第一章
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コンゴウ団の若き長セキによりチハルはヒスイ地方の寒さを防げる服を手に入れた
彼らと同じ隊服である紺色の服は上着にはフードがついており下もスカートのような作りにタイツを合わせた動きやすい物だった
若い女性達はそれぞれ工夫を凝らし伝統的な隊服をアレンジしているようだが、チハルはシンプルな物を好んだ為可愛らしい模様も飾りもない
新しい服に頰を緩ませた彼女は着替えをすませると家から飛び出し、外で待つギンナンとセキの元へと駆け寄った
『お待たせしましたっ』
「おっ!なかなか似合うじゃねぇか!」
セキからすれば見慣れた隊服だが先程のTシャツ姿より今の方が似合うと感じた
服にプリントされたコンゴウ団のマークである金の字を嬉しそうに撫でる彼女をセキは優しく見つめるが、ギンナンは反対に何処かつまらなそうに見下ろしていた
『ギンナンさん!これとても温かいですよ!フードもついてるし』
彼の元へ近寄り紺色のフードを被りながら嬉しそうにふにゃりと笑って見せるが、ギンナンは自分の懐から煙草の箱を静かに取り出した
「あー……うん…まあいいんじゃない?」
素っ気無い返事をし煙草を一本取り出すと彼女から顔を逸らしマッチで火をつける
軽く吸い込めば空へと灰色の煙を気怠げに吐き出し青い瞳を細めてコチラを見下ろした
「………イチョウ商会の服の方が温かいけどね」
『そうなんですか?確かにモフモフがついてて温かそうですね』
「ん……だから服が用意できたらそっちも着てみてよ」
咥え煙草をしたまま見つめてくる彼にチハルは素直に頷き、ギンナンは漸く表情を柔らかくした
優しくなる顔つきにホッとすると同時にセキに振り返るとチハルは頭を下げお礼を口にする
『ありがとうございました!服や身の回りの物のお代は必ず返すので…時間はかかると思いますが待っててくれませんか?』
顔を上げ申し訳無さそうに眉を下げる彼女にセキは小さく笑い自分の胸の前で腕を組んだ
「んな事気にすんな、困った時はお互い様ってな!金はいらねぇよ」
『いいえっ!それは駄目です!何かお礼をしないとっ!』
不安そうにしていたかと思えば頑固な部分もある、どうしてもお礼をしたいという彼女にセキは首を傾げながら小さく唸り考え込む
すると何かを思いつき胸の前で組んでいた腕を解き両手を広げてみせた
「ならよ!お前の世界について教えてくれよ!シンオウ様がいるかもしれない空の裂け目の向こう側がどうなってるか俺は知りたい!別の世界はどんな世界か!時間が許す時にでも俺とお喋りしてくれや」
それを礼として受け取る
セキの提案は一文無しのチハルには有り難い
彼は本当に別世界に興味があるんだろうが、きっと半分は彼女を気遣っての事だろう
「んで?これからどうすんだ?どっか行く宛はあんのか?」
全く知らない世界に落とされた彼女にとってこの世界に身を寄せる知りたいなんていない
頼れる者もなければ住む家もない
このままでは途方にくれるのは時間の問題だ
『…それは…まだ何も』
「………なあ、もしお前がいいなら」
コンゴウ団としてココで暮らしてもいい
困っている彼女と出会ったのも何かの縁だと感じたセキは少女一人くらいなら迎えても問題ないだろうと口にしようとするが
彼の提案を邪魔するように灰色の煙がセキの顔面を直撃した
「うっ!げほっ!えほっ!なっ、なんだっ!」
むせるような匂いは目と鼻をも刺激し背中を丸めながらよろめいてしまう
「あー……ごめん、見てなかったわ」
煙を吐き出した男は謝罪の言葉を口にするも全く反省の色が見えない
不意に吸い込んでしまった煙に咳き込む彼をほっときギンナンは驚いたまま固まっているチハルを自分の背中に隠した
「若旦那にこれ以上世話になるわけにはいかないから…この子は俺が面倒みるよ」
『ギンナンさん?』
「ぅ…けほっ…はぁ?イチョウ商会にでもすんのか?」
涙目になった目元を手のひらで拭い取るとセキは片眉を吊り上げギンナンを睨んだ
疑いを含ませた鋭い目に睨まれながらもギンナンは煙草を口の端で咥えたまま帽子のつばを引き寄せ深く被り直した
「………さあね?」
短く濁した返事をした彼は用件は済んだとばかりに彼女の手首を掴み大人しく待っているレントラーの元へ歩き出す
手を引かれたチハルはギンナンの広く大きな背中を見上げながら引っ張られるままに歩き、チラチラと後方にいるセキを気にかけた
『あのっ、必ずまた来ますから!ちゃんと約束は守りますからっ!』
慌てて大きめな声を出しセキに話しかけると彼は驚いたように目を大きくさせ次第にじんわりと嬉しそうに細めた
追ってくる事はしなかったが、ここで待っていると言うように片手を振ってくれる彼にホッとしていると集落の外で待つレントラーの元へ辿り着く
二人が現れた事に喜ぶレントラーはゆらゆらと尻尾を揺らしご機嫌だが、まだ手首を掴んだままのこの男は不機嫌そうだ
「……はぁ……君ってさ……いや…なんでもないわ」
『なんですか?あたし…何かしましたか?』
ギンナンを見上げる瞳は真っ直ぐで彼の方が困ってしまいそうだ
「別に……おじさんが勝手に妬いただけ」
『焼く?』
どうにもピンと来ていない彼女
ギンナンはコンゴウ団の隊服に包まれた彼女を改めて見下ろし咥えていた煙草を八重歯で噛みつ眉を寄せた
「俺さ……結構面倒くさい性格だったみたい」
『はい?』
手首を離し手を宙に上げると彼女のフードがついた首元の服を人差し指の背で軽くなぞった
寒さ対策として最善を尽くそうとしコンゴウ団を頼ったが、いざ彼女がコンゴウ団の服を着た姿を見るとなんとも面白くない
初めに見つけたのは自分だというのにセキに奪われたような気持ちとなりモヤモヤとした心を落ち着かせようと煙草を口にしたが変わらなかった
セキが口にしようとした提案は聞かせたくなかった、もし聞いてしまえば彼女はきっと歳の離れた自分といるより若いセキと集落という安全な場所にいる事を望むに違いなかったからだ
自分が満足するまでは側で彼女を支えたい
他人の手は借りたくない
何も知らない真っ白な存在を自分が育て染め上げたい
そんな我が儘だった
「(………ガキか……俺は)」
早くイチョウ商会の服を着せよう
そうすればきっとこの不快な気分も少しは元に戻るだろう
一人納得するとまだ理解できない様子の彼女の頭を数回軽く叩き眉間のシワを弱めた
『(ギンナンさんって…優しいけど何考えてるか分からない人だなぁ)』
彼らと同じ隊服である紺色の服は上着にはフードがついており下もスカートのような作りにタイツを合わせた動きやすい物だった
若い女性達はそれぞれ工夫を凝らし伝統的な隊服をアレンジしているようだが、チハルはシンプルな物を好んだ為可愛らしい模様も飾りもない
新しい服に頰を緩ませた彼女は着替えをすませると家から飛び出し、外で待つギンナンとセキの元へと駆け寄った
『お待たせしましたっ』
「おっ!なかなか似合うじゃねぇか!」
セキからすれば見慣れた隊服だが先程のTシャツ姿より今の方が似合うと感じた
服にプリントされたコンゴウ団のマークである金の字を嬉しそうに撫でる彼女をセキは優しく見つめるが、ギンナンは反対に何処かつまらなそうに見下ろしていた
『ギンナンさん!これとても温かいですよ!フードもついてるし』
彼の元へ近寄り紺色のフードを被りながら嬉しそうにふにゃりと笑って見せるが、ギンナンは自分の懐から煙草の箱を静かに取り出した
「あー……うん…まあいいんじゃない?」
素っ気無い返事をし煙草を一本取り出すと彼女から顔を逸らしマッチで火をつける
軽く吸い込めば空へと灰色の煙を気怠げに吐き出し青い瞳を細めてコチラを見下ろした
「………イチョウ商会の服の方が温かいけどね」
『そうなんですか?確かにモフモフがついてて温かそうですね』
「ん……だから服が用意できたらそっちも着てみてよ」
咥え煙草をしたまま見つめてくる彼にチハルは素直に頷き、ギンナンは漸く表情を柔らかくした
優しくなる顔つきにホッとすると同時にセキに振り返るとチハルは頭を下げお礼を口にする
『ありがとうございました!服や身の回りの物のお代は必ず返すので…時間はかかると思いますが待っててくれませんか?』
顔を上げ申し訳無さそうに眉を下げる彼女にセキは小さく笑い自分の胸の前で腕を組んだ
「んな事気にすんな、困った時はお互い様ってな!金はいらねぇよ」
『いいえっ!それは駄目です!何かお礼をしないとっ!』
不安そうにしていたかと思えば頑固な部分もある、どうしてもお礼をしたいという彼女にセキは首を傾げながら小さく唸り考え込む
すると何かを思いつき胸の前で組んでいた腕を解き両手を広げてみせた
「ならよ!お前の世界について教えてくれよ!シンオウ様がいるかもしれない空の裂け目の向こう側がどうなってるか俺は知りたい!別の世界はどんな世界か!時間が許す時にでも俺とお喋りしてくれや」
それを礼として受け取る
セキの提案は一文無しのチハルには有り難い
彼は本当に別世界に興味があるんだろうが、きっと半分は彼女を気遣っての事だろう
「んで?これからどうすんだ?どっか行く宛はあんのか?」
全く知らない世界に落とされた彼女にとってこの世界に身を寄せる知りたいなんていない
頼れる者もなければ住む家もない
このままでは途方にくれるのは時間の問題だ
『…それは…まだ何も』
「………なあ、もしお前がいいなら」
コンゴウ団としてココで暮らしてもいい
困っている彼女と出会ったのも何かの縁だと感じたセキは少女一人くらいなら迎えても問題ないだろうと口にしようとするが
彼の提案を邪魔するように灰色の煙がセキの顔面を直撃した
「うっ!げほっ!えほっ!なっ、なんだっ!」
むせるような匂いは目と鼻をも刺激し背中を丸めながらよろめいてしまう
「あー……ごめん、見てなかったわ」
煙を吐き出した男は謝罪の言葉を口にするも全く反省の色が見えない
不意に吸い込んでしまった煙に咳き込む彼をほっときギンナンは驚いたまま固まっているチハルを自分の背中に隠した
「若旦那にこれ以上世話になるわけにはいかないから…この子は俺が面倒みるよ」
『ギンナンさん?』
「ぅ…けほっ…はぁ?イチョウ商会にでもすんのか?」
涙目になった目元を手のひらで拭い取るとセキは片眉を吊り上げギンナンを睨んだ
疑いを含ませた鋭い目に睨まれながらもギンナンは煙草を口の端で咥えたまま帽子のつばを引き寄せ深く被り直した
「………さあね?」
短く濁した返事をした彼は用件は済んだとばかりに彼女の手首を掴み大人しく待っているレントラーの元へ歩き出す
手を引かれたチハルはギンナンの広く大きな背中を見上げながら引っ張られるままに歩き、チラチラと後方にいるセキを気にかけた
『あのっ、必ずまた来ますから!ちゃんと約束は守りますからっ!』
慌てて大きめな声を出しセキに話しかけると彼は驚いたように目を大きくさせ次第にじんわりと嬉しそうに細めた
追ってくる事はしなかったが、ここで待っていると言うように片手を振ってくれる彼にホッとしていると集落の外で待つレントラーの元へ辿り着く
二人が現れた事に喜ぶレントラーはゆらゆらと尻尾を揺らしご機嫌だが、まだ手首を掴んだままのこの男は不機嫌そうだ
「……はぁ……君ってさ……いや…なんでもないわ」
『なんですか?あたし…何かしましたか?』
ギンナンを見上げる瞳は真っ直ぐで彼の方が困ってしまいそうだ
「別に……おじさんが勝手に妬いただけ」
『焼く?』
どうにもピンと来ていない彼女
ギンナンはコンゴウ団の隊服に包まれた彼女を改めて見下ろし咥えていた煙草を八重歯で噛みつ眉を寄せた
「俺さ……結構面倒くさい性格だったみたい」
『はい?』
手首を離し手を宙に上げると彼女のフードがついた首元の服を人差し指の背で軽くなぞった
寒さ対策として最善を尽くそうとしコンゴウ団を頼ったが、いざ彼女がコンゴウ団の服を着た姿を見るとなんとも面白くない
初めに見つけたのは自分だというのにセキに奪われたような気持ちとなりモヤモヤとした心を落ち着かせようと煙草を口にしたが変わらなかった
セキが口にしようとした提案は聞かせたくなかった、もし聞いてしまえば彼女はきっと歳の離れた自分といるより若いセキと集落という安全な場所にいる事を望むに違いなかったからだ
自分が満足するまでは側で彼女を支えたい
他人の手は借りたくない
何も知らない真っ白な存在を自分が育て染め上げたい
そんな我が儘だった
「(………ガキか……俺は)」
早くイチョウ商会の服を着せよう
そうすればきっとこの不快な気分も少しは元に戻るだろう
一人納得するとまだ理解できない様子の彼女の頭を数回軽く叩き眉間のシワを弱めた
『(ギンナンさんって…優しいけど何考えてるか分からない人だなぁ)』
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