坊ちゃん×ルック
坊ちゃん・2主・王子の名前を変換する
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ゆめいろゆうえんちの回
気温はまだあまり高くはないが、やわらかい陽射しが降り注いでぽかぽかとあたたかい。
そんな春先の休日。
「いい?しっかりやるのよ?こっちは私に任せてちょうだい」
アップルは親指をビッと立て、目配せをした。反対の手ではシーナの腕をしっかりと捕まえている。
アップルに腕を組まれたシーナは、柄にもなく緊張した面持ちをしている。面白いなと思いながら、ルックも親指を立てた。
「あー、うん。任せたよ」
「何?なんでアップルが張り切ってるの?」
遊園地の雑踏の中に消えていく二人を見送り、ギオンが不思議そうにルックに尋ねてきた。
「僕が『ギオンと二人になりたいから協力して欲しい』って頼み込んだから」
「ルックが!?」
「馬鹿シーナの発案ね」
「なんだ……」
ギオンはガックリと肩を落とした。
何度誘っても応じてくれないアップルをデートに連れ出すため、シーナはルックとギオンに協力を仰いだ。みんなで一緒に出掛け、途中で二手に分かれるという古典的な手だが、首尾は上々だったらしい。
「ルックにそんな風に頼まれたら断れないか。アップル、素直だからね」
「シーナみたいなやつに騙されないことを祈っとくよ。……もう騙されてるけど」
「ルックは誰の味方なんだよ」
ギオンが言って笑った。
ルックからしてみれば、別に誰に肩入れするのでも構わなかった。この先どうなるのかはあの二人次第だ。
しかし、シーナがルックとギオンに声を掛けてくれたことには感謝している。ギオンと出掛ける機会を提供してくれたのだから。
「わざわざデートコースまで考えてくれたんだ。せっかくだから行ってみようよ」
ルックは遊園地マップを取り出した。
アップルが事前に用意して、たっぷりと書き込みをして寄越してきたものだ。正確に言えば、この書き込みをしたのはアップルだけではない。ルックの言葉を真に受けたアップルが、他の女子たちにも協力を呼び掛け、長時間に及ぶ議論の末に出来上がったものだ。
正直言うと、良心が傷まないでもなかった。
(でも、嘘ではないし)
ギオンの様子を伺っていると、彼はこちらに近付いてきた。そのまま、ルックの手の中のマップを覗き込んでくる。
(近すぎ……)
陽射しが強まってきたのだろうか。耳が熱いような気がした。
あたたかい風がギオンの黒髪をサラリと揺らした。髪の一本一本までもがよく見える。
髪の隙間から覗く彼の耳に、こちらの呼吸音が伝わってしまうんじゃないだろうか。そんな妄想に囚われ、無意識のうちに息をするのを抑制してしまっていたようだ。気付いたときには息が苦しくてたまらなくなっていた。
どぎまぎしているルックに気付く様子もなく、ギオンはアップルの文字を読み上げる。
「『吊り橋効果を最大限に活用するためのアトラクションの回り方』……」
ギオンがルックを振り返った。
「試してみる?吊り橋効果」
柔らかい微笑みがルックに向けられる。
コクンと頷いたルックの方へ、ギオンの手が差し出された。
(アトラクションなんか回らなくても、もうとっくに……)
高鳴る鼓動を感じながら、ルックはギオンの手をとった。
ギオンの手も、陽射しも、春風も、ルックの頬も。全部がぽかぽかとあたたかい。
そんな春先の休日の出来事。
