短編
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『えへへ』
午後1時53分、ぽかぽかと暖かい陽射しが降り注ぐ中、ディーノさんとの待ち合わせ場所である公園のベンチに私は座っていた。
昨晩爪に塗ったネイルポリッシュを見ながら私は1人ニヤついていた。
マッドパステルイエローを塗り、爪半付き部分にはキラリと光るラインストーン。
左右の人差し指と薬指だけクリアカラーでアクセントをつけ、爪先の方にはふわっとゴールドのラメを乗せている。
我ながら上手く出来たな~と、私は自画自賛しながら自分の爪を見ていた。
「なーに見てんだ?名無し」
声と共に隣に誰かが座る。
久々に聞く声に私はすぐに誰が隣に座ったのか分かってしまい、ゆっくりとそっちへ首を振る。
キラキラと陽の光で輝く金色の髪に優しい鳶色の瞳、会いたくて仕方なかった人物が私の瞳に映る。
『あ、ディーノさん!』
「よぉ、名無し。元気にしてたか?」
ニカッと笑いながら、微笑むディーノさんの表情に私はつい見惚れてしまう。
相変わらずかっこいいなと思いながら私もつられて微笑む。
『元気にしてましたよ、ディーノさんの方はお元気でしたか?』
「なんとかな。仕事が立て込んでたけど見ての通り元気だぜ」
『なら…良かったです』
いつものようにフードにファーの付いたモッズコートを羽織り、中にはラフなシャツを着ている。
怪我の心配もなく元気そうなディーノさんの姿に、ほっと安心する。
「それにしても、爪どうしたんだ?」
『ネイル塗ってるんです、最近はまってて』
「へ~、名無しは器用なんだな!」
そう言いながらディーノさんは手を伸ばし私の手に触れる。
じっと凝視される指に時折「すげぇな」と漏れるディーノさんの声。
久々に触れられる温かくて大きな手に、一瞬ドキッと胸が高鳴る。
「にしても黄色って珍しいな?」
『何がですか?』
「いや、名無しは淡いピンク色のイメージがあるなーって思ってたからさ」
その言葉に私も心の中で確かにと思う。
携帯の色も持ち物も淡いピンク色の物が多い。
ネイルポリッシュを買う時も最初はピンク色にしようと意気込んでいたほどだ。
でも実際に買った色はピンク色でもなく、今爪に塗っているような黄色(正確にはマッドパステルイエロー)やそれに近い同系色。
ディーノさんの鋭い指摘に私は思わず『えっと…これはその…』と、言葉を濁す。
「その?」
不思議そうにきょとんとこちらを見るディーノさん。
自分でもネイルポリッシュを買った後に気づいたこの色を選んだ理由。
どう表現したらいいのか分からず、たどたどしく言葉を紡ぐ。
『その…ディーノさんの色だから…』
「俺の…?」
私の言葉に首を傾げながら、ディーノさんは私の顔を覗き込む。
恥ずかしくて思わず目を逸らしながら、それでも私は言葉を続けた。
『ディーノさんの色、だから…この色を見てたらディーノさんが傍に居るみたいで元気が貰えたり安心するっていうか』
私はそう言いながら自分でも分かるほどに顔が赤くなっていく。
日本とイタリア。
学生である私と、片や五千人の部下を束ねるマフィアのボスだ。
住む場所も住む世界も、元から私たちは何もかも違いすぎる。
頻繁にではないけれど連絡を取ったりもするが毎日ではない、会う事すら月に1度あればいい方だ。
寂しくないのか?と問われたら無論寂しいに決まってる。
それでも、私は彼が…ディーノさんが好きなんだ。
(だから少しでもディーノさんの色を身につけて、ディーノさんの存在を近くに感じたくて…ディーノさんの色を無意識に選んでたんだよね)
『つまりその…私はディーノさんが好きって言う事です』
最終的に口から紡いだ言葉がそれだった。
本当に私は何を言ってるんだろうと、きちんと言葉を纏めてから言えと心の中で何度も自分に思ったが、もう時既に遅し。
紡いでしまった言葉は取り消せず、ただただぎゅっと目を瞑り俯く。
私が紡いだ言葉に対して、ディーノさんは無言のままだ。
(呆れられちゃったかな…?)
その静寂が恥ずかしく、何か言葉を言って欲しいと思うものの、ディーノさんからの返答はなかった。
「あー…ったく」
数分、どれくらい経っただろうか?
恐る恐る顔を上げディーノさんの方を見れば、頬を赤く染め金色の髪を掻いていた。
「んな可愛い事言ってると日本から攫っちまいたくなるだろ」
そう言いながらぎゅっとディーノさんに抱きしめられ、私の左頬、右頬の順番にチュッっと口付けた。
軽いリップ音がいやに大きく私の鼓膜に響く。
『で、デデデディーノさんここ外!!』
「大丈夫、イタリアじゃ挨拶でこうやってキスだってするぜ?」
悪びれる事なく、ディーノさんはいつもと変わらない表情で私に笑いかけた。
君色ネイルカラー
(っ~~~、此処は日本ですからね!!!)
(俺はイタリア人だぜ?)
(そ、そうですけど…)
(名無しからそんな風に想われてたら嬉しくてたまらなかったんだよ)
2024/06/13
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