第一章(幼少期)
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『お兄ちゃん…チハル行きたくない』
チハルが六歳になった春先
初めての学校の登校日だ
椅子に座らせられ彼に靴を履かせてもらったチハルは鞄には触れず自分の指を弄りだす
「どうしてだ?」
『だって…知らない人しかいないのやだ、怖い』
うるうるした瞳でコチラを見つめてくる彼女はまるで子猫のように愛くるしく、ダンデは咄嗟に苦しくなる胸元を強く抑えた
「っ!よしっ!じゃあ学校に行くのはやめようっ!」
「やめようじゃないわよ!全くダンデはチハルには甘いんだからっ」
二人のやり取りを聞いていた母親は呆れたようにダンデの暴走を止め、嫌がるチハルに鞄を無理矢理持たせた
『お母さんっ』
「行けば楽しいわよ、本当に怖い事があるかは行かなきゃわからないでしょ?大丈夫だから行ってきなさい」
優しく微笑んだ母親は彼女の頭を軽く撫で玄関へと向かわせる、母親に言われてはこれ以上の我が儘を言えずチハルは手に持った鞄を強く胸に抱きしめた
行かないといけない
でも行きたくない
子供ながらに心で葛藤を繰り返して小さな背中を丸めたチハルの姿を見つめダンデはわざと明るい声をだした
「チハル!俺も途中まで行くぜ!」
『お兄ちゃん?』
「だから勇気を出すんだ!何かあったら俺とヒトカゲがすぐに助けに行くからな!」
「ちょっとダンデ!貴方も今日は友達と約束あるんでしょ?遅れないようにしなさいよ?」
「分かってるぜ!」
鼻息荒くして言うダンデの言葉にホッとしたのかチハルは小さく頷き、自然と彼女の手をダンデは優しく握り玄関を出た
短い足の歩幅に合わせゆっくりと歩き、元気がでるようにポケモンの話や自分が初めて学校に行った日の事を面白可笑しく話してくれた
道中は笑っていたチハルも学校の建物が見えてくると体を強張らせ足が止まる
「チハル?」
心配した彼はチハルの前でしゃがみ込み彼女の顔を覗き込んだ
『……本当に助けに来てくれる?』
泣きそうな顔をする彼女の両手をダンデは優しく包み込み握ると同じ目線の高さで彼女の顔をじっと見つめる
「勿論だぜ!俺はチハルのお兄ちゃんだからな!君が呼んでくれるなら何処へでも行くさ!」
約束だと微笑んだ彼にチハルは小さく頷くとトボトボと学校の門へと一人で進み、ダンデは彼女の姿が見えなくなるまでその場でじっと見送った
「……ドラメシヤ」
ボールから出したドラメシヤに何やら指示を出すとダンデは側にあった木に背中を預けもたれると腕を胸の前で組み合わせ、じっと建物を見つめ続けた
****************
『(うぅ…やっぱり帰りたいっ)』
初めての学校は同年代の子供達が一つの教室に溢れかえり賑やかだ
自分の席についたチハルはおどおどと辺りを見回しては視線がぶつかる度に何もない机の上を見つめ逃げてしまう
『(勇気っ…友達つくらなきゃ…何か話さないとっ!)』
子供なりにこのままでは駄目だと感じたのだろう
もう一度顔をあげた彼女は前の席の男の子と視線がぶつかり驚いた
「おっ、やっとこっち見た」
『んぐっ!』
驚き息を飲んでしまうが目の前の少年は人懐っこい性格なのか話をリードしチハルの緊張を解してくれた
その様子を教室の窓から眺めていたドラメシヤは主へと報告に戻り、登校初日は一匹のドラメシヤが何度も教室と門を行き来する姿が目撃された
「チハル」
『お兄ちゃんっ!』
放課後
門の前まで行くとダンデが迎えに来てくれていた
サプライズに喜んだ彼女はパタパタと小さな体で走り出し兄に真っ直ぐに突っ込んでいった
『どうして?今日は予定があったんじゃ』
「ああ、早く終わらせて迎えに来たんだ」
いつも通りの笑顔を向けてダンデは嘘をついた、彼女が心配で予定を全てキャンセルした彼はずっと門の近くの木でドラメシヤの報告を聞いていたのだ
「チハル、困った事は何もなかったか?」
『うん!ちょっと怖かったけど…もう大丈夫だよ!』
ニコニコと微笑む彼女の頭をダンデは優しい瞳で見つめながら撫でる
これなら明日から一人で学校に通えるようだ
「(…少し残念だ、もっと怖がって泣いて帰ってくるかと思ったのに)」
自分を見つけるなり泣きながら抱きついてきて、胸に強く抱きしめる事を期待していた
予想とは違い彼女は学校に良い印象を持てたらしく、甘えてこない妹にダンデは物足りなさを感じてしまう
「(駄目だな…妹の成長を喜ばないといけないのに寂しがるなんて)」
自分自身に呆れていると
『でも…ちょっと疲れたかも』
安心したのかチハルはダンデの胸に頰を擦り付け体の力を抜いた
崩れ落ちそうな彼女を咄嗟に支えるがどうも様子がおかしい
「チハル?」
顔を覗き込むと彼女の頬はいつもより赤く息が苦しそうだ
額に触れて見ると少し熱くダンデは驚きながら眉間に皺を寄せた
「熱があるじゃないか!」
その後家へ急いで連れ帰り母親に医者を呼んで貰った
初めての学校に緊張しすぎたのだろう、重い病気ではなくただの知恵熱だと言われて母親はホッとしたが
チハルが眠るベッドの側をダンデは離れようとしなかった
「(…やっぱり行かせなきゃよかったんだ、そうすればこんなツライ目に合わせずにすんだのに)」
床に膝をつき眠る彼女の手を握ったダンデは自分より小さな手を両手で包み込み、そこへ額を押し付け祈るように瞳を閉じた
『ん…お兄ちゃん?』
「チハルっ!大丈夫か?吐き気とか痛いところはないか!」
ぼんやりと目を覚ました彼女は側にいてくれた兄に顔を明るくさせ
『ん…大丈夫だよ』
弱く微笑むがダンデは泣きそうに顔を歪めるとチハルの手を強く握った
「学校が嫌なら行かなくていいんだぜ?俺から母さんを説得しとくから」
『ううん、あたし学校好きになったから行きたい』
「……本当か?無理はしないでくれよ?」
『うん!それより…アイス食べたい!』
にひひっとイタズラっぽく笑う彼女にダンデは目を大きくさせるが、すぐに小さく笑い返した
「ふふっ、じゃあ母さんには秘密だぜ?」
すぐに一階のキッチンからアイスをこっそりと持ち出すとダンデはベッドに腰掛けスプーンで彼女にアイスを食べさせようとした
「ほら、あ〜ん」
『あー』
素直に口を開けてくれる姿は雛鳥のようだ
「(…可愛い)」
一口食べると幸せそうに頰を緩ませダンデも楽しそうに彼女にアイスの乗ったスプーンを何度も差し出した
その時だ
「おっと!」
『んっ、冷たっ!』
スプーンから一口分のアイスが下へ落ちてしまいチハルの手の甲に落ちた
冷たいバニラアイスは肌の熱さに溶け出し手の甲に白い水溜りを広げていく
「すまない!すぐにテッシュをっ」
慌ててサイドテーブルへ手を伸ばそうとするが、ダンデがティッシュを取るより早くチハルは自分の手の甲を舐めだした
『ん、美味しっ』
クスクス笑う彼女は小さな赤い舌で手の甲に伸びたアイスを舐めとり、ダンデはその光景に釘付けになった
子猫がミルクを飲むようで可愛らしい
愛くるしいと感じつつ、それでいて腹の奥底が重くなるような不思議な感覚を感じた
まだ少年のダンデには経験のない男としての欲の感情だった
彼は自分の欲だという事に気がつかずただあまり見てはいけない気がした
それなのに目が勝手に彼女の舌を追いかけてしまう
「(なんだろう…喉が酷く渇くぜ)」
可愛い妹の存在がどんどんとダンデの心に広がり彼の心の奥底に熱い何かが増えていく
それは家族に対する愛ではなく
一人の女性へ向けるべき愛だった
チハルが六歳になった春先
初めての学校の登校日だ
椅子に座らせられ彼に靴を履かせてもらったチハルは鞄には触れず自分の指を弄りだす
「どうしてだ?」
『だって…知らない人しかいないのやだ、怖い』
うるうるした瞳でコチラを見つめてくる彼女はまるで子猫のように愛くるしく、ダンデは咄嗟に苦しくなる胸元を強く抑えた
「っ!よしっ!じゃあ学校に行くのはやめようっ!」
「やめようじゃないわよ!全くダンデはチハルには甘いんだからっ」
二人のやり取りを聞いていた母親は呆れたようにダンデの暴走を止め、嫌がるチハルに鞄を無理矢理持たせた
『お母さんっ』
「行けば楽しいわよ、本当に怖い事があるかは行かなきゃわからないでしょ?大丈夫だから行ってきなさい」
優しく微笑んだ母親は彼女の頭を軽く撫で玄関へと向かわせる、母親に言われてはこれ以上の我が儘を言えずチハルは手に持った鞄を強く胸に抱きしめた
行かないといけない
でも行きたくない
子供ながらに心で葛藤を繰り返して小さな背中を丸めたチハルの姿を見つめダンデはわざと明るい声をだした
「チハル!俺も途中まで行くぜ!」
『お兄ちゃん?』
「だから勇気を出すんだ!何かあったら俺とヒトカゲがすぐに助けに行くからな!」
「ちょっとダンデ!貴方も今日は友達と約束あるんでしょ?遅れないようにしなさいよ?」
「分かってるぜ!」
鼻息荒くして言うダンデの言葉にホッとしたのかチハルは小さく頷き、自然と彼女の手をダンデは優しく握り玄関を出た
短い足の歩幅に合わせゆっくりと歩き、元気がでるようにポケモンの話や自分が初めて学校に行った日の事を面白可笑しく話してくれた
道中は笑っていたチハルも学校の建物が見えてくると体を強張らせ足が止まる
「チハル?」
心配した彼はチハルの前でしゃがみ込み彼女の顔を覗き込んだ
『……本当に助けに来てくれる?』
泣きそうな顔をする彼女の両手をダンデは優しく包み込み握ると同じ目線の高さで彼女の顔をじっと見つめる
「勿論だぜ!俺はチハルのお兄ちゃんだからな!君が呼んでくれるなら何処へでも行くさ!」
約束だと微笑んだ彼にチハルは小さく頷くとトボトボと学校の門へと一人で進み、ダンデは彼女の姿が見えなくなるまでその場でじっと見送った
「……ドラメシヤ」
ボールから出したドラメシヤに何やら指示を出すとダンデは側にあった木に背中を預けもたれると腕を胸の前で組み合わせ、じっと建物を見つめ続けた
****************
『(うぅ…やっぱり帰りたいっ)』
初めての学校は同年代の子供達が一つの教室に溢れかえり賑やかだ
自分の席についたチハルはおどおどと辺りを見回しては視線がぶつかる度に何もない机の上を見つめ逃げてしまう
『(勇気っ…友達つくらなきゃ…何か話さないとっ!)』
子供なりにこのままでは駄目だと感じたのだろう
もう一度顔をあげた彼女は前の席の男の子と視線がぶつかり驚いた
「おっ、やっとこっち見た」
『んぐっ!』
驚き息を飲んでしまうが目の前の少年は人懐っこい性格なのか話をリードしチハルの緊張を解してくれた
その様子を教室の窓から眺めていたドラメシヤは主へと報告に戻り、登校初日は一匹のドラメシヤが何度も教室と門を行き来する姿が目撃された
「チハル」
『お兄ちゃんっ!』
放課後
門の前まで行くとダンデが迎えに来てくれていた
サプライズに喜んだ彼女はパタパタと小さな体で走り出し兄に真っ直ぐに突っ込んでいった
『どうして?今日は予定があったんじゃ』
「ああ、早く終わらせて迎えに来たんだ」
いつも通りの笑顔を向けてダンデは嘘をついた、彼女が心配で予定を全てキャンセルした彼はずっと門の近くの木でドラメシヤの報告を聞いていたのだ
「チハル、困った事は何もなかったか?」
『うん!ちょっと怖かったけど…もう大丈夫だよ!』
ニコニコと微笑む彼女の頭をダンデは優しい瞳で見つめながら撫でる
これなら明日から一人で学校に通えるようだ
「(…少し残念だ、もっと怖がって泣いて帰ってくるかと思ったのに)」
自分を見つけるなり泣きながら抱きついてきて、胸に強く抱きしめる事を期待していた
予想とは違い彼女は学校に良い印象を持てたらしく、甘えてこない妹にダンデは物足りなさを感じてしまう
「(駄目だな…妹の成長を喜ばないといけないのに寂しがるなんて)」
自分自身に呆れていると
『でも…ちょっと疲れたかも』
安心したのかチハルはダンデの胸に頰を擦り付け体の力を抜いた
崩れ落ちそうな彼女を咄嗟に支えるがどうも様子がおかしい
「チハル?」
顔を覗き込むと彼女の頬はいつもより赤く息が苦しそうだ
額に触れて見ると少し熱くダンデは驚きながら眉間に皺を寄せた
「熱があるじゃないか!」
その後家へ急いで連れ帰り母親に医者を呼んで貰った
初めての学校に緊張しすぎたのだろう、重い病気ではなくただの知恵熱だと言われて母親はホッとしたが
チハルが眠るベッドの側をダンデは離れようとしなかった
「(…やっぱり行かせなきゃよかったんだ、そうすればこんなツライ目に合わせずにすんだのに)」
床に膝をつき眠る彼女の手を握ったダンデは自分より小さな手を両手で包み込み、そこへ額を押し付け祈るように瞳を閉じた
『ん…お兄ちゃん?』
「チハルっ!大丈夫か?吐き気とか痛いところはないか!」
ぼんやりと目を覚ました彼女は側にいてくれた兄に顔を明るくさせ
『ん…大丈夫だよ』
弱く微笑むがダンデは泣きそうに顔を歪めるとチハルの手を強く握った
「学校が嫌なら行かなくていいんだぜ?俺から母さんを説得しとくから」
『ううん、あたし学校好きになったから行きたい』
「……本当か?無理はしないでくれよ?」
『うん!それより…アイス食べたい!』
にひひっとイタズラっぽく笑う彼女にダンデは目を大きくさせるが、すぐに小さく笑い返した
「ふふっ、じゃあ母さんには秘密だぜ?」
すぐに一階のキッチンからアイスをこっそりと持ち出すとダンデはベッドに腰掛けスプーンで彼女にアイスを食べさせようとした
「ほら、あ〜ん」
『あー』
素直に口を開けてくれる姿は雛鳥のようだ
「(…可愛い)」
一口食べると幸せそうに頰を緩ませダンデも楽しそうに彼女にアイスの乗ったスプーンを何度も差し出した
その時だ
「おっと!」
『んっ、冷たっ!』
スプーンから一口分のアイスが下へ落ちてしまいチハルの手の甲に落ちた
冷たいバニラアイスは肌の熱さに溶け出し手の甲に白い水溜りを広げていく
「すまない!すぐにテッシュをっ」
慌ててサイドテーブルへ手を伸ばそうとするが、ダンデがティッシュを取るより早くチハルは自分の手の甲を舐めだした
『ん、美味しっ』
クスクス笑う彼女は小さな赤い舌で手の甲に伸びたアイスを舐めとり、ダンデはその光景に釘付けになった
子猫がミルクを飲むようで可愛らしい
愛くるしいと感じつつ、それでいて腹の奥底が重くなるような不思議な感覚を感じた
まだ少年のダンデには経験のない男としての欲の感情だった
彼は自分の欲だという事に気がつかずただあまり見てはいけない気がした
それなのに目が勝手に彼女の舌を追いかけてしまう
「(なんだろう…喉が酷く渇くぜ)」
可愛い妹の存在がどんどんとダンデの心に広がり彼の心の奥底に熱い何かが増えていく
それは家族に対する愛ではなく
一人の女性へ向けるべき愛だった