坊ちゃん×ルック
坊ちゃん・2主・王子の名前を変換する
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お題:キスかと思って目を閉じたら見当違いで死ぬほど恥ずかしい
白状すると、彼から好意を向けられていることにはなんとなく気付いていた。
彼は毎日忙しく過ごしているにも関わらず、大した用事がなくてもよくここを訪ねてくる。
じっとこちらを見つめる視線が気になり顔を上げると、目が合った彼はごく僅かに頬を赤らめて柔和に微笑むのだ。
彼には思うところがあるのだろう。一定の距離は保ったままで、そこから近付いてくることはない。
だけど、彼が浮かべる微笑みは温かく、あまりに心地良いものだから、あとほんの少しこちらに近付いて来ても良いのにな、なんて――
ぼんやりとそんなことを考えていたら、向かい合っていたギオンの手がスウッと頬に伸びてきて、ルックは心臓が跳ね上がるのを感じた。
「ルック……」
名を呼ぶ声が鼓膜を揺らす。
ギオンの顔が近い。近い。
いつもよりも紅潮して見える彼の顔が、ゆっくりと近付いてくるのがわかった。
(キス、される――)
頭に血がのぼって全身が熱い。体の中身が全部心臓になってしまったかと思う程、大きな拍動に揺れる。
(ドキドキしてるなんて、知られたら恥ずかしい……!)
思っても、勝手に動く心臓を止めることなんてできやしない。
ギオンの目に真っ直ぐに捉えられ、ルックはとうとう見つめ返すことができなくなってギュッと瞳を閉じた。
「………………」
しばらくそうしていただろうか。
いつまでたっても待っているものが訪れる気配がなく、ルックはそっと目を開いた。
「あ、えっと……、その、睫毛にゴミが!」
パチッと目が合って、ギオンは慌てたようにルックの目元を撫でて離れる。
(ゴミ……?)
緊張感から解放され、ルックは足元に膝から崩れ落ちた。
「え、ルック、大丈夫!?」
ギオンが屈んでルックを覗き込もうとしてくる。
見られたくない。こんな真っ赤になって涙目で汗を噴き出してる姿なんて見られるわけにいかない。
ルックは手に持っていたロッドを大きく振り回した。
「し、知らない!用がないんなら、さっさとあっち行け!」
(恥ずかしい!僕は何を期待してーー)
ドキドキと脳の中まで心音が反響している。このまま心臓が飛び出して、死んでしまうかもしれないとルックは思った。
(これじゃあ、まるで、僕がギオンのこと好きみたいじゃないか!)
白状すると、人をこんな風に好きになるのは初めてのことだった。
共に過ごす時間を積み重ねる程に強く惹きつけられ、次第に触れてみたくなってくる。
じっと見つめると、彼はすぐに気付いて真っ直ぐな視線を返してくれる。それだけで十分だと喜べたら良いのに、もしも許されることなら、この人にあともう少し近付く資格を与えてもらえたらと願ってしまう。
この思いの丈をぶつけることで、もしも受け入れてもらえたら、なんて――
ギオンはそんなことを夢想しながら、見れば見るほど魅力的な端正な顔に見惚れていた。手に入れることなんて叶わないと思っているのに、長い睫毛が影を落とすその白い頬に、開けば悪態ばかり吐くその唇に、どうしても触れたいという衝動に駆られてしまったのだ。
(……やってしまった)
ルックの頬に手を触れたまま、ギオンは固まってしまった。
この淡い色の形の良い唇に口付けをしたらどうなってしまうのだろう。ルックは怒るだろうか。二度と口を聞いてくれないかもしれない。
自分が近付きすぎることで、ルックを失ってしまうのではないかという懸念もある。
(だけどそんなことよりもーー恥ずかしい!)
顔面の火照りを感じる。こんな綺麗な人に、勢いに任せて口付けなんてしても良いものなのだろうか。
(そもそも、キスって何だ?何ていうか……エッチな感じがするし……)
考え始めてしまうと、これ以上動くことなどできやしない。
頭の中で思考が渦巻いているうちに、パチッとルックと目が合ってしまって、咄嗟に『睫毛にゴミが付いてた』なんて、無理な言い訳を口走ることしかギオンにはできなかった。