幻水2
坊ちゃん・2主・王子の名前を変換する
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風が嫌いなササライの話
苛立つことは無意味だとササライは思っていた。
何の生産性もない。それどころか、邪念に集中力を削がれることで過失を招きかねない。まさに百害あって一利なしというやつだ。
(わかってはいるのだけどね)
「報告致します! 強風により進軍が遅れております!」
「ササライ様、御髪が乱れて……!」
雑音に取り巻かれながら、ササライは顔をしかめた。
一向に止む気配のない風が、ビュウビュウと耳の横を通り過ぎては鼓膜を揺らす。
「……煩いな」
ポツリと小声で呟く。
周囲の兵たちが顔色を変えてサッと押し黙るのがわかった。
(ああ。別に君たちに言ったんじゃない)
そうだ。将たる者が苛立った様子を見せれば、兵が萎縮する。だから、苛立つべきではないのだ。
思うが、わざわざ言葉にして補足してやらなければならない状況さえもが腹立たしい。
嘲笑うかのように強風が髪を靡かせた。遮られた視界を取り戻すべく、ササライは右手で髪をかき上げる。
「鬱陶しいんだよ」
進軍が遅れるのみならず、将を苛つかせ兵を混乱させる。デュナン側のとった策はハルモニアとハイランドの足止めとして十分すぎたようだった。
兵の一人がおずおずと前に歩み出る。
「サ、ササライ様、お帽子がこちらに飛んで参りました〜!」
だから風なんか嫌いなんだ。