第一章
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「さぁ〜て、お仕事するかフライゴン」
雨上がりのワイルドエリアをフライゴンで上空から見回す青年は気持ちよさそうに目を細めまだ冷たい風を肌に感じていた
「この辺りは特に変化はなしっと…次は草原地帯を飛んでくれ」
ワイルドエリアは天気を予想しにくい
冒険者や初心者のトレーナー達が困っていないか確認するのが彼の仕事だった
たまに下へと降りテントを張っているトレーナーに声をかけてはまたフライゴンで空を飛びパトロールしていると、コチラをじっと見ている野生ポケモン達に気がついた
「ん?なんだ?」
目が合うとポケモン達は同じ方向へと走り出しまた上空にいる彼を見上げだ
こっちに来てくれ…と、言わんばかりの行動に彼は考え込みフライゴンに下へと降りるように指示出す
「よっ、と、さて…どうしたオマエら?オレさまになんか用か?」
いつでも戦えるようにフライゴンはボールには戻さず野生ポケモン達に話しかける
すると彼らは洞窟のある方向へと走り出し彼を案内した
「ここに何かあるのか?」
そこまで深くない小さな洞窟
身長の高い彼には狭い場所で背中を丸めながら中へと入ると次第に見えてきた誰かの足に気がついた
「っ!おいっ!大丈夫か!!」
人間の女の子だ
直ぐ様彼女を調べようとうつ伏せから仰向けへと体を反転させると真っ赤な頬と乱れた息遣いをした少女の顔が見えた
土で汚れた頬に触れれば火傷しそうな程熱く、濡れた服に包まれた身体はカタカタと震えており命の危機を感じさせた
「昨日の雨のせいかっ」
彼は彼女の荷物を背中から離し自分のパーカーを脱ぎだすと少女の体を包み横抱きに抱き上げた
「オマエら教えてくれてサンキューな!後でお礼しに来るからよ!」
野生ポケモン達に礼を言い洞窟の外へと走り出す、待っていたフライゴンは相棒の腕に抱かれた少女の異変に気がつくと言われなくても背中を低くし乗りやすいようにしてくれた
「いい子だフライゴン!」
落ちないように腕に抱きしめフライゴンに乗り込み空へと飛び上がると彼は改めて少女の顔を見下ろした
苦しげに息をし続ける少女に彼の胸は締め付けられるようだった
「っ!……しっかりしろ!必ず助けてやるからな!」
『………ぁ………?』
どれだけ眠っていたんだろうか
ぼやけた頭でここが何処か考えようとするが答えが浮かばない
まどろみの森から草原に投げ出され、雨が降って……
『(洞窟……じゃないし……あたしの部屋でもない…よね?)』
見知らぬ真っ白な天井
柔らかいベッドと消毒液の独特な匂い
そしてほのかに別の香りが鼻を掠め、匂いの主へと視線を流せば自分が横たわるベッドの直ぐ側に椅子に座ったまま眠る青年の姿が目に入った
上半身を起き上がらせ改めて腕を組み合わせ頭をコクンっコクンっと上下に揺らした彼をじっと見つめていると
「んっ、ふぁぁ〜……あ?」
コクンっと一際大きく頭を上下した事により咄嗟に目が覚めたのだろう、背筋を戻し大きな口で八重歯を覗かせながらアクビをした彼と目と目が合った
「目が覚めたのか!体はどうだ?どっか痛いとことかあるか?」
目が覚めるなり心配そうに聞いてくる彼に驚きつつナマエはぎこちなく口を開き
『大丈夫です、あの…貴方は?』
「ん?ああ、オレはキバナだ!洞窟で倒れていたオマエを病院まで連れてきてやったんだぜ?」
『倒れていた…あ、そうだ…あたし疲れて寝ちゃって』
「ったく、こっちはひやひやしたぜ?野生ポケモン達が教えてくれたから良かったものの、体は濡れた服で冷えてるし高熱は出てるしで危なかったぜ?」
ため息をしつつ肩をわざとらしく落としたキバナに苦笑いしながらナマエは洞窟で見たポケモン達を思い出すと
野生だというのに優しい彼らに感謝が溢れ会いたくなった
『……後で皆にお礼しなきゃ』
「オレさまにもな?」
『あ…はいっ!すみませんでした!ありがとうございますっ』
じっとりとコチラを見る青い目に慌ててお礼を言うとキバナは軽く鼻で笑い椅子に座ったまま背中を丸め前のめりに彼女を見つめた
「ところで…だ、オマエにいくつか質問があるんだが」
彼がポケットから取り出したのは一つの封筒
「この推薦状…オマエのだよな?」
『どうしてそれを?』
それはリュックに入れていたジムチャレンジをする為に故郷の町長から貰った推薦状だ
「病院に世話になるんだ、保護者に連絡しねぇとダメだろ?オマエの家族に連絡しようと思って悪いが荷物を調べさせてもらったんだが」
手に持った封筒を彼女に見えるように軽く振るとキバナの顔から笑顔が消える
「出てきたのがこの問題の推薦状だ」
何かを探るようにまっすぐにコチラを見る青い瞳に居心地の悪さを感じたが、ナマエは何も悪い事はしていない
何故彼が推薦状を問題だと言うのか分からず彼女は恐る恐る聞き返す
『何が問題なんですか?それは明日から…あれ?今日かな?今日から始まるジムチャレンジに出る為にあたしが故郷で貰った推薦状ですよ?』
何も変な事はしていない
睨み返す彼女にキバナは封筒を突き返しとんでもない事を口にした
「…………ここに書かれている日付は今から十年以上前だ」
『……………へ?』
「推薦者も随分前に町長の役職を辞めている」
十年以上前?
何を言っているのか理解できず目を見開くとキバナは混乱させないように先程よりゆっくりと話し出す
「ついでにオマエの家族を調べてみたが、随分前にガラルから引っ越している」
『え?あの、待って、何言ってるか…』
「もしかしてだけどよ?オマエ……ポケモンと時を渡っちまったんじゃねぇか?」
あり得ないが、あり得なくもない
ポケモンは不思議な力を持っている
科学では証明できない不思議な力をがある以上何が起こってもおかしくはない
『時を?だって…あたしは昨日…』
混乱で上手く伝えたい事が口から出てこない
切り抜きのように頭に浮かぶ昨日の出来事に冷や汗を浮かべるとキバナは椅子から立ち上がり
ベッドにいる彼女の側に腰を落とすと背中に軽く手のひらを添えた
「順番に話してみ?ちゃんと聞いてやるから」
怒るでもなく
急かすわけでもない
ゆっくり分かるものを話せと言う彼に少し安心しナマエは一つ一つ喋っていく
その間キバナは相槌をうちつつ少女が全て話し終えるのを背中を撫でながら待った
ハロンで生活していた事
ジムチャレンジを楽しみにしていた事
旅に出る前日に幼馴染み達と森へ行きセレビィを探した事
そして崖から落ちた後、見知らぬ草原にいた事を話し終える頃には彼女の瞳は潤みだしていた
「なるほどな…もしかしたら崖から落ちる時にセレビィの時渡りに巻き込まれたのかもしれねぇな」
数としては少ないが過去にも実例があったようだ、キバナはスマホを取り出し古い記事を画面に出すと彼女にも見せた
渡った時間は人それぞれ違い数カ月や数年と決まってはいない
ポケモンの気分次第だったのだろう
『……そんな、あたしジムチャレンジ楽しみにしてて…ソニアやダンデくんと一緒に明日から旅に出る約束したのに!』
「ダンデ?」
ダンデの名前に反応し彼の片眉が吊り上がる
『あたしの故郷、ハロンでの幼馴染みです』
「まさか…コイツの事か?」
キバナはスマホを素早く操作すると一枚の画像を彼女に見せた
それはチャンピオンマントを背負う紫色の長いくせ毛をした金色の瞳の青年だった
『………ダンデくん?』
随分成長しているが幼い頃の特徴は残っている
写真を凝視すればする程幼馴染みと重なり彼女の胸は言いようない不安にかられた
「オマエのダンデくんは今は無敗の王、ガラルチャンピオンだぜ?」
『……………チャンピオン?ダンデくんが?』
自分に言い聞かせるようにチャンピオンの言葉を呟くと目が自然と写真を避け顔が俯いてしまう
自分にかけられた毛布を握る手元をじっと見つめると溜まっていた涙だ遂にポロポロと落ちてしまった
「大丈夫か?」
急に泣き出し少女にキバナは慌てて背中をもう一度擦り落ち着かせようしたが、彼女は頭を左右に振り
『すみませんっ、頭がゴチャゴチャで…未来に来た不安より……今……凄く悔しいっ!』
「悔しい?」
ぎゅっと毛布を握った手の甲にぽたりぽたりと透明な涙が落ちていく
その手を見つめながらもナマエは自分の苛立った想いを口にした
『あたしっ、戦いたかった!ダンデくんとっ…いつもあたしが勝ってたのにっ!いきなりチャンピオンだなんて…一緒に旅をしようって約束したのに!こんなの狡いよっ!!……酷いよ』
正々堂々と戦いたかった
ライバルとして並びたかった
当然奪われた日々に悔しさを溢れさせ涙が止まらない
鼻を啜りながら暫く泣くと、ふわりといい匂いのするハンカチが彼女の目元をなぞった
ハンカチを持つ褐色の手とは反対の手が頬を撫で上を向かせるとギラついた青い瞳と視線がぶつかりドキッと胸が跳ね上がった
「オマエがダンデに勝った?そりゃマジか?」
『え?はい…ハロンにいた頃は負けた事ないです』
「へ〜?そりゃ興味あるな」
濡れた頬や目元を拭き終わると彼は大きな両手でナマエの頬を包み込み、じっと見下ろしてくる
その瞳はまるで新しいオモチャを手に入れた子供のように輝いており同時に期待が含まれていた
「よし!退院したらオレとバトルしようぜ?」
『え?なんでですか?』
「ダンデに勝ったって言うオマエの腕前をたっぷり見せて貰うんだよ!」
雨上がりのワイルドエリアをフライゴンで上空から見回す青年は気持ちよさそうに目を細めまだ冷たい風を肌に感じていた
「この辺りは特に変化はなしっと…次は草原地帯を飛んでくれ」
ワイルドエリアは天気を予想しにくい
冒険者や初心者のトレーナー達が困っていないか確認するのが彼の仕事だった
たまに下へと降りテントを張っているトレーナーに声をかけてはまたフライゴンで空を飛びパトロールしていると、コチラをじっと見ている野生ポケモン達に気がついた
「ん?なんだ?」
目が合うとポケモン達は同じ方向へと走り出しまた上空にいる彼を見上げだ
こっちに来てくれ…と、言わんばかりの行動に彼は考え込みフライゴンに下へと降りるように指示出す
「よっ、と、さて…どうしたオマエら?オレさまになんか用か?」
いつでも戦えるようにフライゴンはボールには戻さず野生ポケモン達に話しかける
すると彼らは洞窟のある方向へと走り出し彼を案内した
「ここに何かあるのか?」
そこまで深くない小さな洞窟
身長の高い彼には狭い場所で背中を丸めながら中へと入ると次第に見えてきた誰かの足に気がついた
「っ!おいっ!大丈夫か!!」
人間の女の子だ
直ぐ様彼女を調べようとうつ伏せから仰向けへと体を反転させると真っ赤な頬と乱れた息遣いをした少女の顔が見えた
土で汚れた頬に触れれば火傷しそうな程熱く、濡れた服に包まれた身体はカタカタと震えており命の危機を感じさせた
「昨日の雨のせいかっ」
彼は彼女の荷物を背中から離し自分のパーカーを脱ぎだすと少女の体を包み横抱きに抱き上げた
「オマエら教えてくれてサンキューな!後でお礼しに来るからよ!」
野生ポケモン達に礼を言い洞窟の外へと走り出す、待っていたフライゴンは相棒の腕に抱かれた少女の異変に気がつくと言われなくても背中を低くし乗りやすいようにしてくれた
「いい子だフライゴン!」
落ちないように腕に抱きしめフライゴンに乗り込み空へと飛び上がると彼は改めて少女の顔を見下ろした
苦しげに息をし続ける少女に彼の胸は締め付けられるようだった
「っ!……しっかりしろ!必ず助けてやるからな!」
『………ぁ………?』
どれだけ眠っていたんだろうか
ぼやけた頭でここが何処か考えようとするが答えが浮かばない
まどろみの森から草原に投げ出され、雨が降って……
『(洞窟……じゃないし……あたしの部屋でもない…よね?)』
見知らぬ真っ白な天井
柔らかいベッドと消毒液の独特な匂い
そしてほのかに別の香りが鼻を掠め、匂いの主へと視線を流せば自分が横たわるベッドの直ぐ側に椅子に座ったまま眠る青年の姿が目に入った
上半身を起き上がらせ改めて腕を組み合わせ頭をコクンっコクンっと上下に揺らした彼をじっと見つめていると
「んっ、ふぁぁ〜……あ?」
コクンっと一際大きく頭を上下した事により咄嗟に目が覚めたのだろう、背筋を戻し大きな口で八重歯を覗かせながらアクビをした彼と目と目が合った
「目が覚めたのか!体はどうだ?どっか痛いとことかあるか?」
目が覚めるなり心配そうに聞いてくる彼に驚きつつナマエはぎこちなく口を開き
『大丈夫です、あの…貴方は?』
「ん?ああ、オレはキバナだ!洞窟で倒れていたオマエを病院まで連れてきてやったんだぜ?」
『倒れていた…あ、そうだ…あたし疲れて寝ちゃって』
「ったく、こっちはひやひやしたぜ?野生ポケモン達が教えてくれたから良かったものの、体は濡れた服で冷えてるし高熱は出てるしで危なかったぜ?」
ため息をしつつ肩をわざとらしく落としたキバナに苦笑いしながらナマエは洞窟で見たポケモン達を思い出すと
野生だというのに優しい彼らに感謝が溢れ会いたくなった
『……後で皆にお礼しなきゃ』
「オレさまにもな?」
『あ…はいっ!すみませんでした!ありがとうございますっ』
じっとりとコチラを見る青い目に慌ててお礼を言うとキバナは軽く鼻で笑い椅子に座ったまま背中を丸め前のめりに彼女を見つめた
「ところで…だ、オマエにいくつか質問があるんだが」
彼がポケットから取り出したのは一つの封筒
「この推薦状…オマエのだよな?」
『どうしてそれを?』
それはリュックに入れていたジムチャレンジをする為に故郷の町長から貰った推薦状だ
「病院に世話になるんだ、保護者に連絡しねぇとダメだろ?オマエの家族に連絡しようと思って悪いが荷物を調べさせてもらったんだが」
手に持った封筒を彼女に見えるように軽く振るとキバナの顔から笑顔が消える
「出てきたのがこの問題の推薦状だ」
何かを探るようにまっすぐにコチラを見る青い瞳に居心地の悪さを感じたが、ナマエは何も悪い事はしていない
何故彼が推薦状を問題だと言うのか分からず彼女は恐る恐る聞き返す
『何が問題なんですか?それは明日から…あれ?今日かな?今日から始まるジムチャレンジに出る為にあたしが故郷で貰った推薦状ですよ?』
何も変な事はしていない
睨み返す彼女にキバナは封筒を突き返しとんでもない事を口にした
「…………ここに書かれている日付は今から十年以上前だ」
『……………へ?』
「推薦者も随分前に町長の役職を辞めている」
十年以上前?
何を言っているのか理解できず目を見開くとキバナは混乱させないように先程よりゆっくりと話し出す
「ついでにオマエの家族を調べてみたが、随分前にガラルから引っ越している」
『え?あの、待って、何言ってるか…』
「もしかしてだけどよ?オマエ……ポケモンと時を渡っちまったんじゃねぇか?」
あり得ないが、あり得なくもない
ポケモンは不思議な力を持っている
科学では証明できない不思議な力をがある以上何が起こってもおかしくはない
『時を?だって…あたしは昨日…』
混乱で上手く伝えたい事が口から出てこない
切り抜きのように頭に浮かぶ昨日の出来事に冷や汗を浮かべるとキバナは椅子から立ち上がり
ベッドにいる彼女の側に腰を落とすと背中に軽く手のひらを添えた
「順番に話してみ?ちゃんと聞いてやるから」
怒るでもなく
急かすわけでもない
ゆっくり分かるものを話せと言う彼に少し安心しナマエは一つ一つ喋っていく
その間キバナは相槌をうちつつ少女が全て話し終えるのを背中を撫でながら待った
ハロンで生活していた事
ジムチャレンジを楽しみにしていた事
旅に出る前日に幼馴染み達と森へ行きセレビィを探した事
そして崖から落ちた後、見知らぬ草原にいた事を話し終える頃には彼女の瞳は潤みだしていた
「なるほどな…もしかしたら崖から落ちる時にセレビィの時渡りに巻き込まれたのかもしれねぇな」
数としては少ないが過去にも実例があったようだ、キバナはスマホを取り出し古い記事を画面に出すと彼女にも見せた
渡った時間は人それぞれ違い数カ月や数年と決まってはいない
ポケモンの気分次第だったのだろう
『……そんな、あたしジムチャレンジ楽しみにしてて…ソニアやダンデくんと一緒に明日から旅に出る約束したのに!』
「ダンデ?」
ダンデの名前に反応し彼の片眉が吊り上がる
『あたしの故郷、ハロンでの幼馴染みです』
「まさか…コイツの事か?」
キバナはスマホを素早く操作すると一枚の画像を彼女に見せた
それはチャンピオンマントを背負う紫色の長いくせ毛をした金色の瞳の青年だった
『………ダンデくん?』
随分成長しているが幼い頃の特徴は残っている
写真を凝視すればする程幼馴染みと重なり彼女の胸は言いようない不安にかられた
「オマエのダンデくんは今は無敗の王、ガラルチャンピオンだぜ?」
『……………チャンピオン?ダンデくんが?』
自分に言い聞かせるようにチャンピオンの言葉を呟くと目が自然と写真を避け顔が俯いてしまう
自分にかけられた毛布を握る手元をじっと見つめると溜まっていた涙だ遂にポロポロと落ちてしまった
「大丈夫か?」
急に泣き出し少女にキバナは慌てて背中をもう一度擦り落ち着かせようしたが、彼女は頭を左右に振り
『すみませんっ、頭がゴチャゴチャで…未来に来た不安より……今……凄く悔しいっ!』
「悔しい?」
ぎゅっと毛布を握った手の甲にぽたりぽたりと透明な涙が落ちていく
その手を見つめながらもナマエは自分の苛立った想いを口にした
『あたしっ、戦いたかった!ダンデくんとっ…いつもあたしが勝ってたのにっ!いきなりチャンピオンだなんて…一緒に旅をしようって約束したのに!こんなの狡いよっ!!……酷いよ』
正々堂々と戦いたかった
ライバルとして並びたかった
当然奪われた日々に悔しさを溢れさせ涙が止まらない
鼻を啜りながら暫く泣くと、ふわりといい匂いのするハンカチが彼女の目元をなぞった
ハンカチを持つ褐色の手とは反対の手が頬を撫で上を向かせるとギラついた青い瞳と視線がぶつかりドキッと胸が跳ね上がった
「オマエがダンデに勝った?そりゃマジか?」
『え?はい…ハロンにいた頃は負けた事ないです』
「へ〜?そりゃ興味あるな」
濡れた頬や目元を拭き終わると彼は大きな両手でナマエの頬を包み込み、じっと見下ろしてくる
その瞳はまるで新しいオモチャを手に入れた子供のように輝いており同時に期待が含まれていた
「よし!退院したらオレとバトルしようぜ?」
『え?なんでですか?』
「ダンデに勝ったって言うオマエの腕前をたっぷり見せて貰うんだよ!」
