第二巻
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恋をしたのかもしれない
久しぶりにダンデから飲みに誘われ気楽な気分で店に来たが、まさかこんな内容の飲み会になるとは思わなかった
会員制の高級な店は俺には場違いにも感じいつも以上に背中が猫背になる、それでも美味い酒が飲めるならばとダンデと並んでカウンターに座った
この男は何処にいても絵になる
地味な私服姿をしていても店の雰囲気を壊さず寧ろ自分の魅力をより一層輝かせる
キバナもそうだが…本当にむかつく程俺とは別の世界のヤツだ
静かな音楽とカウンターの向こう側で音を鳴らすシェイカー、早く冷たい酒を飲みたいと欲するように喉が渇く
そんな俺の機嫌を壊すように開口一番で隣の男は予想にもしない言葉を口にした
その言葉があまりにも突拍子も無い事だったせいで上手く頭に入ってこない、俺耳は良い方なんですがね…聞き間違いをするなんて疲れでも溜まっているでしょうか
「………今なんと言いました?」
何を言ったのか理解出来ずダンデを凝視すれば彼は下げた眉で眉間にシワを作り同じ事を口にした
「だからっ、恋を…したかもしれないんだ」
あ、聞き間違いではないようですね
まあどちらにしろ面倒な内容には変わりないですが
「……恋話ならキバナの方が適しているのでは?もしくはソニアやルリナ辺りにでも」
「いや同じ男がいい!それにキバナは駄目だ!今は彼と話したくないんだ」
喧嘩でもしたのか?
まあコイツらはティーンの時から何かと競い合っては喧嘩してたしいつもの事だろう
やれやれとため息を一つ吐いた頃、目の前に冷えたグラスに入った酒が出され俺は遠慮なくそれを喉へと流し込んだ
冷たさと程よい苦みが口内から喉へと流れ落ちるこの感覚は最高でたまらない
満足の余韻を込めて微かに息を漏らしながらグラスから口を離しチラリと横を見れば美味い酒が入ったグラスを握ったまま俯く顔が見えた
どうやら随分悩んでいるようだ
「何をそんなに悩む事があるんです?恋ぐらい誰でもするじゃないですか?」
ガラルチャンピオンは恋愛はご法度とでも言うのか?
………いや、あの狸ジジイの事だ宣伝になるとか言って上手く話題性にするだろうから禁止にはしない筈だ
「俺にとっては初めての恋なんだ…だからどうすればいいか分からなくて」
「初恋ってやつですか……それはそれは、随分ピュアだね」
この歳で初恋とは…バトルジャンキーとは思ってましたが本当にポケモンにしか興味がない男だったようですね
となると…相手はどんな人物だろうか
いや…寧ろ
「先に聞いときますが……………相手は人間ですか?」
「は?」
「いえお前の事なのでメスのリザードンとかの可能性もあるじゃないですか」
ダンデならあり得る事だ
メスのポケモンについて腕が美しいだの尻尾が魅力的だの言う男だ、遂に人間をやめてポケモンを愛しても変ではない
真面目に問いかければ彼は驚いたようにその瞳を大きく見開き次の瞬間顔を真っ赤にさせ怒った
「〜っ!人間だ!人間の女性だ!」
「あ〜そうですか」
「ネズといいキバナといい……君らは俺をなんだと思ってるんだ!」
「すみませんね、まあリザードンならそれはそれで爆笑もので酒のいいツマミになりますがね」
ニヤニヤと笑いながら次は何を飲もうかメニューに指を伸ばし値段の高い物へ視線を流す、ダンデの奢りなんですし普段は飲まない物を飲まなくては
「からかわないでくれ!俺は……本気なんだっ」
拗ねたピュアボーイは勢いよく手に持っていたグラスを傾け喉へと流し込み喉仏を上下に揺らした
高い酒だというのに一気飲みとは勿体ない事をする
「で?何を困っているというんですか?」
カウンターに頬杖をつき隣の男に問いかけるとダンデは中身がなくなったグラスをテーブルに離し苦々しく顔を歪めた
「………彼女の事になると暴走してしまいそうになるんだ」
「はい?」
「彼女の事がいつも頭から離れなくて仕事に集中したい時もふと思い出す…怪我はしていないか泣いてはいないか…他の男にちょっかいを出されていないだろうかと考えるときりがなくて落ち着かない」
両手を揉み合わせ背中を丸める彼はきゅっと唇を一度噛むと溜めていた息を全て吐き出し自分の手の上に額を押し付け項垂れた
「恋ってこんなに苦しい物なのか?」
なんとも……青臭い
バトルコートで自信に満ちた男がここまで情けなくなるとは余程その相手に骨抜きのようですね
ある意味そこまで一人の女に惚れ込めるのは羨ましいとも感じます
「そうだね、一人の女に夢中になると苦しいしそんな自分が甘酸っぱく感じるよね?恥ずかしいよね?自分が自分らしくなくてイライラするだろ?」
大昔の若い自分を重ね俺は鼻で小さく笑った
もう俺にはあんな情熱はないだろうけど、同じように間違いを起こさないようにお兄さんからピュアボーイにアドバイスをしなければいけませんね
「恋なんて皆そんなものですよ、目の前の恋に夢中になりすぎて他が霞んで見える……欲しくて欲しくて自分だけの物にしたくて必死でいつも不安が抜けないのに一緒にいると酷く安心する」
俺の言葉を聞きながらダンデは静かに頷き同意する
同じようにその相手に感じる物があるんだろう
でも恋愛経験のないお前は我慢はきっと出来ない
だからこそ聞いて欲しい事がある
「忠告しときますが…自分の気持ちだけを押し付けるような真似はしない事ですね、自分が欲しているからといって相手も同じぐらい欲してくれるとは限りませんからね」
「っ!…………そうだな」
何か思い当たる事があるのか、ダンデは一瞬目を見開き気不味そうにまた俯いた
「まあたまには悪い男になるのも相手には刺激にはなるでしょうがね」
「悪い男?」
新しく注文した酒が目の前に出され俺はグラスに入っていた串に刺さったオリーブを口へと含んだ
ゆっくりと噛んでいる最中もダンデはじっと俺を見つめ話の先を待っている、なんとも優越感が気持ちいい
「好きなら抱きしめたいしキスしたい、それ以上の事もしたいと思うのが男ってもんでしょ?」
「〜〜っ、そ……そうだが…」
「まさか………そっちも経験なしですか?」
「…………」
黙り込む彼は耳で真っ赤に顔を染め上げ唇を真っ直ぐに結んだ、それだけで彼がチェリーボーイだという事が分かり俺の優越感がより一層膨れ上がった気がした
「これはこれは……ふふ、なかなかいい顔するじゃねぇですか?マスターすぐに一番高い酒をください、コイツの顔をツマミにもっと飲みたい気分なんで」
「ツマミって、俺がか?」
「そりゃそうでしょ?いつも自信満々なチャンピオンがこんな思春期のガキみたいに頬を染めているんですから、珍しい物が見れましたよ」
俺だけが独り占めするには勿体ないですね
いっそルリナ達も呼んでもっと羞恥心を掻き立てやろうか
「〜〜っ、本当にあくタイプらしい男だな君は!」
「褒め言葉として受け取りますよ」
数分後俺が呼び出したルリナとソニアが合流しダンデの初恋話に盛り上がった
ダンデは悔しげに琥珀色の瞳を潤ませ恥ずかしがりソニア達は興味津々に迫る
言いづらそうに今までの事やつい最近の暴走話を口にし、その度に女性達からダメ出しをうける
その光景が可笑しくて気がつけば俺はいつも以上に酒を飲んでいた
店の閉店時間まで居続けた俺達は体中からアルコールの匂いをさせ店を出た、冷たい風が熱い頬を撫でて通り過ぎ気持ちよさについ目を閉じる
俺より飲んでいた男は酔っているのを顔には出さずボールからリザードンを呼び出し、ソニアとルリナはガータクの乗り場へと話しながら消えていく
俺も帰ろうかとズボンのポケットに両手を入れると
「ネズ」
後ろから呼び止められ振り返るとリザードンと並んでこちらをみるダンデの姿が見えた
「今日はサンキューだぜ、話を聞いてくれて」
「………後半はただお前をからかっていただけでしたがね」
「ハハッ…それでもいいさ、少し気持ちが楽になったぜ」
どこまでも真っ白な男だね
せっかく優越感に浸っていたのに、俺の背中にまた劣等感が忍び寄る
「良かったら乗ってかないか?スパイクタウンまで送るぜ?」
リザードンも任せろとばかりに鳴き声を上げるが…正直冗談じゃない、何が悲しくて男に送ってもらわないといけねぇんですか
俺はか弱いお嬢さんでもなけりゃ良い人間でもない
「遠慮します……一人で夜道を歩きたい気分なので」
「…………そうか」
俺の返事を聞き苦笑いを浮かべたダンデは軽々とリザードンの背中に乗り込み暗い夜空へと舞い上がった
随分高く飛び上がったのか姿がよく見えずリザードンの尻尾の炎だけが僅かに見え、オレンジの光はまっすぐにシュートシティの方向へと消えていく
真っ直ぐで真っ白な男
「………暴走する程の恋だとしても…おまえの根っこはきっと純粋な想いなんでしょうね」
ガラルで一番面倒な男に目をつけられた誰かに俺は心の中では同情し、小さく笑った
久しぶりにダンデから飲みに誘われ気楽な気分で店に来たが、まさかこんな内容の飲み会になるとは思わなかった
会員制の高級な店は俺には場違いにも感じいつも以上に背中が猫背になる、それでも美味い酒が飲めるならばとダンデと並んでカウンターに座った
この男は何処にいても絵になる
地味な私服姿をしていても店の雰囲気を壊さず寧ろ自分の魅力をより一層輝かせる
キバナもそうだが…本当にむかつく程俺とは別の世界のヤツだ
静かな音楽とカウンターの向こう側で音を鳴らすシェイカー、早く冷たい酒を飲みたいと欲するように喉が渇く
そんな俺の機嫌を壊すように開口一番で隣の男は予想にもしない言葉を口にした
その言葉があまりにも突拍子も無い事だったせいで上手く頭に入ってこない、俺耳は良い方なんですがね…聞き間違いをするなんて疲れでも溜まっているでしょうか
「………今なんと言いました?」
何を言ったのか理解出来ずダンデを凝視すれば彼は下げた眉で眉間にシワを作り同じ事を口にした
「だからっ、恋を…したかもしれないんだ」
あ、聞き間違いではないようですね
まあどちらにしろ面倒な内容には変わりないですが
「……恋話ならキバナの方が適しているのでは?もしくはソニアやルリナ辺りにでも」
「いや同じ男がいい!それにキバナは駄目だ!今は彼と話したくないんだ」
喧嘩でもしたのか?
まあコイツらはティーンの時から何かと競い合っては喧嘩してたしいつもの事だろう
やれやれとため息を一つ吐いた頃、目の前に冷えたグラスに入った酒が出され俺は遠慮なくそれを喉へと流し込んだ
冷たさと程よい苦みが口内から喉へと流れ落ちるこの感覚は最高でたまらない
満足の余韻を込めて微かに息を漏らしながらグラスから口を離しチラリと横を見れば美味い酒が入ったグラスを握ったまま俯く顔が見えた
どうやら随分悩んでいるようだ
「何をそんなに悩む事があるんです?恋ぐらい誰でもするじゃないですか?」
ガラルチャンピオンは恋愛はご法度とでも言うのか?
………いや、あの狸ジジイの事だ宣伝になるとか言って上手く話題性にするだろうから禁止にはしない筈だ
「俺にとっては初めての恋なんだ…だからどうすればいいか分からなくて」
「初恋ってやつですか……それはそれは、随分ピュアだね」
この歳で初恋とは…バトルジャンキーとは思ってましたが本当にポケモンにしか興味がない男だったようですね
となると…相手はどんな人物だろうか
いや…寧ろ
「先に聞いときますが……………相手は人間ですか?」
「は?」
「いえお前の事なのでメスのリザードンとかの可能性もあるじゃないですか」
ダンデならあり得る事だ
メスのポケモンについて腕が美しいだの尻尾が魅力的だの言う男だ、遂に人間をやめてポケモンを愛しても変ではない
真面目に問いかければ彼は驚いたようにその瞳を大きく見開き次の瞬間顔を真っ赤にさせ怒った
「〜っ!人間だ!人間の女性だ!」
「あ〜そうですか」
「ネズといいキバナといい……君らは俺をなんだと思ってるんだ!」
「すみませんね、まあリザードンならそれはそれで爆笑もので酒のいいツマミになりますがね」
ニヤニヤと笑いながら次は何を飲もうかメニューに指を伸ばし値段の高い物へ視線を流す、ダンデの奢りなんですし普段は飲まない物を飲まなくては
「からかわないでくれ!俺は……本気なんだっ」
拗ねたピュアボーイは勢いよく手に持っていたグラスを傾け喉へと流し込み喉仏を上下に揺らした
高い酒だというのに一気飲みとは勿体ない事をする
「で?何を困っているというんですか?」
カウンターに頬杖をつき隣の男に問いかけるとダンデは中身がなくなったグラスをテーブルに離し苦々しく顔を歪めた
「………彼女の事になると暴走してしまいそうになるんだ」
「はい?」
「彼女の事がいつも頭から離れなくて仕事に集中したい時もふと思い出す…怪我はしていないか泣いてはいないか…他の男にちょっかいを出されていないだろうかと考えるときりがなくて落ち着かない」
両手を揉み合わせ背中を丸める彼はきゅっと唇を一度噛むと溜めていた息を全て吐き出し自分の手の上に額を押し付け項垂れた
「恋ってこんなに苦しい物なのか?」
なんとも……青臭い
バトルコートで自信に満ちた男がここまで情けなくなるとは余程その相手に骨抜きのようですね
ある意味そこまで一人の女に惚れ込めるのは羨ましいとも感じます
「そうだね、一人の女に夢中になると苦しいしそんな自分が甘酸っぱく感じるよね?恥ずかしいよね?自分が自分らしくなくてイライラするだろ?」
大昔の若い自分を重ね俺は鼻で小さく笑った
もう俺にはあんな情熱はないだろうけど、同じように間違いを起こさないようにお兄さんからピュアボーイにアドバイスをしなければいけませんね
「恋なんて皆そんなものですよ、目の前の恋に夢中になりすぎて他が霞んで見える……欲しくて欲しくて自分だけの物にしたくて必死でいつも不安が抜けないのに一緒にいると酷く安心する」
俺の言葉を聞きながらダンデは静かに頷き同意する
同じようにその相手に感じる物があるんだろう
でも恋愛経験のないお前は我慢はきっと出来ない
だからこそ聞いて欲しい事がある
「忠告しときますが…自分の気持ちだけを押し付けるような真似はしない事ですね、自分が欲しているからといって相手も同じぐらい欲してくれるとは限りませんからね」
「っ!…………そうだな」
何か思い当たる事があるのか、ダンデは一瞬目を見開き気不味そうにまた俯いた
「まあたまには悪い男になるのも相手には刺激にはなるでしょうがね」
「悪い男?」
新しく注文した酒が目の前に出され俺はグラスに入っていた串に刺さったオリーブを口へと含んだ
ゆっくりと噛んでいる最中もダンデはじっと俺を見つめ話の先を待っている、なんとも優越感が気持ちいい
「好きなら抱きしめたいしキスしたい、それ以上の事もしたいと思うのが男ってもんでしょ?」
「〜〜っ、そ……そうだが…」
「まさか………そっちも経験なしですか?」
「…………」
黙り込む彼は耳で真っ赤に顔を染め上げ唇を真っ直ぐに結んだ、それだけで彼がチェリーボーイだという事が分かり俺の優越感がより一層膨れ上がった気がした
「これはこれは……ふふ、なかなかいい顔するじゃねぇですか?マスターすぐに一番高い酒をください、コイツの顔をツマミにもっと飲みたい気分なんで」
「ツマミって、俺がか?」
「そりゃそうでしょ?いつも自信満々なチャンピオンがこんな思春期のガキみたいに頬を染めているんですから、珍しい物が見れましたよ」
俺だけが独り占めするには勿体ないですね
いっそルリナ達も呼んでもっと羞恥心を掻き立てやろうか
「〜〜っ、本当にあくタイプらしい男だな君は!」
「褒め言葉として受け取りますよ」
数分後俺が呼び出したルリナとソニアが合流しダンデの初恋話に盛り上がった
ダンデは悔しげに琥珀色の瞳を潤ませ恥ずかしがりソニア達は興味津々に迫る
言いづらそうに今までの事やつい最近の暴走話を口にし、その度に女性達からダメ出しをうける
その光景が可笑しくて気がつけば俺はいつも以上に酒を飲んでいた
店の閉店時間まで居続けた俺達は体中からアルコールの匂いをさせ店を出た、冷たい風が熱い頬を撫でて通り過ぎ気持ちよさについ目を閉じる
俺より飲んでいた男は酔っているのを顔には出さずボールからリザードンを呼び出し、ソニアとルリナはガータクの乗り場へと話しながら消えていく
俺も帰ろうかとズボンのポケットに両手を入れると
「ネズ」
後ろから呼び止められ振り返るとリザードンと並んでこちらをみるダンデの姿が見えた
「今日はサンキューだぜ、話を聞いてくれて」
「………後半はただお前をからかっていただけでしたがね」
「ハハッ…それでもいいさ、少し気持ちが楽になったぜ」
どこまでも真っ白な男だね
せっかく優越感に浸っていたのに、俺の背中にまた劣等感が忍び寄る
「良かったら乗ってかないか?スパイクタウンまで送るぜ?」
リザードンも任せろとばかりに鳴き声を上げるが…正直冗談じゃない、何が悲しくて男に送ってもらわないといけねぇんですか
俺はか弱いお嬢さんでもなけりゃ良い人間でもない
「遠慮します……一人で夜道を歩きたい気分なので」
「…………そうか」
俺の返事を聞き苦笑いを浮かべたダンデは軽々とリザードンの背中に乗り込み暗い夜空へと舞い上がった
随分高く飛び上がったのか姿がよく見えずリザードンの尻尾の炎だけが僅かに見え、オレンジの光はまっすぐにシュートシティの方向へと消えていく
真っ直ぐで真っ白な男
「………暴走する程の恋だとしても…おまえの根っこはきっと純粋な想いなんでしょうね」
ガラルで一番面倒な男に目をつけられた誰かに俺は心の中では同情し、小さく笑った