第一章
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『……ん……幸せ』
朝の寒い空気もレントラーのお陰で気にならない、昨晩は警戒心を向けていたレントラーも翌日には自らチハルへと近寄り彼女が寒くないようにソファ代わりに身を委ねてくれた
ふわふわとした厚い毛は暖かく
頰を寄せると草花の匂いがして落ち着いた
「そりゃよかったね、俺も寒い夜はよくコイツに世話になってるよ」
テントを片付け終わったギンナンはレントラーの頭を軽く撫でると静かに微笑んだ
グルグルと喉を鳴らし甘えるレントラーは大きな猫のようだ
「さて…取り敢えず…そうだな、君の服を何とかしないとな」
『何から何まですみません、でも本当にいいんですか?』
「………何が?」
『だって…こんな何処の誰かも分からない人間…嫌じゃないのかなって』
昨晩チハルはギンナンに自分の身に起こった事を全て話しした
アルセウスというポケモンの夢を見ていたと思えば見知らぬ土地にいた事
ヒスイ地方という名前もイチョウ商会という人々とも今まで会った事がないという事を言うとギンナンは自分の顎髭を撫でながら瞳を細めていた
彼が言うにはイチョウ商会はヒスイ地方で幅広く商いをしており今は知らない者の方が珍しい
また彼からしても人口の少ないヒスイ地方でチハルのような服装をした者は一度も見たことがないと言う
そこから浮かぶ答えはあの夜の雷
空の裂け目の向こうから別世界へと来たのではないか……と
「別に……俺はただ困ってる君を自分が満足するまで面倒みたいってだけだから…気にしないでいいよ」
自己満足の為だと言うとギンナンはチハルの前へと近寄り帽子の影が落ちた青い瞳で見下ろした
『でも…何かお礼したくてもあたし今お金もなくて…どうしたらいいか』
しょんぼりと落ち込む彼女は真面目で優しい性格なようだ、あって間もない自分の為にお礼を考える彼女にギンナンは瞳を緩ませ
「まぁ……何か機会があったら恩返ししてよ」
子供をなだめるように彼女の頭を大きな手が数回撫でてくれた
その手はすぐに離れてしまい移動する為の準備へと戻ってしまったが、チハルは手が離れてしまった自分の頭に触れ胸をほんのりと温かくした
靴もない為移動はレントラーに乗る事になった
大きな体を持つ彼はギンナンとチハルを乗せたままでも軽々と走りだし、人が走るより何倍も早くヒスイ地方を駆け回った
『何処へ向かってるんですか?』
レントラーの背中から彼女が振り落とされないように後ろから体を支えて座るギンナン、彼へと振り返り問いかけるとギンナンは少し遠くを見つめ答えた
「ここから一番近いコンゴウ団の集落だ、そこで服や必要な物を揃えよう」
『コンゴウ団?』
「本当ならイチョウ商会の服でも用意してやりたいが…少しでも早く温かい服欲しいだろ?」
確かに寒い
レントラーが走るせいもあり冷たい風がチハルの薄い服を透し肌を冷やしていく
寒さに震える彼女を少しでも楽にしたいギンナンは前に座る小柄な彼女を見下ろすと考え込み
「ちょっと…触るよ?」
『え?っっ!』
落ちないように腰を支えていた彼の手が突然目の前に周り込み後ろへと抱き寄せられる
大きな胸の中へと引き寄せられ、小さな体はすっぽりと収まってしまった
「うん……これなら幾らか風除けになれてるかな?」
『〜〜っ!!』
確かに寒さは緩和されたが全身を包み込むほど大きな男の体は彼女には堪えられない
不慣れな異性との密着にうなじの毛がこわばり思考がまとまらない
『(こ、こんなに男の人とくっついた事なんてないよっ!昨日のおんぶだって恥ずかしかったのにっ……〜〜っ!駄目っ!無理っ!)』
じっとしていられず体をぎこちなく揺らすとギンナンは彼女の気など知らず自身へと逆に引き寄せた
「どうしたの?……危ないよ?」
『ひゃいっ!なっ、でも…ないですっ』
あくまでギンナンは彼女の身を心配しているだけ、例え耳元で大人の男の低い声を囁かれても彼に悪気は無い
彼の善意にチハルも素直に気持ちを伝えられず息を止めるように口を強く結ぶしかできなかった
だんだんと草原地帯は湿地へと変わり沼地がちらほらと目立ってきた
環境が変われば生息するポケモンも変わり景色と共に後ろへと消えていくポケモンに目を奪われた
小さな子供のように興味津々に辺りを見回す彼女を見ながらギンナンはやれやれと優しく微笑み静かに見守る
するとようやく目的地へとレントラーはたどり着き集落の手前で二人を降ろしてくれた
コンゴウ団の集落は隊服と同じ紺色の民家が並びその東側にはリッシ湖という大きな湖が目立っていた
「……ちょっと待ってて」
レントラーとチハルを集落の外で待たせ中へと入り込むギンナン、彼を見送ったチハルはレントラーの背中を撫でながら不安そうに集落を見つめた
『ギンナンさん大丈夫かな?』
突然来て大丈夫な集落なんだろうか?
宗教的な民家によそ者は受け入れて貰えないのではないか心配になる
ソワソワと何度もギンナンが消えた集落を目を細めて見つめると二つの人影がこちらへと近寄ってきた
一人はギンナンだと分かりホッとするが、もう一人の男は誰なのか分からない
緊張しつつ肩に力を入れているとその男はレントラーに乗ったままのチハルを見上げ感心したように口笛を鳴らした
「へぇ!本当にレントラーに乗れる女がいたとはな!初めてみたぜ!」
「………若旦那に嘘なんて言わないよ」
呆れたようにため息を吐いたギンナンはチハルへと近寄り若旦那と呼んだ男に振り返った
「彼はコンゴウ団の長でセキ…若旦那こっちがさっき話したチハルちゃん」
簡単に紹介するとセキはにっこりと猫のような目を細め笑ってくれた
「おう!よろしくなチハル!」
『あ、はい…よろしく?です』
手を差し伸べられ自然と握手をすると少々強めに上下に揺られレントラーの背中から落ちそうになる
力加減ができてないのが分からないのか、彼はバランスを崩しかける彼女を見てケラケラ笑い機嫌が良さそうだ
「話は大体聞いたぜ!見知らぬ土地に身一つで来ちまったんだろ?ここで必要なもんを揃えて行きな!俺が話しとくからよ」
楽に結い上げた長い髪
青く長い前髪が一束乱れ落ち茶色い瞳をゆらゆらと隠す、その瞳は猫のように鋭くそれでいて目尻の化粧と片方の眉山がカットされた部分が目を惹く
『ありがとうございます、セキさん』
「あ〜やめろやめろっ!俺ん事はセキでいい!セキさんなんてガラじゃねぇし擽ってぇわ」
青い宝石がついた首輪や耳飾りは伝統なのか、お洒落なのか分からない
だが一つ一つが歯を見せて笑うセキという真っ直ぐな青年を現しているようにも見えた
何処までも澄んだ気持ちの良い海のような青年
それがチハルのセキへの第一印象となった
朝の寒い空気もレントラーのお陰で気にならない、昨晩は警戒心を向けていたレントラーも翌日には自らチハルへと近寄り彼女が寒くないようにソファ代わりに身を委ねてくれた
ふわふわとした厚い毛は暖かく
頰を寄せると草花の匂いがして落ち着いた
「そりゃよかったね、俺も寒い夜はよくコイツに世話になってるよ」
テントを片付け終わったギンナンはレントラーの頭を軽く撫でると静かに微笑んだ
グルグルと喉を鳴らし甘えるレントラーは大きな猫のようだ
「さて…取り敢えず…そうだな、君の服を何とかしないとな」
『何から何まですみません、でも本当にいいんですか?』
「………何が?」
『だって…こんな何処の誰かも分からない人間…嫌じゃないのかなって』
昨晩チハルはギンナンに自分の身に起こった事を全て話しした
アルセウスというポケモンの夢を見ていたと思えば見知らぬ土地にいた事
ヒスイ地方という名前もイチョウ商会という人々とも今まで会った事がないという事を言うとギンナンは自分の顎髭を撫でながら瞳を細めていた
彼が言うにはイチョウ商会はヒスイ地方で幅広く商いをしており今は知らない者の方が珍しい
また彼からしても人口の少ないヒスイ地方でチハルのような服装をした者は一度も見たことがないと言う
そこから浮かぶ答えはあの夜の雷
空の裂け目の向こうから別世界へと来たのではないか……と
「別に……俺はただ困ってる君を自分が満足するまで面倒みたいってだけだから…気にしないでいいよ」
自己満足の為だと言うとギンナンはチハルの前へと近寄り帽子の影が落ちた青い瞳で見下ろした
『でも…何かお礼したくてもあたし今お金もなくて…どうしたらいいか』
しょんぼりと落ち込む彼女は真面目で優しい性格なようだ、あって間もない自分の為にお礼を考える彼女にギンナンは瞳を緩ませ
「まぁ……何か機会があったら恩返ししてよ」
子供をなだめるように彼女の頭を大きな手が数回撫でてくれた
その手はすぐに離れてしまい移動する為の準備へと戻ってしまったが、チハルは手が離れてしまった自分の頭に触れ胸をほんのりと温かくした
靴もない為移動はレントラーに乗る事になった
大きな体を持つ彼はギンナンとチハルを乗せたままでも軽々と走りだし、人が走るより何倍も早くヒスイ地方を駆け回った
『何処へ向かってるんですか?』
レントラーの背中から彼女が振り落とされないように後ろから体を支えて座るギンナン、彼へと振り返り問いかけるとギンナンは少し遠くを見つめ答えた
「ここから一番近いコンゴウ団の集落だ、そこで服や必要な物を揃えよう」
『コンゴウ団?』
「本当ならイチョウ商会の服でも用意してやりたいが…少しでも早く温かい服欲しいだろ?」
確かに寒い
レントラーが走るせいもあり冷たい風がチハルの薄い服を透し肌を冷やしていく
寒さに震える彼女を少しでも楽にしたいギンナンは前に座る小柄な彼女を見下ろすと考え込み
「ちょっと…触るよ?」
『え?っっ!』
落ちないように腰を支えていた彼の手が突然目の前に周り込み後ろへと抱き寄せられる
大きな胸の中へと引き寄せられ、小さな体はすっぽりと収まってしまった
「うん……これなら幾らか風除けになれてるかな?」
『〜〜っ!!』
確かに寒さは緩和されたが全身を包み込むほど大きな男の体は彼女には堪えられない
不慣れな異性との密着にうなじの毛がこわばり思考がまとまらない
『(こ、こんなに男の人とくっついた事なんてないよっ!昨日のおんぶだって恥ずかしかったのにっ……〜〜っ!駄目っ!無理っ!)』
じっとしていられず体をぎこちなく揺らすとギンナンは彼女の気など知らず自身へと逆に引き寄せた
「どうしたの?……危ないよ?」
『ひゃいっ!なっ、でも…ないですっ』
あくまでギンナンは彼女の身を心配しているだけ、例え耳元で大人の男の低い声を囁かれても彼に悪気は無い
彼の善意にチハルも素直に気持ちを伝えられず息を止めるように口を強く結ぶしかできなかった
だんだんと草原地帯は湿地へと変わり沼地がちらほらと目立ってきた
環境が変われば生息するポケモンも変わり景色と共に後ろへと消えていくポケモンに目を奪われた
小さな子供のように興味津々に辺りを見回す彼女を見ながらギンナンはやれやれと優しく微笑み静かに見守る
するとようやく目的地へとレントラーはたどり着き集落の手前で二人を降ろしてくれた
コンゴウ団の集落は隊服と同じ紺色の民家が並びその東側にはリッシ湖という大きな湖が目立っていた
「……ちょっと待ってて」
レントラーとチハルを集落の外で待たせ中へと入り込むギンナン、彼を見送ったチハルはレントラーの背中を撫でながら不安そうに集落を見つめた
『ギンナンさん大丈夫かな?』
突然来て大丈夫な集落なんだろうか?
宗教的な民家によそ者は受け入れて貰えないのではないか心配になる
ソワソワと何度もギンナンが消えた集落を目を細めて見つめると二つの人影がこちらへと近寄ってきた
一人はギンナンだと分かりホッとするが、もう一人の男は誰なのか分からない
緊張しつつ肩に力を入れているとその男はレントラーに乗ったままのチハルを見上げ感心したように口笛を鳴らした
「へぇ!本当にレントラーに乗れる女がいたとはな!初めてみたぜ!」
「………若旦那に嘘なんて言わないよ」
呆れたようにため息を吐いたギンナンはチハルへと近寄り若旦那と呼んだ男に振り返った
「彼はコンゴウ団の長でセキ…若旦那こっちがさっき話したチハルちゃん」
簡単に紹介するとセキはにっこりと猫のような目を細め笑ってくれた
「おう!よろしくなチハル!」
『あ、はい…よろしく?です』
手を差し伸べられ自然と握手をすると少々強めに上下に揺られレントラーの背中から落ちそうになる
力加減ができてないのが分からないのか、彼はバランスを崩しかける彼女を見てケラケラ笑い機嫌が良さそうだ
「話は大体聞いたぜ!見知らぬ土地に身一つで来ちまったんだろ?ここで必要なもんを揃えて行きな!俺が話しとくからよ」
楽に結い上げた長い髪
青く長い前髪が一束乱れ落ち茶色い瞳をゆらゆらと隠す、その瞳は猫のように鋭くそれでいて目尻の化粧と片方の眉山がカットされた部分が目を惹く
『ありがとうございます、セキさん』
「あ〜やめろやめろっ!俺ん事はセキでいい!セキさんなんてガラじゃねぇし擽ってぇわ」
青い宝石がついた首輪や耳飾りは伝統なのか、お洒落なのか分からない
だが一つ一つが歯を見せて笑うセキという真っ直ぐな青年を現しているようにも見えた
何処までも澄んだ気持ちの良い海のような青年
それがチハルのセキへの第一印象となった