第一巻
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『ヤバい…絶対これダンデさんを怒らせた』
今日はダンデさんがハロンに来る日、目的はホップくんとユウリにポケモンをあげる事であたしはついでにバトルを教わるオマケ的な存在
十分に理解しているけど、いざ部屋を出ようとすると不安と緊張が背中にのしかかり体を重くさせる
ユウリには先に行くように言ったけどあの子の事だから、あたしの情けない気持ちが分かっている筈
『はぁ〜』
自室のドアの前でしゃがみ込み膝を抱いて体を小さくしてみる
そうすると抱きしめられたみたいでほんの少しだけ安心するから
『……やだな…こんな自分』
自分の両肩を抱きしめて蹲る
本当は凄い寂しがり屋で誰かに触れたいのに…他人が怖くて家族としかスキンシップが取れない
友達に囲まれながら楽しくお喋りもしたいのに他人の顔色ばかり気にして、言いたい事さえ頭の中でしか上手く言えないなんて…
『昔は違ってたのにな』
今のユウリとまではいかないけどそれなりに明るかった時もあった、あの日の自分に戻りたいのに戻り方が分からない
でも…ずっとこうしてウジウジしてるのも嫌
『……せめてダンデさんに謝りのメールをしなきゃ』
ゆっくりと立ち上がりスマホロトムを呼ぼうとすると中庭の柵の向こうに紫色の髪が見えた
その人はいつからそこにいたのか分からないけど、じっと柵を見つめ中に入ろうと躊躇しているようにも見えた
『え…ダンデさん?』
あまりに驚いてしまったあたしはサンダルも履かずに中庭に飛びだし柵の向こうに立つ彼へと駆け寄った
小石や少し硬い芝生がチクチクして足の裏が痛いけど今はそれどころじゃなくて、ただダンデさんの側に行きたかったんだと思う
「ナマエ!あ…すまない急に、何回かインターホンを鳴らしたんだが誰も出なくて確か君の部屋はこっちだったなと思ったら……つい」
低い柵を挟んでこちらを見る彼はあたしの顔を見るなり何かに気が付き目を丸くさせた
「前髪…切ったんだな」
『あ、あ〜……はい、ちょっと気分を変えたくて』
本当の貴方を見たくなったから…とは言えない
照れくさくて短くなった前髪を指先で引っ張って弄るとダンデさんがこちらを見たまま大きな琥珀色の瞳を輝かせた
「とても似合うぜ!君の顔もよく見える!」
直球に感想を言ってくれる彼はニコニコと微笑むと直ぐに我に戻り持っていた小箱とハンカチをあたしに差し出した
『ハンカチ…あ、あたしの?でもこっちはなんですか?』
ハンカチは前にクッキーを包んだ物だから覚えている
でもこの小箱には覚えがない
どういうつもりなのかと彼を見上げてみた
「前にクッキーを貰っただろ?そのお礼として俺なりに用意した物なんだが…受け取ってくれると嬉しいぜ」
ハンカチと小さな小箱を静かに受け取り綺麗にリボンでラッピングされた箱を見つめるとじわじわとしたダンデさんからの視線が突き刺さった
開けろって事かな?
『中を見てもいいですか?』
「勿論だ!」
小さな子供がイタズラを仕掛けてワクワクしているようにダンデさんは口元をニンマリと吊り上げ期待に顔を明るくさせる
まさかびっくり箱じゃないよね?
そこまで子供っぽくはないだろうと思いつつおっかなびっくり箱を開けてみた
『………あ』
「どうだ!綺麗だ………ろ………なっっ!!」
中を開けてみると藍色と水色の混ざったゼリーがぐしゃりと潰れており箱の内側にまで欠片がついている
無事だった部分は僅かだけど綺麗なゼリーだと思った、よく見れば小さな星型の食べれる飾りまでありまるで夜空のようだ
『……これって』
「違っこんなんじゃ!何故こんな事に……あっ!すまないっ俺が走ったりしたせいだっ!本当はもっと綺麗なゼリーだったんだぜ!本当だ!」
焦った彼はあたしの手の中にある箱を奪い取ろうと手を伸ばした、彼の手が触れる前にあたしは反射的に身を引き箱を守ってしまった
「っ!新しいのを用意するから返してくれっ」
眉間にシワを寄せた彼はこんなはずじゃなかったとばかりに顔を曇らせたけど、あたしにとっては……
『これがいいです!ダンデさんから貰った物だし…このゼリー夜空みたいで気に入りましたから』
「っ……本当にそれでいいのか?ぐちゃぐちゃじゃないか」
『いいんです!』
形が崩れてもコレはダンデさんがあたしの為に用意してくれた物には違いないもの
家族以外から何かを貰うのがこんなに嬉しいなんて…
じんわりと熱くなる胸の奥に幸せを感じ、あたしはさっきまでの嫌なモヤモヤが薄れていった気がした
『ダンデさん…約束の時間を過ぎたのに会いに行かなくてごめんなさいっ、貴方さえ良ければ……もし許してくれるならポケモンについて教えてくれませんか?』
メールじゃなく電話でもない
面と向かって彼に謝罪とお願いを初めてできた
断られても仕方ないと思いつつ彼を見つめるとダンデさんは白い歯を出して微笑んだ
「ああっ勿論いいぜ!君に見せたいポケモンを連れてきたんだ!早く行こう!」
あたしの不安なんて吹き飛ばすように彼は簡単に答え早く行こうとあたしを急かす
見た目は筋肉質で大きな体の男性なのに
笑った顔は子供みたいで可愛らしいと感じる
これって変かな?
*************************
その後
ダンデの家に招かれたナマエはユウリ達と合流し相棒ポケモンと出会った
ユウリはヒバニーをホップはサルノリを、そしてナマエはメッソンを相棒とし迎える事になる
ダンデの自宅の中庭には小さいながらもバトルコートがあり三人はさっそく初めてのポケモンとバトルを楽しんだ
対戦中はダンデからアドバイスを受けたり育て方の方法を教わり気がつけば明るかった空は茜色へと変わっていた
「よし!いいバトルだった!次はみんなでバーベキューだ!」
『え?バーベキュー…ですか?』
キョトンとした顔を向ける彼女にダンデはにっこりと笑い説明もなく彼はバーベキューの準備をするために動き出す
ダンデの家族達も混ざり、ついさっきまでバトルをしていた中庭は今ではまるでパーティー会場のようだ
「ユウリ!どっちが沢山食べれるか勝負だ!」
「もうホップったら!それ女の子とする勝負じゃないでしょ!」
串に刺さった肉片手に笑うホップにユウリは呆れながらも楽しそうに笑いあう
年が近いせいもあるが本当に仲がいいようだ
彼らから少し離れた場所ではダンデが甲斐甲斐しく焼いた肉を次々ナマエの皿へと盛っている
『ダンデさん盛りすぎです、皆さんの分がなくなりますよ?』
「大丈夫だ!まだまだ肉はあるぜ!それにしても君の食べっぷりは見ていて気持ちいいな!」
彼が意外そうにしていたのはナマエの食べっぷりだ
細い見た目からは予想できないが、彼女は皿に盛られた大量の肉や野菜を問題なく食べてくれるのだ
『うっ!すみません…バーベキューって初めてなんですが、楽しいし美味しいし…つい』
頬を赤め俯くとまた皿の上に湯気が上がる肉が乗せられた
「いいじゃないか、俺は少食より美味しそうに沢山食べる女性の方が好きだぜ」
顔を上げれば隣に立つ彼は自分用に盛り付けた大盛りの肉を見せて歯を出して笑ってみせた
彼も大量に食べるタイプらしく、お互い様だと言うように食べだす
ガツガツと美味しそうに肉を食べる彼は頬にバーベキューソースがついても気にせず、子供っぽい姿にナマエは小さく吹き出す
『ふふ、ソースついてますよ?』
「んむ?むっ、どこだ?ここか?」
ペタペタと自分の頬を片手で触るが僅かにズレている
『この辺です、あ、もっと上で』
「ん、どうだ?」
『……まだついてますね』
ジェスチャーするも上手く拭けない
なかなかとれないソースにダンデは諦め背中を少し屈めると顔をナマエへと突き出した
「君が拭いてくれ!俺じゃいつまでたっても取れない!」
頬を膨らませ拗ねた彼はじっとりと彼女を見つめ早く拭いてくれと目で訴えた
確かにここまでして取れないなら拭いてやった方が早いだろう
だがソースを拭くだけといえ顔に触れるのは緊張する
少し考え込むがダンデはナマエが拭いてくれるまで待つようで彼女は決意して喉を上下させた
『じゃ、じゃあ…失礼します』
皿の上にフォークを置き自由になった手で彼の頬についたソースへと手を伸ばす、緊張のせいか少し震えた彼女の手は柔らかくて数秒触れただけの手はすぐに離れてしまう
お互いに感じた相手の肌の温もりは気持ちが良くてそれが名残惜しくて余韻に浸ってしまい、ナマエはぎこちなく苦笑いした
『あ…取れましたから、えっと…何か拭くものはっと』
親指の腹についたソースを何かで吹こうと辺りを見回すと突然彼女の手首をダンデが掴んだ
自然と掴まれた手へと視線を戻せばダンデの頭が妙に下に見え次の瞬間ぬるりとした感触が親指を襲った
『んっ、っ、え?』
温かくぬるついたそれはダンデの頭のせいでよく見えない
感触と共にダンデがそこから離れると彼は背筋を戻しながらぺろりと自分の口元を舌で舐め取った
「……これで綺麗になったろ?」
指の事なのか
頬の事なのか分からない
『(え?いま、今のって…もしかして指舐めた?ええっ!)』
ただこちらを見下ろす彼の瞳が色濃く見えさっきとは別人の男に見えナマエは彼の赤い舌にぞくりと背筋から腰を震わせた
頬を染め熱っぽい声を漏らした彼女を見下ろすダンデもまた背筋から腰をぞくりと震わせており舌に残る感触を味わうようにごくりと喉を鳴らし瞳を細める
「アニキ!俺にも肉取ってくれよ!」
二人の異様な雰囲気を掻き消すようにホップの明るい声が飛び込みナマエとダンデは咄嗟に顔を逸らした
「よし!沢山食べて大きくなれよ!」
「おう!俺もアニキみたいにムキムキになるぜ!」
二人が肉に夢中になってる隙にナマエはユウリの元へと逃げ出してしまい、彼女の後ろ姿をダンデは横目で色濃くなった瞳で見つめていたい
「アニキももっと食べるだろ?」
「あぁ…まだまだ腹ペコだ」
本当に食べたいのはきっと彼の視線の先にある物だろう
まだまだ彼女が知らない顔を持つダンデ
そんな彼に狙われ始めたナマエ
そしてこれから彼らと深く関わっていくキバナ
三人の物語は始まったばかりだ
今日はダンデさんがハロンに来る日、目的はホップくんとユウリにポケモンをあげる事であたしはついでにバトルを教わるオマケ的な存在
十分に理解しているけど、いざ部屋を出ようとすると不安と緊張が背中にのしかかり体を重くさせる
ユウリには先に行くように言ったけどあの子の事だから、あたしの情けない気持ちが分かっている筈
『はぁ〜』
自室のドアの前でしゃがみ込み膝を抱いて体を小さくしてみる
そうすると抱きしめられたみたいでほんの少しだけ安心するから
『……やだな…こんな自分』
自分の両肩を抱きしめて蹲る
本当は凄い寂しがり屋で誰かに触れたいのに…他人が怖くて家族としかスキンシップが取れない
友達に囲まれながら楽しくお喋りもしたいのに他人の顔色ばかり気にして、言いたい事さえ頭の中でしか上手く言えないなんて…
『昔は違ってたのにな』
今のユウリとまではいかないけどそれなりに明るかった時もあった、あの日の自分に戻りたいのに戻り方が分からない
でも…ずっとこうしてウジウジしてるのも嫌
『……せめてダンデさんに謝りのメールをしなきゃ』
ゆっくりと立ち上がりスマホロトムを呼ぼうとすると中庭の柵の向こうに紫色の髪が見えた
その人はいつからそこにいたのか分からないけど、じっと柵を見つめ中に入ろうと躊躇しているようにも見えた
『え…ダンデさん?』
あまりに驚いてしまったあたしはサンダルも履かずに中庭に飛びだし柵の向こうに立つ彼へと駆け寄った
小石や少し硬い芝生がチクチクして足の裏が痛いけど今はそれどころじゃなくて、ただダンデさんの側に行きたかったんだと思う
「ナマエ!あ…すまない急に、何回かインターホンを鳴らしたんだが誰も出なくて確か君の部屋はこっちだったなと思ったら……つい」
低い柵を挟んでこちらを見る彼はあたしの顔を見るなり何かに気が付き目を丸くさせた
「前髪…切ったんだな」
『あ、あ〜……はい、ちょっと気分を変えたくて』
本当の貴方を見たくなったから…とは言えない
照れくさくて短くなった前髪を指先で引っ張って弄るとダンデさんがこちらを見たまま大きな琥珀色の瞳を輝かせた
「とても似合うぜ!君の顔もよく見える!」
直球に感想を言ってくれる彼はニコニコと微笑むと直ぐに我に戻り持っていた小箱とハンカチをあたしに差し出した
『ハンカチ…あ、あたしの?でもこっちはなんですか?』
ハンカチは前にクッキーを包んだ物だから覚えている
でもこの小箱には覚えがない
どういうつもりなのかと彼を見上げてみた
「前にクッキーを貰っただろ?そのお礼として俺なりに用意した物なんだが…受け取ってくれると嬉しいぜ」
ハンカチと小さな小箱を静かに受け取り綺麗にリボンでラッピングされた箱を見つめるとじわじわとしたダンデさんからの視線が突き刺さった
開けろって事かな?
『中を見てもいいですか?』
「勿論だ!」
小さな子供がイタズラを仕掛けてワクワクしているようにダンデさんは口元をニンマリと吊り上げ期待に顔を明るくさせる
まさかびっくり箱じゃないよね?
そこまで子供っぽくはないだろうと思いつつおっかなびっくり箱を開けてみた
『………あ』
「どうだ!綺麗だ………ろ………なっっ!!」
中を開けてみると藍色と水色の混ざったゼリーがぐしゃりと潰れており箱の内側にまで欠片がついている
無事だった部分は僅かだけど綺麗なゼリーだと思った、よく見れば小さな星型の食べれる飾りまでありまるで夜空のようだ
『……これって』
「違っこんなんじゃ!何故こんな事に……あっ!すまないっ俺が走ったりしたせいだっ!本当はもっと綺麗なゼリーだったんだぜ!本当だ!」
焦った彼はあたしの手の中にある箱を奪い取ろうと手を伸ばした、彼の手が触れる前にあたしは反射的に身を引き箱を守ってしまった
「っ!新しいのを用意するから返してくれっ」
眉間にシワを寄せた彼はこんなはずじゃなかったとばかりに顔を曇らせたけど、あたしにとっては……
『これがいいです!ダンデさんから貰った物だし…このゼリー夜空みたいで気に入りましたから』
「っ……本当にそれでいいのか?ぐちゃぐちゃじゃないか」
『いいんです!』
形が崩れてもコレはダンデさんがあたしの為に用意してくれた物には違いないもの
家族以外から何かを貰うのがこんなに嬉しいなんて…
じんわりと熱くなる胸の奥に幸せを感じ、あたしはさっきまでの嫌なモヤモヤが薄れていった気がした
『ダンデさん…約束の時間を過ぎたのに会いに行かなくてごめんなさいっ、貴方さえ良ければ……もし許してくれるならポケモンについて教えてくれませんか?』
メールじゃなく電話でもない
面と向かって彼に謝罪とお願いを初めてできた
断られても仕方ないと思いつつ彼を見つめるとダンデさんは白い歯を出して微笑んだ
「ああっ勿論いいぜ!君に見せたいポケモンを連れてきたんだ!早く行こう!」
あたしの不安なんて吹き飛ばすように彼は簡単に答え早く行こうとあたしを急かす
見た目は筋肉質で大きな体の男性なのに
笑った顔は子供みたいで可愛らしいと感じる
これって変かな?
*************************
その後
ダンデの家に招かれたナマエはユウリ達と合流し相棒ポケモンと出会った
ユウリはヒバニーをホップはサルノリを、そしてナマエはメッソンを相棒とし迎える事になる
ダンデの自宅の中庭には小さいながらもバトルコートがあり三人はさっそく初めてのポケモンとバトルを楽しんだ
対戦中はダンデからアドバイスを受けたり育て方の方法を教わり気がつけば明るかった空は茜色へと変わっていた
「よし!いいバトルだった!次はみんなでバーベキューだ!」
『え?バーベキュー…ですか?』
キョトンとした顔を向ける彼女にダンデはにっこりと笑い説明もなく彼はバーベキューの準備をするために動き出す
ダンデの家族達も混ざり、ついさっきまでバトルをしていた中庭は今ではまるでパーティー会場のようだ
「ユウリ!どっちが沢山食べれるか勝負だ!」
「もうホップったら!それ女の子とする勝負じゃないでしょ!」
串に刺さった肉片手に笑うホップにユウリは呆れながらも楽しそうに笑いあう
年が近いせいもあるが本当に仲がいいようだ
彼らから少し離れた場所ではダンデが甲斐甲斐しく焼いた肉を次々ナマエの皿へと盛っている
『ダンデさん盛りすぎです、皆さんの分がなくなりますよ?』
「大丈夫だ!まだまだ肉はあるぜ!それにしても君の食べっぷりは見ていて気持ちいいな!」
彼が意外そうにしていたのはナマエの食べっぷりだ
細い見た目からは予想できないが、彼女は皿に盛られた大量の肉や野菜を問題なく食べてくれるのだ
『うっ!すみません…バーベキューって初めてなんですが、楽しいし美味しいし…つい』
頬を赤め俯くとまた皿の上に湯気が上がる肉が乗せられた
「いいじゃないか、俺は少食より美味しそうに沢山食べる女性の方が好きだぜ」
顔を上げれば隣に立つ彼は自分用に盛り付けた大盛りの肉を見せて歯を出して笑ってみせた
彼も大量に食べるタイプらしく、お互い様だと言うように食べだす
ガツガツと美味しそうに肉を食べる彼は頬にバーベキューソースがついても気にせず、子供っぽい姿にナマエは小さく吹き出す
『ふふ、ソースついてますよ?』
「んむ?むっ、どこだ?ここか?」
ペタペタと自分の頬を片手で触るが僅かにズレている
『この辺です、あ、もっと上で』
「ん、どうだ?」
『……まだついてますね』
ジェスチャーするも上手く拭けない
なかなかとれないソースにダンデは諦め背中を少し屈めると顔をナマエへと突き出した
「君が拭いてくれ!俺じゃいつまでたっても取れない!」
頬を膨らませ拗ねた彼はじっとりと彼女を見つめ早く拭いてくれと目で訴えた
確かにここまでして取れないなら拭いてやった方が早いだろう
だがソースを拭くだけといえ顔に触れるのは緊張する
少し考え込むがダンデはナマエが拭いてくれるまで待つようで彼女は決意して喉を上下させた
『じゃ、じゃあ…失礼します』
皿の上にフォークを置き自由になった手で彼の頬についたソースへと手を伸ばす、緊張のせいか少し震えた彼女の手は柔らかくて数秒触れただけの手はすぐに離れてしまう
お互いに感じた相手の肌の温もりは気持ちが良くてそれが名残惜しくて余韻に浸ってしまい、ナマエはぎこちなく苦笑いした
『あ…取れましたから、えっと…何か拭くものはっと』
親指の腹についたソースを何かで吹こうと辺りを見回すと突然彼女の手首をダンデが掴んだ
自然と掴まれた手へと視線を戻せばダンデの頭が妙に下に見え次の瞬間ぬるりとした感触が親指を襲った
『んっ、っ、え?』
温かくぬるついたそれはダンデの頭のせいでよく見えない
感触と共にダンデがそこから離れると彼は背筋を戻しながらぺろりと自分の口元を舌で舐め取った
「……これで綺麗になったろ?」
指の事なのか
頬の事なのか分からない
『(え?いま、今のって…もしかして指舐めた?ええっ!)』
ただこちらを見下ろす彼の瞳が色濃く見えさっきとは別人の男に見えナマエは彼の赤い舌にぞくりと背筋から腰を震わせた
頬を染め熱っぽい声を漏らした彼女を見下ろすダンデもまた背筋から腰をぞくりと震わせており舌に残る感触を味わうようにごくりと喉を鳴らし瞳を細める
「アニキ!俺にも肉取ってくれよ!」
二人の異様な雰囲気を掻き消すようにホップの明るい声が飛び込みナマエとダンデは咄嗟に顔を逸らした
「よし!沢山食べて大きくなれよ!」
「おう!俺もアニキみたいにムキムキになるぜ!」
二人が肉に夢中になってる隙にナマエはユウリの元へと逃げ出してしまい、彼女の後ろ姿をダンデは横目で色濃くなった瞳で見つめていたい
「アニキももっと食べるだろ?」
「あぁ…まだまだ腹ペコだ」
本当に食べたいのはきっと彼の視線の先にある物だろう
まだまだ彼女が知らない顔を持つダンデ
そんな彼に狙われ始めたナマエ
そしてこれから彼らと深く関わっていくキバナ
三人の物語は始まったばかりだ