第一章
夢小説設定
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『よいっしょっ、と』
「これで全部かねぃ?」
『はい!ありがとうございますカキツバタ先輩』
ブルーベリー学園に定期的に来てくれる大きな船、その船に乗り込む為に必要な荷物を運ぶチハルは今日交換留学生として旅立つ
大きなトランクを先に船員に頼み部屋に運んで貰うと一緒にここまで荷物を運んでくれたカキツバタは背筋を伸ばす為に両手を空へと向ける
空は青く辺りは同じような青い海が広がり開放的な気分になる…筈だが、彼の心は曇っておりいまいち晴れない
「はぁ…やれやれ、思ったよりも随分荷物が多かったでやんすねぇ?これじゃ疲れすぎて午後の授業なんかできねぇわ」
『そんな事言って…いつも授業受ける気ない癖に』
カキツバタの事ならお見通しだというように笑う後輩に彼は目を大きくさせじわじわと照れくさそうに笑う
「……へへ」
へらりと笑い背伸びを終えた彼はふらりと歩き出すとチハルの隣に立ち大きな船を見上げた
「一年もおチビさんに会えないなんて寂しいねぇ、タロ達も随分騒いでたろぃ?」
『うん、行くのやめましょう!ってタロちゃんに言われちゃいましたしゼイユちゃんにも駄目って怒られました』
年は違うが友人であるタロやゼイユの顔を思い出し寂しそうに微笑む彼女をカキツバタは横目で確認し自分の頰を指先で数回かく
「オイラも……行ってほしくねぇんですがねぇ」
『本当?カキツバタ先輩でもあたしがいなくなると寂しいとか思ってくれるんですか?』
疑うようにからかうように下から顔を覗き込む彼女、カキツバタは鼻で笑いチハルの頭を乱暴にくしゃくしゃと撫でる
『うわわっ!』
「そりゃ寂しいわな、可愛い後輩がいなくなったら誰がオイラの世話してくれんだってことよ」
『あ〜せっかく髪ちゃんとセットとしたのにっ!もう!』
怒っても彼はヘラヘラしており本気で寂しがっているのか冗談かよく分からない
元々カキツバタは自分の本心を隠す癖があり大半の者は上辺しか知らないだろう
授業に対して不真面目でやる気がない
それなのにバトルは学園一強いという食えない男
だが本当は誰よりも周りを気にしており努力家だ、カキツバタの本当の姿を知っているのはきっとチハルだけだろう
「それにしても大丈夫でやんすかねぇ?おチビちゃんは鈍臭いつーか危なかっしいとこがあっからなぁ」
『そんなに心配しなくても一年したらちゃんと帰ってきますよ、それに電話もあるし!』
「あっちじゃ従兄弟の家に世話になるんだったか?」
『うん最初はね、後は寮生活になると思う!だから夜に電話しても大丈夫!』
カキツバタの不安を見抜くように明るく言えば彼は一度瞳を閉じ静かに頷いた
ゆっくりとこちらを見た金色の瞳は少し潤んで見えた気がしたが…気の所為だろうか
「手ぇだしな、優しいツバっさんからの餞別だ」
『ん?なんですか?』
「いいから、ほら右手貸しなって」
言われた通り手を彼に差し出すとカキツバタは懐から何かを取り出し、彼女の手を支え手首に何かを回しつけた
『………ミサンガ?』
「おう!お守りだ!」
青紫と白を混ぜたミサンガは手作りだろう
どことなくカキツバタをイメージする色合いだった…彼の好みの色だ
細く白い手首に着けられたミサンガをカキツバタは満足そうに笑い彼女の手を支えそれを見つめた
「似合うじゃねぇか」
『…可愛い、あ!でも本当にこれいいの!本当に貰っちゃうよ?』
「へへっ、気に入ったか?んじゃ遠慮なく貰ってくれや!」
『うわぁ!ありがとうございますっ!』
手を離すとチハルは貰ったミサンガのついた手を空へかざしてみたりポーズをとって嬉しそうに笑ってくれた
「………チハル、帰ってきたら…」
カキツバタが口を開くのと同時に船が出港の時間を知らせる汽笛を鳴らした
響き渡る大きな音にかき消され彼の口の動きしか見えず、耳に余韻を残しながら汽笛が鳴り終わる頃には彼が何を言ったのか分からない
『え?もう一度言ってくれますか?ちょっと聞こえなかったので』
「………………いや、なんでもねぇ」
『でも』
「いいっていいって!ほら遅れちまうぞ?」
彼女の肩を抱き船乗り場へと連れて行く、こちらを見上げる視線に気が付かないふりをし乗口へと案内し終えると二人は自然と離れお互いを見つめた
『じゃあ行ってきますね!あのっ本当に電話してもいいですか?』
「おう!チハルの為なら24時間いつでもツバっさんが話聞いてやっから!だから…ぜってぇかけろよぃ!」
『〜〜っ、はいっ!』
船が動く
お互いに片手を大きく振りながら姿が見えなくなるまで手を振り続け、船が小さくなるとカキツバタは重く感じる手を静かに下げ拳を強く握った
その手首にはチハルに渡した物と全く同じミサンガが着けられていた
「一年……か……長ぇなぁ」
小さく呟いた唇を噛み締め学園に戻る為に背を向けると離れた場所で海を見て泣くタロやゼイユ達が見えカキツバタはやれやれと鼻で笑った
『あ、おばさん?今出港しました!ハルトくんにも伝えて貰えますか?』
一方船の上ではチハルはこれから向かうパルデアに期待し顔を明るくさせていた
電話をしながら自分の手首についたミサンガを見つめ熱くなる瞳をそのままに無理して笑う彼女
これから向かうパルデアで出会う一人の男との熱い恋、そして残してきた男の嫉妬と執着に悩まされる一年となる事を彼女は予想もしなかっただろう
「これで全部かねぃ?」
『はい!ありがとうございますカキツバタ先輩』
ブルーベリー学園に定期的に来てくれる大きな船、その船に乗り込む為に必要な荷物を運ぶチハルは今日交換留学生として旅立つ
大きなトランクを先に船員に頼み部屋に運んで貰うと一緒にここまで荷物を運んでくれたカキツバタは背筋を伸ばす為に両手を空へと向ける
空は青く辺りは同じような青い海が広がり開放的な気分になる…筈だが、彼の心は曇っておりいまいち晴れない
「はぁ…やれやれ、思ったよりも随分荷物が多かったでやんすねぇ?これじゃ疲れすぎて午後の授業なんかできねぇわ」
『そんな事言って…いつも授業受ける気ない癖に』
カキツバタの事ならお見通しだというように笑う後輩に彼は目を大きくさせじわじわと照れくさそうに笑う
「……へへ」
へらりと笑い背伸びを終えた彼はふらりと歩き出すとチハルの隣に立ち大きな船を見上げた
「一年もおチビさんに会えないなんて寂しいねぇ、タロ達も随分騒いでたろぃ?」
『うん、行くのやめましょう!ってタロちゃんに言われちゃいましたしゼイユちゃんにも駄目って怒られました』
年は違うが友人であるタロやゼイユの顔を思い出し寂しそうに微笑む彼女をカキツバタは横目で確認し自分の頰を指先で数回かく
「オイラも……行ってほしくねぇんですがねぇ」
『本当?カキツバタ先輩でもあたしがいなくなると寂しいとか思ってくれるんですか?』
疑うようにからかうように下から顔を覗き込む彼女、カキツバタは鼻で笑いチハルの頭を乱暴にくしゃくしゃと撫でる
『うわわっ!』
「そりゃ寂しいわな、可愛い後輩がいなくなったら誰がオイラの世話してくれんだってことよ」
『あ〜せっかく髪ちゃんとセットとしたのにっ!もう!』
怒っても彼はヘラヘラしており本気で寂しがっているのか冗談かよく分からない
元々カキツバタは自分の本心を隠す癖があり大半の者は上辺しか知らないだろう
授業に対して不真面目でやる気がない
それなのにバトルは学園一強いという食えない男
だが本当は誰よりも周りを気にしており努力家だ、カキツバタの本当の姿を知っているのはきっとチハルだけだろう
「それにしても大丈夫でやんすかねぇ?おチビちゃんは鈍臭いつーか危なかっしいとこがあっからなぁ」
『そんなに心配しなくても一年したらちゃんと帰ってきますよ、それに電話もあるし!』
「あっちじゃ従兄弟の家に世話になるんだったか?」
『うん最初はね、後は寮生活になると思う!だから夜に電話しても大丈夫!』
カキツバタの不安を見抜くように明るく言えば彼は一度瞳を閉じ静かに頷いた
ゆっくりとこちらを見た金色の瞳は少し潤んで見えた気がしたが…気の所為だろうか
「手ぇだしな、優しいツバっさんからの餞別だ」
『ん?なんですか?』
「いいから、ほら右手貸しなって」
言われた通り手を彼に差し出すとカキツバタは懐から何かを取り出し、彼女の手を支え手首に何かを回しつけた
『………ミサンガ?』
「おう!お守りだ!」
青紫と白を混ぜたミサンガは手作りだろう
どことなくカキツバタをイメージする色合いだった…彼の好みの色だ
細く白い手首に着けられたミサンガをカキツバタは満足そうに笑い彼女の手を支えそれを見つめた
「似合うじゃねぇか」
『…可愛い、あ!でも本当にこれいいの!本当に貰っちゃうよ?』
「へへっ、気に入ったか?んじゃ遠慮なく貰ってくれや!」
『うわぁ!ありがとうございますっ!』
手を離すとチハルは貰ったミサンガのついた手を空へかざしてみたりポーズをとって嬉しそうに笑ってくれた
「………チハル、帰ってきたら…」
カキツバタが口を開くのと同時に船が出港の時間を知らせる汽笛を鳴らした
響き渡る大きな音にかき消され彼の口の動きしか見えず、耳に余韻を残しながら汽笛が鳴り終わる頃には彼が何を言ったのか分からない
『え?もう一度言ってくれますか?ちょっと聞こえなかったので』
「………………いや、なんでもねぇ」
『でも』
「いいっていいって!ほら遅れちまうぞ?」
彼女の肩を抱き船乗り場へと連れて行く、こちらを見上げる視線に気が付かないふりをし乗口へと案内し終えると二人は自然と離れお互いを見つめた
『じゃあ行ってきますね!あのっ本当に電話してもいいですか?』
「おう!チハルの為なら24時間いつでもツバっさんが話聞いてやっから!だから…ぜってぇかけろよぃ!」
『〜〜っ、はいっ!』
船が動く
お互いに片手を大きく振りながら姿が見えなくなるまで手を振り続け、船が小さくなるとカキツバタは重く感じる手を静かに下げ拳を強く握った
その手首にはチハルに渡した物と全く同じミサンガが着けられていた
「一年……か……長ぇなぁ」
小さく呟いた唇を噛み締め学園に戻る為に背を向けると離れた場所で海を見て泣くタロやゼイユ達が見えカキツバタはやれやれと鼻で笑った
『あ、おばさん?今出港しました!ハルトくんにも伝えて貰えますか?』
一方船の上ではチハルはこれから向かうパルデアに期待し顔を明るくさせていた
電話をしながら自分の手首についたミサンガを見つめ熱くなる瞳をそのままに無理して笑う彼女
これから向かうパルデアで出会う一人の男との熱い恋、そして残してきた男の嫉妬と執着に悩まされる一年となる事を彼女は予想もしなかっただろう