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椅子から立ち上がったあたしを見て舌打ちをかました陣平君は、ジャケットをあたしにかけてくれて
「あ、ありがとう」
「俺以外に見せてんじゃねぇ」
「!?」
捜査一課を出て、寄ったのは総務課
「めっずらしいじゃない、松田君が…」
そう言った女の人はあたしを見ていて
「え?何?彼女?」
「婚約者」
「え?はぁ!?」
「交際届貸せ」
「え?あぁ…はい」
そう渡されていたのは交際届
「陣平君…っ」
「間違ってねぇからな?この届も婚約者だってのも」
嘘じゃない?
「ほら、お前も書け」
「あ、うん」
陣平君の隣にあたしの名前を書くと、総務課の人は早々に受理してくれていて
「こんでも上がうっさければ、これを出したって言えるな」
「上?」
「上層部。婚約してるなんて知らねーから自分の娘やら姪やら紹介してきやがる」
その事実に頬を膨らませていると
「だけどよ、いつだってお前の所に帰って来るだろ」
「そうかも知れないけど…」
「夢姫土曜日暇だったよな」
「うん」
「出かけっか」
「ホント!?」
「あぁ」
==
土曜日
「珍しいね。いつもはもっとゆっくりなのに」
「確かにな」
「陣平君と出かけて来るの」
「「松田と?」」
「うん」
お兄ちゃんとヒロ君は顔を見合わせていて
「それとね」
「うん?」
「この間の土曜日に陣平君が交際届?書けって言うから書いてきた」
そうあの届け出を書いてから1週間
「やっとか」
「やっと?」
「そうだね夢姫は知って居てもいいか」
「どういうこと?お兄ちゃん」
「松田と夢姫は大分前に形だけの婚約はしてたんだよ」
形だけの…婚約?
「夢姫が中等部に上がってすぐだったかな。松田から『話がある』って言われたんだ。その時に『いずれ夢姫にはちゃんと話す。けどその前にゼロとお前に言っておこうと思ってな』ってそれが最初何を意味するのか分かって居なかったけど、こう言ったんだよ。『夢姫の最初で最後の男に俺がなる。俺も夢姫の男でいる』ってな」
そんな事言ってたんだ
「『ハギにもちゃんと言う。勿論班長にも。だけどまず先に夢姫と1番長くいるゼロと俺にそれを伝えたかった』ってそう言ってたんだよ。だから夢姫が気付いてなかっただけでその時には夢姫は松田と既に婚約をしてたって訳」
「初耳」
「だろうな。アイツがお前に言わない当たり俺達も何も言えないからな」
陣平君らしいと言えばらしいけど
「ただ」
「ただ?」
「夢姫自身に見合いの話が舞い込んでいたのも事実だ」
あたしにお見合い?
「それも氷帝や立海やら青学やらの生徒や、お前を通して俺達の強みになりうりそうな人間との見合いだ」
「まぁ俺達としては夢姫が幸せになれるのなら別にそのお見合いの場を設けてもいいと考えてたけど、毎度の如く『陣平君』だったし、松田もそう言っていた手前、勝手にお見合いの席を設けるわけにもいかなかった」
そうなんだ
「この事を知って居るのは俺達と夢姫、それと五十嵐さんだ」
心空ちゃん?
「彼女には一応夢姫の友人として話はしてある」
「そうなんだ」
「あぁ」
丁度よく鳴ったチャイムは陣平君で
「おはようっ」
「おう」
「やっと出したんだって?交際届」
「あぁ」
「おめでとう。松田が俺達に言っていたあの言葉は夢姫に伝えたよ」
その話をすると顔を赤くしていて
「じ、じんぺ…」
「言うなよ」
「あたしは嬉しかったよ?」
「お前な…」
「松田」
「んだよ?」
「夢姫を幸せにしてくれよな」
「あ?何ほざいてんだ。当り前だろ」
当り前だろ。そんな言葉を簡単に言ってくれる陣平君がずっと好きだった
きっとこれから先もそれが変わることは無いだろうけど
陣平君と一緒に家を出ると
「多分遅くなる」
「松田が一緒なら気にしてないけど、気を付けて行って来るんだよ」
「うん。行ってきます」
「「行ってらっしゃい」」
家を出て陣平君の車で来たのはショッピングモールだ
「ここ?」
「あぁ」
陣平君と来たのはアクセサリーショップだ
「たか…」
「いいんだよ。それ位高くて」
え?
「じゃねぇと他の男の牽制にもなりやしねぇ」
お兄ちゃんたちもそんな事を言ってたけど、牽制するほどなのかなぁ?
「仕事、仕事になるからな。一緒に選んだって事になんだろ」
「ぁ…」
「好きなの選べよ」
そしてその中に入っているアクセサリーショップに迷う事もなく入った陣平君にそう言われて、色々とみているけど、あたしがあるリングの前で止まって見ていると
「これか」
そう言われてお店の人に出してもらうと少しだけサイズが大きくてあたしに合うサイズのものを調べてくれた店員さん
「このサイズですね」
「じゃあそれと」
シンプルな指輪を選んでいた陣平君は一括で買ってくれて
「ありがとう」
「構いやしねぇよ」
陣平君と一緒に歩いているのも中々に楽しい。欲しいものはあまりないけど
「あれ?降谷じゃん」
「本当だ、降谷さんだね」
そう話していたのは不二君と滝君だ。それと同時に知らない人もいて
「あぁ、青学の人間だよ」
青学…?どこかで聞いた事があるけど、思い出せなくて
「でも」
そう滝君が見ていたのはあたしの指元だ
「指輪?」
「本当だ」
「だが高校生が学校でアクセサリーを」
「悪いな。これは男除けだ」
「「男除け?」」
「夢姫は俺の婚約者だからな」
「「え?」」
「そのために今日はこれを買いに来ただけだしな」
「そうだったんだ」
「お前、婚約してたのかよ」
丁度よく来てしまったのは、見覚えのありすぎる氷帝の皆と多分青学の人たち
「あ?」
「お前たちこんな所で止まっていては」
「止めたのは僕たちなんだよ手塚」
「何を言ってやがる」
そう前に来たのは跡部君と眼鏡の男の人
「跡部君、ビックニュースかも」
「あ?何が」
「彼女婚約したらしいよ」
「は?」
「したんじゃねーよ。もうだいぶ前に形だけしてたんだよ」
「大分前に?」
「形だけってどういう事だ」
「いろいろとあんだよ。お前たちには分かんねぇことがな」
クスクスと笑っていると
「何が」
「だってまた元の部署に戻るんでしょ?」
「は?んで知ってやがる夢姫」
「情報源はちゃんとに居ます―」
「アイツか」
「でも婚約っつったって大分早くねぇ?」
「いや、知らなかったのは夢姫だけでもっと前に形だけの婚約はしてたぜ」
「もっと前?」
「あぁ」
そう言えばお兄ちゃんやヒロ君がそんな事言ってたっけ
「夢姫はどうせあいつ等から聞いただろ」
「うん。直接聞きたかったけどね」
「るっせ」
「でも男除けなんて必要あるの?」
「なきゃ、買いになんてこねぇよ」
「だね」
「どういうことだ」
「休みの日は基本的にもっとゆっくりしてるし、この時間に起きてることがまず少ないから陣平君は」
「は?」
「まさか一緒に…」
「住んでねぇよ」
きっとそう言う話をあまりしないから驚いているんだろうけど、実際住んではいないけど陣平君の住んでいるマンションは知って居るし、たまに行くこともある
「でも降谷さんのいつも一緒にいる人は」
「アイツは知ってる。つーか夢姫に来てる見合いの話も聞いたからな」
「「見合い?」」
「あぁ。夢姫と見合いをして上手くいけば出世が出来ると思い込んでいる馬鹿な奴等がいるからな」
「なんで」
「わりぃな」
「それは言えないんだ」
公安だという事は航君以外の2人とあたしは知って居るけど、お兄ちゃんに関しては警視庁ではない。警察庁の公安だという事しか聞いてはいない。ヒロ君だってそれは同じだ
「言えないような場所があるのか」
「あるんだよ」
「そういや」
「うん?」
「お前に似た上層部の人間を見た事がある」
「俺にですか」
「あぁ。苗字が確か…手塚と言っていたな」
「そうですか。父は商社に勤めているので、祖父かと思いますが」
「そうか」
「お前警察に身内がいたのかよ」
「あぁ」
「陣平君が言うくらいだから大分上の人?」
「いや、もう退職しているはずだがな。たまに来てるんだよ」
「へぇ」
「力としては監理官と同じくらいの力はあんじゃね」
「「管理官?」」
「面倒だけどな。そういうのからくんだよ、夢姫の見合い話」
「へぇ」
「この間書いたのってそういう事だったんだ」
「そういうこった。じゃーな」
そういうと陣平君はあたしの手を取って歩きだしていて
「どこ行くの」
「静かなとこ」
静かなとこ?なんて思ってると喫煙所で
「吸いたかっただけじゃん」
あたしは近くの自販機で飲み物を買って、外で陣平君待ちだ
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