第一巻
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「うーむ」
自室にて机の上に広げた白いハンカチ、その上にはナマエから貰ったクッキーが並ぶが数は随分減ってしまった
「アニキ!一緒にテレビっ…て、何やってんだ?」
ノックも無しにダンデの部屋に入ってきたホップは腕を組み合わせ椅子に座っていた彼に小首を傾げた
「クッキー?どうしたんだそれ?買ったのか?」
机に広げられたクッキーに手を伸ばそうとするとダンデは咄嗟にホップのその手を強く掴んだ
「あ…いや、これは貰ったんだ」
「なんだプレゼントかよ、それなら早く言えばいいのに」
「プレゼント…と言えばプレゼントなんだろうか」
流石に兄が貰ったプレゼントなら手を出すつもりはない
ホップは伸ばしていた手を下げたがスッキリしない顔をするダンデに疑問を感じた
彼がプレゼントだとハッキリと言えない理由は自分の腹の虫のせいだ
「(彼女はきっとプレゼントとは思っていない、俺の腹の虫が鳴ったから仕方なく分けてくれただけだろう)」
「でも珍しいよな?アニキってファンからのプレゼントとか絶対食べないのに、もしかしてソニアからか?」
ファンからプレゼントとしてお菓子はよく貰う、中には異性として好意を現す女性から手紙と共に手作り品もよく貰ったがダンデはけして口にはしなかった
全てのファンがするわけではないが極稀に怪し気な薬を忍ばせる者がいたからだ
「ソニアじゃないぜ、自分でも驚いてるんだが…その…これは特別美味くて」
クッキーを一つ掴みじっと見つめると彼は何故か口には入れず元の場所へと戻してしまった
「食べないのか?」
「食べたら無くなるじゃないか」
真顔で当たり前の事を言われホップはまた小首を傾げてしまう
「ん?食べたら無くなるのは当たり前だろ?」
「無くなったら寂しいだろ?」
「じゃあずっと食べないのか?」
「いや…それじゃあせっかく作ったのに勿体ない」
つまり彼はクッキーを食べて無くすのも残して捨てる事になるのも嫌なようだ
永遠と同じ自問自答をしていたらしく随分長い事クッキーを見つめたまま腕組みをしていたのだろう
それ程までに美味いクッキーなんだろうか、好奇心が芽生えホップはソロリと手を伸ばし
「いただきっ!」
「なっ!ホップッ!!」
端っこにおいていた一つを素早く奪い取り口に放り込むとホップはすぐに目を輝かせ自分の頬を両手で包んだ
「〜〜っ!美味いっ!これ本当に美味いぞ!もっと食べていい?」
「駄目に決まっているだろ!ただでさえ残り少なくなってるのに!」
ぎゃあぎゃあ兄弟揃って言い合いをし騒いでいるとダンデの腰に下げていたモンスターボールが一つ床に落ちた
ポンッと光と共に出てきたリザードンは辺りを見回し喧嘩している相棒とホップにやれやれと鼻息を吐く
するといい匂いが彼の鼻を掠め机に並べられたポケモンの形をしたクッキーに気がつき……
「あっアニキ!後ろっ!後ろっ!」
「なんだ突然、その手にはのら…リザードンっ!!」
罠かと思いつつ振り向けばリザードンが全てのクッキーを口へと放り込むところだった
「コラッ!違うこれはお前のじゃないっ!」
慌ててリザードンの口を掴もうとするが彼は長い首を逸らしゴクリとクッキーを飲み込んでしまい
満足そうにぺろりと自分の口周りを赤い舌で舐め取った
「(うわ…ヤバっ!)」
大事にしていたクッキーは全て無くなり白いハンカチだけが残る机の上
「〜〜っ!!」
ダンデの紫の長い髪がゆらりと膨らんで見えたのは幻か
怒りに染まる兄の後ろ姿に気がついたホップはそそくさと部屋を後にするが後ろからすぐにダンデの大きな怒声がビリビリと家中に響いたらしい
****************
「はぁ…まったく」
数分後、やっと怒りが収まった彼は一人になった自室で机の上を寂しそうに見つめた
僅かに残っていた欠片を一つとり口に運べばふんわりとバターの風味がし頬が緩む
「(美味い…これを彼女が作ってるんだよな、一体どんな風に作るんだろうか)」
初めて会った時、彼女はダンデの握手を拒んだ
長年ガラルのチャンピオンをしてきた彼は握手を求められる事はあっても拒否された事はない
バトルで負けた相手でさえ握手を強請るというのに…ナマエは違った
そんな彼女がホップとは握手をした時は子供のように嫉妬心が湧き上がり顔に力が入ったものだ
数日前に会いに行けば自分の顔を見るなりドアを閉められた
自分の事が嫌いなのだろうか
彼女に何かしただろうか?
そんな疑問も浮かんだが再度ドアが開いた時彼の頭から不安は何処かへ消えてしまい
代わりに最初より彼女が色濃く見えた
長い前髪に隠れていた彼女の素顔は予想よりも整っており、何よりも恥じらう姿は男心を擽る物がある
小動物のように怯えたリアクションや必死に応えようとする姿を見た時は手持ちポケモンを褒める時と同じく撫で回したくなりつい手が動きそうになったものだ
「………ナマエ」
不意に彼女の名前を口にしてみた
すると不思議な事が起こった
「っ……なんだ?なんで…こんな照れるんだっ!」
この場にいない彼女の名前を口にしただけでダンデの頬はほんのりと熱を帯びだしたのだ
自分らしくないと頭を左右に振りクッキーの無くなったハンカチを手に取るとダンデは漸く自室から出ていきゆっくりと階段を下りた
「(そうだ…クッキーのお礼をしなくては、何がいいだろうか)」
ナマエの事を考えながら一階へと降りると彼のポケットに入っていたスマホロトムが飛び出し着信を知らせる
画面にはローズの文字が映しだされておりダンデは自然と眉を寄せ嫌な予感を感じつつ通話モードへと操作する
「……はい」
スマホから聞こえるローズの話を聞きながら手に持つハンカチを静かに見つめ、一度瞳を閉じる
【というわけで休暇中のチャンピオンには悪いんだけど、戻ってきてくれるかな?】
疑問形だというのに命令された気分がする
例えチャンピオンという立場でも上司からの呼び出しには逆らえない
せっかくの休暇だが仕事にすぐ戻らなくてはならない、ダンデはつらそうに眉間にシワを作り瞳を開けると持っていたハンカチを大事そうにポケットへとしまいこんだ
自室にて机の上に広げた白いハンカチ、その上にはナマエから貰ったクッキーが並ぶが数は随分減ってしまった
「アニキ!一緒にテレビっ…て、何やってんだ?」
ノックも無しにダンデの部屋に入ってきたホップは腕を組み合わせ椅子に座っていた彼に小首を傾げた
「クッキー?どうしたんだそれ?買ったのか?」
机に広げられたクッキーに手を伸ばそうとするとダンデは咄嗟にホップのその手を強く掴んだ
「あ…いや、これは貰ったんだ」
「なんだプレゼントかよ、それなら早く言えばいいのに」
「プレゼント…と言えばプレゼントなんだろうか」
流石に兄が貰ったプレゼントなら手を出すつもりはない
ホップは伸ばしていた手を下げたがスッキリしない顔をするダンデに疑問を感じた
彼がプレゼントだとハッキリと言えない理由は自分の腹の虫のせいだ
「(彼女はきっとプレゼントとは思っていない、俺の腹の虫が鳴ったから仕方なく分けてくれただけだろう)」
「でも珍しいよな?アニキってファンからのプレゼントとか絶対食べないのに、もしかしてソニアからか?」
ファンからプレゼントとしてお菓子はよく貰う、中には異性として好意を現す女性から手紙と共に手作り品もよく貰ったがダンデはけして口にはしなかった
全てのファンがするわけではないが極稀に怪し気な薬を忍ばせる者がいたからだ
「ソニアじゃないぜ、自分でも驚いてるんだが…その…これは特別美味くて」
クッキーを一つ掴みじっと見つめると彼は何故か口には入れず元の場所へと戻してしまった
「食べないのか?」
「食べたら無くなるじゃないか」
真顔で当たり前の事を言われホップはまた小首を傾げてしまう
「ん?食べたら無くなるのは当たり前だろ?」
「無くなったら寂しいだろ?」
「じゃあずっと食べないのか?」
「いや…それじゃあせっかく作ったのに勿体ない」
つまり彼はクッキーを食べて無くすのも残して捨てる事になるのも嫌なようだ
永遠と同じ自問自答をしていたらしく随分長い事クッキーを見つめたまま腕組みをしていたのだろう
それ程までに美味いクッキーなんだろうか、好奇心が芽生えホップはソロリと手を伸ばし
「いただきっ!」
「なっ!ホップッ!!」
端っこにおいていた一つを素早く奪い取り口に放り込むとホップはすぐに目を輝かせ自分の頬を両手で包んだ
「〜〜っ!美味いっ!これ本当に美味いぞ!もっと食べていい?」
「駄目に決まっているだろ!ただでさえ残り少なくなってるのに!」
ぎゃあぎゃあ兄弟揃って言い合いをし騒いでいるとダンデの腰に下げていたモンスターボールが一つ床に落ちた
ポンッと光と共に出てきたリザードンは辺りを見回し喧嘩している相棒とホップにやれやれと鼻息を吐く
するといい匂いが彼の鼻を掠め机に並べられたポケモンの形をしたクッキーに気がつき……
「あっアニキ!後ろっ!後ろっ!」
「なんだ突然、その手にはのら…リザードンっ!!」
罠かと思いつつ振り向けばリザードンが全てのクッキーを口へと放り込むところだった
「コラッ!違うこれはお前のじゃないっ!」
慌ててリザードンの口を掴もうとするが彼は長い首を逸らしゴクリとクッキーを飲み込んでしまい
満足そうにぺろりと自分の口周りを赤い舌で舐め取った
「(うわ…ヤバっ!)」
大事にしていたクッキーは全て無くなり白いハンカチだけが残る机の上
「〜〜っ!!」
ダンデの紫の長い髪がゆらりと膨らんで見えたのは幻か
怒りに染まる兄の後ろ姿に気がついたホップはそそくさと部屋を後にするが後ろからすぐにダンデの大きな怒声がビリビリと家中に響いたらしい
****************
「はぁ…まったく」
数分後、やっと怒りが収まった彼は一人になった自室で机の上を寂しそうに見つめた
僅かに残っていた欠片を一つとり口に運べばふんわりとバターの風味がし頬が緩む
「(美味い…これを彼女が作ってるんだよな、一体どんな風に作るんだろうか)」
初めて会った時、彼女はダンデの握手を拒んだ
長年ガラルのチャンピオンをしてきた彼は握手を求められる事はあっても拒否された事はない
バトルで負けた相手でさえ握手を強請るというのに…ナマエは違った
そんな彼女がホップとは握手をした時は子供のように嫉妬心が湧き上がり顔に力が入ったものだ
数日前に会いに行けば自分の顔を見るなりドアを閉められた
自分の事が嫌いなのだろうか
彼女に何かしただろうか?
そんな疑問も浮かんだが再度ドアが開いた時彼の頭から不安は何処かへ消えてしまい
代わりに最初より彼女が色濃く見えた
長い前髪に隠れていた彼女の素顔は予想よりも整っており、何よりも恥じらう姿は男心を擽る物がある
小動物のように怯えたリアクションや必死に応えようとする姿を見た時は手持ちポケモンを褒める時と同じく撫で回したくなりつい手が動きそうになったものだ
「………ナマエ」
不意に彼女の名前を口にしてみた
すると不思議な事が起こった
「っ……なんだ?なんで…こんな照れるんだっ!」
この場にいない彼女の名前を口にしただけでダンデの頬はほんのりと熱を帯びだしたのだ
自分らしくないと頭を左右に振りクッキーの無くなったハンカチを手に取るとダンデは漸く自室から出ていきゆっくりと階段を下りた
「(そうだ…クッキーのお礼をしなくては、何がいいだろうか)」
ナマエの事を考えながら一階へと降りると彼のポケットに入っていたスマホロトムが飛び出し着信を知らせる
画面にはローズの文字が映しだされておりダンデは自然と眉を寄せ嫌な予感を感じつつ通話モードへと操作する
「……はい」
スマホから聞こえるローズの話を聞きながら手に持つハンカチを静かに見つめ、一度瞳を閉じる
【というわけで休暇中のチャンピオンには悪いんだけど、戻ってきてくれるかな?】
疑問形だというのに命令された気分がする
例えチャンピオンという立場でも上司からの呼び出しには逆らえない
せっかくの休暇だが仕事にすぐ戻らなくてはならない、ダンデはつらそうに眉間にシワを作り瞳を開けると持っていたハンカチを大事そうにポケットへとしまいこんだ