第一巻
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「ジムチャレンジがしたい!」
それは爽やかな朝の事
天気もよく今日は何をしようかと考えていた時、朝食の席で突然話を切り出したユウリにナマエは固まってしまう
ただでさえ最近はダンデに悩まされているというのに妹の爆弾発言に理解が追いつかなかった
『ジム?え?旅に出るって事?』
「そうっ!」
ユウリは思い立ったらすぐ行動というタイプであり今回も深く考えずに言ったのだろう
流石に母親が止めてくれるだろうと頭を左右に振り、持っていたトーストに噛みつこうとするが
「あら、いいじゃないお母さんは応援するわよ〜」
のほほんと賛成を伝える母親にナマエはぎょっと目を見開き慌てて顔をそちらへ向ける
『まっ待ってよ母さん!ユウリはまだ十五歳だよ!ガラルに来て半年もしてないのにジムチャレンジなんて無理だよ!』
「無理じゃないもん!それに私より小さな子だって参加したことあるってホップから聞いたよ?」
幅広い年代のポケモントレーナーがいるようにジムチャレンジもまた決まった年齢制限はない
子供から大人まで参加資格さえあれば挑戦できるガラルのお祭りだ
頭では分かっているが妹が一人で旅をするのかと思うと自分の事のように不安を感じナマエは持っていたトーストを皿の上に戻した
『旅に出るとしても…ユウリは相棒ポケモンいないでしょ?』
「うちのゴンベをつれてく!」
『ゴンベは母さんの相棒でしょ!』
「む〜!じゃあホップに相談してみる、相棒ポケモンがいれば文句ないでしょ!」
今度こそ反対させないとばかりに目を輝かせるユウリにナマエは圧されてしまい頷くしかなかった
「ナマエったら本当にユウリに過保護ね、なんなら一緒に参加したらどう?」
『えっ!』
「そうだよ!お姉ちゃんも参加しよ!ずっと家にいてもつまらないでしょ!」
『別にあたしはずっと家でも…それにポケモンの育て方なんて…よく分からないし』
ゴンベと一緒に住んではいるがバトルはしたことがない
ジムチャレンジを目指すのと家族として暮らすではポケモンの育て方もまったく違うのだ
「あら、すぐ近くにプロがいるじゃない」
母親がニコニコと手のひらを向けた方向はユウリでもナマエでもなく窓を指しており、二人はキョトンと目を丸くさせた
「ホップくんのお兄さんに教わればいいでしょ?」
ホップの兄
つまりガラルのトップであるダンデの事だろう、確かに誰よりもポケモンについて分かっているだろうが
当たり前のようにダンデの名前を上げる母親にナマエは信じられないとばかりに顔を歪めた
『それは厚かましいというか…流石に遠慮した方がいいんじゃ?』
「そう?お隣さん同士だしきっと教えてくれると思うわよ?」
「ん〜私はホップに聞くからいいや、でもせっかくだからお姉ちゃんの事は話してみるね!」
『え!いやあたしはまだ参加するなんてっ』
「そうと決まれば!いってきまーす!」
ナマエの言葉も聞かずキッチンを飛び出した彼女はホップの家へとまっすぐに向い、ナマエは咄嗟に椅子から上げた腰を中途半端に停止させ顔を引きつらせた
『え……えぇ?』
****************
時は少し進みとある昼過ぎ
ローズタワー内では珍しくダンデが執務室の椅子に座っていた
新しく契約したスポンサーとの書類を確認したりエンジンシティで行われる開会式の段取りをチェックしていると彼のスマホロトムが宙に飛び上がり着信を知らせた
「どうしたホップ」
【あ、アニキ?今いいか?】
電話の相手は弟のホップだった
仕事相手ではないせいかダンデは若干肩の力を抜き書類片手に椅子の背もたれへと体を預け楽な姿勢をとった
「なんだ?」
【実はユウリがジムチャレンジに参加したいって言ってんだけどポケモンを持ってなくて…前に言ってた俺にくれるって言ってたポケモンあいつにもくれないか?】
「(ユウリ……ああ、ナマエの妹か)」
ホップと似たような年代の元気な少女、少々脳内に浮かべた顔は瞳の色以外ぼやけているが誰だか思い出す
「なんだ、そんな事か…いいぜ?ちょうど三匹用意していたからな」
【本当か!やったぜ!あ、そうだ!それともう一つ!】
「なんだ?推薦状ならバトルを見てからしかやらんぞ?」
いくら可愛い弟だからと言ってもジムチャレンジでの贔屓はしない、ダンデなりの譲れない線引をホップに伝え念を押すと
【違うって!ユウリの姉ちゃんがアニキにポケモンについて教わりたいってさ】
まさかのナマエの話題にダンデは眺めていた書類から勢いよく目を離した
「ナマエが?本当かっ?」
背中を預けていた椅子の背もたれから素早く起き上がるとダンデは耳にスマホを押し付け聞き返す
【お?おお、ユウリから聞いた話ではそうだぞ?】
食い気味に聞いてくる兄の様子にホップは驚きつつ応え、ダンデは知らず知らずに口角をじんわりと吊り上げていた
「分かった、次の休みにはそっちに行くぜ」
通話を終え暗くなったスマホロトムの画面を見下ろす彼は何やら真剣に考え出し自分の顎髭を人差し指で撫でる
暫く無言で考え込むと彼はスマホを操作しある人物へと電話をかけた
「ソニア?すまないが教えて欲しい事がある」
相手はダンデの幼馴染であり気兼ねなく話せる友人のソニアだった
【何?迷子なら迎えには行かないわよ?今ネイルしてるとこだし】
「違うぜ!ちょっと君の意見が聞きたいだけだ」
【意見?なんの?】
遺跡に関する事か
それとも新しいポケモンについての考察か、ソニアは期待に耳を傾けるがダンデからの言葉は予想外の内容だった
「その…とある女性にお礼をしたいんだが…モンスターボール五十個はどう思う?」
【は?】
「やはりハイパーボールの方がいいか?それか傷薬か…いっそ進化の石の方が綺麗だし嬉しいか?」
ダンデは真面目な顔で自分の考えを言ったつもりだが電話の向こう側の相手は驚きに声をあげた
【待って待って!それ本気で言ってんの?もし本気ならダンデくんってマジでそっちも方向音痴すぎ!】
「む?俺が貰って嬉しい物を言ってみたんだが…女性は嫌なのか?」
【よっぽどバトルジャンキーじゃなきゃ嫌だろうね】
「ゔっ………そうか、じゃあ何をあげれば喜ぶ?」
今まで家族以外の女性にプレゼントなんてした事がない
何が喜ばれるか分からず時間だけが経ちナマエのハンカチも返せずにいたのだ
【ん〜〜その人が好きな物何か知らないの?可愛いのが好きとか花が好きとか】
好きな物
思い浮かんだのは二人で夜の散歩をした時の事だった
夜空に手を伸ばしうっとりとした声を出すナマエの後ろ姿を思い出しダンデは胸の奥がむず痒くなる感覚がした
「彼女は……夜空が好きだぜ」
【夜空か……あ!じゃあナックルのお店にいいのあった気がする!確か星空をイメージしたゼリーがあったよ?お店の情報送っとくね】
「……星空のゼリーか」
すぐに送られた店の情報サイトには藍色から水色へとグラデーションの美しいゼリーの写真が載っていた
このゼリーを幸せそうに食べる彼女の姿が頭に浮かびダンデは顔を明るくさせ瞳を嬉しそうに細める
「ソニアっサンキューだ!」
【は〜い、てかダンデくんが誰かにプレゼントしたいなんて珍しいね?もしかして恋人?】
「ハハッ恋人じゃないぜ、とにかくありがとうな!」
【あ!ちょっ】
ソニアとの通話を無理矢理切り終わるとダンデはスマホを自分の口元へと押しあて困ったように笑った
「恋人……か」
それは爽やかな朝の事
天気もよく今日は何をしようかと考えていた時、朝食の席で突然話を切り出したユウリにナマエは固まってしまう
ただでさえ最近はダンデに悩まされているというのに妹の爆弾発言に理解が追いつかなかった
『ジム?え?旅に出るって事?』
「そうっ!」
ユウリは思い立ったらすぐ行動というタイプであり今回も深く考えずに言ったのだろう
流石に母親が止めてくれるだろうと頭を左右に振り、持っていたトーストに噛みつこうとするが
「あら、いいじゃないお母さんは応援するわよ〜」
のほほんと賛成を伝える母親にナマエはぎょっと目を見開き慌てて顔をそちらへ向ける
『まっ待ってよ母さん!ユウリはまだ十五歳だよ!ガラルに来て半年もしてないのにジムチャレンジなんて無理だよ!』
「無理じゃないもん!それに私より小さな子だって参加したことあるってホップから聞いたよ?」
幅広い年代のポケモントレーナーがいるようにジムチャレンジもまた決まった年齢制限はない
子供から大人まで参加資格さえあれば挑戦できるガラルのお祭りだ
頭では分かっているが妹が一人で旅をするのかと思うと自分の事のように不安を感じナマエは持っていたトーストを皿の上に戻した
『旅に出るとしても…ユウリは相棒ポケモンいないでしょ?』
「うちのゴンベをつれてく!」
『ゴンベは母さんの相棒でしょ!』
「む〜!じゃあホップに相談してみる、相棒ポケモンがいれば文句ないでしょ!」
今度こそ反対させないとばかりに目を輝かせるユウリにナマエは圧されてしまい頷くしかなかった
「ナマエったら本当にユウリに過保護ね、なんなら一緒に参加したらどう?」
『えっ!』
「そうだよ!お姉ちゃんも参加しよ!ずっと家にいてもつまらないでしょ!」
『別にあたしはずっと家でも…それにポケモンの育て方なんて…よく分からないし』
ゴンベと一緒に住んではいるがバトルはしたことがない
ジムチャレンジを目指すのと家族として暮らすではポケモンの育て方もまったく違うのだ
「あら、すぐ近くにプロがいるじゃない」
母親がニコニコと手のひらを向けた方向はユウリでもナマエでもなく窓を指しており、二人はキョトンと目を丸くさせた
「ホップくんのお兄さんに教わればいいでしょ?」
ホップの兄
つまりガラルのトップであるダンデの事だろう、確かに誰よりもポケモンについて分かっているだろうが
当たり前のようにダンデの名前を上げる母親にナマエは信じられないとばかりに顔を歪めた
『それは厚かましいというか…流石に遠慮した方がいいんじゃ?』
「そう?お隣さん同士だしきっと教えてくれると思うわよ?」
「ん〜私はホップに聞くからいいや、でもせっかくだからお姉ちゃんの事は話してみるね!」
『え!いやあたしはまだ参加するなんてっ』
「そうと決まれば!いってきまーす!」
ナマエの言葉も聞かずキッチンを飛び出した彼女はホップの家へとまっすぐに向い、ナマエは咄嗟に椅子から上げた腰を中途半端に停止させ顔を引きつらせた
『え……えぇ?』
****************
時は少し進みとある昼過ぎ
ローズタワー内では珍しくダンデが執務室の椅子に座っていた
新しく契約したスポンサーとの書類を確認したりエンジンシティで行われる開会式の段取りをチェックしていると彼のスマホロトムが宙に飛び上がり着信を知らせた
「どうしたホップ」
【あ、アニキ?今いいか?】
電話の相手は弟のホップだった
仕事相手ではないせいかダンデは若干肩の力を抜き書類片手に椅子の背もたれへと体を預け楽な姿勢をとった
「なんだ?」
【実はユウリがジムチャレンジに参加したいって言ってんだけどポケモンを持ってなくて…前に言ってた俺にくれるって言ってたポケモンあいつにもくれないか?】
「(ユウリ……ああ、ナマエの妹か)」
ホップと似たような年代の元気な少女、少々脳内に浮かべた顔は瞳の色以外ぼやけているが誰だか思い出す
「なんだ、そんな事か…いいぜ?ちょうど三匹用意していたからな」
【本当か!やったぜ!あ、そうだ!それともう一つ!】
「なんだ?推薦状ならバトルを見てからしかやらんぞ?」
いくら可愛い弟だからと言ってもジムチャレンジでの贔屓はしない、ダンデなりの譲れない線引をホップに伝え念を押すと
【違うって!ユウリの姉ちゃんがアニキにポケモンについて教わりたいってさ】
まさかのナマエの話題にダンデは眺めていた書類から勢いよく目を離した
「ナマエが?本当かっ?」
背中を預けていた椅子の背もたれから素早く起き上がるとダンデは耳にスマホを押し付け聞き返す
【お?おお、ユウリから聞いた話ではそうだぞ?】
食い気味に聞いてくる兄の様子にホップは驚きつつ応え、ダンデは知らず知らずに口角をじんわりと吊り上げていた
「分かった、次の休みにはそっちに行くぜ」
通話を終え暗くなったスマホロトムの画面を見下ろす彼は何やら真剣に考え出し自分の顎髭を人差し指で撫でる
暫く無言で考え込むと彼はスマホを操作しある人物へと電話をかけた
「ソニア?すまないが教えて欲しい事がある」
相手はダンデの幼馴染であり気兼ねなく話せる友人のソニアだった
【何?迷子なら迎えには行かないわよ?今ネイルしてるとこだし】
「違うぜ!ちょっと君の意見が聞きたいだけだ」
【意見?なんの?】
遺跡に関する事か
それとも新しいポケモンについての考察か、ソニアは期待に耳を傾けるがダンデからの言葉は予想外の内容だった
「その…とある女性にお礼をしたいんだが…モンスターボール五十個はどう思う?」
【は?】
「やはりハイパーボールの方がいいか?それか傷薬か…いっそ進化の石の方が綺麗だし嬉しいか?」
ダンデは真面目な顔で自分の考えを言ったつもりだが電話の向こう側の相手は驚きに声をあげた
【待って待って!それ本気で言ってんの?もし本気ならダンデくんってマジでそっちも方向音痴すぎ!】
「む?俺が貰って嬉しい物を言ってみたんだが…女性は嫌なのか?」
【よっぽどバトルジャンキーじゃなきゃ嫌だろうね】
「ゔっ………そうか、じゃあ何をあげれば喜ぶ?」
今まで家族以外の女性にプレゼントなんてした事がない
何が喜ばれるか分からず時間だけが経ちナマエのハンカチも返せずにいたのだ
【ん〜〜その人が好きな物何か知らないの?可愛いのが好きとか花が好きとか】
好きな物
思い浮かんだのは二人で夜の散歩をした時の事だった
夜空に手を伸ばしうっとりとした声を出すナマエの後ろ姿を思い出しダンデは胸の奥がむず痒くなる感覚がした
「彼女は……夜空が好きだぜ」
【夜空か……あ!じゃあナックルのお店にいいのあった気がする!確か星空をイメージしたゼリーがあったよ?お店の情報送っとくね】
「……星空のゼリーか」
すぐに送られた店の情報サイトには藍色から水色へとグラデーションの美しいゼリーの写真が載っていた
このゼリーを幸せそうに食べる彼女の姿が頭に浮かびダンデは顔を明るくさせ瞳を嬉しそうに細める
「ソニアっサンキューだ!」
【は〜い、てかダンデくんが誰かにプレゼントしたいなんて珍しいね?もしかして恋人?】
「ハハッ恋人じゃないぜ、とにかくありがとうな!」
【あ!ちょっ】
ソニアとの通話を無理矢理切り終わるとダンデはスマホを自分の口元へと押しあて困ったように笑った
「恋人……か」