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第2章

隠し通路を進むと、マサキは口を大きく開けて驚愕した。
 そこはコガネデパートの地下倉庫だったのだ。
 マサキ曰く、改築される前のラジオ塔の地下は倉庫として使われていて、よくコガネデパートから荷物が運び込まれていたらしい。露天商のある地下通路、コガネデパート、ラジオ塔はかつてコガネシティの経済を支えていた存在で、それらが繋がっている事はなんら不思議ではない。
「なるほどなあ、その名残を使おて侵入していたって訳やな」
マサキは辺りを見回す。身の丈をゆうに超える荷物が点在しており、広い倉庫ながら身を隠して移動するには容易に見える。
 先ほどここを通ったであろう下っ端達の姿はなく、再び移動をしたようだ。三人は手分けして新しい入口を探した。
 するとワタルはエレベーターを、ゴールドは新しいオートロックのドアを見つけた。
「エレベーターはコガネデパートと繋がっているんやろうな、でももう一つエレベーターがあるなぁ」
「ラジオ塔に繋がっているのかな」
「他に入口無いし、そうやろな」
マサキは再びノートパソコンを繋げて、ハッキングを試みる。マサキの手さばきを眺めるゴールドに対して、ワタルはエレベーターを見つめている。
「ワタルさん?」
ゴールドの呼びかけにワタルは振り返り、安心させるように微笑む。そんな時、マサキの活躍によりドアが開いた。
「よっしゃ」
「ありがとうマサキさん!」
早速先に進もうとする二人に対してワタルは動かなかった。そして少しの思案の後、口を開く。
「ゴールド、二手に別れよう」
「え?」
驚いて彼は振り返る。
「皆が同じルートで攻めるのはリスクが大きい。ここから侵入する者と、ラジオ塔の正面口から侵入する者に別れるんだ。そして正面口の方が敵を引き付け、そのうちに裏口から攻める」
「なるほど……」
「せやな」
「因みにマサキさん、アンタはここで引き返すんだ」
「なんやて!?」
冷静に言うワタルにマサキは食いかかった。危険すぎる、もう十分だとワタルは言うも、マサキはじっとりと睨む。
「……さっきの事、まさか根に持ってはるんちゃう?」
「はは馬鹿な」
「むむ……」
しかし結局マサキは息を吐き、諦めたようだった。項垂れる背中をゴールドは元気よく叩く。
「マサキさんのおかげですっげー助かったよ! ありがとう!」
「ええ子やなぁ、ゴールド。まあトレーナーとちゃうわいにはここまでが限界ってやつやな」
マサキは仕方なくノートパソコンを鞄に仕舞った。
 相談の結果、正面口から侵入し敵を引き付ける役がワタル。彼が引き付けている間に裏口から侵入してクリスを救出する役がゴールドとなった。マサキはワタルと共にエレベーターで地上に出て、PCCへ帰る事になった。
「ではゴールド、武運を」
ワタルは少年の肩を叩いた。ゴールドは黄金の瞳でそれに力強く応えた。
「あ、そうや。ゴールド、この子らを」
マサキが鞄から取り出したのは二つのモンスターボールだ。受け取って見れば、中にはあの「エーフィ」と「ブラッキー」が入っている。
「こ、この子たちってポケモンサミットの!?」
エンジュシティでのロケット団との戦いでゴールドとブラックを助けてくれたポケモン達だ。
「でもこの二匹って大切なポケモンなんじゃ……」
「そうなんやけどな? あのサミット以降、どうにもバトルに目覚めてしもうたようでな。も~わいらも持て余してたんよ。絶対親トレーナーの遺伝やわぁ」
マサキの言葉通り、ボールは小刻みに震え、二匹が闘志に燃えている事が感じられた。マサキはそれをなだめるように二つのボールを撫でた。
「そんなもんで、エンジュシティから帰って来てから親トレーナーに頼んでこの子らを鍛えてもろうた。もうわいらのような研究職の下では可哀想なくらいに強くなっている」
それに、と彼は続けた。
「この子らにとってもこの街は大切なんや。この街を守りたいって思っているはずや」
マサキはボールからゴールドへ視線を移す。それに対してゴールドは力強く頷く。そして手元のボールに呼びかける。
「一緒に戦おうな、エーフィ、ブラッキー」
「頼んだでゴールド、この街を救ってくれ!」
そうしてマサキとワタルはエレベーターで地上へ帰っていった。
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