第一章
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お友達
確かに友達という関係は大事だが、この男は数日前の自分の行動に酷く後悔していた
「もうちょい上手く言えただろ…オレ」
友達も悪くないができればもう少し踏み込んだ関係になりたい
いつもの自分ならばすぐに攻めていき数日間もあれば相手に恋を芽生えさせられる
恋愛については無敗を誇るというのに…今回の子ウサギちゃんにはいつものように接する事が出来ずにいた
「キバナ様、そろそろ準備をお願いします」
「おう」
今日ジムトレーナーによる交流試合
キバナにとってチハルに自分の魅力を見せつけられるステージだ
特等席のチケットに無料のポップコーンとドリンク付きだと特別をこれでもかと押し付けた結果遠慮がちだった彼女は漸く頷いてくれた
バトルで勇ましく勝つ姿を魅せればきっと彼女も他の女性達のようにメロメロになってくれる
控室のベンチで背中を丸めて座っていたキバナは両手を強く握りしめ気合を入れる
「……はぁぁ……、挽回すっぞ!キバナ!」
勢いよく立ち上がりバトルコートへの薄暗い廊下を進むと光と共に地響きのような歓声が迎えてくれる
キバナは驚く事もなく普段通りにゆったりとした足取りでコートに姿を現し黄色い声が一層大きくなった
ニコニコとファンに手を振りスマロロトムによる自撮りも勿論忘れない
コートの中央には既に対戦相手のルリナが待っていたがキバナは急ぐ事はせず、チラリと特等席がある方向へと視線を向ける
ちょうど中央が目の前に広がって見える特別な席にキバナのお目当ての彼女はいた
彼女には多すぎるのではと思う程大きなポップコーンの入れ物とジュース片手に座っているチハルはキバナを見つけると顔を明るくさせて何や喋ってる
頑張ってください!
声は聞こえないが口の動きで理解したキバナはニヤけそうになる口元を片手で隠しながら中央へと辿り着いた
「何?ニヤニヤしちゃって、まさかもう自分が勝った事でも想像してるんじゃないでしょうね」
「んにゃ、ちょいと嬉しい事があってな……まあ確かに今回も勝たせて貰うけどよ」
不機嫌なルリナを挑発しバトルは始まった
客席にはポケモンの技が当たらないようにバリアが張り巡られているがバトルが激しくなればなるほど客席へと衝撃波が飛び交い迫力満点だ
天候を操るドラゴンストーム
その名の通りコートはキバナの思いのままに姿を変え自分に有利な環境に変えていく
彼が獣のように牙を剥き相棒と同化するように手を振り上げ体ごとで指示をする様は目を惹く物がある
気がつけばチハルもポップコーンに手をつけるのを忘れ彼を見つめてしまう程だ
【勝者!キバナ選手!】
戦闘不能になったルリナのポケモンが倒れるのと同時に審判の声がコートに響く
待っていたかのように黄色い声が響き渡り応えるようにキバナも拳を天へと上げ爽やかな笑顔を見せてくれた
『(なんか…こっちばっかり見てる?)』
自惚れだろうかと思う程キバナはチハルだけを見つめ自信あり気に笑みを浮かべた
チハルの周りにいた女性達は自分に向けられた笑顔と勘違いしハートを飛ばしたが肝心の彼女はまだハッキリとは分かっていないようだ
小さく拍手し勝利を喜んでくれたチハルにキバナは気分を良くするが、ここでいらないサプライズが起こった
【本来ならば次はオリオン選手対キバナ選手の試合ですが…ここで嬉しい飛び入り参加のサプライズです!対戦相手は……我らがガラルのチャンピオンダンデぇぇ!!】
「なっ!はあああっ!聞いてねぇぞ!!」
審判に文句を言う前にコートの芝生を踏み鳴らすスニーカーの音が聞こえた
ルリナに代わりコートへと姿を現した男はスポンサーマークが沢山描かれたマントを揺らし堂々とキバナの前へと立ち塞がる
腕を組み合わせ仁王立ちする彼は焦りと苛立ちを混ぜた顔つきをしたライバルを見つめ瞳を細めた
「どうしたキバナ、いつもなら俺と戦えると分かると喜ぶじゃないか」
「……事前に分かってりゃ喜んで対策してたさ」
今まではダンデと試合がある時はポケモンの技構成をダンデ用に変えてきた
だが今回は生憎サプライズの為に対策できない
キバナにとっては不利な試合だ
「ふ、まさか対策してないからって尻尾を巻いて逃げる気か?」
両手を広げわざとらしく肩を揺らす相手に温厚なキバナもついに目つきが代わり吊り上がる
「あ?……ふざけんなよダンデ、どんな状況の悪い試合でもてめぇの喉を掻っ切るまで逃げねぇよ!」
「それでこそ俺が認めたライバルだ!」
ダンデがマントを片手で掴み勢いよく投げ捨てるとそれを合図に二人はボールを投げ合いポケモンを呼び出す
ヌメルゴンとギルガルドから始まったバトルは先程のルリナとの試合とはまた違い技を出す判断が早い、一体が倒れればすぐに新しいポケモンが呼び出されるのと同時に技を放ち隙を見せない
フライゴンとドラパルトのバトルコート全体を使った空中戦が観客を魅了し最後は二人の相棒対決となった
叫ぶようにボールを投げ相棒を巨大化させたダンデとキバナの試合は白熱し交流試合とは思えない迫力満点なものとなった
数時間後ー
「……だっせぇ」
結果的にキバナは負けた
SNSとしては映える良い物が撮れたが気分は最悪だ、今日は自分の格好良い所だけをチハルに見せたかったというのに結局ダンデが全て美味しい所を持っていってしまった
観客も既に帰りスタッフも数名しか残っていない
試合後のインタビューを終え帰る支度を済ませたキバナはどんよりと瞳を曇らせたままスマホ画面を見下ろし、一通のメールに気が付きギクリと体を揺らした
それはチハルからだった
キバナはメールを素早く目を通すと慌てて控室の扉を開け放ちバトルコートへと戻った
激しい試合後のコートは関係者以外立入禁止とされ黄色いテープが貼られていたが、彼は無理矢理中へと入り込むと凸凹になった地面を走りあの特等席の前へと急いだ
「チハルちゃん!」
観客は皆帰っている
だがたった一人だけ観客席に残っていた
チハルだ
キバナは肩で軽く息をし彼女の前に近寄りをバトルコートから見上げるとチハルも手すりに身を乗り出した
『キバナさん、呼び出してごめんなさい…でもどうしてもちゃんと会って……今言いたくて』
「(それって……まさか……)」
走ったせいか…いや恋の期待にドキドキと胸が高鳴るのだろう
キバナは痛い程高鳴った胸を片手で抑え込み彼女の言葉を待った
『……えっと…上手く言えませんが…』
「……うん!」
『ポケモン達すっごい格好良かったです!!』
「…………う………うん?」
そこから彼女が口にしたのはバトルの感想だった、鼻息荒く興奮気味に細かく喋る内容は選手としては嬉しいが今のキバナには期待した分嬉しくない
『本当ですよ!あたしトレーナーじゃないから詳しくないけど…本当に格好良くて!』
「あ〜うん…サンキュー」
へにゃりとその場にしゃがみ込んだ彼は期待しすぎた自分自身が恥ずかしくなり赤くなる顔を隠した
「(そりゃそうだよな…チハルちゃん鈍そうだもんな)」
落ち込む彼を上から見つめるチハルはダンデに負けた事を悔しがっていると勘違いし、もっと彼を励ませる言葉はないかと思案した
そして
『キバナさんもとっても格好良かったです』
「…………………え」
しゃがんだまま上を見上げれば頰をほんのりと赤めたチハルと目が合い、キバナまで頬が熱くなった気がした
失敗に終わったと思っていた作戦は、思いの外成功したのかもしれない
確かに友達という関係は大事だが、この男は数日前の自分の行動に酷く後悔していた
「もうちょい上手く言えただろ…オレ」
友達も悪くないができればもう少し踏み込んだ関係になりたい
いつもの自分ならばすぐに攻めていき数日間もあれば相手に恋を芽生えさせられる
恋愛については無敗を誇るというのに…今回の子ウサギちゃんにはいつものように接する事が出来ずにいた
「キバナ様、そろそろ準備をお願いします」
「おう」
今日ジムトレーナーによる交流試合
キバナにとってチハルに自分の魅力を見せつけられるステージだ
特等席のチケットに無料のポップコーンとドリンク付きだと特別をこれでもかと押し付けた結果遠慮がちだった彼女は漸く頷いてくれた
バトルで勇ましく勝つ姿を魅せればきっと彼女も他の女性達のようにメロメロになってくれる
控室のベンチで背中を丸めて座っていたキバナは両手を強く握りしめ気合を入れる
「……はぁぁ……、挽回すっぞ!キバナ!」
勢いよく立ち上がりバトルコートへの薄暗い廊下を進むと光と共に地響きのような歓声が迎えてくれる
キバナは驚く事もなく普段通りにゆったりとした足取りでコートに姿を現し黄色い声が一層大きくなった
ニコニコとファンに手を振りスマロロトムによる自撮りも勿論忘れない
コートの中央には既に対戦相手のルリナが待っていたがキバナは急ぐ事はせず、チラリと特等席がある方向へと視線を向ける
ちょうど中央が目の前に広がって見える特別な席にキバナのお目当ての彼女はいた
彼女には多すぎるのではと思う程大きなポップコーンの入れ物とジュース片手に座っているチハルはキバナを見つけると顔を明るくさせて何や喋ってる
頑張ってください!
声は聞こえないが口の動きで理解したキバナはニヤけそうになる口元を片手で隠しながら中央へと辿り着いた
「何?ニヤニヤしちゃって、まさかもう自分が勝った事でも想像してるんじゃないでしょうね」
「んにゃ、ちょいと嬉しい事があってな……まあ確かに今回も勝たせて貰うけどよ」
不機嫌なルリナを挑発しバトルは始まった
客席にはポケモンの技が当たらないようにバリアが張り巡られているがバトルが激しくなればなるほど客席へと衝撃波が飛び交い迫力満点だ
天候を操るドラゴンストーム
その名の通りコートはキバナの思いのままに姿を変え自分に有利な環境に変えていく
彼が獣のように牙を剥き相棒と同化するように手を振り上げ体ごとで指示をする様は目を惹く物がある
気がつけばチハルもポップコーンに手をつけるのを忘れ彼を見つめてしまう程だ
【勝者!キバナ選手!】
戦闘不能になったルリナのポケモンが倒れるのと同時に審判の声がコートに響く
待っていたかのように黄色い声が響き渡り応えるようにキバナも拳を天へと上げ爽やかな笑顔を見せてくれた
『(なんか…こっちばっかり見てる?)』
自惚れだろうかと思う程キバナはチハルだけを見つめ自信あり気に笑みを浮かべた
チハルの周りにいた女性達は自分に向けられた笑顔と勘違いしハートを飛ばしたが肝心の彼女はまだハッキリとは分かっていないようだ
小さく拍手し勝利を喜んでくれたチハルにキバナは気分を良くするが、ここでいらないサプライズが起こった
【本来ならば次はオリオン選手対キバナ選手の試合ですが…ここで嬉しい飛び入り参加のサプライズです!対戦相手は……我らがガラルのチャンピオンダンデぇぇ!!】
「なっ!はあああっ!聞いてねぇぞ!!」
審判に文句を言う前にコートの芝生を踏み鳴らすスニーカーの音が聞こえた
ルリナに代わりコートへと姿を現した男はスポンサーマークが沢山描かれたマントを揺らし堂々とキバナの前へと立ち塞がる
腕を組み合わせ仁王立ちする彼は焦りと苛立ちを混ぜた顔つきをしたライバルを見つめ瞳を細めた
「どうしたキバナ、いつもなら俺と戦えると分かると喜ぶじゃないか」
「……事前に分かってりゃ喜んで対策してたさ」
今まではダンデと試合がある時はポケモンの技構成をダンデ用に変えてきた
だが今回は生憎サプライズの為に対策できない
キバナにとっては不利な試合だ
「ふ、まさか対策してないからって尻尾を巻いて逃げる気か?」
両手を広げわざとらしく肩を揺らす相手に温厚なキバナもついに目つきが代わり吊り上がる
「あ?……ふざけんなよダンデ、どんな状況の悪い試合でもてめぇの喉を掻っ切るまで逃げねぇよ!」
「それでこそ俺が認めたライバルだ!」
ダンデがマントを片手で掴み勢いよく投げ捨てるとそれを合図に二人はボールを投げ合いポケモンを呼び出す
ヌメルゴンとギルガルドから始まったバトルは先程のルリナとの試合とはまた違い技を出す判断が早い、一体が倒れればすぐに新しいポケモンが呼び出されるのと同時に技を放ち隙を見せない
フライゴンとドラパルトのバトルコート全体を使った空中戦が観客を魅了し最後は二人の相棒対決となった
叫ぶようにボールを投げ相棒を巨大化させたダンデとキバナの試合は白熱し交流試合とは思えない迫力満点なものとなった
数時間後ー
「……だっせぇ」
結果的にキバナは負けた
SNSとしては映える良い物が撮れたが気分は最悪だ、今日は自分の格好良い所だけをチハルに見せたかったというのに結局ダンデが全て美味しい所を持っていってしまった
観客も既に帰りスタッフも数名しか残っていない
試合後のインタビューを終え帰る支度を済ませたキバナはどんよりと瞳を曇らせたままスマホ画面を見下ろし、一通のメールに気が付きギクリと体を揺らした
それはチハルからだった
キバナはメールを素早く目を通すと慌てて控室の扉を開け放ちバトルコートへと戻った
激しい試合後のコートは関係者以外立入禁止とされ黄色いテープが貼られていたが、彼は無理矢理中へと入り込むと凸凹になった地面を走りあの特等席の前へと急いだ
「チハルちゃん!」
観客は皆帰っている
だがたった一人だけ観客席に残っていた
チハルだ
キバナは肩で軽く息をし彼女の前に近寄りをバトルコートから見上げるとチハルも手すりに身を乗り出した
『キバナさん、呼び出してごめんなさい…でもどうしてもちゃんと会って……今言いたくて』
「(それって……まさか……)」
走ったせいか…いや恋の期待にドキドキと胸が高鳴るのだろう
キバナは痛い程高鳴った胸を片手で抑え込み彼女の言葉を待った
『……えっと…上手く言えませんが…』
「……うん!」
『ポケモン達すっごい格好良かったです!!』
「…………う………うん?」
そこから彼女が口にしたのはバトルの感想だった、鼻息荒く興奮気味に細かく喋る内容は選手としては嬉しいが今のキバナには期待した分嬉しくない
『本当ですよ!あたしトレーナーじゃないから詳しくないけど…本当に格好良くて!』
「あ〜うん…サンキュー」
へにゃりとその場にしゃがみ込んだ彼は期待しすぎた自分自身が恥ずかしくなり赤くなる顔を隠した
「(そりゃそうだよな…チハルちゃん鈍そうだもんな)」
落ち込む彼を上から見つめるチハルはダンデに負けた事を悔しがっていると勘違いし、もっと彼を励ませる言葉はないかと思案した
そして
『キバナさんもとっても格好良かったです』
「…………………え」
しゃがんだまま上を見上げれば頰をほんのりと赤めたチハルと目が合い、キバナまで頬が熱くなった気がした
失敗に終わったと思っていた作戦は、思いの外成功したのかもしれない
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