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露天風呂常連のヴィルヘルムの話
夜風を肌に感じながら、熱めの湯にどっぷりと身を浸す。見上げると、空のいたるところで星々が瞬いていた。
こうやって夜空を肴に、手酌でちびちびとやるのが、近頃のヴィルヘルムの愉しみのひとつであった。
露天風呂はいい。なにしろ混浴だ。
混浴であるがゆえに敬遠されがちではあるが、おかげでこの空間を貸し切りに近い状態で満喫させてもらっている。そして、うまくいけば女性陣に遭遇することだって起こり得る。なにしろここは混浴だからだ。
ミルーンちゃんに注文した酒は、少々燗をつけ過ぎだった。アルコールが飛びすぎていて、酒場で呑むには今ひとつかもしれない。だが、露天風呂においてはこれぐらいがちょうどいい。熱い湯の中で熱い酒を嗜んでも、酔いが回りすぎることがない。その上、ちょうどいい塩梅で、夜風が火照りを冷ましていく。
ヒトであれば、彼女はいい女に違いない。なにしろ、城に混浴の露天風呂を造ったのも彼女だからだ。
――と、他に人のいない浴場を、つい今しがたまで堪能していたのだが。
(なんでまた、コイツらと顔を突き合わせなきゃならねぇんだ……)
それも混浴で。
嫌と言うほど見慣れた野郎二人の姿を認めて、ヴィルヘルムは半眼になった。
「ミューラーさん、どうして逃げるんです?」
「うるせぇな、つきまとうな」
「僕が背中を流しますよ」
「いらねぇっつってんだ」
いつもこうだ。
傭兵旅団の詰め所にいる間も、永遠にこの二人のやりとりを見せつけられている。
何が悲しくて、露天風呂(それも混浴)でまで、この寸劇を見続けねばならないのだろう。
王子がリヒャルトを連れて出かけてくれたら、少しは静かに過ごせるのだが。
ミューラーに付きまとうリヒャルトは、やややり過ぎ感が否めない。しかし、ミューラーも大人げないのだ。なんだかんだ毒を吐きつつも相手をするのであれば、はじめから邪険にする必要もないだろうに。
「おい、ミューラー。うるせぇから、そいつ連れて他の風呂行けよ」
ヴィルヘルムは露天風呂に静寂を取り戻すべく提案した。
「あ? なんで俺が」
ミューラーがこちらを睨みつけてくる。
「僕はミューラーさんの行くところなら、どこでもお供します」
「ついてくんじゃねぇ」
「どうして? 恥ずかしがる必要ないじゃないですか。僕とミューラーさんの仲なのに!」
「気色悪ィこと言うな」
「気色悪くなんてないですよ。僕はミューラーさんのお乳で育ったんですから!」
――また始まってしまった。
ヴィルヘルムは深々と嘆息してから、盆を手に立ち上がった。
野郎二人の馬鹿話を聞きながらで、酒が美味いはずがなかった。
それに今晩は女性陣が露天風呂に来る様子もない。
(これなら酒場の方がマシだな)
トボトボと脱衣所に戻ると、これまた見慣れた姿を見つけ、ヴィルヘルムは声を上げた。
「おう」
「あ! こんばんはー」
男は女王騎士とは思えないほどに軽々しい挨拶をよこしてくる。
軟派な男だが、気のいい奴である。彼もまたこの露天風呂の常連だった。
ヴィルヘルムは何も言わず、女王騎士の肩をポンポンと叩くと、ただ首を横に振った。
彼はそれですべてを悟ったらしく、「ああー」とうめきながら、屋内の男湯の方へのっそり足を向けていった。
(いい判断だ。混浴に行っても姉ちゃんがいないだけじゃなく、ただ不快になるだけだからな)
鷹揚に頷き、彼の後ろ姿を見送ってから、ヴィルヘルムは衣を身に着けた。
酒を呑み干し、ミルーンちゃんに礼を告げる。
「ど〜も〜。いつも〜、ありがと〜ございます〜」
「明日も世話んなるぜ」
外に出て空を仰ぐと、星がひとつ、流れてキラリと光った。
――そうだ、明日こそ混浴で可愛い姉ちゃんに遭遇してやるのだ。
決意を新たに、ヴィルヘルムはその場を後にしたのだった。