第二巻
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
メッソンとの旅が始まりました
最初に目指すのは草バッチを貰えるターフタウン
エンジンシティから飛び出したあたしはまだ少し痛む首筋を気にしながらも相棒と日々成長する為にバトルしている
負けて悔しい
勝って嬉しいを繰り返す物だと聞いていたけど本当にそう思う
あたしの指示通りに戦うメッソンの為にも勝ちたい
なるべく痛い思いをさせたくないと思うのに…
「ごめんね…メッソン、痛いよね?」
ポケモンのタイプ相性というのを忘れてた
水タイプのこの子は電気タイプに弱いというのにあたしは強くなりたいという気持ちだけで無謀な戦いをしてしまった
道から少し外れた草原に腰掛け傷ついたメッソンを膝に乗せたあたしは申し訳ない気持ちで傷薬スプレーで彼を治療し後悔ばかりが心を重くする
最初からこんな調子でやっていけるのかな
しょんぼりと落ち込んでしまうと怪我がすっかり治ったメッソンが俯いたあたしの顔に触れた
少しひんやりとしたメッソンの小さな手、励まそうとしているのか頬を軽く叩く彼は目が合うとにっこりと微笑んでくれた
『……うん、ごめんね?次は頑張るね』
同意するように鳴き声をあげた彼は嬉しそうに笑い今度はあたしの胸に頭を擦り付けて甘えだす
小さくて可愛いあたしの相棒の為にももっと頑張らなくちゃ
『よし!行こっか!』
気合を入れなおしターフタウンへと急ぐと見えてきたのはハロンにも負けない程大きな牧草地
雲のように白いふわふわとしたウールーの群れが緑色の草原にあちこちいて可愛い
お店はあまりないようだけど代わりに花が沢山乗った荷車や新鮮な野菜が売られていて目がそちらへとつい向いてしまう
そんな時だった
「危ないっ!」
『え?うぶっっ!!』
声をかけられ振り向くと目の前に見えたのはふわふわした白い塊、それが何か分かる前に塊は勢いよく体当たりしあたしの体は近くの茂みへと飛ばされた
『ぅ…ううっ…』
痛い、正直けっこう痛いです
何が起こったのか理解も出来ず茂みに腰を埋めたまま目をまわしていると心配そうに涙目になるメッソンが側に来てくれた
大丈夫かと右へ左へと動きながらこちらを見てくる彼に早く応えないといけないのにまだフラフラする
痛む体で起きようとすると目の前に大きな影ができた
「大丈夫かい!ごめんよ、僕のウールーがなかなか止まれなくてぶつかってしまったんだな」
優しそうな声だと感じ視線を上げ見えたのは予想と違い
とても逞しい体つきをした男性だった
顔は童顔で可愛い雰囲気だというのに腕や肩がムキムキでついこないだ首を噛んできた人を思い出した
『(ダンデさんといいこの人といい…ガラルはゴリランダーみたいな男の人が多いの?)』
「あの…もしかして怪我したのかな?立てないのかい?」
つい考え込み黙っていたせいで男性は申し訳なさそうに地面に片膝をつき、帽子の影からあたしを見つめた
そばかすと土汚れが顔についている彼に意識を戻しあたしは慌てて茂みから立ち上がろうとする
『だっ大丈夫です!これくらいっ……っ、ん?』
立とうとすると茂みの尖った葉っぱがあたしの服に食い込み動きを邪魔してくる、ただでさえお尻や短パンから出た足が痛むというのになんて事だ
『(ぬっ抜けない!)』
もたついていると目の前の彼はゆっくりと立ち上がり先程より一歩近づいてきた
何をするのかと思えば茂みに手を躊躇なく差し入れあたしの体を抱き上げてしまった
ガサガサと音が鳴り尖った葉や枝がきっと彼の手を傷つけた
なのに彼は表情を一瞬も変えずにっこりと微笑む
というか…本当に見た目通り力持ちなんですね
「念の為このまま病院で診てもらおう、大事なジムチャレンジャーさんに何かあったら僕も嫌だし」
『ジムチャレンジャーって…なんで知ってるんですか?』
「君は開会式で目立ってましたからね、あのキバナさんが自ら声をかけたジムチャレンジャーって噂になってるよ?」
『〜〜〜っ!(あの時のっっ!!)』
目立たないように決めていたというのに逆に凄い目立っていたようで、あんなに沢山の人達に見られていたと想像するだけで恥ずかしくなり両手で顔を覆い隠す
体を小さく丸めたあたしを男性はニコニコと微笑みながら運び彼の足元にはウールーが数匹ついてきていた
そう言えばこの人……見たことある気がする
顔を隠した手の指の隙間から見上げると帽子の影が目元までかかる男性が脳内で記憶と一致し自然と体がビクンッと跳ねた
『あっ貴方!ヤローさんですよね?ジムリーダーのっ』
「そうだよ?よく分かったね」
ほんわかとした雰囲気で話す彼は何でもないかのように話すけど、あたしにとっては一大事だ
だってジムリーダーに抱っこしてもらってるジムチャレンジャーなんて絶対変だ!
『あのっ平気ですから!病院も行かなくていいですから降ろしてください!』
「ん?本当に?でもウールーの体当たりを受けてたし体痛いんじゃない?」
足を止めてくれた彼の腕の中で暴れるとヤローさんは困ったように眉を下げてゆっくりとあたしを地面に降ろしてくれた
正直まだ痛いけどこれ以上目立った行動はしたくない
平気なふりをしようとわざと両手を広げアピールしてみると彼は小首を傾げあたしをじっと見つめ小さく鼻で笑った
「そんじゃあジムに行くかい?勿論体調が大事だから無理だと思ったら言ってな?」
『はい!』
どこまでも優しい人だ!
彼の後ろをついていき見えてきたのは一番最初のジム
草タイプのヤローさんとのバトル
緊張と不思議と心が小さくワクワクしていた
受付をすませユニフォームに着替え終わると遂にヤローさんとバトルすると思い扉を開ける
するとあたしの想像とは違い室内だというのに芝生が広がった大きな部屋に出た
『………え?』
エンジンシティのバトルコートはもっと広々していて観客も沢山入れたけど、この部屋はそんな雰囲気さえない
その代わりにウールーが沢山いてどういう事なのかと辺りを見回すと審判の人が説明をしてくれた
「ジムリーダーに挑戦するにはジムミッションをクリアしてもらう必要があります!」
『ジムミッション?』
ジムにはそれぞれジムミッションというのがあるらしく
すぐにはジムリーダーと戦えないみたい
今回のお題はウールーの誘導
決められた場所へウールー達を移動させるというものだけどここで問題が発生した
『(あたし………運動神経ゼロなんですけどっっ!!)』
*************************
ナックルシティにて
仕事の合間にスマホロトムをいじっていたキバナはとある記事に指が止まりじっと暫く画面を見ていた
すると次の瞬間
「ぷっ……ハハハハハッッッ!すっげぇ顔っ!」
彼の手元に映っていたのはターフタウンでのジムチャレンジャー達の挑戦動画だ
バトルに負けた者や勝った者、最初のジムはルーキー達には優しいレベルだが全員がバッチを貰えるわけではないのだ
注目のルーキー達は難なく通過したようだが
その中でもキバナが気になっていた選手の動画に彼は大笑いしてしまった
バトルが下手なのではなく
その前にチャレンジャー達が挑戦するジムミッション
ウールーを誘導するというミッションをする彼女は走っては逃げられ走っては転んでと運動神経がゼロのようだ
汗でぐちゃぐちゃになった顔、肩で息をする彼女は勿論必死なのだが頑張っているナマエを楽しげに見つめるキバナは笑う口元を片手で隠し瞳を細めていた
「本当っ…ナマエちゃんはオレさまを楽しませてくれる才能あるよな」
じんわりと熱が残る首筋に意識を向ければ蒼い瞳が色濃くなり熱い視線が彼女の口元に集中する
彼女の顔がアップになるところでスマホロトムの動画を止めるとキバナは画面越しにナマエの唇を親指でなぞった
「……頑張ってここまで来いよ」
穏やかな声で呟けば部屋に入ってきた彼の右腕と呼ぶべきトレーナーに気づかれてしまった
「キバナさま?何かいい事でもありましたか?」
「んー?なんでぇ」
「なんだか上機嫌に見えたものですから」
控え目に笑う彼は持ってきた資料をキバナに渡し終えるとスマホロトムをまだじっと見つめる彼を見つめた
キバナの側で何年も仕事をしてきた彼リョウタには分かるのだ
この顔をする時の上司は女性関係だというのが
「言っておきますが…問題になるような行動だけは謹んでくださいね?」
「え、酷くね?オレさま今までも良い子ちゃんだったろ?」
「…………」
「黙るなよっ!なんか言え!」
過去を振り返ると問題ばかり浮かびリョウタは自分の下がる眼鏡を指先で元に戻し小さくため息を一つした
この上司は顔がよく口も上手い、特に女性に対する甘い言葉により今までいったい何人の女性が犠牲になった事か
ただ付き合うならば問題ないが誰にでも優しいキバナに嫉妬し暴れる女性も何人もいたのだ
その度に記事に載りローズ委員長から呼び出しを受けるのをリョウタは見てきた
「いつもの遊びなら目立たないようにお願いしますね」
釘をさすつもりで言ったのだが
すぐに笑って返事をする筈だったキバナから返事はなく不思議に思い自然と彼に目を向けると
「………ん…、まあ今回は……ちょい違うかも」
なんとも彼らしくなく
ハッキリとしない言葉をボソリと呟きそっぽを向かれてしまった
「(キバナさま?)」
リョウタがまた問いかけようとする前にキバナは普段の顔つきに戻りスマホロトムをポケットへとしまいこみ、何でもないかのように資料を手に取った
仕事モードに入ってしまった相手にこれ以上聞く事も出来ずリョウタはスッキリとしない気分のまま部屋を後にし
静かになった室内でキバナは窓へと視線をずらすと遙か遠くを眺め頬を緩めた
ココガラが飛ぶ青空と遠くに見えるワイルドエリア
この遙か先で彼女が頑張っていると思うとキバナは胸をむず痒くさせ口角を吊り上げた
「(頑張ってるようだし……何かしてやりてぇな)」
ーオマケー
結果的にナマエはヤローとのバトルに勝利したが、その後控室で立てなくなり病院に直行する事になる
打撲と運動不足による筋肉痛と診断され、病室にはすまなそうに眉を下げたヤローがウールーと共に見舞いに来てくれたそうだ
最初に目指すのは草バッチを貰えるターフタウン
エンジンシティから飛び出したあたしはまだ少し痛む首筋を気にしながらも相棒と日々成長する為にバトルしている
負けて悔しい
勝って嬉しいを繰り返す物だと聞いていたけど本当にそう思う
あたしの指示通りに戦うメッソンの為にも勝ちたい
なるべく痛い思いをさせたくないと思うのに…
「ごめんね…メッソン、痛いよね?」
ポケモンのタイプ相性というのを忘れてた
水タイプのこの子は電気タイプに弱いというのにあたしは強くなりたいという気持ちだけで無謀な戦いをしてしまった
道から少し外れた草原に腰掛け傷ついたメッソンを膝に乗せたあたしは申し訳ない気持ちで傷薬スプレーで彼を治療し後悔ばかりが心を重くする
最初からこんな調子でやっていけるのかな
しょんぼりと落ち込んでしまうと怪我がすっかり治ったメッソンが俯いたあたしの顔に触れた
少しひんやりとしたメッソンの小さな手、励まそうとしているのか頬を軽く叩く彼は目が合うとにっこりと微笑んでくれた
『……うん、ごめんね?次は頑張るね』
同意するように鳴き声をあげた彼は嬉しそうに笑い今度はあたしの胸に頭を擦り付けて甘えだす
小さくて可愛いあたしの相棒の為にももっと頑張らなくちゃ
『よし!行こっか!』
気合を入れなおしターフタウンへと急ぐと見えてきたのはハロンにも負けない程大きな牧草地
雲のように白いふわふわとしたウールーの群れが緑色の草原にあちこちいて可愛い
お店はあまりないようだけど代わりに花が沢山乗った荷車や新鮮な野菜が売られていて目がそちらへとつい向いてしまう
そんな時だった
「危ないっ!」
『え?うぶっっ!!』
声をかけられ振り向くと目の前に見えたのはふわふわした白い塊、それが何か分かる前に塊は勢いよく体当たりしあたしの体は近くの茂みへと飛ばされた
『ぅ…ううっ…』
痛い、正直けっこう痛いです
何が起こったのか理解も出来ず茂みに腰を埋めたまま目をまわしていると心配そうに涙目になるメッソンが側に来てくれた
大丈夫かと右へ左へと動きながらこちらを見てくる彼に早く応えないといけないのにまだフラフラする
痛む体で起きようとすると目の前に大きな影ができた
「大丈夫かい!ごめんよ、僕のウールーがなかなか止まれなくてぶつかってしまったんだな」
優しそうな声だと感じ視線を上げ見えたのは予想と違い
とても逞しい体つきをした男性だった
顔は童顔で可愛い雰囲気だというのに腕や肩がムキムキでついこないだ首を噛んできた人を思い出した
『(ダンデさんといいこの人といい…ガラルはゴリランダーみたいな男の人が多いの?)』
「あの…もしかして怪我したのかな?立てないのかい?」
つい考え込み黙っていたせいで男性は申し訳なさそうに地面に片膝をつき、帽子の影からあたしを見つめた
そばかすと土汚れが顔についている彼に意識を戻しあたしは慌てて茂みから立ち上がろうとする
『だっ大丈夫です!これくらいっ……っ、ん?』
立とうとすると茂みの尖った葉っぱがあたしの服に食い込み動きを邪魔してくる、ただでさえお尻や短パンから出た足が痛むというのになんて事だ
『(ぬっ抜けない!)』
もたついていると目の前の彼はゆっくりと立ち上がり先程より一歩近づいてきた
何をするのかと思えば茂みに手を躊躇なく差し入れあたしの体を抱き上げてしまった
ガサガサと音が鳴り尖った葉や枝がきっと彼の手を傷つけた
なのに彼は表情を一瞬も変えずにっこりと微笑む
というか…本当に見た目通り力持ちなんですね
「念の為このまま病院で診てもらおう、大事なジムチャレンジャーさんに何かあったら僕も嫌だし」
『ジムチャレンジャーって…なんで知ってるんですか?』
「君は開会式で目立ってましたからね、あのキバナさんが自ら声をかけたジムチャレンジャーって噂になってるよ?」
『〜〜〜っ!(あの時のっっ!!)』
目立たないように決めていたというのに逆に凄い目立っていたようで、あんなに沢山の人達に見られていたと想像するだけで恥ずかしくなり両手で顔を覆い隠す
体を小さく丸めたあたしを男性はニコニコと微笑みながら運び彼の足元にはウールーが数匹ついてきていた
そう言えばこの人……見たことある気がする
顔を隠した手の指の隙間から見上げると帽子の影が目元までかかる男性が脳内で記憶と一致し自然と体がビクンッと跳ねた
『あっ貴方!ヤローさんですよね?ジムリーダーのっ』
「そうだよ?よく分かったね」
ほんわかとした雰囲気で話す彼は何でもないかのように話すけど、あたしにとっては一大事だ
だってジムリーダーに抱っこしてもらってるジムチャレンジャーなんて絶対変だ!
『あのっ平気ですから!病院も行かなくていいですから降ろしてください!』
「ん?本当に?でもウールーの体当たりを受けてたし体痛いんじゃない?」
足を止めてくれた彼の腕の中で暴れるとヤローさんは困ったように眉を下げてゆっくりとあたしを地面に降ろしてくれた
正直まだ痛いけどこれ以上目立った行動はしたくない
平気なふりをしようとわざと両手を広げアピールしてみると彼は小首を傾げあたしをじっと見つめ小さく鼻で笑った
「そんじゃあジムに行くかい?勿論体調が大事だから無理だと思ったら言ってな?」
『はい!』
どこまでも優しい人だ!
彼の後ろをついていき見えてきたのは一番最初のジム
草タイプのヤローさんとのバトル
緊張と不思議と心が小さくワクワクしていた
受付をすませユニフォームに着替え終わると遂にヤローさんとバトルすると思い扉を開ける
するとあたしの想像とは違い室内だというのに芝生が広がった大きな部屋に出た
『………え?』
エンジンシティのバトルコートはもっと広々していて観客も沢山入れたけど、この部屋はそんな雰囲気さえない
その代わりにウールーが沢山いてどういう事なのかと辺りを見回すと審判の人が説明をしてくれた
「ジムリーダーに挑戦するにはジムミッションをクリアしてもらう必要があります!」
『ジムミッション?』
ジムにはそれぞれジムミッションというのがあるらしく
すぐにはジムリーダーと戦えないみたい
今回のお題はウールーの誘導
決められた場所へウールー達を移動させるというものだけどここで問題が発生した
『(あたし………運動神経ゼロなんですけどっっ!!)』
*************************
ナックルシティにて
仕事の合間にスマホロトムをいじっていたキバナはとある記事に指が止まりじっと暫く画面を見ていた
すると次の瞬間
「ぷっ……ハハハハハッッッ!すっげぇ顔っ!」
彼の手元に映っていたのはターフタウンでのジムチャレンジャー達の挑戦動画だ
バトルに負けた者や勝った者、最初のジムはルーキー達には優しいレベルだが全員がバッチを貰えるわけではないのだ
注目のルーキー達は難なく通過したようだが
その中でもキバナが気になっていた選手の動画に彼は大笑いしてしまった
バトルが下手なのではなく
その前にチャレンジャー達が挑戦するジムミッション
ウールーを誘導するというミッションをする彼女は走っては逃げられ走っては転んでと運動神経がゼロのようだ
汗でぐちゃぐちゃになった顔、肩で息をする彼女は勿論必死なのだが頑張っているナマエを楽しげに見つめるキバナは笑う口元を片手で隠し瞳を細めていた
「本当っ…ナマエちゃんはオレさまを楽しませてくれる才能あるよな」
じんわりと熱が残る首筋に意識を向ければ蒼い瞳が色濃くなり熱い視線が彼女の口元に集中する
彼女の顔がアップになるところでスマホロトムの動画を止めるとキバナは画面越しにナマエの唇を親指でなぞった
「……頑張ってここまで来いよ」
穏やかな声で呟けば部屋に入ってきた彼の右腕と呼ぶべきトレーナーに気づかれてしまった
「キバナさま?何かいい事でもありましたか?」
「んー?なんでぇ」
「なんだか上機嫌に見えたものですから」
控え目に笑う彼は持ってきた資料をキバナに渡し終えるとスマホロトムをまだじっと見つめる彼を見つめた
キバナの側で何年も仕事をしてきた彼リョウタには分かるのだ
この顔をする時の上司は女性関係だというのが
「言っておきますが…問題になるような行動だけは謹んでくださいね?」
「え、酷くね?オレさま今までも良い子ちゃんだったろ?」
「…………」
「黙るなよっ!なんか言え!」
過去を振り返ると問題ばかり浮かびリョウタは自分の下がる眼鏡を指先で元に戻し小さくため息を一つした
この上司は顔がよく口も上手い、特に女性に対する甘い言葉により今までいったい何人の女性が犠牲になった事か
ただ付き合うならば問題ないが誰にでも優しいキバナに嫉妬し暴れる女性も何人もいたのだ
その度に記事に載りローズ委員長から呼び出しを受けるのをリョウタは見てきた
「いつもの遊びなら目立たないようにお願いしますね」
釘をさすつもりで言ったのだが
すぐに笑って返事をする筈だったキバナから返事はなく不思議に思い自然と彼に目を向けると
「………ん…、まあ今回は……ちょい違うかも」
なんとも彼らしくなく
ハッキリとしない言葉をボソリと呟きそっぽを向かれてしまった
「(キバナさま?)」
リョウタがまた問いかけようとする前にキバナは普段の顔つきに戻りスマホロトムをポケットへとしまいこみ、何でもないかのように資料を手に取った
仕事モードに入ってしまった相手にこれ以上聞く事も出来ずリョウタはスッキリとしない気分のまま部屋を後にし
静かになった室内でキバナは窓へと視線をずらすと遙か遠くを眺め頬を緩めた
ココガラが飛ぶ青空と遠くに見えるワイルドエリア
この遙か先で彼女が頑張っていると思うとキバナは胸をむず痒くさせ口角を吊り上げた
「(頑張ってるようだし……何かしてやりてぇな)」
ーオマケー
結果的にナマエはヤローとのバトルに勝利したが、その後控室で立てなくなり病院に直行する事になる
打撲と運動不足による筋肉痛と診断され、病室にはすまなそうに眉を下げたヤローがウールーと共に見舞いに来てくれたそうだ