノ君が…好きだから…だから消えたんだよ』
観念したかのように、名無しはポツリと呟いた。
その言葉は嘘偽りなく、ディーノの耳に届く。
「じゃあどうして?何でだ?」とでも言いたそうな表情をするディーノに、名無しは言葉を続ける。
言いたくなかった言葉を、ディーノに知られたくないとずっと思っていた言葉を。
『…私ね、卒業と同時に結婚する事になってたの…』
「…え…」
『卒業式数日前にね、親に言われたの。卒業したら嫁いでもらうって…相手は私よりも二回りも上で…ディーノ君のファミリーと敵対してるマフィアのボスだった』
「…名無しっ…」
『だから逃げたの、イタリアから、親から、ディーノ君からも』
学校を卒業する間近の小娘が親に逆らえるわけでもなく、マフィアの娘なのだから政略結婚位受け入れろと思うかもしれないが名無しにはそれが出来なかった。
好きでもない人と…まして自分よりも二回りも上の人間と結婚しろだなんて名無しには無理だった。
何よりディーノが好きだった、ディーノ以外と付き合う事も結婚したいとも思わなかった。
ディーノのファミリーと敵対しているファミリーに嫁ぐと言う事はディーノとも敵対関係になってしまう…だから名無しは逃げたのだ。
イタリアから、親から、政略結婚なんてくそくらえだと思いながら。
髪の色を染め、年齢を偽り、此処日本に来てからは名無しは慌ただしい人生ではあったものの、あの学校で身につけた技術をフルに使いただの名無しとして生きてきた。
ディーノに何も言わずに消えたのは知られたくなかったのだ、好きだと伝えたその次の日に別の人間に嫁ぐ事になるなんて知られたくなかった。
『ディーノ君が好きなのに…どうして私は知らない人に嫁がなきゃいけないの?まだ好きとすら言えてないのにどうしてって…』
「名無し…ごめん…俺っ…」
『何よりディーノ君に知られるのが怖かった…軽蔑されるんじゃないかって…嫌われるんじゃないかってずっと、ずっと怖かった…』
話しているうちに名無しの瞳からはポロポロと涙が零れ出し、生暖かい涙が頬を伝い落ちていく。
最後に泣いたのは七年前のあの日、全てを捨てて日本に来たあの日以来だった。
一度しまい込んでしまった気持ちが、想いが、当時の名無しを思い出させ子供のようにわんわんと泣く。
そんな名無しをディーノはそっと抱きしめ、子供をあやすようにポンポンと背中を撫でる。
『ディーノ君が…好きだよ…昔もっ、今も、ずっと…ずっと好きなんだよ…っ』
「俺だってお前が…名無しが好きだよ、すっとずっとな」
『ひっく…ディーノ君っ…約束守れなくて…ごめん…ごめんねっ…』
「名無しのせいじゃねぇーから…だからもう謝るな…」
ゆっくりと抱きしめていた手を緩め、ディーノはそっと名無しの瞳から溢れ出る涙を拭う。
名無しの空色の綺麗な瞳から溢れる涙を拭っても拭っても、次から次へと涙が零れる。
髪の色は変えても、瞳の色だけは変えれなかった。
学生時代「名無しの瞳の色って綺麗だよな」とディーノに言われた言葉が嬉しくて…瞳の色だけは偽りのない名無し自身の色だ。
「なぁ名無し…」
『ひっく…ん…?』
「あの時の約束今果たしていいか?」
『ぐすっ…ん…う…ん…っ』
「名無し…俺の気持ちはあの頃からずっと変わらねぇ―…名無しが好きだ」
『…ひっく、わ、私も…私もっ、ディーノ君が…ずっと、ずっと好きっ』
ディーノは嬉しそうに笑いそっと名無しに口付ければ、名無しはそっと瞳を閉じた。
七年越しにようやく果たされた約束。
果たされることはないだろうと思っていた約束が…七年越しにようやく果たされた―――…
Ti voglio sempre bene sia in passato che oggi
(所で何で日本に来たんだ?)
(日本ならディーノ君がもし…もし結婚とかしてもそう言うの耳にしなくてすむから…)
(っつ…俺だって名無し意外と付き合ったり結婚したりする気はなからねぇーよ)
(ディーノ君…っ)
(あの頃の、力もなにもない子供じゃねぇんだ…だから安心して俺の嫁になってくれ名無し)
2024/08/13
「名無し好きだ」
『…ディーノく…ディーノ先生、此処学校ですよ』
放課後、家庭科準備室にて家庭科の教師である名無しは壁際まで追い詰められていた。
名無しを壁際に追い詰めているのは、英語教師でありこの間赴任して来たばかりのディーノだ。
サラサラの金色の髪に黒縁眼鏡を付けているせいか知的に見え、その上性格がいい。
名無しから見ても相当のイケメンで、女子生徒からよく黄色い声が上がっているのをよく耳にする。
首から左腕にかけては包帯や絆創膏がされており、恐らく刺青を隠しているのだろうと推測する。
だが何もない所で躓いたり階段からこけたりするのを何度か目撃しているせいかその時の傷もあるのでは?っと、名無しは思ってしまった。
(相変わらずディーノ君の瞳は綺麗だなぁ…)
眼鏡越しに見えるディーノの鳶色の瞳を見ながら、名無しはぼんやりとそう思いながらディーノの顔を瞳に写した。
“相変わらず”と言った言葉通り、名無しはディーノを知っていた。
教師として赴任してきた彼を知っているのではなく…厳密には学生時代同じ学校で過ごした、所謂同級生だ。
まさか自分が勤めている並盛中に、彼が赴任してくるとは名無しにとって想定外だった。
同級生なのだからディーノが一体何者なのかを、名無しは知っている。
イタリアマフィア、キャバッローネ・ファミリーの十代目ボス。
それが彼…ディーノの本業であり決して英語教師が本業で無い事位は名無しにだって分かる。
「名無し…」
七年振りに再会した時はまさかと思った。
変な時期に赴任してくる先生が居るんだな~と思って見てみたら彼だったのだ。
記憶の中にいる幼く学生らしい彼とは違い、すっかり大人びたディーノを見れば名無しも流石に見惚れてしまう。
学生時代はイケメンと言う言葉からは程遠く、どちらかと言うと子犬のように可愛らしい印象だ。
それがまさかこの七年で相当のイケメンになっているとは名無しは思いもしなかった。
一度しまい込んだ気持ちがぶり返してきそうな気配がし、名無しの頭は警鐘を鳴らす。
バレたらまずい、そう思い名無しはディーノと会わないように必須に逃げ回っていたが狭い校内だ。
逃げ回るのにだって限度があり、今こうしてディーノに見つかり捕まっている状況なのだから―――…
「…何で、何で何も言わず消えちまったんだよ…」
『……っつ』
昔の懐かしい思い出に浸っていると、名無しを見下ろしながらディーノは呟く。
その言葉に、名無しはディーノから目を逸らし口を噤んだ。
ディーノの言葉通り名無しは学校から姿を消した、間もなく卒業と言う最後の最後で。
お互い言葉にはしなかったものの、惹かれている事位は分かっていた。
己惚れてもよかった、何故なら卒業式の後に言いたい事が有るからと…約束をしたのだ。
だが、その約束は決して果たされることはなかった。
「そんなに…そんなに俺の事が嫌いか…?」
『…嫌いじゃない…よ』
ディーノの言葉を名無しは震える声で否定する。
(嫌いじゃない、寧ろ逆に好きだった、大好きだった)
へなちょこでも跳ね馬でも、何事にも一生懸命な彼が名無しは好きだった。
弱気で臆病な彼も、それを含めてディーノなのだから。
嫌いな所なんて寧ろない、ずっとずっと、今でも彼が好きな気持ちは変わらない。
「嫌いじゃないなら…何で約束破ったんだよ…」
『ごめんね、約束守れなくて…』
約束を破るつもりなんてさらさら名無しにはなかった。
寧ろ楽しみだった、待ち遠しかった。
ディーノが言いたい事が有ると言ったその言葉が、名無し自身もディーノに言いたい事が有るんだと笑いながら話していたのだから。
「…じゃあ何で、何で消えちまったんだよ!何も言わずに!」
今にも泣きそうな表情でディーノは叫ぶ。
学生時代よくディーノがリボーンとの修行で見た事のある表情だった。
目を逸らしていたはずなのに、いつの間にか名無しはそんなディーノの表情を見ながら言葉を紡ぐ。
『…ディーノ君が…好きだから…だから消えたんだよ』
観念したかのように、名無しはポツリと呟いた。
その言葉は嘘偽りなく、ディーノの耳に届く。
「じゃあどうして?何でだ?」とでも言いたそうな表情をするディーノに、名無しは言葉を続ける。
言いたくなかった言葉を、ディーノに知られたくないとずっと思っていた言葉を。
『…私ね、卒業と同時に結婚する事になってたの…』
「…え…」
『卒業式数日前にね、親に言われたの。卒業したら嫁いでもらうって…相手は私よりも二回りも上で…ディーノ君のファミリーと敵対してるマフィアのボスだった』
「…名無しっ…」
『だから逃げたの、イタリアから、親から、ディーノ君からも』
学校を卒業する間近の小娘が親に逆らえるわけでもなく、マフィアの娘なのだから政略結婚位受け入れろと思うかもしれないが名無しにはそれが出来なかった。
好きでもない人と…まして自分よりも二回りも上の人間と結婚しろだなんて名無しには無理だった。
何よりディーノが好きだった、ディーノ以外と付き合う事も結婚したいとも思わなかった。
ディーノのファミリーと敵対しているファミリーに嫁ぐと言う事はディーノとも敵対関係になってしまう…だから名無しは逃げたのだ。
イタリアから、親から、政略結婚なんてくそくらえだと思いながら。
髪の色を染め、年齢を偽り、此処日本に来てからは名無しは慌ただしい人生ではあったものの、あの学校で身につけた技術をフルに使いただの名無しとして生きてきた。
ディーノに何も言わずに消えたのは知られたくなかったのだ、好きだと伝えたその次の日に別の人間に嫁ぐ事になるなんて知られたくなかった。
『ディーノ君が好きなのに…どうして私は知らない人に嫁がなきゃいけないの?まだ好きとすら言えてないのにどうしてって…』
「名無し…ごめん…俺っ…」
『何よりディーノ君に知られるのが怖かった…軽蔑されるんじゃないかって…嫌われるんじゃないかってずっと、ずっと怖かった…』
話しているうちに名無しの瞳からはポロポロと涙が零れ出し、生暖かい涙が頬を伝い落ちていく。
最後に泣いたのは七年前のあの日、全てを捨てて日本に来たあの日以来だった。
一度しまい込んでしまった気持ちが、想いが、当時の名無しを思い出させ子供のようにわんわんと泣く。
そんな名無しをディーノはそっと抱きしめ、子供をあやすようにポンポンと背中を撫でる。
『ディーノ君が…好きだよ…昔もっ、今も、ずっと…ずっと好きなんだよ…っ』
「俺だってお前が…名無しが好きだよ、すっとずっとな」
『ひっく…ディーノ君っ…約束守れなくて…ごめん…ごめんねっ…』
「名無しのせいじゃねぇーから…だからもう謝るな…」
ゆっくりと抱きしめていた手を緩め、ディーノはそっと名無しの瞳から溢れ出る涙を拭う。
名無しの空色の綺麗な瞳から溢れる涙を拭っても拭っても、次から次へと涙が零れる。
髪の色は変えても、瞳の色だけは変えれなかった。
学生時代「名無しの瞳の色って綺麗だよな」とディーノに言われた言葉が嬉しくて…瞳の色だけは偽りのない名無し自身の色だ。
「なぁ名無し…」
『ひっく…ん…?』
「あの時の約束今果たしていいか?」
『ぐすっ…ん…う…ん…っ』
「名無し…俺の気持ちはあの頃からずっと変わらねぇ―…名無しが好きだ」
『…ひっく、わ、私も…私もっ、ディーノ君が…ずっと、ずっと好きっ』
ディーノは嬉しそうに笑いそっと名無しに口付ければ、名無しはそっと瞳を閉じた。
七年越しにようやく果たされた約束。
果たされることはないだろうと思っていた約束が…七年越しにようやく果たされた―――…
Ti voglio sempre bene sia in passato che oggi
(所で何で日本に来たんだ?)
(日本ならディーノ君がもし…もし結婚とかしてもそう言うの耳にしなくてすむから…)
(っつ…俺だって名無し意外と付き合ったり結婚したりする気はなからねぇーよ)
(ディーノ君…っ)
(あの頃の、力もなにもない子供じゃねぇんだ…だから安心して俺の嫁になってくれ名無し)
2024/08/13
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