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ケネ4のお話
そろそろ交代の時間だろうとケネスは思った。時計も何もないこの無人島では正確な時間など知りようもなく、体感だけが頼りである。
星の位置から時間を割り出すことも可能なのだろうが、もはや騎士団員でも何でもない彼らにとって、そこまでする理由はどこにもなかった。
丸太に葉っぱを敷き詰めただけの寝床では疲労を解消しきれず、ケネスは軋む体を無理矢理に起こした。
ポーラとチープーが寝息を立てている横を静かに通り過ぎ、焚き火の番をしている少年の元へ向かう。
「交代だ」
ケネスが声を掛けると、少年は大あくびをしながら頷いた。自分の寝床へと戻るのかと思いきや、少年はその場に座ったまま焚き火を見つめている。
「どうした?」
ケネスが尋ねると、海の色をした瞳がこちらを見据えた。
「ケネスはどうして僕についてきたの?」
少年は少しの間逡巡してから続けた。
「折角騎士団員になれたばかりだったのに。やっと君の居場所を手に入れられたのに……」
ケネスが少年と同じく孤児であることを言っているのだろう。
ケネスは確かに自分の居場所を得るためにラズリル海上騎士団に入る道を選んだ。そのために長い間訓練生として努力してきたのだ。少年もケネスと同じ境遇で、訓練生として共に切磋琢磨してきた。だからこそ、ケネスが少年と共にラズリルから出る選択をしたことが理解し難いのだろう。
しかし、少年が知っていることがケネスの全てではない。
「理由を知りたいのか?」
ケネスの問いかけに少年は答えることなく、ただこちらを見ていた。
少年は自分にその価値がないと思っているのだろう。ケネスが手に入れた騎士団員の立場を捨ててまで少年に付き合うのは全くの無駄だと思っている。
ケネスは自嘲した。
流刑船に忍び込んだ理由なんて、ケネスにとってはひとつしかない。
少年がそれを知りたいと言うのならば、教えてもいいとケネスは思った。彼はケネスのことを何も知らない。少年が理解するまで、朝になるまで、一晩中かけて伝えてやりたい。そんな衝動に駆られる。
――彼と共に有れるのなら、死ぬまでこの無人島で過ごしたって構わない。
海色の瞳の中に炎が映っているのが見えた。
焚き火の中で薪がパチンと爆ぜる。チープーが何やら寝言を言いながら寝返りをうった。
ケネスは少年の方へ伸ばしかけた手を留めて息を吐いた。
「悪いことばかり起こりすぎて、卑屈になってないか?」
ついでに肩をすくめて「それじゃ、へこんだときのスノウと変わらない」と付け加える。
少年は困ったような顔でクスリと笑った。
ケネスが休めるときに休んでおくよう告げると、少年は自分の寝床へ行き、すぐに眠りについたようだった。
炎の燃える音と波の音だけが聞こえる。
日が昇るまではまだ時間がある。一人火の番をしながら過ごす夜は果てしなく、永遠に続くのではないかとケネスは思った。
(早く出よう。こんな島、早いところ脱出しないといけない)
燃え盛る焚き火のせいで顔が熱かった。
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