第二章
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遂に今年もジムチャレンジが始まる
大会までバトルを禁止された俺としては待ちに待った祭典だ
「こちらが今回のルーキー達の資料になります、式は十分後には始まりますので遅れないように」
エンジンシティで行われる開会式
先に控室に呼ばれたジムリーダー達と俺は式の前にローズ委員長から渡された今年のルーキーの資料を受け取りそれぞれ期待に目を輝かせた
弟のホップと同じくハロン出身のマサル、二人の資料に目を奪われ頬を緩ませているとルリナの驚いた声が部屋に響いた
「あら!今年はキバナも推薦したの?」
キバナが推薦状を出した?
俺と同じく滅多に推薦状なんて出さない彼が推薦したなんて…自然とキバナに目を向ければ彼は嬉しそうにルリナに笑いかけた
「ああ!最高のトレーナーに磨き上げたオレさま自慢の選手だ!」
「今年はチャンピオンの推薦した選手もいるようだし楽しみね!」
ふと俺と目が合ったキバナは意味深に笑うと書類で自分の口元を隠した
なんだ?その怪しい笑い方は、そんなに凄い選手を見つけたって事なのか?
すぐに手元の資料を探ると俺の目は有り得ない物を見てしまった
「………ナマエ?」
見つけた書類には確かに彼女の写真が載っていた、昔の最後に見た子供姿の彼女が…
「キバナっ!!どういう事だ!!」
俺は後先考える余裕もなくキバナの肩を掴み怒鳴ってしまった、そのせいで部屋にいたルリナやカブさん達がコチラに注目しているが今はどうでもいい
「おっと、なんだよいきなり」
肩に触れた手を払いのけ涼しい顔でコチラを見下ろす青い瞳は動揺の色もない
こうなる事を分かっていたんだ
「誤魔化すな!君はっ!君は知ってて俺を騙してたのか!」
「人聞き悪い事言うなよ」
謝罪するでもなく
彼はゆったりと俺に向き直り馬鹿にしたように意地悪い笑みを浮かべる
「オレが目をつけた選手が偶々オマエの知り合いだった…ってだけだろ?」
「っ!」
ため息混じりの呆れた声が今の俺には挑発的な態度にしか見えない
頭がカッとしてしまい彼の服の胸元を掴み上げた瞬間、部屋に何も知らないリーグスタッフが入ってきた
「そろそろ開会式を始めます!移動をお願いします!」
開会式が始まる知らせだ
「ほら、始まるぜ?離せよ」
白い八重歯を覗かせてニヤリと笑う彼にもう片方の手が拳を作りそうになるが、キバナの後ろで頭を横に振るカブさんの険しい顔が見え俺は感情任せにした行動に気がついた
カブさんがいなかったら俺はきっと暴れてしまう、下手したらキバナを殴っていただろう
そうなっては開会式どころではない
彼女にも会えなくなってしまうかもしれない
「……後でちゃんと話して貰うからな!」
恨みを込めていつもより低い声を出せばキバナは鼻で笑い乱れた胸元の服を直し、先に部屋を後にした
俺とキバナの反応を確認しつつ次々と部屋を後にするジムリーダー達、最後まで残っていたのはやはりカブさんで…
「ダンデくん、分かってるね?」
俺の肩を軽く叩き困ったように眉を下げて笑う彼に謝罪の意味を込めて頭を下げた
俺は大人なのに偶に子供に戻ってしまうようだ
カブさんみたいな大人がいないと間違いを起こしてしまう
俺の謝罪を受け取ったのか、カブさんは先に部屋を出ていき俺も遅れてコートへと足を進めた
ジムリーダー達と選手達はコートに並ぶが俺は今回はバトルコートには降りない
観客席側の関係者専用のVIPルームに案内され上から開会式を見る事になっているんだ
「では選手の皆さんの入場です!」
ローズ委員長の声と共にコートへと出てきた選手達、自信満々に歩く者から緊張で左右の手足が同じ動きをする者等様々だ
ホップとマサルも緊張しているのか表情が硬く二人で何やら離しながら整列し始める
そして最後にコートに入ってきたのが……
俺がずっと探していたナマエだった
「(ああっ…本当にっ!君だ!)」
あの日のままだ
いつも俺の側にいたライバルであり大切な幼馴染みの少女は真っ直ぐに前を見て歩き上から見ている俺には気がついていないだろう
叶うならば今すぐ君の元に駆け寄りたい
開会式も観客の目も気にせず君を抱きしめたい
VIP席を包む特別なガラスに手のひらを押し付け俺は目に焼き付けるように式の間ナマエだけを見つめていた
「ナマエ!!!」
長く感じた式が終わると俺は直ぐに下へと降り着替えを済ませた彼女をフロアで見つけた
名前を呼べばちゃんと振り返り聞きたかった声が俺の名前を呼ぶ
『……こんにちはダンデさん』
「俺を覚えているか?あれから随分時間が経つが…面影は残ってるだろ?」
大人になってしまった俺を受け入れてくれるだろうか?
昔より体格も良くなって髭も生やしたが中身は変わっていないつもりだ
君の知るダンデだと分かって欲しくてドキドキと胸を鳴らしながら彼女の側に立つとナマエはそろりと視線をそらした
『そうですね』
何かがおかしい
何故敬語なんだ?今まで君…俺に敬語なんて使わなかったじゃないか
「なんで…そんなに余所余所しいんだ?昔みたいに接してくれていいんだぜ?」
『それは無理ですよ、あたしはルーキーで子供で、貴方はチャンピオンで大人ですから』
あからさまに壁を作ろうとする態度に我慢できず俺は声を大きくしてしまう
「っ!そんなの嫌だ!俺達は幼馴染みだ!君には普通に接してほしい!」
『………皆の目があるので無理です』
「ならっ!二人っきりならいいんだな!」
『え?ちょっ!』
ナマエの腕を掴み俺はフロアから連れ出した、廊下を気の向くまま進み今は誰も使っていないであろう選手用の控室に入り込む
扉を乱暴に閉めると壁側にナマエの追い込みどこにも逃さないように彼女の顔の左右で両手を壁に貼り付けた
背中には壁、正面には俺
どこにも逃さない
俺よりも身長の低い彼女を上から見下ろせば紫の髪がカーテンのように垂れ下がりナマエの顔に影を落とした
「ここなら誰も見ていない…だからいつもの君になってくれ」
願うようにじっと見つめ壁に貼り付けた手のひらに力が入ってしまう
壁にめり込みそうな指を彼女はチラリと確認すると正面に向き直り
『……はぁぁ、もう分かったから!本当にその自分勝手なところ変わらないね』
「〜〜っ!ナマエ!!」
『ちょっ抱きつくなっ、いたたたたたッ!』
やっと許しを貰えた犬の気分が分かった気がするぜ、待ちわびた分喜びが溢れてしまい気がつけば彼女を胸の中に閉じ込め抱きしめていた
あの頃のまま
でも今は俺の方が身長があるせいだろうか?
昔は感じなかったが、女の子はこんなにも小さいんだな
それにいい匂いがして…
『このっっ!馬鹿力っっ!!』
ドスッっ!!
「ぐっ!な、殴る事ないじゃないか?」
無防備な脇腹を殴られ腕の力が抜けると彼女はいとも簡単に腕の中から逃げてしまった
せっかく壁側に追い込んだのにまた距離を取られてしまい、なんだか寂しいぜ
『こっちは中身が出るかと思ったわ!力加減してよ!』
「だって…ずっと君を探してたんだ、ずっとずっと…あの日から!だから……嬉しくて」
『ずっと?探してくれてたの?』
「ああ…あの崖下を何度もな…本当に君が無事でよかった!」
本当によかった
君があの崖下に今も一人でいるんじゃないかと不安でたまらなかった
何故今ここに昔のままいるのか気になるが…
とにかく今は…また会えて嬉しいんだ
「…会いたかった」
『………ダンデくん』
離れた彼女の元にもう一度近寄り、柔らかそうなその頬に触れようと手を伸ばした瞬間
閉めた扉がノックもなしに開かれた
ガチャ!
「感動の再会は終わったかよ?」
「キバナ!なんでっ」
現れたのはキバナだった
彼は俺とナマエを見比べると間に割り込むように俺の前に入り込む
「式が終わったら飯食いに行く約束してたろ?さっさと行くぞナマエっ」
『は〜い』
「は?ちょっ待ってくれ!せっかく会えたのにもう行くのか?」
当たり前のように二人で出ていこうとするから、俺は慌ててナマエの手を掴んだ
「俺達十年ぶりに再会したんだぜ?それをこんなにあっさり終わらせるのか?」
もっと話したくないのか?
こんなに焦がれているのは俺だけなのかと眉を下げナマエを見つめると彼女はやれやれとじっとりとした視線を向けてきた
『だからあくまであたしとダンデくんはチャレンジャーとチャンピオンなの!そんなに一緒にはいられないでしょ?』
「キバナはいいのか!」
『キバナさんはあたしの恩人で推薦状をくれた人だもん』
「そういう事〜、愛弟子に話たい事もあるからオマエは邪魔すんなよ?じゃあなチャンピオン」
今度こそ…と、二人で部屋を出ていき
残された俺は何がなんだか分からず時間差で悔しさが込み上げ
「〜〜〜そんなのっ狡いぜ!!!」
その後追いかけたのは言うまでもない
大会までバトルを禁止された俺としては待ちに待った祭典だ
「こちらが今回のルーキー達の資料になります、式は十分後には始まりますので遅れないように」
エンジンシティで行われる開会式
先に控室に呼ばれたジムリーダー達と俺は式の前にローズ委員長から渡された今年のルーキーの資料を受け取りそれぞれ期待に目を輝かせた
弟のホップと同じくハロン出身のマサル、二人の資料に目を奪われ頬を緩ませているとルリナの驚いた声が部屋に響いた
「あら!今年はキバナも推薦したの?」
キバナが推薦状を出した?
俺と同じく滅多に推薦状なんて出さない彼が推薦したなんて…自然とキバナに目を向ければ彼は嬉しそうにルリナに笑いかけた
「ああ!最高のトレーナーに磨き上げたオレさま自慢の選手だ!」
「今年はチャンピオンの推薦した選手もいるようだし楽しみね!」
ふと俺と目が合ったキバナは意味深に笑うと書類で自分の口元を隠した
なんだ?その怪しい笑い方は、そんなに凄い選手を見つけたって事なのか?
すぐに手元の資料を探ると俺の目は有り得ない物を見てしまった
「………ナマエ?」
見つけた書類には確かに彼女の写真が載っていた、昔の最後に見た子供姿の彼女が…
「キバナっ!!どういう事だ!!」
俺は後先考える余裕もなくキバナの肩を掴み怒鳴ってしまった、そのせいで部屋にいたルリナやカブさん達がコチラに注目しているが今はどうでもいい
「おっと、なんだよいきなり」
肩に触れた手を払いのけ涼しい顔でコチラを見下ろす青い瞳は動揺の色もない
こうなる事を分かっていたんだ
「誤魔化すな!君はっ!君は知ってて俺を騙してたのか!」
「人聞き悪い事言うなよ」
謝罪するでもなく
彼はゆったりと俺に向き直り馬鹿にしたように意地悪い笑みを浮かべる
「オレが目をつけた選手が偶々オマエの知り合いだった…ってだけだろ?」
「っ!」
ため息混じりの呆れた声が今の俺には挑発的な態度にしか見えない
頭がカッとしてしまい彼の服の胸元を掴み上げた瞬間、部屋に何も知らないリーグスタッフが入ってきた
「そろそろ開会式を始めます!移動をお願いします!」
開会式が始まる知らせだ
「ほら、始まるぜ?離せよ」
白い八重歯を覗かせてニヤリと笑う彼にもう片方の手が拳を作りそうになるが、キバナの後ろで頭を横に振るカブさんの険しい顔が見え俺は感情任せにした行動に気がついた
カブさんがいなかったら俺はきっと暴れてしまう、下手したらキバナを殴っていただろう
そうなっては開会式どころではない
彼女にも会えなくなってしまうかもしれない
「……後でちゃんと話して貰うからな!」
恨みを込めていつもより低い声を出せばキバナは鼻で笑い乱れた胸元の服を直し、先に部屋を後にした
俺とキバナの反応を確認しつつ次々と部屋を後にするジムリーダー達、最後まで残っていたのはやはりカブさんで…
「ダンデくん、分かってるね?」
俺の肩を軽く叩き困ったように眉を下げて笑う彼に謝罪の意味を込めて頭を下げた
俺は大人なのに偶に子供に戻ってしまうようだ
カブさんみたいな大人がいないと間違いを起こしてしまう
俺の謝罪を受け取ったのか、カブさんは先に部屋を出ていき俺も遅れてコートへと足を進めた
ジムリーダー達と選手達はコートに並ぶが俺は今回はバトルコートには降りない
観客席側の関係者専用のVIPルームに案内され上から開会式を見る事になっているんだ
「では選手の皆さんの入場です!」
ローズ委員長の声と共にコートへと出てきた選手達、自信満々に歩く者から緊張で左右の手足が同じ動きをする者等様々だ
ホップとマサルも緊張しているのか表情が硬く二人で何やら離しながら整列し始める
そして最後にコートに入ってきたのが……
俺がずっと探していたナマエだった
「(ああっ…本当にっ!君だ!)」
あの日のままだ
いつも俺の側にいたライバルであり大切な幼馴染みの少女は真っ直ぐに前を見て歩き上から見ている俺には気がついていないだろう
叶うならば今すぐ君の元に駆け寄りたい
開会式も観客の目も気にせず君を抱きしめたい
VIP席を包む特別なガラスに手のひらを押し付け俺は目に焼き付けるように式の間ナマエだけを見つめていた
「ナマエ!!!」
長く感じた式が終わると俺は直ぐに下へと降り着替えを済ませた彼女をフロアで見つけた
名前を呼べばちゃんと振り返り聞きたかった声が俺の名前を呼ぶ
『……こんにちはダンデさん』
「俺を覚えているか?あれから随分時間が経つが…面影は残ってるだろ?」
大人になってしまった俺を受け入れてくれるだろうか?
昔より体格も良くなって髭も生やしたが中身は変わっていないつもりだ
君の知るダンデだと分かって欲しくてドキドキと胸を鳴らしながら彼女の側に立つとナマエはそろりと視線をそらした
『そうですね』
何かがおかしい
何故敬語なんだ?今まで君…俺に敬語なんて使わなかったじゃないか
「なんで…そんなに余所余所しいんだ?昔みたいに接してくれていいんだぜ?」
『それは無理ですよ、あたしはルーキーで子供で、貴方はチャンピオンで大人ですから』
あからさまに壁を作ろうとする態度に我慢できず俺は声を大きくしてしまう
「っ!そんなの嫌だ!俺達は幼馴染みだ!君には普通に接してほしい!」
『………皆の目があるので無理です』
「ならっ!二人っきりならいいんだな!」
『え?ちょっ!』
ナマエの腕を掴み俺はフロアから連れ出した、廊下を気の向くまま進み今は誰も使っていないであろう選手用の控室に入り込む
扉を乱暴に閉めると壁側にナマエの追い込みどこにも逃さないように彼女の顔の左右で両手を壁に貼り付けた
背中には壁、正面には俺
どこにも逃さない
俺よりも身長の低い彼女を上から見下ろせば紫の髪がカーテンのように垂れ下がりナマエの顔に影を落とした
「ここなら誰も見ていない…だからいつもの君になってくれ」
願うようにじっと見つめ壁に貼り付けた手のひらに力が入ってしまう
壁にめり込みそうな指を彼女はチラリと確認すると正面に向き直り
『……はぁぁ、もう分かったから!本当にその自分勝手なところ変わらないね』
「〜〜っ!ナマエ!!」
『ちょっ抱きつくなっ、いたたたたたッ!』
やっと許しを貰えた犬の気分が分かった気がするぜ、待ちわびた分喜びが溢れてしまい気がつけば彼女を胸の中に閉じ込め抱きしめていた
あの頃のまま
でも今は俺の方が身長があるせいだろうか?
昔は感じなかったが、女の子はこんなにも小さいんだな
それにいい匂いがして…
『このっっ!馬鹿力っっ!!』
ドスッっ!!
「ぐっ!な、殴る事ないじゃないか?」
無防備な脇腹を殴られ腕の力が抜けると彼女はいとも簡単に腕の中から逃げてしまった
せっかく壁側に追い込んだのにまた距離を取られてしまい、なんだか寂しいぜ
『こっちは中身が出るかと思ったわ!力加減してよ!』
「だって…ずっと君を探してたんだ、ずっとずっと…あの日から!だから……嬉しくて」
『ずっと?探してくれてたの?』
「ああ…あの崖下を何度もな…本当に君が無事でよかった!」
本当によかった
君があの崖下に今も一人でいるんじゃないかと不安でたまらなかった
何故今ここに昔のままいるのか気になるが…
とにかく今は…また会えて嬉しいんだ
「…会いたかった」
『………ダンデくん』
離れた彼女の元にもう一度近寄り、柔らかそうなその頬に触れようと手を伸ばした瞬間
閉めた扉がノックもなしに開かれた
ガチャ!
「感動の再会は終わったかよ?」
「キバナ!なんでっ」
現れたのはキバナだった
彼は俺とナマエを見比べると間に割り込むように俺の前に入り込む
「式が終わったら飯食いに行く約束してたろ?さっさと行くぞナマエっ」
『は〜い』
「は?ちょっ待ってくれ!せっかく会えたのにもう行くのか?」
当たり前のように二人で出ていこうとするから、俺は慌ててナマエの手を掴んだ
「俺達十年ぶりに再会したんだぜ?それをこんなにあっさり終わらせるのか?」
もっと話したくないのか?
こんなに焦がれているのは俺だけなのかと眉を下げナマエを見つめると彼女はやれやれとじっとりとした視線を向けてきた
『だからあくまであたしとダンデくんはチャレンジャーとチャンピオンなの!そんなに一緒にはいられないでしょ?』
「キバナはいいのか!」
『キバナさんはあたしの恩人で推薦状をくれた人だもん』
「そういう事〜、愛弟子に話たい事もあるからオマエは邪魔すんなよ?じゃあなチャンピオン」
今度こそ…と、二人で部屋を出ていき
残された俺は何がなんだか分からず時間差で悔しさが込み上げ
「〜〜〜そんなのっ狡いぜ!!!」
その後追いかけたのは言うまでもない
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