第一章
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まどろみの森ー
立ち入り禁止の看板を付けられた森の奥深く、霧に包まれた崖下でオレンジ色の炎が揺らいでいる
大きな体を左右に揺らしながら足音を響かせるリザードンは前を歩く相棒を静かに見つめ大人しく歩き続けた
「…………」
木々の隙間から漏れ出る僅かな光さえ注がれない谷底は暗く、じめじめとした匂いが鼻に纏わりつく
朱色のマントを揺らし脆くなった岩肌や地面を注意深く見つめる青年は帽子の影から金色の瞳を険しくさせ、探している物が見つからず苛立っているようだった
グルルルっ
リザードンが彼を呼ぶと青年は降ろしていた手に拳を作りギチギチと音を鳴らすと、溜めていた苛立ちを体外に出すように息を大きく吐き出し肩を落とした
「……すまない、そろそろ行こうか」
振り返った彼…ダンデは痛々しく微笑む
この顔を何度見ただろうか
リザードンは相棒を慰めるように彼の頬に自分の頬を寄せて甘え、ダンデも心配させまいとリザードンの首を軽く擦ってやった
「今日も進展なしだ…何も見つからない、セレビィも……ナマエの遺品も」
ぐっと口元を一度強く結ぶと彼は苦笑いを浮かべリザードンの背中に飛び乗る、それを合図に大きく翼を動かせば崖下から抜け出し広く青い空へと飛び上がる
薄暗い森とは違い開放的な青空へと抜け出すとダンデは下に広がる森を見下ろし風に紫の長い髪を靡かせながら眉間にしわを作った
「(あれから何年経った?こんなに探しているのに彼女の物が何一つ見つからない!確かに崖下に落ちた筈だが…ボールやリュックさえ見つからないなんてどういう事だ?)」
思い出すのもつらい幼い頃のあの日
すぐに大人達を連れ崖下を探してもらったが彼女の姿は見つからなかった
深い霧もあり時間ばかりかかり数カ月後には捜索さえ打ち切られた
その後もダンデは諦めきれず時間を見つけては彼女の手がかりがないか探し、高さからして見つけても無事ではないだろうと大人達に言われソニアと大泣きした
目元が真っ赤に腫れても涙は乾かず溢れ出て彼女の両親にも何度も謝った
謝りながらも認めたくなかった
彼女は死んでいない
きっと何処かにいるんだ……と
それは大人になった今も変わらず、時間ができると森に向かわずにはいられなかった
今もあの薄暗い森に一人残されているんじゃないかと想像すると胸が引き裂かれそうになるからだ
「……ナマエ、君は何処に隠れているんだ?」
ダンデの探し人は彼の予想とは違った場所に立っていた
「よっしゃっ!!やるぞ!!」
入院してから2日後の事だ
退院と同時に迎えに来たキバナによりナックルジムに案内されたナマエは初めてのジムのコートに呆気にとられ目を輝かせていた
『凄い……これがジムのバトルコートなんだ!』
家の庭にあるバトルコートなんて比べ物にならない、コートを囲む客席の多さと広いコートに圧倒されていると向かい側にいたキバナが彼女に近寄り親指と人差し指で輪っかを作ると…
バチンッ!
『痛っ!!』
「おらっ!いつまでも感動してねぇでバトルすっぞ!」
『だからってデコピンしなくてもっ!うぅ絶対赤くなってる!』
ヒリヒリと痛む額を抑え涙目を浮かべる彼女にキバナはニヤリと笑い自分の場所へとゆっくりと戻る
振り返るなりボールを構えるとナマエも額から手を離し真剣な顔を向け直した
「オマエのレベルに合わせてやるんだ、せいぜい楽しませろよ?」
彼の投げたボールから出たのはヌメラというポケモンだ
『行くよっヒトカゲ!』
そして彼女が出したのは相棒の黒いヒトカゲ
ダンデの相棒と同じ種族にキバナは一瞬驚くもすぐにタレ目を吊り上げさせ戦闘モードへと変わる
『ヒトカゲ!なきごえ!!』
「生意気に先手を取るか!ヌメラたいあたり!」
攻撃力を一段階下げられたとしてもヌメラの攻撃の手は止まらない
ヒトカゲの技、ひっかくを浴びながらヌメラもたいあたりを繰り返しお互いの体力を削っていく
「(このまま行けばオレの勝ちだな)」
最初に体力を削る攻撃を当てたヌメラが優位だ
彼が勝利を確信した時、ナマエは疲れが見え始めたヒトカゲに一際大きな声で指示を出す
『今だヒトカゲ!ひのこ!!!』
随分体力を削られていたというのにヒトカゲが吐き出したひのこは本来の技より威力が強くヌメラに襲いかかる
「っ!!ヌメラ!!」
予想外の技の威力にヌメラは戦闘不能となり勝負はナマエの勝利となった
火傷状態になったヌメラを見つめキバナは静かにボールへと戻すと直ぐ様彼女とヒトカゲへと近寄り
「おい、今のまさか特性か?」
『はい!この子の特性…猛火です』
「ほう?ガラルじゃ珍しいな」
確か他の地方のポケモンに現れる特性だ
色違いというだけでなく特性まで個性的なヒトカゲとそれを理解しバトルに有効的に使うナマエにキバナは興味を持ち出す
『あの…ところでジムのコート勝手に使って怒られませんか?』
「ん?」
『だって、本当は使っちゃダメですよね?もしかしてジム関係者さんとキバナさんは知り合いなんですか?』
ソワソワと辺りを見回し不安げに眉を下げる少女はどうやら不法侵入をしたのではないかと心配しているようだ
「あーーーなるほど、十年前から来たヤツだもんなオマエ」
呆れつつも珍しい物でも見たようにじっと彼女を見つめれば馬鹿にされたと感じたのかナマエは不機嫌になる
『なんですか?その顔は』
ムッと彼を見上げるとキバナはクスクスと笑い
「オレさまがこのナックルジムのジムリーダーキバナだ!トップジムリーダーでありダンデの認めたライバル!どーだ?驚いたか?」
ドヤ顔で自分の胸下までしかない少女を見下ろすと彼女は嫌そうに顔を歪め
『何の冗談ですか?』
「あ?おいおいおいなんだよ、その可愛くねぇ反応は?普通そこは感激してきゃあきゃあ言うところだろ?こんなイケメンがジムリーダーなんてって」
『自分で言う辺り余計信じられません』
じっとりと見つめる瞳は本当に信じてないようだ、十年前の人間なのだからキバナの実力を知らないのは仕方ない
だが強さを疑われるのは面白くないものだ
「お嬢さん、なんなら今度は本気でバトルしてやろうか?」
腰から取り出したハイパーボール
今度はきっとヌメラよりもレベルの高いポケモンだろう
キバナのギラついた瞳からして今度は手加減もない力の差があるバトルになるだろう
きっと勝てない
分かっていながらも強い相手とのバトルができる可能性に好奇心が勝ち
『是非!』
瞳を輝かせる少女にキバナは長年のライバルの姿を重ね口角を吊り上げる
「(バトルのセンスも勝利への貪欲さも悪くねぇ!もしコイツを育てたらどんな化け物になるんだろうな)」
立ち入り禁止の看板を付けられた森の奥深く、霧に包まれた崖下でオレンジ色の炎が揺らいでいる
大きな体を左右に揺らしながら足音を響かせるリザードンは前を歩く相棒を静かに見つめ大人しく歩き続けた
「…………」
木々の隙間から漏れ出る僅かな光さえ注がれない谷底は暗く、じめじめとした匂いが鼻に纏わりつく
朱色のマントを揺らし脆くなった岩肌や地面を注意深く見つめる青年は帽子の影から金色の瞳を険しくさせ、探している物が見つからず苛立っているようだった
グルルルっ
リザードンが彼を呼ぶと青年は降ろしていた手に拳を作りギチギチと音を鳴らすと、溜めていた苛立ちを体外に出すように息を大きく吐き出し肩を落とした
「……すまない、そろそろ行こうか」
振り返った彼…ダンデは痛々しく微笑む
この顔を何度見ただろうか
リザードンは相棒を慰めるように彼の頬に自分の頬を寄せて甘え、ダンデも心配させまいとリザードンの首を軽く擦ってやった
「今日も進展なしだ…何も見つからない、セレビィも……ナマエの遺品も」
ぐっと口元を一度強く結ぶと彼は苦笑いを浮かべリザードンの背中に飛び乗る、それを合図に大きく翼を動かせば崖下から抜け出し広く青い空へと飛び上がる
薄暗い森とは違い開放的な青空へと抜け出すとダンデは下に広がる森を見下ろし風に紫の長い髪を靡かせながら眉間にしわを作った
「(あれから何年経った?こんなに探しているのに彼女の物が何一つ見つからない!確かに崖下に落ちた筈だが…ボールやリュックさえ見つからないなんてどういう事だ?)」
思い出すのもつらい幼い頃のあの日
すぐに大人達を連れ崖下を探してもらったが彼女の姿は見つからなかった
深い霧もあり時間ばかりかかり数カ月後には捜索さえ打ち切られた
その後もダンデは諦めきれず時間を見つけては彼女の手がかりがないか探し、高さからして見つけても無事ではないだろうと大人達に言われソニアと大泣きした
目元が真っ赤に腫れても涙は乾かず溢れ出て彼女の両親にも何度も謝った
謝りながらも認めたくなかった
彼女は死んでいない
きっと何処かにいるんだ……と
それは大人になった今も変わらず、時間ができると森に向かわずにはいられなかった
今もあの薄暗い森に一人残されているんじゃないかと想像すると胸が引き裂かれそうになるからだ
「……ナマエ、君は何処に隠れているんだ?」
ダンデの探し人は彼の予想とは違った場所に立っていた
「よっしゃっ!!やるぞ!!」
入院してから2日後の事だ
退院と同時に迎えに来たキバナによりナックルジムに案内されたナマエは初めてのジムのコートに呆気にとられ目を輝かせていた
『凄い……これがジムのバトルコートなんだ!』
家の庭にあるバトルコートなんて比べ物にならない、コートを囲む客席の多さと広いコートに圧倒されていると向かい側にいたキバナが彼女に近寄り親指と人差し指で輪っかを作ると…
バチンッ!
『痛っ!!』
「おらっ!いつまでも感動してねぇでバトルすっぞ!」
『だからってデコピンしなくてもっ!うぅ絶対赤くなってる!』
ヒリヒリと痛む額を抑え涙目を浮かべる彼女にキバナはニヤリと笑い自分の場所へとゆっくりと戻る
振り返るなりボールを構えるとナマエも額から手を離し真剣な顔を向け直した
「オマエのレベルに合わせてやるんだ、せいぜい楽しませろよ?」
彼の投げたボールから出たのはヌメラというポケモンだ
『行くよっヒトカゲ!』
そして彼女が出したのは相棒の黒いヒトカゲ
ダンデの相棒と同じ種族にキバナは一瞬驚くもすぐにタレ目を吊り上げさせ戦闘モードへと変わる
『ヒトカゲ!なきごえ!!』
「生意気に先手を取るか!ヌメラたいあたり!」
攻撃力を一段階下げられたとしてもヌメラの攻撃の手は止まらない
ヒトカゲの技、ひっかくを浴びながらヌメラもたいあたりを繰り返しお互いの体力を削っていく
「(このまま行けばオレの勝ちだな)」
最初に体力を削る攻撃を当てたヌメラが優位だ
彼が勝利を確信した時、ナマエは疲れが見え始めたヒトカゲに一際大きな声で指示を出す
『今だヒトカゲ!ひのこ!!!』
随分体力を削られていたというのにヒトカゲが吐き出したひのこは本来の技より威力が強くヌメラに襲いかかる
「っ!!ヌメラ!!」
予想外の技の威力にヌメラは戦闘不能となり勝負はナマエの勝利となった
火傷状態になったヌメラを見つめキバナは静かにボールへと戻すと直ぐ様彼女とヒトカゲへと近寄り
「おい、今のまさか特性か?」
『はい!この子の特性…猛火です』
「ほう?ガラルじゃ珍しいな」
確か他の地方のポケモンに現れる特性だ
色違いというだけでなく特性まで個性的なヒトカゲとそれを理解しバトルに有効的に使うナマエにキバナは興味を持ち出す
『あの…ところでジムのコート勝手に使って怒られませんか?』
「ん?」
『だって、本当は使っちゃダメですよね?もしかしてジム関係者さんとキバナさんは知り合いなんですか?』
ソワソワと辺りを見回し不安げに眉を下げる少女はどうやら不法侵入をしたのではないかと心配しているようだ
「あーーーなるほど、十年前から来たヤツだもんなオマエ」
呆れつつも珍しい物でも見たようにじっと彼女を見つめれば馬鹿にされたと感じたのかナマエは不機嫌になる
『なんですか?その顔は』
ムッと彼を見上げるとキバナはクスクスと笑い
「オレさまがこのナックルジムのジムリーダーキバナだ!トップジムリーダーでありダンデの認めたライバル!どーだ?驚いたか?」
ドヤ顔で自分の胸下までしかない少女を見下ろすと彼女は嫌そうに顔を歪め
『何の冗談ですか?』
「あ?おいおいおいなんだよ、その可愛くねぇ反応は?普通そこは感激してきゃあきゃあ言うところだろ?こんなイケメンがジムリーダーなんてって」
『自分で言う辺り余計信じられません』
じっとりと見つめる瞳は本当に信じてないようだ、十年前の人間なのだからキバナの実力を知らないのは仕方ない
だが強さを疑われるのは面白くないものだ
「お嬢さん、なんなら今度は本気でバトルしてやろうか?」
腰から取り出したハイパーボール
今度はきっとヌメラよりもレベルの高いポケモンだろう
キバナのギラついた瞳からして今度は手加減もない力の差があるバトルになるだろう
きっと勝てない
分かっていながらも強い相手とのバトルができる可能性に好奇心が勝ち
『是非!』
瞳を輝かせる少女にキバナは長年のライバルの姿を重ね口角を吊り上げる
「(バトルのセンスも勝利への貪欲さも悪くねぇ!もしコイツを育てたらどんな化け物になるんだろうな)」
