第一章
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白い砂浜の広がるビーチ
斜めに傾き生えているヤシの木は風に揺らさせ乾いた葉音を慣らし、海辺に散らばった貝殻に優しい影を落としている
無人島
遠くにぼんやりと見える近隣の島々を眺め改めて自分の島を見てみる
木々は青く雑草だらけのこの島でチハルの新しい日々が始まろうとしていた
『……本当に何もないんだ』
都会で暮らしていた彼女は一日の殆どを仕事場で過ごしてきた
休みの日も急に呼び出されれば断る事もできず仲間の社員のフォロー
毎日毎日頑張っても誰も特別褒めるわけでもなく当たり前と言わんばかりに仕事を任せてくる
あまりに自分の時間がない
寝る為に帰る家にも愛着がわかず精神が限界を迎えそうな時だった
たぬき族が無人島移住パッケージという広告をだしているのをスマホで知り、気がつけば会社に辞表を出していた
「点呼を取るのでこちらにお集まりくださ〜い」
子供のたぬき族の男の子が旗片手に呼んでいる
海をもっと眺めていたいところだけど、これからずっと見れるのだから今は我慢しよう
「オメェ…荷物それだけか?」
低い声に振り向けば青みが強い藍色の毛並みが美しいオオカミの青年が見下ろしてくる
今回の他の移住希望者の一人だ
『は、はい!(オオカミ族初めて見た!)』
小さなリュック一つのチハルだが、彼を見れば似たようにくたびれたリュックが一つだ
荷物の少なさは同じなのに何故聞くのか?不思議そうに見上げていると彼は顎で右を指し
「女ってのは皆あんなもんかと思ったぜ」
彼の視線の先にはネコ族の女の子が沢山の荷物を抱えているのが見えた
『うわっ!大丈夫ですか?』
「アハハ!アタイ無人島初めてだから、つい色々持ってきたちゃった!」
笑う彼女の元へ急いでチハルは駆け寄ると荷物を運ぶのを手伝おうとした
リュックに手提げ鞄など大きな荷物が何個もあり引っ越しのようだ
『(あ、自分のも持たないと)』
ネコ族の女の子の荷物を両手で持つと自分の荷物が砂浜に置いたままだった
どうにか一緒に持たなくてならないと指先を伸ばすが、チハルの白い指が届く前に他の者が彼女の荷物を拾った
『え?』
「そっちも寄こせ」
ぶっきらぼうに言うが手伝ってくれるらしい
チハルが固まっているうちにネコ族の女の子は喜び荷物を遠慮なしにオオカミ族の青年に渡し自分は身軽な身で子たぬきを追いかけていく
『ありがとうございます…えっとお名前は?』
「ロボだ」
『ロボさん…ですね?あたしはチハルです、えっと…これからよろしくお願いしますね』
へらりと笑えばロボは一瞬目を大きくさせ、すぐに目線をずらした
「てか…荷物の主が先に行くのな、どういう神経してんだあの女」
やれやれとため息を吐く彼に苦笑いをしネコ族の女の子…ブーケの荷物を両手で運び無人島へと足を踏み入れた
腰まである雑草だらけだが木々の中にはオレンジらしき実をつけた木も多くあり食べ物にはすぐには困らなそうだ
見たい物が多すぎるのだろう
ふらふらして歩く彼女を横目にロボは分厚い毛で覆われた尻尾をさり気なく彼女の後ろに寄せ転ばないように気をつける
「おい、オメェは俺の後ろから歩け」
『どうしてですか?』
「草が邪魔だろ?オメェの腰まであるじゃねぇか」
長身のオオカミ族のロボからすればどうという事がない長さだが小柄な彼女では進むだけで大変そうだ
『大丈夫です!それにこれはこれで楽しいですよ?草を掻き分けて進むなんて冒険みたいです!』
都会暮らしが長いせいもあり自然豊かな世界が楽しくて仕方ない
ロボの想像とは反対に楽しむチハルに鼻で笑うと二人は並んで進み漸く今回の移住プランを考えた人物たぬきちの元へと辿り着いた
彼が言うには今回の移住希望者はロボとブーケ、そしてチハルの三人だ
そして彼らの生活をフォローする為にたぬきち達も共に無人島で暮らすらしい
「まずは皆さんに寝る場所の確保をお願いするだなも!」
たぬき開発社長のたぬきちは不動産業もしていたらしく家も建てれるが今回は無人島を楽しむ為にテントから開始して欲しいと言った
『(まめきち君とつぶきち君…見分けがつかないけど可愛いなぁ)』
たぬきちとは違い子供のたぬき達に癒されつつテントのセットを受け取ると皆それぞれ好きな場所を求めてバラバラに動き出した
チハルも案内所から遠くに行かない程度に島を見て回ると
『うわぁ…いい匂い』
オレンジの木々が並ぶ平地を見つけた
雑草も勿論沢山あるがオレンジの香りに囲まれた生活は素敵だ
チハルは納得の行く場所が見つかりすぐに喜んでテントを準備を開始するが、どこからともなくブーケの叫び声が聞こえた
『ブーケちゃん?どうしたんだろ…テントは…ううん、仕方ない!』
何事かと作りかけのテントをそのままに声の方向へと走り雑草に手足を引っ掛けながら進むと見えたのは尻尾まで毛を逆立てたブーケが見えてきた
『ブーケちゃん!』
「あ!チハルだっけ?も〜聞いてよ!さっき大きなムカデがいたの!」
『もしかしてさっきの悲鳴って…それ?』
「だって怖かったんだもん!」
潤んだ瞳で怒るブーケは可愛らしい
呆れる気にもなれずチハルはまあ怪我がなかったのだからと言い聞かせ、元の場所へと戻ろうとしたが
『ん?』
前を進もうとするが後ろから服の裾を掴まれ進めない、振り返ればキラキラと潤んだブーケの大きな瞳が何かを訴えている
「えへ?」
彼女の後ろには歪に建てられたテントがあり彼女が何を言いたいのか分かりチハルは結局自分のよりも先なブーケのテントを建てる事になった
『ふ〜次は自分の……あれ?出来てる』
やっとブーケから解放され自分の場所へと向かうといつの間にかテントが建てられている
確かに自分ではやっていない
なら誰がやってくれたのだろう
たぬき開発の誰かだろうか?
出来たテントを前にポカンと口を半開きにしている彼女を物陰から見ていた人物は青みかかった尻尾を揺らし静かにその場を去っていった
斜めに傾き生えているヤシの木は風に揺らさせ乾いた葉音を慣らし、海辺に散らばった貝殻に優しい影を落としている
無人島
遠くにぼんやりと見える近隣の島々を眺め改めて自分の島を見てみる
木々は青く雑草だらけのこの島でチハルの新しい日々が始まろうとしていた
『……本当に何もないんだ』
都会で暮らしていた彼女は一日の殆どを仕事場で過ごしてきた
休みの日も急に呼び出されれば断る事もできず仲間の社員のフォロー
毎日毎日頑張っても誰も特別褒めるわけでもなく当たり前と言わんばかりに仕事を任せてくる
あまりに自分の時間がない
寝る為に帰る家にも愛着がわかず精神が限界を迎えそうな時だった
たぬき族が無人島移住パッケージという広告をだしているのをスマホで知り、気がつけば会社に辞表を出していた
「点呼を取るのでこちらにお集まりくださ〜い」
子供のたぬき族の男の子が旗片手に呼んでいる
海をもっと眺めていたいところだけど、これからずっと見れるのだから今は我慢しよう
「オメェ…荷物それだけか?」
低い声に振り向けば青みが強い藍色の毛並みが美しいオオカミの青年が見下ろしてくる
今回の他の移住希望者の一人だ
『は、はい!(オオカミ族初めて見た!)』
小さなリュック一つのチハルだが、彼を見れば似たようにくたびれたリュックが一つだ
荷物の少なさは同じなのに何故聞くのか?不思議そうに見上げていると彼は顎で右を指し
「女ってのは皆あんなもんかと思ったぜ」
彼の視線の先にはネコ族の女の子が沢山の荷物を抱えているのが見えた
『うわっ!大丈夫ですか?』
「アハハ!アタイ無人島初めてだから、つい色々持ってきたちゃった!」
笑う彼女の元へ急いでチハルは駆け寄ると荷物を運ぶのを手伝おうとした
リュックに手提げ鞄など大きな荷物が何個もあり引っ越しのようだ
『(あ、自分のも持たないと)』
ネコ族の女の子の荷物を両手で持つと自分の荷物が砂浜に置いたままだった
どうにか一緒に持たなくてならないと指先を伸ばすが、チハルの白い指が届く前に他の者が彼女の荷物を拾った
『え?』
「そっちも寄こせ」
ぶっきらぼうに言うが手伝ってくれるらしい
チハルが固まっているうちにネコ族の女の子は喜び荷物を遠慮なしにオオカミ族の青年に渡し自分は身軽な身で子たぬきを追いかけていく
『ありがとうございます…えっとお名前は?』
「ロボだ」
『ロボさん…ですね?あたしはチハルです、えっと…これからよろしくお願いしますね』
へらりと笑えばロボは一瞬目を大きくさせ、すぐに目線をずらした
「てか…荷物の主が先に行くのな、どういう神経してんだあの女」
やれやれとため息を吐く彼に苦笑いをしネコ族の女の子…ブーケの荷物を両手で運び無人島へと足を踏み入れた
腰まである雑草だらけだが木々の中にはオレンジらしき実をつけた木も多くあり食べ物にはすぐには困らなそうだ
見たい物が多すぎるのだろう
ふらふらして歩く彼女を横目にロボは分厚い毛で覆われた尻尾をさり気なく彼女の後ろに寄せ転ばないように気をつける
「おい、オメェは俺の後ろから歩け」
『どうしてですか?』
「草が邪魔だろ?オメェの腰まであるじゃねぇか」
長身のオオカミ族のロボからすればどうという事がない長さだが小柄な彼女では進むだけで大変そうだ
『大丈夫です!それにこれはこれで楽しいですよ?草を掻き分けて進むなんて冒険みたいです!』
都会暮らしが長いせいもあり自然豊かな世界が楽しくて仕方ない
ロボの想像とは反対に楽しむチハルに鼻で笑うと二人は並んで進み漸く今回の移住プランを考えた人物たぬきちの元へと辿り着いた
彼が言うには今回の移住希望者はロボとブーケ、そしてチハルの三人だ
そして彼らの生活をフォローする為にたぬきち達も共に無人島で暮らすらしい
「まずは皆さんに寝る場所の確保をお願いするだなも!」
たぬき開発社長のたぬきちは不動産業もしていたらしく家も建てれるが今回は無人島を楽しむ為にテントから開始して欲しいと言った
『(まめきち君とつぶきち君…見分けがつかないけど可愛いなぁ)』
たぬきちとは違い子供のたぬき達に癒されつつテントのセットを受け取ると皆それぞれ好きな場所を求めてバラバラに動き出した
チハルも案内所から遠くに行かない程度に島を見て回ると
『うわぁ…いい匂い』
オレンジの木々が並ぶ平地を見つけた
雑草も勿論沢山あるがオレンジの香りに囲まれた生活は素敵だ
チハルは納得の行く場所が見つかりすぐに喜んでテントを準備を開始するが、どこからともなくブーケの叫び声が聞こえた
『ブーケちゃん?どうしたんだろ…テントは…ううん、仕方ない!』
何事かと作りかけのテントをそのままに声の方向へと走り雑草に手足を引っ掛けながら進むと見えたのは尻尾まで毛を逆立てたブーケが見えてきた
『ブーケちゃん!』
「あ!チハルだっけ?も〜聞いてよ!さっき大きなムカデがいたの!」
『もしかしてさっきの悲鳴って…それ?』
「だって怖かったんだもん!」
潤んだ瞳で怒るブーケは可愛らしい
呆れる気にもなれずチハルはまあ怪我がなかったのだからと言い聞かせ、元の場所へと戻ろうとしたが
『ん?』
前を進もうとするが後ろから服の裾を掴まれ進めない、振り返ればキラキラと潤んだブーケの大きな瞳が何かを訴えている
「えへ?」
彼女の後ろには歪に建てられたテントがあり彼女が何を言いたいのか分かりチハルは結局自分のよりも先なブーケのテントを建てる事になった
『ふ〜次は自分の……あれ?出来てる』
やっとブーケから解放され自分の場所へと向かうといつの間にかテントが建てられている
確かに自分ではやっていない
なら誰がやってくれたのだろう
たぬき開発の誰かだろうか?
出来たテントを前にポカンと口を半開きにしている彼女を物陰から見ていた人物は青みかかった尻尾を揺らし静かにその場を去っていった
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