坊ちゃん×ルック
坊ちゃん・2主・王子の名前を変換する
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
逃亡イベントのお話
お姉ちゃんの背中で眠っているマキノへ。
お姉ちゃんは今、とても困っています。
なぜなら、私たちに同行してくれている二人がずっと険悪な状態だからです。
二人は示し合わせて私たちを手伝ってくれているのかと思っていたのだけど、どうやらお互いに何も相談することなく、それぞれが単独で動いた結果、たまたま同じ行動をとることになったらしいのです。
結果的に一緒に行動してるのだから良いじゃないかとマクドールさんは言うけれど、ルックくんはマクドールさんから事前に話がなかったことで怒っているみたい。ルックくんだってマクドールさんには何も言わずに行動してたのにね。
いつも仲良しな二人なのに、私たちのことに巻き込んで喧嘩させてしまって、お姉ちゃんはどうしたら良いのかわかりません。
二人の間にいるのも、そろそろつらくなってきました。
マキノ、どうか早く元気になって目を覚ましてね。
襲いかかってきたゾンビたちの最後の一体へ、ギオンが棍を叩き込んだ。
「次から次に鬱陶しいな。臭いし……」
苛ついた声音でぼやきながら、ルックが風を収束させる。
ナナミは気を失った弟を背負って、その二人のあとを追いかけた。
自分より大きくなってしまった弟を背負って走るというのは、思っていたよりも身体的な負担が大きかった。加えて、この山道である。ナナミの額から、ポタポタと汗の雫が落ちる。
ふぅ、と息を吐くと、ギオンとルックが同時に振り返った。
「大丈夫?」
「大丈夫か?」
声が重なる。二人はその瞬間睨み合ったかと思うと、ルックはサッと明後日の方向へ目線を移し、ギオンはナナミの方へと近寄ってくる。
「ナナミ、そろそろ代わろうか」
ギオンはナナミの弟を見ながら、優しい声音でそう言った。
ナナミは奥歯をキュッと噛み締めて笑顔を作る。
「ううん!いいの!マキノは私が守るの!私が……」
なるべく元気な声で答えたつもりだったが、気を抜くと涙腺が緩みそうだった。
「そうか」と答えるギオンの表情が一瞬だけ曇って見えたのは、ナナミの気のせいだろうか。
すぐにギオンはルックの方にチラッと目をやり、ニヤリとした笑みを浮かべた。
「ルックもそろそろ疲れたんじゃない?僕がおぶってやろうか」
「は?馬鹿言ってないで、さっさと構えろよ」
ルックは取り合わずに魔法の詠唱を始めた。
ナナミが周囲を見回すと、再びゾンビが湧いて出てきていた。
「マキノのことはナナミに任せるけど、間違っても盾になろうなんてしたら駄目だよ。二人一緒に助からないと意味がないからね。いいね?」
ナナミが頷くのを待ってから、ギオンは近付いてくるゾンビへ棍で一撃を加えた。
「数が多いな」
機嫌悪くそう言いながら、ルックは風で薙ぎ払っていく。
倒しても倒しても、ゾンビは湧いて出てきた。
手が足りず、徐々に周囲を取り囲まれているように感じる。
(私も戦った方が良い?でも、マキノをここに下ろしておくわけには……)
迷っているうちに、突如背筋が凍りつくような感覚を覚え、ナナミは振り返った。
(後ろにも!)
背後でゾンビが手を振り上げるのと、ナナミの体が抱き寄せられるのはほぼ同時だった。
ナナミとマキノを左腕で庇いながら、ギオンが背後のゾンビを突き飛ばす。
時間にすればものの数秒だが、この僅かなタイムロスにより、ゾンビたちに完全に周囲を取り囲まれてしまっていた。
ギオンは棍を左手へと持ち替える。そして天に向かって右手を大きく掲げた。
「冥府!」
周囲に膨大な闇のエネルギーが放出されていく。目を開けていることができず、ナナミはぎゅっと両方の瞳を閉じた。禍々しい魔力が周囲を覆い尽くしているのを肌で感じる。
徐々に闇が収束していく中、ギオンが「げっ」と呻くのが聞こえた。
ナナミはおそるおそる目を開いた。ギオンが魔法を使う前と何ら変わることなく、ゾンビたちはそこにいた。ナナミにもわかる程の強大な魔法が発動されたにも関わらずだ。
「ああもう馬鹿だろ!馬鹿!馬鹿すぎる!」
ナナミたちを取り囲むゾンビたちの外から、ルックの苛立つ声が聞こえ、突風が吹き抜けた。
ルックが発した風の魔法を受けたゾンビは、バタバタと倒れていった。
ルックがいる辺りのゾンビは、既に風魔法で戦闘不能状態にされているようだった。
向こう側からルックがツカツカと足早に近付いてくる。
「ナナミに二人一緒に助かれとか言っておいて、これはあまりにもお粗末すぎるんじゃないか?そもそも魔法の構成への理解が乏しすぎる!強力な魔法だからって、何でも使えばいいってもんじゃないんだよ!馬鹿だろ?本当に馬鹿だ!」
馬鹿馬鹿と一気にまくし立てながら、ルックはギオンへ詰め寄った。「ふふ」とギオンが笑うのを見て、ルックは眉間の皺を更に深くする。
まだまだ言い足りないのだろう。何かを言おうとルックが口を開きかけたところで――、ギオンの唇がルックの口を覆ってしまった。
顔の角度を変えながら、ギオンの唇は何度も何度もルックの唇に重ねられ――
(えっ?私、これ見たら駄目なんじゃないの?)
突然目の前で繰り広げられる光景にナナミが唖然としているうちに、二人のシルエットは離れていった。
「ルック、助けてくれてありがとう。これを仲直りのキッカケにさせてもらったら駄目かな?」
ギオンは微笑みながらルックの目をじっと見る。
ルックはその問いかけには答えず、
「……ゾンビに魂なんてないから、その紋章じゃ一網打尽にはできない。ここから先、数は僕が減らしていくから、君は取り残しを頼む」
そう言いながらくるりと踵を返した。
少し進んで、思い出したかのように顔だけ振り返る。
「これ、貸しひとつだからね。ちゃんと利子付けて返してよ」
ギオンへ伝えると、ルックは再びスタスタと進み始めたのだった。
いまだ目覚めないマキノへ。
体調はどうですか?
お姉ちゃんは今、とってもびっくりしています。
マクドールさんとルックくんは、お姉ちゃんが思っていたよりももっと仲良しだったようです。
人がちゅうするところなんて初めて見てしまいました。恥ずかしくて顔が熱いです。
今度は別の意味で、二人の間にいるのがつらくなってしまいました。
仲直りの甲斐あって、二人はしっかりと連携を取りながら、どんどんゾンビを倒してくれています。
あと少しで山道越えられそうだよ。
どうか、元気な姿をお姉ちゃんに見せて下さい。
ちゅうはしないけど、全部終わったときにはハグをしてあげるからね。