第三巻
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ナックルシティに着いたのは夜の事だった
次の街に向かうのは次の日にし今夜はホテルに泊まろうと決めたナマエは街灯が照らす煉瓦の道を進み、左右から香る美味そうな匂いに鼻をひくつかせた
『ホテルの前にどっかで食べよっかな、最近携帯食やカレーばっかりだったし』
辺りを見回していると彼女の肩を誰かが叩き、振り返れば見たことがある顔がいた
『ソニアさん!』
「やっほー!ジムチャレンジ頑張っとるね〜」
彼女はソニア
ダンデの幼馴染みでありブラッシータウンに住んでいるマグノリア博士の孫だ
ソニアとはダンデを通じ知り合い、旅に出る前はよくナマエの家に顔を出しくれた数少ない友だった
『どうしてナックルに?』
「ローズさんから宝物庫の見学許可貰ってね、ほら私伝説の英雄とかブラックナイトを調べてたでしょ?ここにも歴史の鍵になるものがあるかな〜と思って来てたの」
『そうなんですね、ナックルでは何か面白いのが見つかりましたか?』
「それが……って立ち話もなんだし一緒にご飯食べない?旅の話も聞きたいし」
ソニアの嬉しい提案に喜び久しぶりの女子トークに花を咲かせる
柔らかい控えめな店の明かりに照らされながら食事をし、周りの席では酒を飲む客が増えた頃
ソニアは話題に自分の幼馴染みを出した
「ダンデくんも褒めてたよ?君達が想像以上に成長してくれたって」
『そ、そうですか?そう見えるなら良かったです』
つい最近あったばかりのダンデを思い浮かべるとナマエの胸は飛び跳ねそうになりテーブルの下で両手を強く握った
嬉しさと照れくささに口元をむず痒くさせているとソニアからとんでもない事を聞かされる
「そう言えば知ってる〜?ダンデくんったら今恋してるんだよ?」
『……え?』
「しかも初恋なんだって!まったくこの歳になるまでバトルばっかりやってるから」
恋をしている
まさか自分との事だろうか
緊張しながらソニアがどれほど知っているのか気になり問いかけた
『お相手は…どんな人なんですか?』
「んー詳しくは教えてくれなかったけど、ダンデくんの一目惚れって言ってたなぁ……怪しいのは最近よく見かけるスポンサーの令嬢かな?あ!でも一時期モデルの子との噂にもなってたし……そっちかな?」
予想と違っていた
もしソニアがダンデが好きなのはナマエだと言ったのなら恋話の相談がやっとできると期待したが
彼女の口から出た相手は自分とは違い華やかな世界にいる女性ばかりだ
「ほら!この子とかこの人!この前の取材でも妙に距離が近かったし間違いないわ!」
ソニアは悪気なくスマホで候補の女性の写真を見せてくれたが、正直見たくなかった
化粧をし綺麗な服を着た美しい女性達、視線を手元へと落とすと少し汚れが目立つ私服が目に止まり自分との違いに差を感じた
『(……好きって……言ってくれたのに…あたしだけじゃなかった?そりゃそうだよね…あたしは子供で綺麗でも色っぽくもないもの)』
悔しさと恥ずかしさに握った手に力が入り、唇を白くなるほど噛みしめた
「まあダンデくんに愛されたら苦労しかないと思うけど…って大丈夫?疲れた?」
『あ…うん…ちょっと…疲れが今更出てきたかも』
「長々と話しちゃったかな?ごめんね!ここは私が払うから休んでって?」
気を使い帰っていったソニア、一人になったナマエはスグには立つ気になれずぼんやりとテーブルを見つめていた
『(他に好きな人がいるなら…どうしてあたしに好きなんて言ったの?気まぐれ?それとも……駄目…分かんない…分かんないよっ)』
どんどんと暗い気持ちになりいっそ彼が憎い
悲しみに肩をすくめ喉奥が苦しくなると誰かが彼女のテーブルに近寄ってきた
「君…大丈夫?」
声をかけたのは何処となくダンデに雰囲気が似た青年だった
ダンデ程髪が長くもなく体格も彼より劣るが声が…そっくりだった
『………』
「どうしたの?具合でも悪い?」
優しい声はまるでダンデにかけられたようで複雑な気分だった
『いえ…ちょっと…落ち込む事があって…モヤモヤして…』
「そっか、なら俺が話しを聞こうか?」
『………』
いいと言う前に男はソニアが座っていた席に勝手に腰掛けメニューを開いた
「お酒は好き?話しにくいならお酒に頼るのも手だよ?」
『楽になるなら……飲みたいです』
「よし!じゃあ今夜は俺と飲んじゃおう!」
にっこりと笑う彼は本当にダンデそっくりで…ナマエは言いようのない切なさに胸を苦しめ逃げるように酒を注文した
初めて飲んだ酒は甘くそれでいて後からくる苦みが舌を痺れさせた
一口が二口に…一杯が二杯になる頃にはナマエはすっかり酔ってしまい男に支えられないと立つこともできなくなった
「ほらしっかり」
店を出た二人はどこから見ても酔っ払いとそれを介抱する姿だ
夜の街では珍しくもなく誰も彼らを気に掛ける事はない
『う〜…なんれれすか?』
「ん?」
『なんれっ…あたひにしゅきって言ったの?ほかのこがしゅきなら…しゅきっていわないでよっ!』
「んー……飲ませすぎたか」
何かに怒る少女、呂律がまわらない喋りは可愛いがどうしたものか…
男はやれやれと困るが酒に酔ったナマエは目がぼやけてしまい、彼がダンデに見えポロポロと涙を流し始める
『だんれさんのばかぁ!だんれさんなんかっ、ごりらんだぁで…バナナたべてればいいんれす!』
「だんれ?誰の事っ…て、こらこら暴れないの!ほら君の家は何処なの?送るから」
『やらっ!はなしてぇ!』
男の手から逃げようと暴れ出す酔っ払いに困り果てていると
「ナマエちゃん!!」
泣いている彼女の手を掴む男を目にしたキバナはギョッと目を見開き、次の瞬間眉間に深いシワを作り男の手首を握りしめた
「てめぇ…この子に何をした!」
「痛っ、違っ!俺はただ元気がなかった彼女と酒を飲んで話してただけで…」
「酒だと?この子は未成年だぞ!」
「えっ!!」
不味いと思ったのだろう
男は顔を青ざめさせナマエを支えていた手を離してしまい、地面に崩れ落ちそうな彼女をキバナが咄嗟に腕で受け止めた
「おっと!てめっ!」
その隙に男は逃げてしまい
逃げ足の早い男にキバナは舌打ちをし顔を歪めた
「ったく……ナマエちゃん?大丈夫か?吐き気とかない?」
『っ、ひ…ひっく…んっ…ぅ…ひばなしゃん…』
「ハイハイ、キバナだぞ?」
涙を次から次へと落とす彼女は喋れる状態じゃない
このままでは人の目もあるし何よりほっとけない
キバナは自分のパーカーを脱ぐと彼女を頭から覆い隠し正面から抱き上げた
小さな子供を抱っこするように腰に手を回し抱き上げると意外にもナマエは嫌がらずキバナの首に両手を回し抱きついてきた
「ほら…オレさまが来たから安心しな」
『ぅ…うう……』
「なんでこんなになるまで飲んだんだ?何か嫌な事でもあったの?」
歩きだすと気持ちの良い揺れが眠気を誘いナマエはだんだんと落ち着いてきた
まだ泣き足りないのか鼻をグズグズと鳴らしながらも抱きついてくる彼女が可愛らしくてキバナが頬を緩めていると小さな声が耳に届いた
『………うそ…つかれた…』
「嘘?」
なんの事かと問いかけると彼女は喉を鳴らしひくひくと声を震わせた
『しゅきって…っ、いったのに…あたひ…じゃ…なくても…よかったの』
「…………あ?誰に言われた?オレの知ってる奴か?」
しゅき…好きという事だろう
誰かが彼女に言ったのか…嫉妬に片眉を吊り上げ聞き返すが
『もう…やら…』
「………」
ナマエは旅の疲れと泣き疲れ眠ってしまい腕の中の彼女が少し重くなる
キバナは抱いた彼女の体を抱き直すと強く腕の中に包み込み足を早めた
誰に何を言われたのか
彼女が何に傷ついたのかハッキリとは分からないが、キバナにとっては不愉快な事には間違いない
「……何泣いてんだよ」
ぼそりと呟いた声は低く苛立ちが含まれる
「オレ以外の奴の為に……泣いてんじゃねぇよ」
嫉妬に顔を険しくさせたキバナは腕の中に収まる小柄な少女を大切に抱きしめ夜の街に消えていった
次の街に向かうのは次の日にし今夜はホテルに泊まろうと決めたナマエは街灯が照らす煉瓦の道を進み、左右から香る美味そうな匂いに鼻をひくつかせた
『ホテルの前にどっかで食べよっかな、最近携帯食やカレーばっかりだったし』
辺りを見回していると彼女の肩を誰かが叩き、振り返れば見たことがある顔がいた
『ソニアさん!』
「やっほー!ジムチャレンジ頑張っとるね〜」
彼女はソニア
ダンデの幼馴染みでありブラッシータウンに住んでいるマグノリア博士の孫だ
ソニアとはダンデを通じ知り合い、旅に出る前はよくナマエの家に顔を出しくれた数少ない友だった
『どうしてナックルに?』
「ローズさんから宝物庫の見学許可貰ってね、ほら私伝説の英雄とかブラックナイトを調べてたでしょ?ここにも歴史の鍵になるものがあるかな〜と思って来てたの」
『そうなんですね、ナックルでは何か面白いのが見つかりましたか?』
「それが……って立ち話もなんだし一緒にご飯食べない?旅の話も聞きたいし」
ソニアの嬉しい提案に喜び久しぶりの女子トークに花を咲かせる
柔らかい控えめな店の明かりに照らされながら食事をし、周りの席では酒を飲む客が増えた頃
ソニアは話題に自分の幼馴染みを出した
「ダンデくんも褒めてたよ?君達が想像以上に成長してくれたって」
『そ、そうですか?そう見えるなら良かったです』
つい最近あったばかりのダンデを思い浮かべるとナマエの胸は飛び跳ねそうになりテーブルの下で両手を強く握った
嬉しさと照れくささに口元をむず痒くさせているとソニアからとんでもない事を聞かされる
「そう言えば知ってる〜?ダンデくんったら今恋してるんだよ?」
『……え?』
「しかも初恋なんだって!まったくこの歳になるまでバトルばっかりやってるから」
恋をしている
まさか自分との事だろうか
緊張しながらソニアがどれほど知っているのか気になり問いかけた
『お相手は…どんな人なんですか?』
「んー詳しくは教えてくれなかったけど、ダンデくんの一目惚れって言ってたなぁ……怪しいのは最近よく見かけるスポンサーの令嬢かな?あ!でも一時期モデルの子との噂にもなってたし……そっちかな?」
予想と違っていた
もしソニアがダンデが好きなのはナマエだと言ったのなら恋話の相談がやっとできると期待したが
彼女の口から出た相手は自分とは違い華やかな世界にいる女性ばかりだ
「ほら!この子とかこの人!この前の取材でも妙に距離が近かったし間違いないわ!」
ソニアは悪気なくスマホで候補の女性の写真を見せてくれたが、正直見たくなかった
化粧をし綺麗な服を着た美しい女性達、視線を手元へと落とすと少し汚れが目立つ私服が目に止まり自分との違いに差を感じた
『(……好きって……言ってくれたのに…あたしだけじゃなかった?そりゃそうだよね…あたしは子供で綺麗でも色っぽくもないもの)』
悔しさと恥ずかしさに握った手に力が入り、唇を白くなるほど噛みしめた
「まあダンデくんに愛されたら苦労しかないと思うけど…って大丈夫?疲れた?」
『あ…うん…ちょっと…疲れが今更出てきたかも』
「長々と話しちゃったかな?ごめんね!ここは私が払うから休んでって?」
気を使い帰っていったソニア、一人になったナマエはスグには立つ気になれずぼんやりとテーブルを見つめていた
『(他に好きな人がいるなら…どうしてあたしに好きなんて言ったの?気まぐれ?それとも……駄目…分かんない…分かんないよっ)』
どんどんと暗い気持ちになりいっそ彼が憎い
悲しみに肩をすくめ喉奥が苦しくなると誰かが彼女のテーブルに近寄ってきた
「君…大丈夫?」
声をかけたのは何処となくダンデに雰囲気が似た青年だった
ダンデ程髪が長くもなく体格も彼より劣るが声が…そっくりだった
『………』
「どうしたの?具合でも悪い?」
優しい声はまるでダンデにかけられたようで複雑な気分だった
『いえ…ちょっと…落ち込む事があって…モヤモヤして…』
「そっか、なら俺が話しを聞こうか?」
『………』
いいと言う前に男はソニアが座っていた席に勝手に腰掛けメニューを開いた
「お酒は好き?話しにくいならお酒に頼るのも手だよ?」
『楽になるなら……飲みたいです』
「よし!じゃあ今夜は俺と飲んじゃおう!」
にっこりと笑う彼は本当にダンデそっくりで…ナマエは言いようのない切なさに胸を苦しめ逃げるように酒を注文した
初めて飲んだ酒は甘くそれでいて後からくる苦みが舌を痺れさせた
一口が二口に…一杯が二杯になる頃にはナマエはすっかり酔ってしまい男に支えられないと立つこともできなくなった
「ほらしっかり」
店を出た二人はどこから見ても酔っ払いとそれを介抱する姿だ
夜の街では珍しくもなく誰も彼らを気に掛ける事はない
『う〜…なんれれすか?』
「ん?」
『なんれっ…あたひにしゅきって言ったの?ほかのこがしゅきなら…しゅきっていわないでよっ!』
「んー……飲ませすぎたか」
何かに怒る少女、呂律がまわらない喋りは可愛いがどうしたものか…
男はやれやれと困るが酒に酔ったナマエは目がぼやけてしまい、彼がダンデに見えポロポロと涙を流し始める
『だんれさんのばかぁ!だんれさんなんかっ、ごりらんだぁで…バナナたべてればいいんれす!』
「だんれ?誰の事っ…て、こらこら暴れないの!ほら君の家は何処なの?送るから」
『やらっ!はなしてぇ!』
男の手から逃げようと暴れ出す酔っ払いに困り果てていると
「ナマエちゃん!!」
泣いている彼女の手を掴む男を目にしたキバナはギョッと目を見開き、次の瞬間眉間に深いシワを作り男の手首を握りしめた
「てめぇ…この子に何をした!」
「痛っ、違っ!俺はただ元気がなかった彼女と酒を飲んで話してただけで…」
「酒だと?この子は未成年だぞ!」
「えっ!!」
不味いと思ったのだろう
男は顔を青ざめさせナマエを支えていた手を離してしまい、地面に崩れ落ちそうな彼女をキバナが咄嗟に腕で受け止めた
「おっと!てめっ!」
その隙に男は逃げてしまい
逃げ足の早い男にキバナは舌打ちをし顔を歪めた
「ったく……ナマエちゃん?大丈夫か?吐き気とかない?」
『っ、ひ…ひっく…んっ…ぅ…ひばなしゃん…』
「ハイハイ、キバナだぞ?」
涙を次から次へと落とす彼女は喋れる状態じゃない
このままでは人の目もあるし何よりほっとけない
キバナは自分のパーカーを脱ぐと彼女を頭から覆い隠し正面から抱き上げた
小さな子供を抱っこするように腰に手を回し抱き上げると意外にもナマエは嫌がらずキバナの首に両手を回し抱きついてきた
「ほら…オレさまが来たから安心しな」
『ぅ…うう……』
「なんでこんなになるまで飲んだんだ?何か嫌な事でもあったの?」
歩きだすと気持ちの良い揺れが眠気を誘いナマエはだんだんと落ち着いてきた
まだ泣き足りないのか鼻をグズグズと鳴らしながらも抱きついてくる彼女が可愛らしくてキバナが頬を緩めていると小さな声が耳に届いた
『………うそ…つかれた…』
「嘘?」
なんの事かと問いかけると彼女は喉を鳴らしひくひくと声を震わせた
『しゅきって…っ、いったのに…あたひ…じゃ…なくても…よかったの』
「…………あ?誰に言われた?オレの知ってる奴か?」
しゅき…好きという事だろう
誰かが彼女に言ったのか…嫉妬に片眉を吊り上げ聞き返すが
『もう…やら…』
「………」
ナマエは旅の疲れと泣き疲れ眠ってしまい腕の中の彼女が少し重くなる
キバナは抱いた彼女の体を抱き直すと強く腕の中に包み込み足を早めた
誰に何を言われたのか
彼女が何に傷ついたのかハッキリとは分からないが、キバナにとっては不愉快な事には間違いない
「……何泣いてんだよ」
ぼそりと呟いた声は低く苛立ちが含まれる
「オレ以外の奴の為に……泣いてんじゃねぇよ」
嫉妬に顔を険しくさせたキバナは腕の中に収まる小柄な少女を大切に抱きしめ夜の街に消えていった