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KISEKI series fan fiction

陽溜まり


 柔らかな陽差しが心地良い、リーヴスの休日の昼下がり。
 《如水庵》を出たリィンが広場の方に目をやると、ベンチでうたた寝をするクロウの姿があった。
 よく見ると、膝の上では真っ白な毛の猫が丸まって寝息を立てている。クロウの右手は猫の頭に乗せられており、どうやら彼は猫と戯れている最中に眠ってしまったようだった。

 クロウの隣に腰掛け、その横顔をまじまじと見つめる。クロウはリィンの気配には気付いていないのか、すやすやと気持ち良さそうに眠っている。普段は警戒心の強い彼が、この街では無防備でいられるのかと思うと、リィンはなんだか嬉しい気持ちになった。
 すると。

「にゃあーん」

 こちらはリィンの気配に気付いたのだろう。 クロウの膝の上で眠っていた白猫が声を上げた。

(起こしてしまったか)

 しかし白猫はリィンを警戒する様子は無く、むしろ尻尾を立ててリィンにすり寄って来た。甘えているようだ。
 リィンが頭を優しく撫でると、白猫はリィンの膝の上にちょこんと座り、ゴロゴロと喉を鳴らし始めた。その仕草が愛らしくて、リィンの顔が自然と緩んだ時だった。

「……へっ!?」

 右肩にずしりとした重み。 リィンは思わず間の抜けた声を上げる。

 見ると、クロウがリィンと肩をくっつけ、寄りかかる体勢になっていた。いくら鍛えているといえど、成人男性に寄りかかられると流石に重い。
 リィンは咄嗟にクロウを退けようとしたが、身体を動かすと今しがた膝の上で再びの眠りについた白猫が起きてしまうかもしれないと考えるとそれも出来ず、仕方なくどちらかが起きるまで待つことにした。

 さっきまでよりもより近くで、クロウが囁くように寝息を立てる。
 同時に灰色の髪がぱさりとリィンの肌を擽り、血色の良い端整なかんばせがより至近距離に迫り、更には右肩から体温と微かな鼓動が伝わる。

「……あ……」

 ──それらは全て、あの激動の日々の中でこのクロウ・アームブラストを取り戻したという事実を物語っていた。リィンの顔に微笑みが浮かぶ。

(……大変だったけど……クロウを取り戻せて、本当に良かった)

 なんて考えてしまうのは、少し今更な気もするけれど。

 暖かい昼の陽光に照らされ、リィンにもふと睡魔が舞い降りる。幸せな温もりを感じながら、そっと瞼を閉じた。
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