第一巻
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本当の俺を見てほしい
『………本当の自分』
自室の鏡を前にナマエは呟き自分の顔を見つめた
頬まで隠そうとする長い前髪は視線を逸らすのに便利だったが
視界に入る前髪が最近気になりだした、これもすべてはダンデの顔をもっと見たいと思ったからかもしれない
『少しだけ切ろうかな』
引き出しからハサミを取り出しもう片方の手で切る位置を決めようと人差し指と中指で髪を挟む
鏡を見ながら切った場合の長さを予想しながら微調整をしていた時、ナマエの部屋の扉がノックもなしに開いた
「あのさお姉ちゃん、ってあれ?前髪切るの?」
『………ノックしようね?』
「ええ〜どうしたの?私が何度言っても切らなかったのに!」
姉の心境の変化に驚きながらも興味津々なユウリはナマエの隣に近寄り、ハサミを持つ彼女は気不味そうに口を尖らせた
『別に?ちょっと…気分変えようかなって思っただけ』
「ふ〜〜ん?」
ニマニマと笑うユウリは何か気がついているんだろうか
隣から意味深な視線を向けられナマエは今日切るのはやめようかとハサミを鏡台へと離した
『あんまり見ないで?やりにくい』
「あ!私が切ってあげよっか!」
『ユウリが?できるの?』
「平気、平気!いつも自分の前髪ちょいちょいって切ってるから!」
そういえばよくユウリは前髪を気にしている気がする、普段からやってるなら大丈夫だろう
妹を信じハサミを渡すが……これが間違いだったようだ
****************
「んじゃカブさんによろしくなっ」
エンジンシティは今日も賑やかだ
街の奴らがいつも以上に活気があるのはもうすぐ始まるジムチャレンジが関係するんだろう
開会式は毎年エンジンシティで行われる、観客が集まるこの機会に商売で儲けようとする店や出会いを求める若い奴らが浮足立っている
まあオレさまのナックルも似たようなもんだが
「さぁ〜て、予定より早く終わったしどっか寄り道でも……ん?」
黄色と黒のツートンカラーのモルペコパーカー、最近見かけた人物と同じ服につい目が止まってしまう
パーカーのフードをすっぽりと被ったそいつは美容院の出入り口に近づいては足を止め戻ろうとするが、また動きを止めては店に入ろうと躊躇している
悪いが不審者にしか見えない
本当にヤバい奴なら不味いし、ちょいと声かけとくか
「オマエ…何やってんの?」
後ろから声をかけるとそいつは大袈裟に体を飛び上がらせ小さく悲鳴をあげた
『ひッ!ちっ違っあの!あたしはっ』
振り返ったそいつは顔はフードで口元しか見えなかったが声からして間違いなく
「あれ?ナマエちゃん?」
『キッキバナさん?なんでエンジンシティに?』
いつだったかワイルドエリアで会ったモルペコちゃん…いや、ナマエちゃんだ
「オレさまはここのジムリーダーに借りてた本を返しに来たんだ、ナマエちゃんは?髪切るの?」
てかナマエちゃんってエンジンシティに住んでたのか?いや駅使ってたから違うか
てかなんでこんなに美容院に入るの躊躇してたんだ?
『入りたいんですが…その…お洒落な人達ばかりで入りにくいというか』
「はぁ?何それ」
『だって、なんか今覗いたら皆綺麗なお姉さんばかりで…あたしみたいなのが入ったら場違いというか嫌な顔されたらと思うと足が勝手に』
フードを両手で強く下に引っ張られ口元さえ見えにくくなる
そんなに卑下する程の見た目なんだろうか?
男のオレからすりゃ女の子達の美意識は尊敬するが、彼女は気にし過ぎなんじゃないだろうか
「あのなぁ〜意識しすぎ!てかここは客を綺麗にするのが仕事だろ?」
『そう…ですが』
俯いた彼女の顔がオレの身長からじゃ全然見えない
なんとなく顔を見て話したくてオレはその場にしゃがみ込みナマエちゃんを下から見上げた
「ビビっかもしれねぇけど、一回入っちまえばなんてことないもんだぜ?」
初めて入る店なんてそんなもんだ
励ましの言葉を口にするとナマエちゃんはオレさまをフードの中から見つめ
『……こんな髪でも…直してくれますか?』
「ん〜?」
彼女は次の瞬間、恐る恐る深く被っていたフードを外し初めてオレさまに隠していた顔を見せてくれた
彼女の素顔はオレさまの想像を斜め上で過ぎていき一瞬言葉が出なかった
フードからあらわれた彼女は化粧はしていないがそれなりに整った顔つきで、不安げに下がった眉と潤んだ瞳が印象的だった
そして…次に目が止まったのは
「……ぶっ!!何?どーしたのその髪!」
彼女の前髪はアシンメトリーとも言えない程疎らな長さをしていた
真っ直ぐなところがあると思えば極端に長かったり、斜めになったりと酷いもんだ
確かにこれじゃ店に入るのは勇気がいるわ
『酷いっ!笑わないでください!』
「フハッ、わりぃ!」
慌ててフードをまた深く被ってしまった彼女にオレは謝罪をしつつ口元は今だに笑ってしまう
『妹が、切ってくれたんですが…ちょっとあたしには個性的すぎて…だから直して貰いたいんです!』
「はぁ〜そっかそっか、んじゃ美容院の中までついてってやろうか?笑ったお詫びに店の人に頼んでやるよ」
『え?』
よいしょと立ち上がったオレはすぐに美容院へと向かい後ろからナマエちゃんも慌ててついてきた
店内に入ったオレは受付の担当者に事情を話し他の客から見えにくい奥の部屋に通して貰った
『キバナさん、あのっ!』
「ほら、可愛くしてもらえよ」
彼女の背中を押し椅子に座らせるとオレは待合室のソファに座りスマホを眺めながら時間潰しをする
僅かに聞こえるナマエちゃんと美容師の会話を聞きながら出来上がりを楽しみにした
「はい!出来たわよ!」
数分もしないうちにカットが終わったようだ、まあ前髪だけだからそんなに時間はかからないだろうが
「ナマエちゃんお疲れ〜、どうだっ…た…」
スマホから顔を上げオレの元に返ってきた彼女の顔を見上げるとオレさまの胸が一瞬飛び跳ねそうになった
『ん…なんか…落ち着かないですね』
疎らだった前髪は綺麗に整えられ隠す物がなくなったからか顔が明るくなった気がする
そして何より少し短い前髪は彼女によく似合い、照れながら前髪を弄る姿がなんか……可愛い
「お、おお〜似合う似合う!可愛くなったじゃん!」
オレさまはすぐにいつもの自分を取り戻すと立ち上がり彼女を褒めた
『〜〜っ!』
ナマエちゃんはとても照れ屋なのかすぐにフードを被ろうとするからオレは彼女の手首を咄嗟に掴み、隠すのを止めた
「隠すなよ、勿体ねぇじゃん」
頬を赤め反論しようとした彼女は口を僅かに開きかけるが、すぐに閉じてしまい
代わりにフードを掴んでいた手が離れていった
『っ、……慣れるように努力します』
「ハハッ、いい子だ!マジで可愛いから自信持ちなよ」
そっぽを向いてしまった彼女の耳が真っ赤に染まってるのをオレは見逃さず、照れ屋なナマエちゃんに少なからず好意を持った
『………本当の自分』
自室の鏡を前にナマエは呟き自分の顔を見つめた
頬まで隠そうとする長い前髪は視線を逸らすのに便利だったが
視界に入る前髪が最近気になりだした、これもすべてはダンデの顔をもっと見たいと思ったからかもしれない
『少しだけ切ろうかな』
引き出しからハサミを取り出しもう片方の手で切る位置を決めようと人差し指と中指で髪を挟む
鏡を見ながら切った場合の長さを予想しながら微調整をしていた時、ナマエの部屋の扉がノックもなしに開いた
「あのさお姉ちゃん、ってあれ?前髪切るの?」
『………ノックしようね?』
「ええ〜どうしたの?私が何度言っても切らなかったのに!」
姉の心境の変化に驚きながらも興味津々なユウリはナマエの隣に近寄り、ハサミを持つ彼女は気不味そうに口を尖らせた
『別に?ちょっと…気分変えようかなって思っただけ』
「ふ〜〜ん?」
ニマニマと笑うユウリは何か気がついているんだろうか
隣から意味深な視線を向けられナマエは今日切るのはやめようかとハサミを鏡台へと離した
『あんまり見ないで?やりにくい』
「あ!私が切ってあげよっか!」
『ユウリが?できるの?』
「平気、平気!いつも自分の前髪ちょいちょいって切ってるから!」
そういえばよくユウリは前髪を気にしている気がする、普段からやってるなら大丈夫だろう
妹を信じハサミを渡すが……これが間違いだったようだ
****************
「んじゃカブさんによろしくなっ」
エンジンシティは今日も賑やかだ
街の奴らがいつも以上に活気があるのはもうすぐ始まるジムチャレンジが関係するんだろう
開会式は毎年エンジンシティで行われる、観客が集まるこの機会に商売で儲けようとする店や出会いを求める若い奴らが浮足立っている
まあオレさまのナックルも似たようなもんだが
「さぁ〜て、予定より早く終わったしどっか寄り道でも……ん?」
黄色と黒のツートンカラーのモルペコパーカー、最近見かけた人物と同じ服につい目が止まってしまう
パーカーのフードをすっぽりと被ったそいつは美容院の出入り口に近づいては足を止め戻ろうとするが、また動きを止めては店に入ろうと躊躇している
悪いが不審者にしか見えない
本当にヤバい奴なら不味いし、ちょいと声かけとくか
「オマエ…何やってんの?」
後ろから声をかけるとそいつは大袈裟に体を飛び上がらせ小さく悲鳴をあげた
『ひッ!ちっ違っあの!あたしはっ』
振り返ったそいつは顔はフードで口元しか見えなかったが声からして間違いなく
「あれ?ナマエちゃん?」
『キッキバナさん?なんでエンジンシティに?』
いつだったかワイルドエリアで会ったモルペコちゃん…いや、ナマエちゃんだ
「オレさまはここのジムリーダーに借りてた本を返しに来たんだ、ナマエちゃんは?髪切るの?」
てかナマエちゃんってエンジンシティに住んでたのか?いや駅使ってたから違うか
てかなんでこんなに美容院に入るの躊躇してたんだ?
『入りたいんですが…その…お洒落な人達ばかりで入りにくいというか』
「はぁ?何それ」
『だって、なんか今覗いたら皆綺麗なお姉さんばかりで…あたしみたいなのが入ったら場違いというか嫌な顔されたらと思うと足が勝手に』
フードを両手で強く下に引っ張られ口元さえ見えにくくなる
そんなに卑下する程の見た目なんだろうか?
男のオレからすりゃ女の子達の美意識は尊敬するが、彼女は気にし過ぎなんじゃないだろうか
「あのなぁ〜意識しすぎ!てかここは客を綺麗にするのが仕事だろ?」
『そう…ですが』
俯いた彼女の顔がオレの身長からじゃ全然見えない
なんとなく顔を見て話したくてオレはその場にしゃがみ込みナマエちゃんを下から見上げた
「ビビっかもしれねぇけど、一回入っちまえばなんてことないもんだぜ?」
初めて入る店なんてそんなもんだ
励ましの言葉を口にするとナマエちゃんはオレさまをフードの中から見つめ
『……こんな髪でも…直してくれますか?』
「ん〜?」
彼女は次の瞬間、恐る恐る深く被っていたフードを外し初めてオレさまに隠していた顔を見せてくれた
彼女の素顔はオレさまの想像を斜め上で過ぎていき一瞬言葉が出なかった
フードからあらわれた彼女は化粧はしていないがそれなりに整った顔つきで、不安げに下がった眉と潤んだ瞳が印象的だった
そして…次に目が止まったのは
「……ぶっ!!何?どーしたのその髪!」
彼女の前髪はアシンメトリーとも言えない程疎らな長さをしていた
真っ直ぐなところがあると思えば極端に長かったり、斜めになったりと酷いもんだ
確かにこれじゃ店に入るのは勇気がいるわ
『酷いっ!笑わないでください!』
「フハッ、わりぃ!」
慌ててフードをまた深く被ってしまった彼女にオレは謝罪をしつつ口元は今だに笑ってしまう
『妹が、切ってくれたんですが…ちょっとあたしには個性的すぎて…だから直して貰いたいんです!』
「はぁ〜そっかそっか、んじゃ美容院の中までついてってやろうか?笑ったお詫びに店の人に頼んでやるよ」
『え?』
よいしょと立ち上がったオレはすぐに美容院へと向かい後ろからナマエちゃんも慌ててついてきた
店内に入ったオレは受付の担当者に事情を話し他の客から見えにくい奥の部屋に通して貰った
『キバナさん、あのっ!』
「ほら、可愛くしてもらえよ」
彼女の背中を押し椅子に座らせるとオレは待合室のソファに座りスマホを眺めながら時間潰しをする
僅かに聞こえるナマエちゃんと美容師の会話を聞きながら出来上がりを楽しみにした
「はい!出来たわよ!」
数分もしないうちにカットが終わったようだ、まあ前髪だけだからそんなに時間はかからないだろうが
「ナマエちゃんお疲れ〜、どうだっ…た…」
スマホから顔を上げオレの元に返ってきた彼女の顔を見上げるとオレさまの胸が一瞬飛び跳ねそうになった
『ん…なんか…落ち着かないですね』
疎らだった前髪は綺麗に整えられ隠す物がなくなったからか顔が明るくなった気がする
そして何より少し短い前髪は彼女によく似合い、照れながら前髪を弄る姿がなんか……可愛い
「お、おお〜似合う似合う!可愛くなったじゃん!」
オレさまはすぐにいつもの自分を取り戻すと立ち上がり彼女を褒めた
『〜〜っ!』
ナマエちゃんはとても照れ屋なのかすぐにフードを被ろうとするからオレは彼女の手首を咄嗟に掴み、隠すのを止めた
「隠すなよ、勿体ねぇじゃん」
頬を赤め反論しようとした彼女は口を僅かに開きかけるが、すぐに閉じてしまい
代わりにフードを掴んでいた手が離れていった
『っ、……慣れるように努力します』
「ハハッ、いい子だ!マジで可愛いから自信持ちなよ」
そっぽを向いてしまった彼女の耳が真っ赤に染まってるのをオレは見逃さず、照れ屋なナマエちゃんに少なからず好意を持った