KISEKI series fan fiction
いつも通りの朝
仄かな光が瞼の向こうを薄明るく照らす。
雀だろうか、遠くに聞こえる小鳥の囀りに誘われ、倦怠感の中からリィンの意識が次第に浮上していく。
ぱちりと目を開けると、視界に映るのは最愛の恋人──クロウの端整な寝顔。
気が付けば、その逞しい腕にしっかりと抱き寄せられていて。
リィンはここがクロウの寝室だということを思い出した。
昨晩激しく乱され、ぐちゃぐちゃになったはずのシーツは清潔なそれに取り替えられていて。
一糸纏わぬ姿になっていた自分の身体にも、薄手のスウェットを着せられている。
「あ……」
どうやら昨晩は肌を重ねた後そのまま眠り込んでしまい、その間にクロウが自分の身体を清めてシーツを取り替えてくれたようだ。
またやってしまった、と心の中で小さく溜め息をつく。
いつもそうだ。後処理が終わったあと朝になってから目を覚ますたびに罪悪感に苛まれ、次こそはクロウに任せっきりにはすまいと心の中で誓うのだが成し遂げられた試しはない。
(……もう起きないとな……)
サイドテーブルに置かれた時計を見る。
現在、午前六時。今日は休日で、もう少しクロウの腕の中に包まれていたい気持ちもあるが、日課の鍛錬を行うには涼しくて静かな早朝の時間が最適だ。
昨晩のことを考えると激しい運動は難しいかもしれないが、軽い素振り程度なら出来るだろう。
すやすやと寝息を立てるクロウに背を向け、腕の中から離れる。
まだ少し肌寒い晩春の朝の空気にふるりと肌を震わせながら、ゆっくりと己の上半身を起こした──が。
「え……」
背中に感じる温もり、そして重み。
「……リィン……」
己の名前を呼ぶ、小さな声。
リィンはクロウに後ろから寄りかかられているのだと気付く。
「ク、クロウ!? 起きてるのか……?」
「……んー……」
「って、寝ぼけてる……!」
クロウはリィンの肩口に顔をうずめたまま、動かない。
その意識はまだ半分以上夢の中にいるようだ。
「!」
「へへ……」
ぎゅっと抱き締められた。頭をすり寄せられ、銀灰の髪が肌を擽る。
その甘える猫のような──実際にこれがクロウなりの甘え方なのかもしれない──仕草に思わずリィンの頬が緩んだ。
「……ん……」
背中から伝わる心地よい温もりに、覚醒したはずの意識にまた睡魔が降りてきて。
(もう少しだけなら……)
クロウを起こさないようにそっと身体を寝かせ、布団を掛けた。
その胸元に顔を寄せ、体温を分け合うようにぴったりと密着すれば、あっという間に微睡みに溶けていく。
カーテンから覗く朝焼けだけが照らす中で、傍で眠る恋人の規則正しい心臓の音を聞きながら、リィンは再び瞼を閉じた。
──朝日が登りきった後、朝食の支度を整えたクロウにリィンが起こされることになるのは、また別の話。
仄かな光が瞼の向こうを薄明るく照らす。
雀だろうか、遠くに聞こえる小鳥の囀りに誘われ、倦怠感の中からリィンの意識が次第に浮上していく。
ぱちりと目を開けると、視界に映るのは最愛の恋人──クロウの端整な寝顔。
気が付けば、その逞しい腕にしっかりと抱き寄せられていて。
リィンはここがクロウの寝室だということを思い出した。
昨晩激しく乱され、ぐちゃぐちゃになったはずのシーツは清潔なそれに取り替えられていて。
一糸纏わぬ姿になっていた自分の身体にも、薄手のスウェットを着せられている。
「あ……」
どうやら昨晩は肌を重ねた後そのまま眠り込んでしまい、その間にクロウが自分の身体を清めてシーツを取り替えてくれたようだ。
またやってしまった、と心の中で小さく溜め息をつく。
いつもそうだ。後処理が終わったあと朝になってから目を覚ますたびに罪悪感に苛まれ、次こそはクロウに任せっきりにはすまいと心の中で誓うのだが成し遂げられた試しはない。
(……もう起きないとな……)
サイドテーブルに置かれた時計を見る。
現在、午前六時。今日は休日で、もう少しクロウの腕の中に包まれていたい気持ちもあるが、日課の鍛錬を行うには涼しくて静かな早朝の時間が最適だ。
昨晩のことを考えると激しい運動は難しいかもしれないが、軽い素振り程度なら出来るだろう。
すやすやと寝息を立てるクロウに背を向け、腕の中から離れる。
まだ少し肌寒い晩春の朝の空気にふるりと肌を震わせながら、ゆっくりと己の上半身を起こした──が。
「え……」
背中に感じる温もり、そして重み。
「……リィン……」
己の名前を呼ぶ、小さな声。
リィンはクロウに後ろから寄りかかられているのだと気付く。
「ク、クロウ!? 起きてるのか……?」
「……んー……」
「って、寝ぼけてる……!」
クロウはリィンの肩口に顔をうずめたまま、動かない。
その意識はまだ半分以上夢の中にいるようだ。
「!」
「へへ……」
ぎゅっと抱き締められた。頭をすり寄せられ、銀灰の髪が肌を擽る。
その甘える猫のような──実際にこれがクロウなりの甘え方なのかもしれない──仕草に思わずリィンの頬が緩んだ。
「……ん……」
背中から伝わる心地よい温もりに、覚醒したはずの意識にまた睡魔が降りてきて。
(もう少しだけなら……)
クロウを起こさないようにそっと身体を寝かせ、布団を掛けた。
その胸元に顔を寄せ、体温を分け合うようにぴったりと密着すれば、あっという間に微睡みに溶けていく。
カーテンから覗く朝焼けだけが照らす中で、傍で眠る恋人の規則正しい心臓の音を聞きながら、リィンは再び瞼を閉じた。
──朝日が登りきった後、朝食の支度を整えたクロウにリィンが起こされることになるのは、また別の話。