他カップリング
坊ちゃん・2主・王子の名前を変換する
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
酔える女王騎士たちの話
「うぇ……酒くさ……」
女王騎士団詰所の扉を開けるなり、室内に充満したアルコール臭の洗礼を受け、ゾンタークは顔を顰めた。
ゲオルグと談笑していたフェリドが顔を上げ、「遅かったな」とゾンタークに笑いかける。
ゾンタークは混沌とした詰所内を見渡した。
フェリドの手元には、自身の妻の肖像画がいくつも並べてある。ゲオルグはジョッキサイズのプリンを豪快に貪っていた。同じテーブルの端ではガレオンがひとりブツブツと何かを言いながら手酌であおり続けている。ミアキスはと言うと完全に出来上がっており、真っ赤な顔をして酒瓶を抱きかかえソファに寝転がっていた。詰所の隅でエチケット袋を握りしめ蹲っているのはアレニアだろうか。
つい今しがたゾンタークを呼びに来たカイルは、さっさとどこかへ姿をくらませてしまっていた。何故一緒にここへ来ないのかと思ったのだが、詰所内の有様を見てゾンタークは大いに納得した。
「ザハークは?」
姿の見えない騎士の名をゾンタークが挙げると、ゲオルグは気に食わないと言った風に頭を振り、「建設的じゃない会合には参加しないのだそうだ」と答えた。
「まったく、何が建設的じゃないって言うんですかぁ?」
話を聞いていたのか、横になっていたミアキスが起き上がった。ゆらりと立ち上がると、ゾンタークに向かって近付いてくる。何の気もなしにミアキスの方を見ていると、彼女は凄まじい素早さで両手を伸ばし、ゾンタークの頬を包み込んだ。
「こぉぉぉんなに可愛らしい姫様が来て下さったと言うのに!」
「えっ」
「まったくだ!アルの美しさを讃えることのどこが建設的じゃないと言うのか!」
驚きの声を発したゾンタークに構わず、フェリドはズレたことを言いながら拳でドン!とテーブルを叩いた。
「気にするな、こいつは酒が入るといつもこうだ」
淡々と告げながら、ゲオルグはジョッキプリンを吸引し始める。
ミアキスの手に力がこもる。完全に顔面をホールドされてしまった。
「ミアキス、ちょっと、離してくれる?」
「もぉ〜、姫様ったら照れちゃって可愛いですねぇ〜」
酒の回ったミアキスは聞き入れるそぶりを見せない。
「可愛い姫様には、チュウしちゃいますよぉ〜♡」
「人違いです!!」
青ざめた表情でゾンタークは全否定した。ミアキスの手首を掴んで頬から離そうと試みるものの、ビクともしない。さすがは凄腕女王騎士である。
周りに助けを求めようにも、フェリドは面白がって「いいぞー!」などと煽っているし、ゲオルグはジョッキを空にして悠然と腹をさすっている。
ミアキスの顔が近付いてくる。せめて顔を押し留めようと手を伸ばしてみたが、ミアキスは左手一本でゾンタークの両手を絡め取り制圧してしまった。ミアキスの右手はゾンタークの顔を固定したままだ。
万事休す。
「ちょっ、ミアキス、待っ、▲◎&☆¥#ゞ※〜〜〜!」
口を塞がれゾンタークは声にならない悲鳴を上げた。押しのけることも叶わず、ただただなされるがままになるしかない。
「随分とディープだな」
ゲオルグが遠巻きにそんな感想を口にするのが聞こえた。
「もっとやれー」とはやし立てるフェリドの声も聞こえてくる。
ろくに呼吸ができずに息がもたなくなった頃だろうか。永遠とも思えるほど長い口付けからゾンタークを救ったのは、詰所の外から聞こえてきた少女の声だった。
「兄上〜!兄上はおらぬか〜!」
リムスレーアだ。
その声に気付くなり、ミアキスはトロンとしていた瞼をパチッと見開く。「姫様!」と顔を上げ、ようやくゾンタークの唇を解放した。そうして、今の今まで口を吸っていた相手の顔を一瞥する。
「あれぇ?コレ、王子じゃないですかぁ……」
不服そうに言い捨ててゾンタークをポイッと投げ捨てると、ミアキスは尻尾を振る犬のように「姫様〜♡」と言いながら詰所から駆け出していった。
ふらつく足で立ち上がったゾンタークは、ミアキスの去った方へ目を向ける。
「えっ、これ、リム大丈夫なの?ミアキス随分酔ってたけど、変なことしない?」
「はっはっは、ゾンタークは心配性だな!ミアキスはリムの護衛だぞ。おかしなことをするわけがなかろう」
フェリドは不安に駆られたゾンタークの言葉を軽く笑い飛ばした。
(いや、今ここでおかしなことが起こったばかりなんだけど……?)
思いつつ、ゾンタークはベトベトに濡れた口元を拭った。
「いつまでそんなとこに突っ立ってるんだ?飲むぞ」
ゲオルグに促され、釈然としないままテーブルへ向かうゾンターク。ゲオルグの向かい側、フェリドの隣に腰掛ける。
「何か悲しくなってきた……」
「ホラ、口直しだ」
言いながらゲオルグが差し出したのは、ふたつ目のジョッキプリンだった。一体いくつ持ち込んでいるのやら。
「……どうも」
と、ゲオルグの好意を受け取ったところで気付く。
(え、飲むって、コレを?)
プリンをどうしたものかとジョッキをこねくり回していると、ゲオルグがニヤリと笑ってフェリドに釘を刺した。
「アルシュタートと間違うなよ」
「間違うか!確かにアルによく似てるが……似てるが……ゾンタークはゾンタークで可愛いぞー♡」
騎士団長である父に力で敵うはずもなく、ゾンタークは虚無の表情でフェリドの頬擦りを受け入れるしかなかった。
「うわージョリジョリするー……」
テーブルの端で飲み続けているガレオンは、離縁した妻の話で最高潮を迎えているようだった。