坊ちゃん×ルック
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卯年のいたずら初め
「貰ってよ」
巨大なウサギのぬいぐるみを手渡され、ルックは眉根を寄せた。両腕にずっしりとした重みを感じる。ひどく太っていて、縦にも横にも五・六十センチ程はあるだろうか。
「どうするの、コレ」
半ばふざけながら挑んだクレーンゲームだった。それなのに、目の前の男はいとも容易くそれを獲得してしまった。絶対に取れやしないだろうと、高を括っていたのだが。
彼に「何か取ってみて」とリクエストしたのはルックだ。しかしこんなものを貰ってどうすればいいのだろう。
殺風景な男子高校生の部屋に鎮座する、ピンク色の巨大なウサギ。あまりにもシュールではないか。
ルックは頭を抱えようとしたところで、両手が塞がっていることを思い出した。とてもではないが、片手で持てるようなサイズではない。本物のウサギの方が、まだ抱えやすいことだろう。
「重い」
文句をつけると、彼はこちらへ近付いて来て、ぬいぐるみの方へ手を伸ばした。
ああ、よかった。持ってくれるようだ。当然そうすべきだ。取ったのは彼なのだから、責任は彼が持たなくてはならない。
そもそも、ルックの部屋よりも彼の部屋の方がずっと広いのだ。この巨大なウサギを置くべきは、彼の部屋のはずだ。
なんてことを考えながら、ルックはふと顔を上げた。ほんの目の前のすぐそこに、彼の顔があることに気付く。睫毛の一本一本までもがよく見える距離だ。
――いいことを思い付いた。
悪戯心がむくむくと芽生えて、ルックの口角をニヤリと引き上げさせた。
「どうしたの、ご機嫌だね」
澄んだ瞳。闇色の睫毛に濃く縁取られたその瞳が、じっとルックを見つめ返している。
「ご機嫌……。そうだね、コレの使い道を思い付いたからね」
「使い道?」
キョトンとした表情だ。
さっそくその疑問に答えるべく、ルックは重たいウサギを顔の高さまで持ち上げる。
そして、彼の唇へそっと吸いついた。
休日のゲームコーナーの人混みの中、クレーンゲームの立ち並ぶ一画で、ルックはささやかな悪戯を試みた。
この唇を離したとき、彼の慌てたり赤面したりする様子が見られるのだろうか。まさか怒りはしないだろうけれど、それはそれで面白いかもしれない。
どんな反応が返ってくるのか、楽しみで仕方がない。
彼がくれた巨大なウサギのぬいぐるみ。
寄り添う二人の姿を隠すのに、充分すぎる大きさだったから。