第三巻
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ホテルをとり部屋に入るとナマエはベッドにふらりと腰掛け自分の手首を見下ろした
『(まだ…心臓がバクバク言ってる)』
キバナが来てくれなかったらきっと自分はあのまま見知らぬ男に辱めを受けていた、想像するだけで指先が冷え震えてしまう
そんな彼女に気がついたのか一緒について来てくれたキバナはナマエの前に静かにしゃがむと遠慮がちに顔を覗き込んできた
「……オレが触っても大丈夫?」
『え?』
「あの男の感触が残ってて怖いんだろ?もし…いいなら…オレが上書きしてもいい?」
男は苦手だ
だがキバナなら触れられても嫌な気持ちにはならない
ナマエは小さく頷くと彼は怖がらせないようにゆっくりと手を伸ばし、壊れ物を扱うように彼女の手を褐色の大きな両手で包みこんだ
「ごめんな?オレがもう少し早く来てれば嫌な思いしなくてすんだかもしれないのに」
『そんな…キバナさんのお陰で助かったんですから謝らないでください』
嫌な思いをしたというのに相手を思いやる言葉をくれる彼女にキバナは胸を痛め、耐えるように奥歯を噛み締めた
「ありがとうな……でも…やっぱオレ…つれぇわ」
キバナは男が触れた場所を丁寧に擦り感触を消そうとした
彼の手は先程の男とは違い温かくそれでいて安心感を与えてくれる
悲しげに手をじっと見つめた彼はオレンジ色のバンダナに隠れた太い眉を険しくさせ弱々しく呟いた
「なんで…オレじゃなかったんだろうな」
なんの事だろうか
彼を見下ろすとキバナは彼女の手を握った自分の手の甲に額を押し付けボソリと呟く
「オレが彼氏だったら…絶対こんな目に会わせないのに」
『(…え?)』
聞き間違いだろうか?
彼が何を言ったのかもう一度聞こうと背中を屈め顔を覗き込もうとするが、キバナは顔をあげると優しく微笑むばかりだった
「どう?いくらかマシになってきた?」
『え、あ…はいっ、ありがとうございます』
キバナが手を離すと肌が急に冷え残った感触が恋しくなる
あの男の代わりにキバナの温もりだけを体は覚え震えもいつの間にかなくなっていた
「さて…これからについてだけどさ、この妖しいサイトはオレさまに任せてくんない?」
長い脚で立ち上がるとポケットから飛び出したロトムがキバナの周りをふよふよと浮かんでいる
ロトムなりにキバナが自分を必要としてくれるタイミングが分かっているようだ
『それは勿論助かりますが…キバナさん大丈夫なんですか?色々と迷惑になるんじゃ』
「平気平気っ、寧ろオレも知りたいのよ…何処の誰がこんな馬鹿げた事をしてんのか」
手の中に収まったスマホロトムの画面を見つめながらバンダナの影がさす青い瞳が細められる
表には出さないが彼は先程から怒りに満ち溢れていた
大事な彼女に害を与えるならば罰は自分で犯人に与えたい
「(さて…どうしてくれようか)」
男でも女でも…それこそ子供でも関係ない
何処までも捜し出し追い詰めてやろうと作戦を考え始めると目の前の彼女はしょんぼりと肩を落とし自分の手を揉み合わせていた
『…他のチャレンジャーは大丈夫なんでしょうか?ユウリ達はあたしみたいに被害にあってないといいんですが』
「ん〜オレが調べた限りでは今のところ被害はでてねぇな、安心して…って言うのも変か」
『いえ、それならいいんです…あたしだけなら…それでいい』
妹やその友人にはツライ想いをさせたくない、姉としての愛なのか彼女本来の優しさか
どちらにしろキバナは自分がナマエを守りたいと思っている事には変わりない
「大丈夫だよ、ナマエちゃん」
キバナは片手で彼女の頭を撫でると小首を傾げてニッコリと微笑んだ
「オレさまに任せな!」
その笑顔だけで十分にも思えた
先程までの怖さや不安が溶けて消えていくように心が軽くなりナマエは彼を崇拝する神のように熱い視線で見上げた
その視線の熱さと無防備な姿にキバナは頭を撫でていた手をピクリと揺らし、彼女の頬へと手のひらを滑らせた
触れたナマエの頬は熱く柔らかい
手のひらに感じるじんわりとした温かさを感じながらキバナは親指の腹でそっと唇の端をなぞった
「…んな無防備な顔してっと…ちゅーしたくなるんだけど?」
『っ、え?ぁっ、すみませんっ、つい…ほっとして…嬉しくて…見すぎました!』
慌てて視線を反らし顔を背けようとするが彼女の顔に影がかかり
鼻を香水のようないい匂いが掠めた
僅かに聞こえた服の衣擦れを聞き影の主を確認しようとした瞬間、顎を掴まれたと思ったその時
『っ、…………え?』
「…………」
唇の端に熱い何かが触れた
小さなリップ音と共に離れていく柔らかいそれを目で追いかけるとコチラをじっとりと見つめる青い瞳と視線がぶつかった
「……謝らねぇからな」
『キバナさ…ん…え?今の…』
顎を掴んでいた手を離されるとナマエはキバナが触れた唇の端を指先で撫で途端に顔を真っ赤に染め上げた
キスされた
唇の端とは言えキスには違いない
困惑する彼女をそのままにキバナは背筋を戻すと何も言わず部屋を出ていき、後ろ手に扉を閉めると頬が急激に熱くなった
「……はぁぁ…(オレいつからこんなヘタレになっちまったんだ?…どうせならちゃんとキスしろよっ)」
唇にキスをしたかった
だがもし嫌われたらと思うとそこへキスをするができなかった
「………ガキじゃあるまいし」
思春期に戻ったような錯覚を感じ舌打ちをした彼は乱暴に足音を立てながらその場を後にするが
「(やっぱ好きすぎて…ほっとけねぇわ)」
彼の耳や刈り上げたうなじは頬と同様赤く染まっていたそうだ
***************
その頃電話に出れなかったダンデは仕事関係の会食に参加していた
スポンサーが増えれば挨拶をしなくてはいけないビジネスパートナーも増える
次から次へと挨拶に来る彼らに笑顔を向けるダンデは心の中では大きくため息ばかり吐いていた
「(……退屈だ)」
昼間から始まったパーティーは夜になるにつれ男性より女性が増えてくる
彼女達の目的は勿論仕事だが、それは表向きであり本音を言えばチャンピオンであるダンデと御近付きになるチャンスを狙っていた
一晩でも共にすれば噂となり世の中の女性達から羨ましがられるだろう
愛よりも自分自身を満たす為に近寄ってくる彼女達にダンデは嫌気がさし酒を飲むふりをし話を反らしていた
「(いっそこの場で話してしまいたいぜ…俺にはナマエという恋人がいるんだって)」
きっとそんな事をしてはナマエは顔を真っ赤にして涙目で怒るだろう
それはそれで見てみたいと想像する彼は頰を緩めクスッも小さく笑った
「(せめてロトムを持ってくればよかったな…マナー違反と言われるから渋々置いてきたが暇潰しができなくて不便すぎるぜ)」
女性に囲まれていて暇潰しも何もあったものじゃないが、それほどダンデには周りの女性が目に入らないようだ
「ダンデさん、よかったらこの新作のワインもお試しください」
そんな時だ
グラス片手に近寄ってきた女がいた
「(……誰だ?)」
見たことがあるような無いような
ピンと来ていない彼の反応に小さな苛立ちを浮かべた女性はグラスをダンデへと差し出し微笑んだ
「以前雑誌の撮影をご一緒したんですよ?もしかしてお忘れてですか?」
「………すまない」
「まあ、酷い…あれから何度もお会いしてるのに」
女性はダンデがグラスを受け取るまで動かないといった態度をとり、ダンデは仕方なくそのグラスを受け取った
女性のドレスと同じ真っ赤な色のワインが入ったそのグラスは濃厚な葡萄の匂いがし鼻を強く刺激した
「ダンデさんと少しでもご一緒できたあの瞬間は私の最高の思い出で…今日も会えるのをずっと楽しみにしてたんです」
「……そうか、それは光栄だぜ」
赤いドレスから溢れんばかりに出た豊満な胸、他の男ならばきっと本能的に目が釘付けになるだろうが
生憎ダンデは違う
「(重そうだな…そう言えばナマエはどのくらいだろうか?いつもぶかぶかのパーカーを着てるからよく分からないが…小さくて恥ずかしがる姿も大きくて困っている姿も悪くないな)」
まだ体の関係はない
過去にセックスの経験が一度もないダンデは未知の期待がつい溢れ出し邪な事を考えてしまう
「今日のパーティーも実はキバナさんから教わって頑張って来たんですよ?私…どうしてもダンデさんに会いたくて」
「キバナ?」
「ええ、彼ともお仕事を一緒にしてて…私の話を聞いてこうしてチャンスをくれたんです」
勿論嘘だ
家にまで来るあまりにしつこい彼女にキバナは呆れていた
関わりたくはないが、ちょうどナマエを泊めていた日に来られキバナは嫌嫌女性の話を聞いたのだ
彼女の目的はダンデの女になる事
それが駄目ならキバナの女になろうと日頃から二人に絡んでいた
女性慣れしているキバナには通じないが、恋愛に疎いダンデならばと今夜勝負にでたようだ
積極的に攻めてくる彼女に周りの女性達は距離を取りながら見守る
いや様子見だ
ダンデが女性に靡くのか
それとも今回も話を反らして逃げるのか
多くの視線を感じながら女性はもう一歩と言葉を続けた
「それに私ダンデさんが心配で…色々あったじゃないですか」
「何の事だ?」
片眉を吊り上げ怪訝な顔を浮かべる彼に女性は口元に笑みを浮べると、こっそりと彼にだけ聞こえるように囁いた
「貴方の推薦した選手……売春してたそうですよ?」
その瞬間ダンデの手は力加減ができず
ガシャッンッ!!
「きゃあっ!!」
ガラスが割れる音が響き、ワイングラスは彼の手の中から砕けて床に落ちた
「ダンデさん!大丈夫ですか!」
「誰か手当てを!」
砕けた透明なガラス
赤いワインと割れたガラスのせいで傷口から出た赤が彼の手のひらから零れ落ち床を染めていく
だがダンデは痛みなど感じず、ただ女性を睨み眉間に深い皺を寄せた
「……詳しく聞かせてくれ…だが、もし嘘なら俺も黙ってないぜ」
王の覇気とでも言うのか
ジリジリと肌に感じる怒りに女性は顔を青くさせるが喉を上下させると頷き妖しく引きつった笑みを浮かべた
『(まだ…心臓がバクバク言ってる)』
キバナが来てくれなかったらきっと自分はあのまま見知らぬ男に辱めを受けていた、想像するだけで指先が冷え震えてしまう
そんな彼女に気がついたのか一緒について来てくれたキバナはナマエの前に静かにしゃがむと遠慮がちに顔を覗き込んできた
「……オレが触っても大丈夫?」
『え?』
「あの男の感触が残ってて怖いんだろ?もし…いいなら…オレが上書きしてもいい?」
男は苦手だ
だがキバナなら触れられても嫌な気持ちにはならない
ナマエは小さく頷くと彼は怖がらせないようにゆっくりと手を伸ばし、壊れ物を扱うように彼女の手を褐色の大きな両手で包みこんだ
「ごめんな?オレがもう少し早く来てれば嫌な思いしなくてすんだかもしれないのに」
『そんな…キバナさんのお陰で助かったんですから謝らないでください』
嫌な思いをしたというのに相手を思いやる言葉をくれる彼女にキバナは胸を痛め、耐えるように奥歯を噛み締めた
「ありがとうな……でも…やっぱオレ…つれぇわ」
キバナは男が触れた場所を丁寧に擦り感触を消そうとした
彼の手は先程の男とは違い温かくそれでいて安心感を与えてくれる
悲しげに手をじっと見つめた彼はオレンジ色のバンダナに隠れた太い眉を険しくさせ弱々しく呟いた
「なんで…オレじゃなかったんだろうな」
なんの事だろうか
彼を見下ろすとキバナは彼女の手を握った自分の手の甲に額を押し付けボソリと呟く
「オレが彼氏だったら…絶対こんな目に会わせないのに」
『(…え?)』
聞き間違いだろうか?
彼が何を言ったのかもう一度聞こうと背中を屈め顔を覗き込もうとするが、キバナは顔をあげると優しく微笑むばかりだった
「どう?いくらかマシになってきた?」
『え、あ…はいっ、ありがとうございます』
キバナが手を離すと肌が急に冷え残った感触が恋しくなる
あの男の代わりにキバナの温もりだけを体は覚え震えもいつの間にかなくなっていた
「さて…これからについてだけどさ、この妖しいサイトはオレさまに任せてくんない?」
長い脚で立ち上がるとポケットから飛び出したロトムがキバナの周りをふよふよと浮かんでいる
ロトムなりにキバナが自分を必要としてくれるタイミングが分かっているようだ
『それは勿論助かりますが…キバナさん大丈夫なんですか?色々と迷惑になるんじゃ』
「平気平気っ、寧ろオレも知りたいのよ…何処の誰がこんな馬鹿げた事をしてんのか」
手の中に収まったスマホロトムの画面を見つめながらバンダナの影がさす青い瞳が細められる
表には出さないが彼は先程から怒りに満ち溢れていた
大事な彼女に害を与えるならば罰は自分で犯人に与えたい
「(さて…どうしてくれようか)」
男でも女でも…それこそ子供でも関係ない
何処までも捜し出し追い詰めてやろうと作戦を考え始めると目の前の彼女はしょんぼりと肩を落とし自分の手を揉み合わせていた
『…他のチャレンジャーは大丈夫なんでしょうか?ユウリ達はあたしみたいに被害にあってないといいんですが』
「ん〜オレが調べた限りでは今のところ被害はでてねぇな、安心して…って言うのも変か」
『いえ、それならいいんです…あたしだけなら…それでいい』
妹やその友人にはツライ想いをさせたくない、姉としての愛なのか彼女本来の優しさか
どちらにしろキバナは自分がナマエを守りたいと思っている事には変わりない
「大丈夫だよ、ナマエちゃん」
キバナは片手で彼女の頭を撫でると小首を傾げてニッコリと微笑んだ
「オレさまに任せな!」
その笑顔だけで十分にも思えた
先程までの怖さや不安が溶けて消えていくように心が軽くなりナマエは彼を崇拝する神のように熱い視線で見上げた
その視線の熱さと無防備な姿にキバナは頭を撫でていた手をピクリと揺らし、彼女の頬へと手のひらを滑らせた
触れたナマエの頬は熱く柔らかい
手のひらに感じるじんわりとした温かさを感じながらキバナは親指の腹でそっと唇の端をなぞった
「…んな無防備な顔してっと…ちゅーしたくなるんだけど?」
『っ、え?ぁっ、すみませんっ、つい…ほっとして…嬉しくて…見すぎました!』
慌てて視線を反らし顔を背けようとするが彼女の顔に影がかかり
鼻を香水のようないい匂いが掠めた
僅かに聞こえた服の衣擦れを聞き影の主を確認しようとした瞬間、顎を掴まれたと思ったその時
『っ、…………え?』
「…………」
唇の端に熱い何かが触れた
小さなリップ音と共に離れていく柔らかいそれを目で追いかけるとコチラをじっとりと見つめる青い瞳と視線がぶつかった
「……謝らねぇからな」
『キバナさ…ん…え?今の…』
顎を掴んでいた手を離されるとナマエはキバナが触れた唇の端を指先で撫で途端に顔を真っ赤に染め上げた
キスされた
唇の端とは言えキスには違いない
困惑する彼女をそのままにキバナは背筋を戻すと何も言わず部屋を出ていき、後ろ手に扉を閉めると頬が急激に熱くなった
「……はぁぁ…(オレいつからこんなヘタレになっちまったんだ?…どうせならちゃんとキスしろよっ)」
唇にキスをしたかった
だがもし嫌われたらと思うとそこへキスをするができなかった
「………ガキじゃあるまいし」
思春期に戻ったような錯覚を感じ舌打ちをした彼は乱暴に足音を立てながらその場を後にするが
「(やっぱ好きすぎて…ほっとけねぇわ)」
彼の耳や刈り上げたうなじは頬と同様赤く染まっていたそうだ
***************
その頃電話に出れなかったダンデは仕事関係の会食に参加していた
スポンサーが増えれば挨拶をしなくてはいけないビジネスパートナーも増える
次から次へと挨拶に来る彼らに笑顔を向けるダンデは心の中では大きくため息ばかり吐いていた
「(……退屈だ)」
昼間から始まったパーティーは夜になるにつれ男性より女性が増えてくる
彼女達の目的は勿論仕事だが、それは表向きであり本音を言えばチャンピオンであるダンデと御近付きになるチャンスを狙っていた
一晩でも共にすれば噂となり世の中の女性達から羨ましがられるだろう
愛よりも自分自身を満たす為に近寄ってくる彼女達にダンデは嫌気がさし酒を飲むふりをし話を反らしていた
「(いっそこの場で話してしまいたいぜ…俺にはナマエという恋人がいるんだって)」
きっとそんな事をしてはナマエは顔を真っ赤にして涙目で怒るだろう
それはそれで見てみたいと想像する彼は頰を緩めクスッも小さく笑った
「(せめてロトムを持ってくればよかったな…マナー違反と言われるから渋々置いてきたが暇潰しができなくて不便すぎるぜ)」
女性に囲まれていて暇潰しも何もあったものじゃないが、それほどダンデには周りの女性が目に入らないようだ
「ダンデさん、よかったらこの新作のワインもお試しください」
そんな時だ
グラス片手に近寄ってきた女がいた
「(……誰だ?)」
見たことがあるような無いような
ピンと来ていない彼の反応に小さな苛立ちを浮かべた女性はグラスをダンデへと差し出し微笑んだ
「以前雑誌の撮影をご一緒したんですよ?もしかしてお忘れてですか?」
「………すまない」
「まあ、酷い…あれから何度もお会いしてるのに」
女性はダンデがグラスを受け取るまで動かないといった態度をとり、ダンデは仕方なくそのグラスを受け取った
女性のドレスと同じ真っ赤な色のワインが入ったそのグラスは濃厚な葡萄の匂いがし鼻を強く刺激した
「ダンデさんと少しでもご一緒できたあの瞬間は私の最高の思い出で…今日も会えるのをずっと楽しみにしてたんです」
「……そうか、それは光栄だぜ」
赤いドレスから溢れんばかりに出た豊満な胸、他の男ならばきっと本能的に目が釘付けになるだろうが
生憎ダンデは違う
「(重そうだな…そう言えばナマエはどのくらいだろうか?いつもぶかぶかのパーカーを着てるからよく分からないが…小さくて恥ずかしがる姿も大きくて困っている姿も悪くないな)」
まだ体の関係はない
過去にセックスの経験が一度もないダンデは未知の期待がつい溢れ出し邪な事を考えてしまう
「今日のパーティーも実はキバナさんから教わって頑張って来たんですよ?私…どうしてもダンデさんに会いたくて」
「キバナ?」
「ええ、彼ともお仕事を一緒にしてて…私の話を聞いてこうしてチャンスをくれたんです」
勿論嘘だ
家にまで来るあまりにしつこい彼女にキバナは呆れていた
関わりたくはないが、ちょうどナマエを泊めていた日に来られキバナは嫌嫌女性の話を聞いたのだ
彼女の目的はダンデの女になる事
それが駄目ならキバナの女になろうと日頃から二人に絡んでいた
女性慣れしているキバナには通じないが、恋愛に疎いダンデならばと今夜勝負にでたようだ
積極的に攻めてくる彼女に周りの女性達は距離を取りながら見守る
いや様子見だ
ダンデが女性に靡くのか
それとも今回も話を反らして逃げるのか
多くの視線を感じながら女性はもう一歩と言葉を続けた
「それに私ダンデさんが心配で…色々あったじゃないですか」
「何の事だ?」
片眉を吊り上げ怪訝な顔を浮かべる彼に女性は口元に笑みを浮べると、こっそりと彼にだけ聞こえるように囁いた
「貴方の推薦した選手……売春してたそうですよ?」
その瞬間ダンデの手は力加減ができず
ガシャッンッ!!
「きゃあっ!!」
ガラスが割れる音が響き、ワイングラスは彼の手の中から砕けて床に落ちた
「ダンデさん!大丈夫ですか!」
「誰か手当てを!」
砕けた透明なガラス
赤いワインと割れたガラスのせいで傷口から出た赤が彼の手のひらから零れ落ち床を染めていく
だがダンデは痛みなど感じず、ただ女性を睨み眉間に深い皺を寄せた
「……詳しく聞かせてくれ…だが、もし嘘なら俺も黙ってないぜ」
王の覇気とでも言うのか
ジリジリと肌に感じる怒りに女性は顔を青くさせるが喉を上下させると頷き妖しく引きつった笑みを浮かべた