第一章
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『うぅ…眠い』
昼間は飲食店のバイトや宅配便のバイト
夜は飲み屋の客引きやウェイトレスを朝が来るまでこなす
一日仕事をして朝日がぼんやりと空に光を溢れさせる頃合いに眠る為だけに帰ってくるこの家
労ってくれる人もなく、癒しなんてない
自分の部屋もベッドと最低限の本があるくらいだ
『あ…これクリーニングにかけないと』
手に持っていたスーツの上着
昨晩助けてくれたキバナという男性から借りた上着だ、そこへ鼻を近づければ男性用の香水の香りが僅かに残っている
香水に詳しいわけではないが高そうな匂いと彼自身の匂いなのか…胸がドキドキしてくる気がした
『香水って凄いなぁ〜ちょっと嗅いだだけでドキドキするなんて、だから皆つけるんだ』
また鼻を近づければ胸がときめく、それと同時に助けてくれた場面を思い出しながら#主人公 #はベッドへと倒れ込んだ
仮面のせいで素顔は分からない
ただ海のような青い瞳が印象的で忘れられない
自分のズレた仮面を外し唇に触れた彼の手は熱く見知らぬ男だというのに嫌な気はしなかった
『あ…シワになっちゃ……う…』
日々の疲労と眠気に勝てず結局上着を抱きしめたまま眠りについてしまう
誰かの匂いに包まれて眠るなんて初めてだった
不思議と何故か酷く落ち着きチハルは久しぶりに深い眠りへと入り込めた
「…………」
執務室の椅子に深く腰掛けたキバナは昨晩彼女から奪ってしまった仮面を手の中で弄りぼんやりとしていた
親指で撫でては仮面の向こうにあった素顔を思い出し目元を熱くさせる
「なんでもするねぇ……まさか他の男にも同じ事言ってねぇよな?」
口を尖らせ不機嫌そうに仮面に問いかけるが勿論応えるわけがない
いったい自分は何をしているのか…大きくため息を一つし仮面をデスクの端へと置き直すとスマホロトムがキバナの前へと飛び出した
どうやらダンデからの連絡が来たようだ
「何?バトルか?」
【それもいいが、今夜暇なら飲まないか?昨日はあまり時間がなかったろ?】
「そりゃ誰かさんが遅れてきたからだろ?お陰でお前お持ち帰り一人もできなかったもんな」
【む!俺はそういう目的で行ったんじゃない!それにああいう飲み会は苦手なんだ!上品なシャンパンよりエールの方が好きだしな】
「あ〜はいはい、んじゃ夜な?可愛い女の子いる店紹介してやっからよ」
【キバナっ!!違うって言ってるだろ!】
ダンデの慌てる声を聞き笑いながら通話を切るとまたデスクの上の仮面に目が止まった
「可愛い女の子……か」
名前も知らない一度しか会った事のない彼女を探すのは不可能だ
よっぽど運が良くなくては会えないだろうとキバナは自分自身に言い聞かせ仮面を人差し指で弾いた
************************************************
さてさて今夜は欲求不満なオーナー様の為に優しいオレさまがお忍びで夜の街へと来たわけだが、変装した当の本人はどうにも積極的じゃない
「オマエってバトルコートだとガツガツ来る癖に女の子になると消極的だよな?普段あっちの処理どうしてんの?」
「…どうって…自分でとか…プロに頼んだりとかしてるぜ」
「あ〜、んじゃほぼ童貞じゃん」
「違っ!ちゃんと最後まで経験あるぜ!」
「プロ相手じゃ童貞と同じだっつーの」
ガラルが誇る王様だってのに夜は情けないものだ、飲み屋が並ぶ裏道を通り怪しげな店が増えてくるとダンデはオレの側から離れないように近寄りソワソワと辺りを見回している
本当に童貞くせぇ野郎だな
ティーンでもあるまいし母親にくっつくガキみてぇだ
興味がある癖に不安そうに眉を下げた男は見ていて面白いがずっとこのままという訳にもいかない
「気に入った子いたら言えよ?その店にしてやっから」
「〜〜っ!そういうの言わないでくれ!」
と言ってもこの調子じゃ街を端から端まで通り過ぎそうだ、深く帽子を被ったオレらは周りから誰かはバレてないようだが隠せないオーラがありさっきから女の子達がハートを飛ばしてきてくれる
ダンデさえ決まれば今夜の相手はすぐにでも捕まえられるのに時間が勿体ないねぇったらない
ふと店先で女の子達がアピールしている顔写真のボードにプラチナブロンドの髪が見え足が止まった
その子は可愛いがあの子じゃない
瞳の色も違えば髪の色ももっと綺麗だった
「…………」
「どうしたんだ?何か探してるのか?」
「あ?いや別に?良い子いないかなぁ〜と思ってただけ」
へらりと笑い先を歩こうとすると隣に並んでいたダンデがビクッと体を大きく揺らし立ち止まった
「うっ!」
「あ?何?どしたの?」
ダンデが赤い顔のまま固まった理由、彼の視線の先にはヒバニーの耳とふわふわの尻尾をつけた小柄なバニーガールが看板を手に客引きをしていた
『可愛い子がマスターをお待ちですよ〜?いかがですか〜?』
小さな看板を持って振り返った彼女はプラチナブロンドでスミレ色の瞳で……てっ!!!
「なっ!」
『ん?お兄さん達良かったらどうですか?』
彼女はオレさまに気がついていないのかダンデの手を取るとニッコリと微笑んだ
ダンデと言えば今にも鼻血でも出しそうな程首まで赤くし彼女をガン見している
『みんなマスターにゲットしてほしくて待ってますよ?』
どうやらポケモンをモチーフにしたコスプレ系の飲み屋みたいだ
ヒバニーの長い耳をつけた小柄な彼女は首元に鈴のついた首輪をしており小首を傾げて笑う度に心地良い音が響いた
「ッッ!!」
「ちょっ!待て待て待てっ!なんだそのボールは!投げるなっ!人っ!人間だからっ!」
混乱したのかダンデは腰からハイパーボールを取り出すと彼女に向かって投げようと腕を振り上げたものだから焦った
ゲットしたい気持ちはすっっげぇ分かるがそれをやっちゃあ人として終わりだ
つーかめっちゃ力強っ!
マジで事故らないでくれオーナー!
オレが必死に後ろからダンデを抑え込んでいるのに彼女は呑気に笑いダンデが冗談でボールを構えたと思ったらしい
『焦らなくても中に沢山いますよ〜はい!二名様ご案内でーす』
店のボーイらしい奴らに案内された店内は他にもコスプレした女の子達がいて様々なポケモンをモチーフにされていた
ピカチュウやイーブイ、ニンフィア等可愛い系として人気のポケモンをチョイスされたんだろうが…
この男は他に見向きもせずただ案内されたソファに腰掛け投げれなかったハイパーボールを両手の中で揉み合わせていた
「落ち着いたかよオーナー様」
「…………すまない」
頭を下げ落ち込んでいるダンデは本気でゲットしたかったのだろう
背中にかかる黒い空気がなんとも痛々しく見てらんねぇわ
「ほら適当に女の子席に呼んでやるから機嫌直せって」
オレが視線を女の子達に向けると我先にと店の女の子達が席に腰掛けてきた
まあ帽子があってもオレさま達の雄としてのオーラは隠しきれねぇもんな
女の子達は仕事だという事も忘れたようにうっとりとした顔でオレさま達を見てくる
男として悪い気はしないぜ
酒を飲みながら彼女達と楽しいお喋りが始まればダンデも漸く少し気が紛れまたのかポツポツと彼女達に返事をするようになった
「さっき…店の前にいた子は中には来ないのか?」
「あぁ!ヒバニーの格好の子?あの子はバイトだからお客さんの相手はしないのよ」
「……そうか」
てかオマエさっきから隣の女の子の爆乳が腕に擦り付けられてるのに平常心ってどうなってんの?
そんなにさっきの子が気になってんのかよ
まあ…確かに気にはなるよな
つーか一人で客引きって…大丈夫なのか?
オレはソファへとやや後ろに体を引くと顔をしかめ天井を見上げた
自分の中の選択肢を浮べ悩むが漸く決意すると女の子の手をやんわりと振り払い立ち上がった
「わりっ!オレちょいトイレ」
「え、おいっキバナ!どうすればいいんだ!」
「適当に飲んでろって」
女の子達をダンデへと任せるとオレはすぐに店の外へと急ぎ彼女の元へ急いだ
もしまた妙な男に絡まれていたら?無理矢理絡まれていたらと思うと足の動きが早くなりすぐに目的地につく
彼女はオレの心配など必要なかったように変わらず小さな看板片手に客引きをしていた
『いらっしゃいませ〜いかがですか〜』
「何してんの?」
『はい?』
コチラを振り返った彼女はきょとんとし、大きなスミレ色をオレさまに向けた
オレの言いたい事が分からないのだろう
なんか焦れったくてイライラしてくるわ
オレは被っていた帽子のツバを軽く上げ彼女へと顔を近づけ小声で話しかけた
「だからっ!昨日も散々な目に合った癖になんでこんな仕事してんの?」
すると彼女はオレの目をじっと見つめ
『………………ああっ!昨日の人ですか!』
「遅っ!」
まあ確かにオレさま仮面つけてたしな
『あ!上着!すみませんっ今持ってきてなくて!勿論クリーニング出してから返しますから、もう少し待っててくれませんか!』
「いやそれはどうでもいいって、それよりその格好の方が問題だろーが」
『でもコレ着てお客さん呼んでってお店から』
バニーガールの衣装は胸元が開きすぎだ
彼女が指先で服を摘みながら引っ張ると胸が自然とたゆんと揺れ男としては目に毒だ
「〜〜ッ、他にもましな仕事あったろーが」
『夜はこういうのがお金沢山貰えるんです!昼間は昼間でちゃんとした服の仕事してるから大丈夫ですよ?』
どうにも話が通じない
というか危機感が足りないのか?
「オマエ………あ〜……名前は?」
『あたしですか?チハルです!』
「………チハルちゃんは、なんでそんなに頑張ってんの?」
『それは…』
「キバナっ!」
彼女の口から理由を聞く前にまたこの男の邪魔が入った
本当……空気の読めねぇオーナー様だよな
昼間は飲食店のバイトや宅配便のバイト
夜は飲み屋の客引きやウェイトレスを朝が来るまでこなす
一日仕事をして朝日がぼんやりと空に光を溢れさせる頃合いに眠る為だけに帰ってくるこの家
労ってくれる人もなく、癒しなんてない
自分の部屋もベッドと最低限の本があるくらいだ
『あ…これクリーニングにかけないと』
手に持っていたスーツの上着
昨晩助けてくれたキバナという男性から借りた上着だ、そこへ鼻を近づければ男性用の香水の香りが僅かに残っている
香水に詳しいわけではないが高そうな匂いと彼自身の匂いなのか…胸がドキドキしてくる気がした
『香水って凄いなぁ〜ちょっと嗅いだだけでドキドキするなんて、だから皆つけるんだ』
また鼻を近づければ胸がときめく、それと同時に助けてくれた場面を思い出しながら#主人公 #はベッドへと倒れ込んだ
仮面のせいで素顔は分からない
ただ海のような青い瞳が印象的で忘れられない
自分のズレた仮面を外し唇に触れた彼の手は熱く見知らぬ男だというのに嫌な気はしなかった
『あ…シワになっちゃ……う…』
日々の疲労と眠気に勝てず結局上着を抱きしめたまま眠りについてしまう
誰かの匂いに包まれて眠るなんて初めてだった
不思議と何故か酷く落ち着きチハルは久しぶりに深い眠りへと入り込めた
「…………」
執務室の椅子に深く腰掛けたキバナは昨晩彼女から奪ってしまった仮面を手の中で弄りぼんやりとしていた
親指で撫でては仮面の向こうにあった素顔を思い出し目元を熱くさせる
「なんでもするねぇ……まさか他の男にも同じ事言ってねぇよな?」
口を尖らせ不機嫌そうに仮面に問いかけるが勿論応えるわけがない
いったい自分は何をしているのか…大きくため息を一つし仮面をデスクの端へと置き直すとスマホロトムがキバナの前へと飛び出した
どうやらダンデからの連絡が来たようだ
「何?バトルか?」
【それもいいが、今夜暇なら飲まないか?昨日はあまり時間がなかったろ?】
「そりゃ誰かさんが遅れてきたからだろ?お陰でお前お持ち帰り一人もできなかったもんな」
【む!俺はそういう目的で行ったんじゃない!それにああいう飲み会は苦手なんだ!上品なシャンパンよりエールの方が好きだしな】
「あ〜はいはい、んじゃ夜な?可愛い女の子いる店紹介してやっからよ」
【キバナっ!!違うって言ってるだろ!】
ダンデの慌てる声を聞き笑いながら通話を切るとまたデスクの上の仮面に目が止まった
「可愛い女の子……か」
名前も知らない一度しか会った事のない彼女を探すのは不可能だ
よっぽど運が良くなくては会えないだろうとキバナは自分自身に言い聞かせ仮面を人差し指で弾いた
************************************************
さてさて今夜は欲求不満なオーナー様の為に優しいオレさまがお忍びで夜の街へと来たわけだが、変装した当の本人はどうにも積極的じゃない
「オマエってバトルコートだとガツガツ来る癖に女の子になると消極的だよな?普段あっちの処理どうしてんの?」
「…どうって…自分でとか…プロに頼んだりとかしてるぜ」
「あ〜、んじゃほぼ童貞じゃん」
「違っ!ちゃんと最後まで経験あるぜ!」
「プロ相手じゃ童貞と同じだっつーの」
ガラルが誇る王様だってのに夜は情けないものだ、飲み屋が並ぶ裏道を通り怪しげな店が増えてくるとダンデはオレの側から離れないように近寄りソワソワと辺りを見回している
本当に童貞くせぇ野郎だな
ティーンでもあるまいし母親にくっつくガキみてぇだ
興味がある癖に不安そうに眉を下げた男は見ていて面白いがずっとこのままという訳にもいかない
「気に入った子いたら言えよ?その店にしてやっから」
「〜〜っ!そういうの言わないでくれ!」
と言ってもこの調子じゃ街を端から端まで通り過ぎそうだ、深く帽子を被ったオレらは周りから誰かはバレてないようだが隠せないオーラがありさっきから女の子達がハートを飛ばしてきてくれる
ダンデさえ決まれば今夜の相手はすぐにでも捕まえられるのに時間が勿体ないねぇったらない
ふと店先で女の子達がアピールしている顔写真のボードにプラチナブロンドの髪が見え足が止まった
その子は可愛いがあの子じゃない
瞳の色も違えば髪の色ももっと綺麗だった
「…………」
「どうしたんだ?何か探してるのか?」
「あ?いや別に?良い子いないかなぁ〜と思ってただけ」
へらりと笑い先を歩こうとすると隣に並んでいたダンデがビクッと体を大きく揺らし立ち止まった
「うっ!」
「あ?何?どしたの?」
ダンデが赤い顔のまま固まった理由、彼の視線の先にはヒバニーの耳とふわふわの尻尾をつけた小柄なバニーガールが看板を手に客引きをしていた
『可愛い子がマスターをお待ちですよ〜?いかがですか〜?』
小さな看板を持って振り返った彼女はプラチナブロンドでスミレ色の瞳で……てっ!!!
「なっ!」
『ん?お兄さん達良かったらどうですか?』
彼女はオレさまに気がついていないのかダンデの手を取るとニッコリと微笑んだ
ダンデと言えば今にも鼻血でも出しそうな程首まで赤くし彼女をガン見している
『みんなマスターにゲットしてほしくて待ってますよ?』
どうやらポケモンをモチーフにしたコスプレ系の飲み屋みたいだ
ヒバニーの長い耳をつけた小柄な彼女は首元に鈴のついた首輪をしており小首を傾げて笑う度に心地良い音が響いた
「ッッ!!」
「ちょっ!待て待て待てっ!なんだそのボールは!投げるなっ!人っ!人間だからっ!」
混乱したのかダンデは腰からハイパーボールを取り出すと彼女に向かって投げようと腕を振り上げたものだから焦った
ゲットしたい気持ちはすっっげぇ分かるがそれをやっちゃあ人として終わりだ
つーかめっちゃ力強っ!
マジで事故らないでくれオーナー!
オレが必死に後ろからダンデを抑え込んでいるのに彼女は呑気に笑いダンデが冗談でボールを構えたと思ったらしい
『焦らなくても中に沢山いますよ〜はい!二名様ご案内でーす』
店のボーイらしい奴らに案内された店内は他にもコスプレした女の子達がいて様々なポケモンをモチーフにされていた
ピカチュウやイーブイ、ニンフィア等可愛い系として人気のポケモンをチョイスされたんだろうが…
この男は他に見向きもせずただ案内されたソファに腰掛け投げれなかったハイパーボールを両手の中で揉み合わせていた
「落ち着いたかよオーナー様」
「…………すまない」
頭を下げ落ち込んでいるダンデは本気でゲットしたかったのだろう
背中にかかる黒い空気がなんとも痛々しく見てらんねぇわ
「ほら適当に女の子席に呼んでやるから機嫌直せって」
オレが視線を女の子達に向けると我先にと店の女の子達が席に腰掛けてきた
まあ帽子があってもオレさま達の雄としてのオーラは隠しきれねぇもんな
女の子達は仕事だという事も忘れたようにうっとりとした顔でオレさま達を見てくる
男として悪い気はしないぜ
酒を飲みながら彼女達と楽しいお喋りが始まればダンデも漸く少し気が紛れまたのかポツポツと彼女達に返事をするようになった
「さっき…店の前にいた子は中には来ないのか?」
「あぁ!ヒバニーの格好の子?あの子はバイトだからお客さんの相手はしないのよ」
「……そうか」
てかオマエさっきから隣の女の子の爆乳が腕に擦り付けられてるのに平常心ってどうなってんの?
そんなにさっきの子が気になってんのかよ
まあ…確かに気にはなるよな
つーか一人で客引きって…大丈夫なのか?
オレはソファへとやや後ろに体を引くと顔をしかめ天井を見上げた
自分の中の選択肢を浮べ悩むが漸く決意すると女の子の手をやんわりと振り払い立ち上がった
「わりっ!オレちょいトイレ」
「え、おいっキバナ!どうすればいいんだ!」
「適当に飲んでろって」
女の子達をダンデへと任せるとオレはすぐに店の外へと急ぎ彼女の元へ急いだ
もしまた妙な男に絡まれていたら?無理矢理絡まれていたらと思うと足の動きが早くなりすぐに目的地につく
彼女はオレの心配など必要なかったように変わらず小さな看板片手に客引きをしていた
『いらっしゃいませ〜いかがですか〜』
「何してんの?」
『はい?』
コチラを振り返った彼女はきょとんとし、大きなスミレ色をオレさまに向けた
オレの言いたい事が分からないのだろう
なんか焦れったくてイライラしてくるわ
オレは被っていた帽子のツバを軽く上げ彼女へと顔を近づけ小声で話しかけた
「だからっ!昨日も散々な目に合った癖になんでこんな仕事してんの?」
すると彼女はオレの目をじっと見つめ
『………………ああっ!昨日の人ですか!』
「遅っ!」
まあ確かにオレさま仮面つけてたしな
『あ!上着!すみませんっ今持ってきてなくて!勿論クリーニング出してから返しますから、もう少し待っててくれませんか!』
「いやそれはどうでもいいって、それよりその格好の方が問題だろーが」
『でもコレ着てお客さん呼んでってお店から』
バニーガールの衣装は胸元が開きすぎだ
彼女が指先で服を摘みながら引っ張ると胸が自然とたゆんと揺れ男としては目に毒だ
「〜〜ッ、他にもましな仕事あったろーが」
『夜はこういうのがお金沢山貰えるんです!昼間は昼間でちゃんとした服の仕事してるから大丈夫ですよ?』
どうにも話が通じない
というか危機感が足りないのか?
「オマエ………あ〜……名前は?」
『あたしですか?チハルです!』
「………チハルちゃんは、なんでそんなに頑張ってんの?」
『それは…』
「キバナっ!」
彼女の口から理由を聞く前にまたこの男の邪魔が入った
本当……空気の読めねぇオーナー様だよな